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【コラム】1日の半分近くをネットに費やす(タイ)
多量の広告や情報・ニュースの信頼性などに課題

2021年5月20日

電子取引開発機構(ETDA)はタイ情報技術省傘下にあり、電子商取引(EC)規制当局だ。ETDAは2021年4月9日、タイのインターネット利用に関して報告書を発表した。この報告書によると、タイのインターネット利用者は1日あたり平均11時間以上をインターネットに費やしている。新型コロナウイルスの影響により、若い世代でオンライン学習や在宅勤務が増加したことが影響した。ソーシャルメディアとしてはFacebook、オンライン・ショッピングではShopee、在宅勤務ツールではZoomが最も利用されているという。また、回答者のほぼ100%がインターネット上でフェイクニュースに遭遇している。情報の信頼性などが利用者の懸念となる中、電子商取引やオンライン広告などを活用する企業では、信頼できる製品・サービス情報を届ける意識が求められる。

インターネット利用時間は8年間で3倍近くに

ETDAが発表した報告書は、「タイのインターネット利用行動報告書(2020年)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」だ。この報告書は2013年から毎年発表され、今回で8回目。ETDAが2020年4~6月に実施したアンケート調査(回答者2万5,844人)結果が基になっている。ETDAは「タイのインターネット利用者数は年々増加していることから、彼らの行動に関する調査を継続的に行うことを重視している」とする。タイのインターネット利用者数は5,010万人(2019年時点)で、2013年と比べほぼ倍増。全人口を6,650万人とすると、普及率は75.3%に上る(図1参照)。

図1:タイのインターネット利用者数の推移(2013~2019年)
2019年時点で5,010万人と2013年と比べるとほぼ倍増しており、全人口を6,650万人とすると普及率は75.3%に上る

出所:ETDA

同報告書によると、回答者の2020年の1日のインターネット利用時間は平均11.25時間で、前年から1.03時間増加している。ETDAが調査を開始した2013年の1日のインターネット利用時間が平均4.36時間しかなかったことと比較すると、2.6倍に増加した(図2参照)。ETDAは、インターネット利用時間が増加した理由として「インターネットへのアクセスが容易になり、利用範囲が広がった」「オンライン・サービスが増加し、日常生活の中で必要性が生じた」「新型コロナウイルスの流行」といった要因を挙げている。

図2:タイのユーザーの1日当たりインターネット利用時間
回答者の2020年の1日のインターネット利用時間は平均11.25時間で、前年より1.03時間増加していることが明らかになった。ETDAが調査を開始した2013年の1日のインターネット利用時間が平均4.36時間しかなかったことと比較すると、3倍に増加している

出所:ETDA

Y世代とZ世代で2時間以上インターネット利用時間が増加

1日当たりの平均インターネット利用時間は、平日で前年比1.31時間増の11.23時間、休日は6分減の11.29時間になった。世代別では、Y世代(20~39歳)とZ世代(19歳以下)が1日の半分以上をインターネットに費やす。その利用時間は前年より2時間以上増加したことになる。最も活発にインターネットを利用しているのはY世代で、1日のインターネット利用時間は平均12.26時間となった。次いでZ世代が12.08時間、X世代(40~55歳)が10.20時間、ベビーブーマー(56~73歳)が8.41時間となった(図3参照)。

図3:世代別の1日あたりインターネット利用時間
世代別では、Y世代(20~39歳)とZ世代(19歳以下)で1日の半分以上をインターネットに費やしており、前年より利用時間が2時間以上増加した。最も活発にインターネットを利用しているのはY世代で、1日のインターネット利用時間は平均12.26時間となった。次いでZ世代が12.08時間、X世代(40~55歳)が10.20時間、ベビーブーマー(55~73歳)が8.41時間となった

出所:ETDA

Y世代やZ世代のインターネット利用が活発だった理由としては、(1) 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により教育機関が閉鎖され、オンライン学習が盛んになったことや、(2) 企業においても在宅勤務などの対策が積極的に行われるようになったこと、が挙げられている。

職業別にみると、1日あたりの平均インターネット利用時間が多いのは「学生」が最大で、12.43時間(表参照)。次いで「自営業・フリーランス」が11.28時間、「民間企業の従業員」11.10時間、「企業の経営者」10.21時間、「無職」10.10時間、「公的機関・国営企業・独立団体・公的機関・政府機関の職員」9.41時間、「主婦・主夫」9.01時間だった。学生は、オンライン活動に慣れ親しんでいるZ世代やY世代が大半を占めることから、1日あたりのインターネット利用時間が前年比で1.93時間増加。昨年に続いて最も活発なインターネット利用者になった。

表:職業別1日当たりインターネット利用時間

2020年
職業 利用時間
学生 12.43
自営業/フリーランス 11.28
民間企業従業員 11.10
経営者 10.21
無職 10.10

出所:ETDA

2019年
職業 利用時間
学生 10.50
主婦・主夫 10.38
経営者 10.34
無職 10.32
自営業/フリーランス 10.30

出所:ETDA

喫茶店・カフェでのインターネット利用が人気

タイの地域別でインターネット利用時間を見ると、東北部が11.29時間と最も多い。次いで、北部が11.28時間、バンコクが11.25時間、南部が11.23時間、中部が11.22時間。地域にかかわらず、インターネット利用時間はほぼ同じだった。全国的にインターネット普及率が向上し、地域差がなくなっていることが分かる。

