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コロナ禍はどこへ?米国人のカンクン観光が大ブーム(メキシコ)
観光客急増でリゾート地での日本食需要増加も、供給体制追いつかず

2021年11月1日

新型コロナウイルスの感染拡大により、メキシコの観光業は大打撃を受けた。GDPの産業別内訳をみると、観光産業の実質成長率は2019年に1.1%であったが、2020年はマイナス43.6%と、「文化・娯楽施設」(マイナス54.0%)に次いで2番目の落ち込みだった。2021年第1四半期(1~3月)も前年同期比マイナス33.3%と落ち込みが続いた。しかし、第2四半期(4~6月)に前年同期比160.6%と急回復を見せた。この牽引役となっているのが、米国人を中心とした外国人旅行者だ。メキシコはコロナ禍でも一切、門戸を閉ざすことなく外国からの旅行者を受け入れ続け、旅行者に対する事前のPCR検査や抗原検査はおろか、入国後の隔離措置も行っていない。世界各地で感染状況が落ち着く中でも、いまだ多くの国で何らかの入国制限が行われている中にあって、入国制限のほぼないメキシコを旅行先として選択している外国人が増えているのだ。

レジャーがビジネス旅行の減少をカバー

メキシコへの入国目的は、ビジネス、レジャー、修学に大別される。2020年第2四半期以降、世界のビジネスはオンラインが主流となった。メキシコも例外ではなく、業種によって異なるものの、政府の衛生プロトコルには、原則もしくは奨励として、在宅勤務とオンラインが明記された。メキシコは隣接する米国の影響を大きく受けることから、米国内のビジネスが一斉にオンラインへと遷移した際、メキシコも一気にオンライン化が進み、米国とメキシコ間のビジネスパーソンの往来は極度に減少した。他方、メキシコは教育機関の対面授業の停止期間が最も長かった国の1つだ。経済協力開発機構(OECD)の世界の教育状況に関するレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、メキシコにおける大学などの高等教育機関の対面授業停止日数(土日・祝日を除いた2020年1月1日~2021年5月20日の期間)は264日と、OECD加盟諸国で最長であり、加盟国平均(101日間)の約2.6倍だった。こうした要因もあり、修学を目的とした留学生のメキシコへの入国は著しく減少した。

ビジネス目的と修学目的の入国者数の減少をカバーしたのが、レジャー目的の入国者だ。2021年1~8月のメキシコの国際空港別入国者実績数は約836万人と前年同期比約1.5倍になった。世界的なリゾート地であるカンクンがシェア46.5%(前年同期比約1.7倍)と牽引役になり、ビジネスが中心のメキシコ市(シェア:17.8%)を大きく上回った。3位のロス・カボス(12.8%)と4位のプエルト・バジャルタ(7.3%)もメキシコ国内外から観光客が集まる有名なリゾート地である(表1参照)。つまり、3人に2人はリゾート目的の入国と言える。

表1:メキシコへの国際空港別入国者数実績(△はマイナス値)
順位 国際空港名 州名 1~8月 シェア 変化率
2020年 2021年 2021年 2021/
2020年
1 カンクン キンタナロー 2,185,200 3,884,708 46.5 77.8
2 メキシコ市 メキシコ市 1,167,121 1,483,416 17.8 27.1
3 ロス・カボス 南バハカリフォルニア 542,224 1,069,834 12.8 97.3
4 プエルト・バジャルタ ハリスコ 529,201 613,873 7.3 16.0
5 グアダラハラ ハリスコ 365,384 557,867 6.7 52.7
6 コスメル キンタナロー 71,219 121,716 1.5 70.9
7 シラオ グアナファト 51,119 91,927 1.1 79.8
8 モンテレイ ヌエボレオン 67,069 79,700 1.0 18.8
9 モレリア ミチョアカン 31,874 64,093 0.8 101.1
10 ケレタロ ケレタロ 26,450 42,025 0.5 58.9
11 アグアスカリエンテス アグアスカリエンテス 16,794 33,166 0.4 97.5
12 マサトラン シナロア 57,870 32,937 0.4 △ 43.1
13 メリダ ユカタン 18,214 25,560 0.3 40.3
14 サン・ルイス・ポトシ サン・ルイス・ポトシ 13,294 23,711 0.3 78.4
15 シワタネホ ゲレロ 47,219 22,431 0.3 △ 52.5
16 サカテカス サカテカス 9,875 21,464 0.3 117.4
17 オアハカ オアハカ 10,035 18,521 0.2 84.6
18 ロレト 南バハカリフォルニア 12,626 16,238 0.2 28.6
19 ドゥランゴ ドゥランゴ 8,217 15,492 0.2 88.5
20 カボ・サン・ルーカス 南バハカリフォルニア 5,268 14,162 0.2 168.8
21 チワワ チワワ 9,221 12,524 0.1 35.8
22 マンサニージョ コリマ 10,697 9,045 0.1 △ 15.4
23 エルモシージョ ソノラ 6,008 7,218 0.1 20.1
24 ベラクルス ベラクルス 2,864 6,835 0.1 138.7
25 アカプルコ ゲレロ 9,661 6,273 0.1 △ 35.1
その他 67,819 82,031 1.0 21.0
合計 5,342,543 8,356,767 100.0 156.4

