2020年の自動車販売は3年連続でマイナスも、新エネ車販売が好調(中国)

2021年4月19日

2020年の中国の自動車販売台数は、前年比1.9%減の2,531万1,000台となり、3年連続で前年比マイナスとなった。乗用車が6.0%減となった一方、政府の政策による後押しもあり、新エネルギー車は好調だ。

2020年11月には、2035年までの新エネルギー自動車産業の発展計画が公布された。この計画では、2025年までに新車販売台数に占める新エネ車の割合を現行の約5%から約20%に引き上げるとされる。今後も新エネ車に対する追い風が見込まれる。

2020年の販売、3年連続で前年比マイナスに

中国自動車工業協会(CAAM)が2021年1月13日に発表したところによると、2020年の自動車販売台数は前年比1.9%減の2,531万1,000台だった。通年では、2018年から3年連続で前年比マイナスとなった。2020年4月以降、販売台数は前年同月比でプラスに転じ、回復を見せていた。しかし、前年実績までには到達しなかったことになる。

内訳をみると、乗用車が6.0%減の2,017万8,000台、商用車は18.7%増の513万3,000台だった。乗用車は、国内各地の消費促進策などが需要を下支えし、下半期にはマイナス幅が縮小。商用車は、4月以降は前年同月比で増加が続いた。これは、排ガス規制に伴う買い替え促進やインフラ投資などの政策を受けた結果とみられる。

また、CEICデータベースによると、外国ブランド車のシェア(2020年12月時点)は、1位が日系で21.6%、2位がドイツ系の19.3%、3位が米国系の10.9%だった。日系のシェアは、新型コロナウイルス感染拡大期の2020年2月に急落した。ただし、その後は回復傾向を示している。

乗用車市場信息聯席会(CPCA)の崔東樹秘書長は、2020年の自動車市場の特徴として、(1)高級ブランドの強さや日本車の販売回復、(2) スポーツ用多目的車(SUV)比率の増加、(3) 新エネルギー車の急激な回復、(4) 輸出市場の販路開拓、などを挙げた。

また、CPCAの莫遥氏は「2020年はインフラ建設や物流のニーズと関連政策、規制と経済刺激の複合的な効果により、中型や大型のトラックを中心に販売が増加した」と指摘した。

新エネ車販売は補助金・ナンバープレート優遇等により2ケタ増に

一方、新エネルギー車(以下「新エネ車」)の販売は伸び、10.9%増の136万7,000台だった。新エネ車の販売台数は、新型コロナ禍の影響で2020年の初めから前年割れが続いていた。しかし、購入者への補助金支給や取得税の免除、上海や北京など大都市でのナンバープレート優遇策などに後押しされ、同年7月からプラス成長に転じた。

中国政府は、新エネ車の普及を政策的に推進している。自動車専門家組織の中国自動車エンジニアリング学会は2020年10月、「省エネルギー・新エネルギー車技術ロードマップ2.0」(以下、ロードマップ)を発表した。工業情報化部装備第1司の指導の下、同学会が中心となり作成したもので、政府の意向が一定程度反映されているとみられる。ロードマップでは、純電動車主導型発展戦略を堅持するとの方向性が示された。あわせて、2035年に向けた6大総体技術目標として以下の項目を掲げている。

  1. 国家目標に先立って、自動車産業の二酸化炭素(CO2)排出総量を2028年前後にピーク値に到達させる。2035年の総排出量を、ピーク値の20%以上減らす。
  2. 新エネルギー車を徐々に主流製品とし、自動車産業の電動化モデルチェンジを実現する(注1)。
  3. 中国方式のインテリジェント・コネクテッド自動車の技術体系を基本的に確立する。製品を大規模に実用化する。
  4. 基幹核心技術の自主化レベルを顕著に引き上げる。共同で、効率が高く安全かつ管理可能な産業チェーンを形成する。
  5. 自動車のインテリジェント・モビリティ体系を確立する。自動車—交通—エネルギー—都市が深く融合するエコシステムを形成する。
  6. 技術イノベーション体系を改善し、世界を牽引するオリジナル・イノベーションのレベルを備える。

また、2035年におけるより具体的な目標として以下の5項目などを示した。

  1. 自動車販売台数に占める新エネルギー車の割合を50%以上にする
  2. 新エネルギー車の販売台数のうち純電動車の割合を95%以上にする
  3. 燃料電池車の保有台数を約100万台にする
  4. 商用車は水素動力へのモデルチェンジを実現する
  5. 伝統的エネルギー(ガソリンなど)動力の乗用車を全てハイブリッド動力にする。

2020年11月には、国務院が「新エネルギー自動車産業発展計画(2021~2035年)」を公布した。ここでは、2025年までに新車販売台数に占める新エネ車の割合を現行の約5%から約20%に引き上げ、2035年までにEVを新車販売の主役とする目標を設定した(注2)。こうした計画に沿って、各省市では今後、普及促進策の制定や、公共車両に関してEVなどの調達率引き上げなどが進められる可能性がある。

2021年は販売台数の前年比プラスへの回復を見込む

CAAMは2021年1月13日の記者会見で、(1) 中国経済は着実に回復に向かい、消費者の需要はそれ以上に早く回復する、(2) 中国の自動車市場は依然として可能性が大きく、2020年で市場は底打ちする、(3) 2021年の自動車販売台数は前年比4%増の2,600万台、うち新エネ車は前年比40%増の180万台に達する、と予測した。一方でCPCAの莫遥氏は、商用車について「2021年は2020年の販売増の要因となった各種効果が一巡することもあり、同年の販売台数は約440万台(2020年の513万3,000台に比べて14.3%減)にとどまる」と述べた。

また、国家信息中心信息化産業発展部の李偉利副主任は、2020年の乗用車市場は細分化され、高級車と新エネルギー車が伸びた、と指摘。その上で、2021年も経済は着実に成長し続けることが予想され、これが自動車産業発展の基盤となるとの見通しを示している。


注1:
国家新エネルギー車イノベーション工程プロジェクト専門家グループの王秉剛グループ長によると、同ロードマップにおいては、プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)と純電動車(BEV)が「新エネルギー車」に分類される。また、燃料電池車(FCEV)、レンジエクステンダー式車(REEV)、ハイブリッド車(HEV)は「省エネルギー車」に分類されている。
注2:
同計画では、純電動車、プラグイン・ハイブリッド車(航続距離延長型を含む)、燃料電池車を3 つの軸として、完成車技術のイノベーションチェーンを構築するとしている。ただし、新エネルギー車の定義は明確に示されていない。
執筆者紹介
ジェトロ・北京事務所
小宮 昇平(こみや しょうへい)
2013年、ジェトロ入構。海外調査部中国北アジア課に配属。2016年3月より1年間の海外実務研修(中国・成都事務所)を経て、2017年3月から2018年8月まで中国北アジア課に所属。2018年8月より北京事務所にて調査業務等に従事。