インターネットを利用する場所としては、「家」が67.8%で最多。次いで、「公共の場(デパート、レストラン、喫茶店など)」(45.4%)、「職場」(30.1%)、「インターネットカフェ、ゲームショップ」(21.3%)と続く(図4参照)。この割合は、インターネット利用者がその場所にいる時間の長さと言い換えてもよい。自宅に次いで公共エリアの回答が高いのは、タイでは喫茶店やカフェに無料Wi-Fiが提供されていることが多いためだろう。リラックスした雰囲気の中で仕事やミーティング、学習、読書をするための場所として、インターネット利用者の間で非常に人気の高い場所になっている。

図4:インターネットを利用する場所(複数回答)
「家」が67.8%で最も多く、次いで「公共の場(デパート、レストラン、喫茶店など)」(45.4%)、「職場」(30.2%)、「インターネットカフェ、ゲームショップ」(21.4%)と続く。

出所:ETDA

Facebook、YouTube、LINEはほぼ100%の利用率

タイ人にとって最も人気のあるオンライン上での活動は、8年連続で「ソーシャルメディア」が1位。インターネット利用者の95.3%が活用している結果となった。続いて、「テレビ/動画/映画の鑑賞、音楽鑑賞」(85.0%)、「情報検索」(82.2%)、「コミュニケーション/チャット」(77.8%)、「電子メール」(69.0%)、「オンライン・ショッピング」(67.3%)、「オンライン読書」(64.2%)、「eラーニング」(57.5%)、「オンライン・ゲーム」(56.8%)、「オンライン決済」(56.5%)の順だった。

ソーシャルメディア・SNS利用者の使用率が高かったサービスは、Facebook(98.3%)、YouTube(97.5%)、LINE(96.0%)で95%を超えた。上位3サービスに変化はなかった。続いて、Instagram(80.4%)、Twitter(71.9%)の順だった。新興ではTikTok(35.8%)の使用率が上昇している。ほかに、Pantip(タイ語のSNS)が30.6%、WhatsAppが6.7%、Tinderが6.0%だった。

オンライン・ショッピングでは、利用者のうち91.0%がShopeeで商品・サービスを購入したと回答。最も人気が高いことが分かった。次いでLazada(72.9%)、Facebook ファンページ(55.1%)、Instagram(42.1%)、LINE(41.6%)となった。6位以降は大きく差があり、Kaidee(6.6%)、LnwShop(6.3%)、Weloveshopping(3.3%)、O Shopping(2.4%)、Thailand Postmart(1.1%)など、地場系EC事業者が続いた。ECサイトとしては、ShopeeとLazadaの2強となっていることが浮き彫りとなった。

他方、オンライン販売については、インターネット利用者の26.6%しか活用していない。利用されているサービスとしてはFacebookファンページが64.7%で首位。Shopee(47.5%)、Instagram(40.8%)、LINE(39.4%)、Lazada(29.4%)、Kaidee(12.6%)が続いた。FacebookやInstagramなど、ECサイトではないソーシャルメディアを売買に利用する「ソーシャル・コマース」の利用者が多い結果となった。ソーシャル・コマースは、簡単に登録できて手数料がかからないため、販売者に人気がある。

在宅勤務時の会議システムとしては、Zoomの利用者が最も多く70.6%。次いでLINE(61.0%)、Microsoft Teams(38.4%)の順となった。

広告の煩わしさ、情報の信頼性への不安感が浮き彫りに

インターネット利用者が抱える悩みとしては、「ネット広告の多さ」(76.6%)、「インターネット接続の遅さ」(72.9%)で7割以上の回答があった。また、「ネット情報の信頼性への不安」は48.9%と、ほぼ半数に上った。

フェイクニュースにかかる設問では、インターネット上で共有されている情報・ニュースのうち、真実であり信頼できるものは50.2%しかない、と考えられている。タイのインターネット利用者は、自分が閲覧した情報やニュースの信憑(しんぴょう)性について疑心暗鬼になっており、すぐには信用しないことが明らかとなった。また、回答者のうち94.7%は、インターネット上でフェイクニュースに遭遇した経験があると答えている。

新型コロナウイルスの感染拡大後、市場開拓のツールとしてECはますます重要になっている。インターネット利用者の動向を把握することは、マーケティング上、欠かせない。特にASEANにおいて市場規模が大きいY世代やZ世代のインターネット利用時間が増加し、インターネットを通じたリーチが求められる。

他方、あふれる広告の煩わしさや信頼できる情報の乏しさは、ユーザーの悩みにもなっている。単純にオンライン広告を増やすだけではなく、信頼できる製品情報を届ける意識が求められる。また、ECサイトだけではなく、ソーシャル・コマースの利用も拡大している。そのため、オンライン流通チャネルの多面化や、ソーシャルメディア上のインフルエンサーの存在も、一層重要になりそうだ。

執筆者紹介
ジェトロ・バンコク事務所
北見 創(きたみ そう)
2009年、ジェトロ入構。海外調査部アジア大洋州課、大阪本部、ジェトロ・カラチ事務所、アジア大洋州課リサーチ・マネージャーを経て、2020年11月からジェトロ・バンコク事務所で広域調査員(アジア)として勤務。
執筆者紹介
ジェトロ・バンコク事務所
シリンポーン・パックピンペット
通商政策や貿易制度などの調査を担当。

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