出所:内務省、観光省

カンクンに集結する米国人観光客は感染拡大前を上回る

2021年1~8月の国籍別入国者数実績では、米国人が77.7%と最大の比率を占め、入国者実数も前年同期比2.1倍の約650万人であった。2位がコロンビア人で約22万人、3位がブラジル人で約19万人。対して、2020年には約90万人の入国者があったカナダからは、約9割減の約10万人となった(表2参照)。米国は2020年に世界最大の新型コロナ感染国となったが、ワクチン接種が早期から進められ、2021年3~8月では接種完了者数が世界1位となり、海外渡航を含む観光業も再開が進んだ。

表2:メキシコへの国籍別入国者数実績(△はマイナス値)
順位 国籍 1~8月 シェア 変化率
2020年 2021年 2021年 2021/2020年
1 米国 3,058,713 6,489,302 77.7 112.2
2 コロンビア 120,485 224,024 2.7 85.9
3 ブラジル 94,072 190,469 2.3 102.5
4 スペイン 73,633 122,141 1.5 65.9
5 エクアドル 39,980 109,258 1.3 173.3
6 カナダ 893,988 100,199 1.2 △ 88.8
7 ベネズエラ 21,637 97,354 1.2 349.9
8 フランス 94,139 79,801 1.0 △ 15.2
9 ペルー 66,800 66,344 0.8 △ 0.7
10 ドイツ 68,508 65,883 0.8 △ 3.8
11 アルゼンチン 87,359 60,765 0.7 △ 30.4
12 コスタリカ 42,247 55,593 0.7 31.6
13 英国 89,946 46,968 0.6 △ 47.8
14 インド 16,035 45,559 0.5 184.1
15 チリ 48,943 40,486 0.5 △ 17.3
16 ロシア 25,408 34,118 0.4 34.3
17 ポーランド 18,002 34,041 0.4 89.1
18 キューバ 45,038 33,711 0.4 △ 25.1
19 イタリア 35,944 33,151 0.4 △ 7.8
20 グアテマラ 29,661 30,797 0.4 3.8
21 スイス 10,706 22,064 0.3 106.1
22 オランダ 23,510 18,473 0.2 △ 21.4
23 エルサルバドル 16,429 17,538 0.2 6.8
24 パナマ 13,092 16,507 0.2 26.1
25 韓国 30,290 16,441 0.2 △ 45.7
その他 277,978 305,780 3.7 10.0
合計 5,342,543 8,356,767 100.0 156.4

出所:内務省、観光省

カンクンに入国した米国人旅行者数を具体的に見てみると、2020年は前年比60%減の約114万8,000人であったが、2021年は前年比2.6倍、2019年比1.07倍の約303万4,500人だった。つまり、2021年は感染拡大前の2019年を上回っている状況だ(表3参照)。

表3:カンクンへの米国人入国者数実績(単位:人)
性別 2019年 2020年 2021年
1月 男性 137,609 149,666 98,220
女性 158,214 171,525 113,120
2月 男性 154,765 168,299 94,125
女性 175,340 194,068 109,313
3月 男性 201,697 95,660 162,796
女性 236,971 113,129 192,874
4月 男性 153,832 455 154,340
女性 182,324 316 188,212
5月 男性 151,182 677 196,800
女性 185,934 488 247,225
6月 男性 185,647 10,237 232,888
女性 223,118 10,455 287,630
7月 男性 183,029 48,994 246,243
女性 220,200 55,481 307,706
8月 男性 131,505 59,584 179,831
女性 158,255 69,058 223,182
合計 男性計 1,299,266 533,572 1,365,243
女性計 1,540,356 614,520 1,669,262
総計 2,839,622 1,148,092 3,034,505

