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コロナ禍で加速する新エネルギー車市場(中国)
電池分野も拡大の一途

2021年3月3日

中国自動車工業協会(CAAM)の発表(1月13日)によると、2020年の自動車販売台数は前年比1.9%減の2,531万台。3年連続で前年割れになった。しかし、新エネルギー車(以下「新エネ車」)の販売は伸び、10.9%増の137万台だった。ちなみに新エネ車は、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料自動車(FCV)のいずれかと定義され、ハイブリッド車(HV)を含まない。

新エネ車の販売台数は、新型コロナ禍の影響で2020年の初めから前年割れが続いていた。しかし、購入者への補助金支給や取得税の免除、上海や北京など大都市でのナンバープレート優遇策などに後押しされ、同年7月からプラス成長に転じた。またCAAMは、2021年の新エネ車販売を前年比40.0%増と予測。自動車全体の4.0%増を大きく上回るとした。

自動車各社の新エネ車に対する投資意欲は高い。自動車調査サイトの「蓋世汽車(1月19日)」のまとめによると、2020年中に建設し始めた自動車の新工場は中国全土で少なくとも23カ所に上り、生産能力は合計で499万台に達する。そのほとんどが新エネ車に関連するプロジェクトで、2021年末か2022年中に稼働する計画が大半を占める。

中国勢:旺盛な投資意欲、脱落が進む中で相次ぐ新規参入

新エネ車は部品点数が少なく、ガソリン車に比べて参入障壁が低いといわれる。一方、コロナ禍の影響による資金の調達難や販売不振などで、新興勢の脱落が相次いでいる。ある中国汽車流通協会(CADA、自動車販売会社の業界団体)によると、新エネ車の新興メーカー約40社のうち、2020年5月に販売実績があったのは8社だけだ。

2020年末時点でも、新エネ車の販売で業績が改善した企業は一部に過ぎない。明暗が分かれているのが実情だ(表1参照)。新興EVメーカーの上海蔚来汽車(NIO)と小鵬汽車(Xpeng)が販売台数を前年の2倍に伸ばす一方、比亜迪(BYD)や奇瑞汽車、吉利汽車など既存自動車メーカーは苦戦した。「廉価なガソリン車のイメージがぬぐえない「老舗」ブランドは、割高感のある新エネ車分野で消費者の信頼を獲得できていない」との見方もある。

表1:2020年中国上位新エネ車メーカーの乗用車販売台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
順位 メーカー 本拠地 販売台数 前年比
1 比亜迪(BYD) 広東省 179,054 △ 18.4
2 上汽GM五菱 広西チワン族自治区 165,609 175.8
3 テスラ 米国 135,449 n.a.
4 上汽乗用車(SAIC) 上海市 76,883 1.3
5 江淮汽車(JAC) 安徽省 49,017 △ 10.7
6 広汽伝祺 広東省 46,116 12.3
7 上海蔚来汽車(NIO) 上海市 43,728 121.0
8 奇瑞汽車 安徽省 43,215 △ 8.0
9 理想汽車(LiAuto) 北京市 32,624 n.a.
10 吉利汽車 浙江省 30,065 △ 56.7
11 小鵬汽車(Xpeng) 広東省 27,041 112.0
12 北汽新能源(BAIC) 北京市 25,914 △ 82.7
13 威馬汽車(VM Motor) 上海市 22,495 33.3

出所:乗用車市場信息聯席会(CPCA)、各社の発表などを基にジェトロ作成

一方、新たな中国企業の新エネ車市場参入は、今なお続いている。ネット検索大手の百度(バイドゥ)は2021年1月11日、吉利汽車と共同で新エネ車会社を設立すると発表。新会社では、百度が2017年に立ち上げた自動運転開発プラットフォーム「アプロ」を生かし、人工知能(AI)を搭載した「スマートカー」の開発に乗り出す。

新エネ車の一角を占めるFCVの開発に力を入れる企業もある。大手自動車グループの上海汽車は、2020年9月に水素エネルギー事業戦略を発表。2025年までにFCVの生産・販売規模を1万台とし、市場シェアを10%以上にする目標を掲げた。同社は2001 年から中国でいち早くFCVの研究開発を開始し、これまで研究開発(R&D)費30 億元(約480億円、1元=約16円)を投じた。同社では2020年9月に、傘下の上汽大通汽車が「MAXUS(マクサス)」ブランドで初となるFCVの多目的車(MPV)「EUNIQ7」を発売。これまでトラックやバスなど商用車を中心としてきたFCV戦略を、乗用車に拡大させていく考えだ。

外資勢:新エネ車分野へのシフトが本格化

2020年時点で、中国市場での新エネ車販売台数は、自動車全体のわずか5.4%に過ぎない。しかし、日米欧などの大手自動車メーカーによる新エネ車生産・販売に向けた動きは活発化している。中でも、目立ったのはドイツのフォルクスワーゲン(VW)だ。同社は2020年9月、中国合弁子会社の上汽大衆汽車、一汽大衆汽車、江淮大衆の3社とともに、2025年までに中国本土で新エネ車15モデルを生産する計画を明らかにした。計150億ユーロを投じる。EVに特化したプラットフォームを採用する最先端工場として、2020年9月に広東省の仏山工場、10月に上海工場を相次いで稼働させた。両工場のEV生産能力は年間で計60万台に達する。VWブランドのほか、傘下のアウディやシュコダのEVモデルも2年以内に生産を開始するという。

