自動車市場は冷え込むも、2020年下半期から回復基調に(ケニア)

2021年8月25日

新車販売は伸び悩むも、2020年下半期から回復基調に

2020年の国内新車販売台数は前年比15%減となる1万977台だった。過去最も多く販売した2015年の1万9,492台と比べると、43.7%のマイナスになった(図1参照)。

図1:新規販売台数の推移
2013年から台数は増加したのち、2015年の19,492台をピークに減少し、底は2017年の10,722台だ。その後は緩やかに増減を繰り返し、2020年は最多台数の2015年と比べると43.7%減少している。

出所:ケニア自動車工業会(KMI)「Vehicle Sales for year 2013~2020 」を基に作成

2020年の月別の国内新車販売台数をみると5月が底で、559台だった。その後、6月以降は徐々に回復し、12月には前年同期比19.2%増となる1,289台に回復した(図2参照)。新車販売実績をクラス別にみると(図3参照)、売れ筋のトップは10~14トンのトラックで、全体の16.6%を占める1,826台だった。続くクラスも3.5~9トントラックで、販売台数は全体の14.9%にあたる1,641台だった。それぞれ、販売実績数のうち現地生産車の割合は100%、99.6%であった。

図2:2019と2020年の月別新車販売台数の推移
2020年の月別の国内新車販売台数をみると5月が底で、559台だった。その後、6月以降は徐々に回復し、12月には前年同期比19.2%増となる1,289台に回復した。

出所:ケニア自動車工業組合(KAM)

図3:クラス別販売傾向
売れ筋のトップは10~14トンのトラックで、全体の16.6%を占める1,826台だった。続くクラスも3.5~9トントラックで、販売台数は全体の14.9%にあたる1,641台だった。それぞれ販売実績数のうち現地生産車の割合は100%、99.6%であった。

出所:ケニア自動車工業組合(KAM)

メーカー別にみると、いすゞ自動車が38.9%のシェアで前年に引き続きトップを維持した。販売台数は4,266台と前年比14.3%減だったが、構成比は前年から0.5ポイント伸ばした。新型コロナウイルス感染発生直後に新しい座席タイプのバスを発表するなど、情勢の変化にも柔軟に対応した。トヨタ自動車がシェア22.1%の2,426台で2位、三菱自動車が同13.8%の1,518台で3位だった。日本メーカーによる新車販売台数は、全体の約8割を占めた(表1参照)。

表1:メーカー別新車販売台数の推移(単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 構成比 前年比
いすゞ 3,658 4,860 6,321 4,545 3,686 4440 4979 4266 38.9% △14.3%
トヨタ 3,182 4,065 3,440 2,285 2,235 3720 3313 2426 22.1% △26.8%
三菱 1,140 2,774 3,153 2,106 1,461 1810 1858 1518 13.8% △18.3%
マルチ 119 116 134 110 81 632 156 155 1.4% △0.6%
タタ 1,005 1,116 1,210 832 543 559 571 717 6.5% 25.6%
フォード 543 579 856 410 448 487 294 239 2.2% △18.7%
日産 27 564 605 741 381 508 374 221 2.0% △40.9%
フォルクスワーゲン 134 143 182 145 295 272 212 238 2.2% 12.3%
メルセデス・ベンツ 2,154 345 598 343 211 196 268 180 1.6% △32.8%
日野 233 686 594 346 273 253 224 139 1.3% △37.9%
スカニア 233 239 338 233 140 160 167 150 1.4% △10.2%
ランドローバー 129 248 284 190 86 114 41 36 0.3% △12.2%
ルノー 27 54 58 142 130 80 33 0.3% △58.8%
スバル 121 146 265 77 77 189 42 42 0.4% 0.0%
マヒンドラ 112 141 157 153 113 70 81 81 0.7% 0.0%
ヒュンダイ 54 168 91 117 55 94 73 48 0.4% △34.2%
合計(その他含む) 14,168 17,299 19,492 13,534 10,723 14,003 12,981 10,977 100% △15.4%