注:速報値が含まれているため、表1、2と数値が一致しない場合がある。
出所:内務省、観光省

外国人旅行者の8割は5つ星ホテルに4泊以上の宿泊

観光省のデータによると、2019年にメキシコ国内外からのカンクンへの旅行者数は約1,712万5,000人で、のべ宿泊数は約6,458万7,000日だった。平均滞在日数は、国内からの旅行者が2.8日で、国外からの旅行者が4.0日だった。宿泊したホテルのカテゴリーでは、国外からの旅行者の8割以上は5つ星に宿泊した。このことから、外国人旅行者の8割は、5つ星ホテルに4泊以上も宿泊していることになる。こうしたデータからも、2021年の米国人旅行者の増加はキンタナロー州の観光業に大きな貢献をしていると言える(表4参照)。

表4:カンクン周辺のホテルの宿泊状況(2019年)
ホテル
カテゴリー
カンクンへの旅行者数(人) 宿泊数(泊) 平均宿泊日数(泊)
合計 国内から 国外から 合計 割合(%) 国内から 割合(%) 国外から 割合(%) 平均 国内から 国外から
1つ星 173,964 97,299 76,665 437,762 0.7 267,600 2.6 170,162 0.3 2.5 2.8 2.2
2つ星 409,459 112,276 297,183 952,029 1.5 216,479 2.1 735,550 1.4 2.3 1.9 2.5
3つ星 1,223,051 431,363 791,688 3,825,282 5.9 1,214,910 11.8 2,610,373 4.8 3.1 2.8 3.3
4つ星 2,618,152 720,619 1,897,533 8,643,205 13.4 1,997,415 19.4 6,645,789 12.2 3.3 2.8 3.5
5つ星 12,700,718 2,256,109 10,444,609 50,729,444 78.5 6,595,168 64.1 44,134,276 81.3 4.0 2.9 4.2
合計 17,125,344 3,617,666 13,507,678 64,587,722 100.0 10,291,572 100.0 54,296,150 100.0 3.8 2.8 4.0

出所:観光省

旅行者増加に伴う需要に対応できない現地日本食提供ビジネス

ジェトロが行った在メキシコの日本食卸業者複数社へのヒアリング結果によると、メキシコ国内で本格的な日本食を提供するレストランや飲食店は約1,000店舗あると言われているが(2021年3月30日付地域・分析レポート参照)、カンクン周辺では45店舗に過ぎない。カンクン中心部やホテルゾーンに約3,000のレストランが存在している中で、日本食レストランは1.5%のみとなっている。2020年の旅行者数の急減時は外食産業全体の需要が落ち込んだが、2021年からの米国人旅行者の急増によって、日本食需要に供給側が追い付いてない状況となっている。特に、カンクンは米国東海岸からの高所得層旅行者の割合が高いことから、本格的な日本食を米国で経験したことのある人が多く、旅行先でも日本酒、和牛、水産品(すしなどを含む)などの高付加価値品が好まれている。ワクチン接種者の増加によって観光客のさらなる増加が見込まれる中、本格的な日本食の供給体制の強化が求められる。

表5:カンクン周辺の飲食店(ホテル含む)の状況(単位:店舗)
レストラン、食堂、ホテル 事業者数 場所
キンタナロー州全体 12,000
階層レベル2の項目べニート・フアレス区 3,000 中心地区、ホテルゾーン
階層レベル3の項目日本食レストラン 28 中心地区、ホテルゾーン
階層レベル3の項目ホテル内にある日本食レストラン 12 ホテルゾーン
階層レベル3の項目自社で日本食を提供するホテル 5 ホテルゾーン

出所:ジェトロ実施のヒアリング


米国人観光客でにぎわうカンクンのホテル(Encounter Japan提供)
執筆者紹介
ジェトロ・メキシコ事務所
志賀 大祐(しが だいすけ)
2011年、ジェトロ入構。展示事業部展示事業課(2011~2014年)、ジェトロ・メキシコ事務所海外実習(2014~2015年)、お客様サポート部貿易投資相談課(2015~2017年)、海外調査部米州課(2017~2019年)などを経て現職。

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