BMWも生産に向けて動く。中国合弁子会社の華新宝馬が2020年4月、遼寧省瀋陽市で新工場を着工した。完成すれば、EV、PHVとする自動車の生産能力が年間20万台に達する。6月には、民営自動車メーカーの長城汽車と折半出資する新エネ車工場も江蘇省張家港市で着工。生産能力が年間16万台に上る見込み。両工場とも、2022年中に完成する予定だ。

車載電池にも相次ぐ増産計画

このように、自動車の電動化、スマート化に向けた流れが加速する中、部品分野への投資も拡大している。「蓋世汽車」のまとめでは、2020年に中国でR&D拠点、工場などの整備計画を公表した自動車部品メーカーは34社、総投資額は1,000億元を上回った。特に、車載電池分野に関する投資の動きが活発だ。

車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)は2020年8月、民営自動車大手の吉利汽車と共同で、四川省に約80億元規模の電池工場を建設すると公表した。12月には、最大390億元を投じ、江蘇省、四川省にある既存工場の新増設計画と福建省に新工場を建設する計画を明らかにした。

韓国のLG化学は2020年11月、5億ドルを投じて江蘇省南京市にあるリチウムイオン電池(LIB)工場の拡張計画を発表している。

韓国の市場調査会社SNE Researchが発表した2020年世界車載電池の出荷量(搭載べース)ランキングでは、CATLが辛うじて首位を保った。しかし、前年比では2%増〔1ギガワット時(GWh))にとどまった(表2参照)。一方で、LG化学は前年の2.5倍と首位に迫る勢いだ。

表2:2020年世界上位車載電池メーカーの出荷量(搭載ベース)(単位:GWh、%)(△はマイナス値)
順位 企業名 本拠地 出荷量 前年比
1 寧徳時代新能源科技(CATL) 中国福建省 34 2
2 LG化学 韓国 31 150
3 パナソニック 日本 25 △ 10
4 恵州比亜迪電池(BYD) 中国広東省 10 △ 14
5 サムスンSDI 韓国 8 81
6 SKイノベーション 韓国 7 284
7 オートモーティブエナジーサプライ(AESC) 日本 4 △ 5
8 合肥国軒高科動力能源 中国安徽省 3 △ 33
9 中航鋰電科技(CALB) 中国常州市 3 128
その他 13 △ 22
世界計 137 17

出所:市場調査会社SNEリサーチの発表を基にジェトロ作成

CATL創業者の曽毓群董事長は2021年1月中旬に北京市で開かれたEVフォーラムで、「今後5年間で世界におけるLIB市場は爆発的な成長を続け、テラワット(TWh=1,000GWh)時代を迎える」「高まる需要に対して供給能力の拡張ペースは緩やかなため、車載電池の供給不足に陥る可能性がある」との見方を示した(「毎日経済新聞」2021年1月16日)。

中国の自動車産業政策が市場拡大を後押し

自動車専門家組織の中国自動車エンジニアリング学会は2020年10月、「省エネルギー・新エネルギー車技術ロードマップ2.0」(以下、ロードマップ)を発表。ロードマップでは、(1)2035年までには新車販売に占める新エネ車の割合を50%以上に高め、新エネ車の95%以上をEVにする、(2)残りの自動車も省エネ車のハイブリット車(HV)に切り替える、(3)従来型のガソリン車、ディーゼル車の製造・販売は停止する、ことを掲げた。工業・情報化部の指導で作成されたこのロードマップは、中国新エネ車発展の長期目標を示すものだ。

2020年11月には、国務院(内閣府に相当)が「新エネルギー自動車産業発展計画(2021~2035年)」を公布した。ここでは、2025年までに新車販売台数に占める新エネ車の割合を現行の約5%から約20%に引き上げ、2035年までにEVを新車販売の主役とする目標を設定。2025年以降の数値目標は明記しなかったが、目標はロードマップをベースにしている。

EVを中心とする新エネ車は、ガソリン車などに比べ(1)車体価格が割高、(2)走行航続距離が短い、(3)充電時間が長い、(4)充電スタンドが少ない、などの課題を抱える。「自動車強国」を目指す中国は、新エネ車の普及と開発に力注ぐ方針だ。今後も、新エネ車市場の拡大を後押しするため、施策の導入が見込みまれる。中国の外資系自動車メーカーの対応とともに、コア部品など海外依存を減らす中国独自のサプライチェーン構築などの動きからも目が離せない。

執筆者紹介
ジェトロ・上海事務所
劉 元森(りゅう げんしん)
2003年、ジェトロ・上海事務所入所、現在に至る。

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