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コロナ第2波下、インド・ラジャスタン州のニムラナ工業団地では
感染予防対策を徹底、生産体制・労務管理も大きな問題はなし

2021年7月15日

インド北西部に位置するラジャスタン州のニムラナ日本企業専用工業団地には、48社の日系企業が入居している。2021年4月から5月にかけてインドを襲ったのが、新型コロナウイルス感染拡大第2波だ。入居企業は2020年の感染拡大時の経験を生かしながら、感染対策や操業継続に当たった。ニムラナ工業団地での取り組みや企業の対応を紹介する。

様々な活動制限下でも操業は継続

新型コロナ第2波で、ラジャスタン州も他地域と同様、一時期大きな打撃を受けた。ピーク時の5月中旬には、1日当たり新規感染者数が2万人を超えた。7月上旬時点では、100人以下に落ち着いている。

同州で48社の日系企業が操業するニムラナ工業団地では、多い時で1日当たり10人前後の新規感染者が確認された。ただし、6月7日以降はゼロとなっている。この工業団地では、入居企業で「ニムラナ社長会」を組織。企業間での情報共有や州政府との対話などの活動を行い、テーマごとの分科会も設置されている。コロナ禍発生後、その1つの衛生分科会が、活動規制措置を共有できるよう取り計らい、各社の感染状況を把握している。

ラジャスタン州政府は、2021年の感染拡大第2波には、夜間外出禁止令など一部の活動制限措置(ロックダウン)で対応した。この措置は2020年に実施した全面的な操業停止とは対照的で、他州でも同様の対応だった。4月7日に最初のロックダウンを施行して以降、3回にわたり期間を延長し制限を強化した。その後、6月8日以降は段階的に緩和した。ラジャスタン州産業開発公社によると、同日本企業専用工業団地には約2万5,000人の従業員が勤務する。公社としては工業団地周辺ゾーンでの封じ込め操業を目指し、厳格に管理したとのことだった。具体的な措置としては、外出禁止令下であっても、シフト通勤や夜勤シフトを認めた。その一方、制限緩和後も、工場通勤者の通勤時間・経路を限定し、移動を制限。州政府の指定IDカードや通行証(通勤経路を明記)の保持・携行を義務付けた。また、超勤時間にも制限が課された(シフト時間外超過勤務は1時間以内)。

工場はほぼフル稼働

感染が拡大したインド北部には、スズキやホンダなどの日系自動車・同部品企業が集積する。5月上旬に、スズキとホンダは、インドの医療用酸素ボンベ不足に伴う工業用酸素の提供や定期保守点検の前倒しなどで、生産ラインを2週間ほど停止した。一時は医療用に酸素ボンベの供出や酸素発生器を製造するなど、医療体制の維持に貢献した企業があったことも報道された。もっとも、ニムラナ工業団地では、大量に工業用酸素を使う工場は少なく、操業に影響のあった企業はなかったという。

先述のように、大手アッセンブラーの生産停止やロックダウンによる販売店の閉鎖により、4~5月の売り上げは大幅に減少した。このことから、サプライヤーである部品企業も生産調整を強いられた。しかし、政府の経済刺激策の効果や潜在的に底堅い内需から、生産も急回復している。その結果、工業団地内企業も、2直、3直体制でフル稼働している企業も多い。同工業団地のある自動車部品企業によると、「各社の稼働状況は、自動車関係では四輪と二輪とで若干違う。四輪関係の部品工場は、上位中間層の旺盛な需要を下支えに、夜間シフトも含めほぼフル稼働。二輪は、需要者になる下位中間層への第2波の影響がより大きく、稼働率は四輪よりはやや鈍い」とのことだ。

従業員の予防意識が向上

感染対策は、州政府発表の衛生ガイドラインに従い、以下のことが2020年から実施されてきた。まずは、通勤手段の制限だ。個別通勤による公共交通手段での感染リスクを回避するため、ほとんどの企業が自社で通勤バスを準備した。バスの乗車率は定員の50%に制限されている。また、工場入り口での従業員の検温、アプリによる感染者との接触確認、消毒や手洗いの徹底など、基本的な衛生基準の順守が徹底された。

さらに、企業ごとに様々な対策がとられた。企業からは、「工場内を巡回し、従業員に注意を行っている。マスクを顎まで外す従業員には、容赦なく指導する」「ラインでは二重マスクを徹底。事務部門に限り、在宅勤務5割の勤務体制を維持。施設内のビニール間仕切りも、徹底している」「感染抑制のため、外部との換気や通気性に重点を置く。全ての扉や窓を開放している」「昨年の感染経路を分析すると、感染者の8割が帰郷先での感染、2割がルームシェアや買い物などだった。従って、今年は従業員を目の届かないところに放置すべきではないと判断した。感染者や濃厚接触者以外の在宅勤務を認めず、基本的に1日8時間、ほぼ100パーセントの出勤体制を取った」などの声が聞かれた。

また衛生分科会は、「昨年は、従業員を監視していなければ、衛生対策の徹底が難しかった。しかし今回の第2波では、多くの従業員および家族、知人に感染者が出て、従業員が感染の怖さを知る結果となった。そのため、感染予防への意識が高まり、自ら進んで手洗いや消毒する習慣が浸透した」と指摘。最も注目すべき点は、この点にあるという。

労務管理上の問題はなし

感染による欠勤者が出た場合の人員補充については、派遣会社への依頼や他部署からの応援などでやりくりした企業がほとんどだ。大きなクラスター感染が発生した企業がなかったのがその背景にある。また、勤務拒否などのストライキや、大きな労務上の問題もなかった。感染による欠勤については、前年の経験から得た柔軟な労務管理のノウハウが蓄積されている。それを受けて、どの企業も減給は実施していない。

感染予防のカギを握るのが、ワクチン接種だ。ほぼ全企業で順調に進んでいる。接種料を補助して病院などでの接種を積極的に推奨するケース、医療従事者を自社に呼び職域接種を行うケースなど、企業によって対応は異なる。いずれにせよ、おおむね接種に対する拒否反応はないとのことだ。

退避者の再渡航の多くは8月以降か

2020年は、多くの日系企業駐在員が日本へ一時退避した。その後、どのタイミングで駐在員を再渡航させるか、判断に迷う場合も多かった。2021年も急激な感染拡大を受けて、ニムラナ入居企業各社も、4月下旬ごろから日本への一時退避の検討に入った。ニムラナ社長会が5月13日に実施した緊急アンケート(48社中47社が回答)では、アンケート実施時点で、駐在員全員や一部の退避をすでに決定した企業は約6割(28社)、全部または一部退避を検討中の企業は約3割(14社)だった。残留を決定した企業は約1割(5社)だけということになる。インドへの再渡航時期については、ほとんどの企業が、感染状況が収まること、医療体制が改善・整備されることを条件に挙げた。時期としては、7月下旬以降になるとみられる。また、在外邦人も日本でのワクチン接種が可能となったことから、日本でワクチンを2回接種し、8月以降にインドに戻るという駐在員も多い。

ニムラナ工業団地の入居企業は、これまでの期間で、コロナ感染拡大への対応において様々な経験をし、ノウハウを蓄積してきた。すでに第3波の襲来もささやかれている。その場合にも、これまでの経験を生かし、社長会を中心に一つ一つ課題に取り組んでいく意向とのことだった。

執筆者紹介
ジェトロ・ニューデリー事務所 海外投資アドバイザー
大穀 宏(だいこく ひろし)
2006年7月から現職。

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