出所:ケニア自動車工業会(KMI)「Vehicle Sales for year 2013~2020 」を基に作成

中古車の新規登録台数はさらに低調の前年同期比24.0%減

新車と中古車を含む新規登録台数をみると、2020年1月から11月までの11カ月で前年同期比23.3%減となる7万4,379台だった。登録台数から新車販売数を差し引いた中古車販売の見込み台数は前年同期比24.0%減の6万4,691台に落ち込んだ。2020年の、新規登録台数に占める中古車の割合は87.0%で、その78.0%を乗用車(セダン、ステーションワゴン)が占めた(図4参照)。

図4:新規登録台数の推移と内訳
新車と中古車を含む新規登録台数をみると、2020年1月から11月までの11か月で前年同期比23.3%減となる74,379台だった。登録台数から新車販売数を差し引いた中古車販売の見込み台数は前年同期比24.0%減の64,691台に落ち込んだ。2020年、新規登録台数に占める中古車の割合は87.0%で、その78.0%を乗用車(セダン、ステーションワゴン)が占めた。

出所:Leading Economic Indicator Jan 2021, Kenya National Bureau of Statistics

国内生産の底上げを目的とした中古車規制の強化は見送り

2019年に、ケニア産業・貿易・企業開発省は中古車の輸入規制を強化する内容を含む国家自動車政策(NAP)案を発表した。この政策案には、国内製造業の振興を目的に段階的に中古車の輸入台数を減らすことを目指す内容が含まれており、話題になった。具体的には、輸入車の年式による規制を現行の8年未満から段階的に引き下げる方針だ。しかし、中古車輸入業者からの反対があり、施行には至っていない。また、周辺国にも似たようなルールがあるものの、地域共同体として共通のルールは導入されていない。

なお、ケニア政府は国内生産する新車台数を増やすため、CKD(コンプリートノックダウン)を現地生産とみなして、輸入完成車に課す関税(25%)や物品税(20~25%)を免除しており、いすゞイーストアフリカやトヨタケニアが出資するAVA(Associate Vehicle Assemblers)などはトラックなど商用車のCKD生産を行っている(表2参照)。

表2:ケニアの自動車組み立て工場一覧
アセンブラー 組立可能
台数
年間組み立て
台数(占有率)
(2019年)
オーナーシップ ブランド 車種 都市名
いすゞ自動車 12,000 3,751(31%) 100%外資 単体 中型商用車、
大型商用車
ナイロビ
AVA(Associated vehicle
Assemblers)
10,000 2,860(29%) 100%現地 複数 小型商用車、
大型商用車
モンバサ
Kenya Vehicle
Manufacturers
18,000 1,000(6%) 35%現地
65%外資
複数 小型商用車、
大型商用車
ティカ
Trans Africa
Limited
1,000 400(40%) N/A 複数 N/A モンバサ
モビウスモーターズ 5,760 0(2019年時点) 100%外資 複数 N/A モンバサ

出所:ケニア自動車工業組合(KAM)、EAC(2019年)

コロナ禍では積極的に金融緩和

新車販売台数が2015年にピークを迎え、2016年に伸び悩んだ要因として知られているのが、2016年に導入された上限金利だ。金利の上昇を防ぐため、民間銀行の金利について公定歩合プラス4%を上限とする銀行法案が可決された。この規制は2019年11月に撤廃されたが、中小零細企業は融資を受けることができなくなり、商用車の販売に影響したと言われている(2019年11月25日付ビジネス短信参照)。新型コロナウイルス禍においては、ケニア中央銀行(CBK)は公定歩合をそれまでの7.25%から7%まで引き下げる緩和政策をとった。ケニア銀行連盟も2020年3月19日、中小零細企業向けの救済策を承認。民間銀行は経営難に陥った中小零細企業に対し、債務減免措置を行うことになった。また、国内大手銀行のNCBAや信用協同金庫はトヨタ自動車やいすゞ自動車と連携し、トラックやバスを購入する中小零細企業向けの長期低金利ローンを発表した。結果として、中小企業の購買力は持ちこたえ、2020年下半期には商用車の販売に回復がみられた。

執筆者紹介
ジェトロ・ナイロビ事務所 調査・事業担当ディレクター
久保 唯香(くぼ ゆいか)
2014年4月、ジェトロ入構。進出企業支援課、ビジネス展開支援課、ジェトロ福井を経て現職。2017年通関士資格取得。