アフリカ製スマートフォン「マラ・フォン」、ルワンダで売れ行き好調

2020年2月26日

ルワンダの現地生産による主にアフリカ向けのスマートフォンの販売が始まった。開発と生産、販売を行うのは、マラ・フォンだ。ルワンダを拠点に活動する起業家アシシュ・タッカー氏が、さかのぼること2018年11月に製品開発を発表した。高品質でアフリカなどの人々が初めて利用するスマートフォンとして、付加価値が高いだけではなく、カメラや音楽などアフリカのユーザーが必要とする機能を持たせる一方で、価格も抑えた。いわば「手ごろなデザイン」であることをコンセプトとしている。2019年10月にルワンダで販売を開始し、2月までに「MaraZ」と「MaraX」の2機種を発表した。店頭スタッフによると、1,000台以上を売り上げたという。


キガリ・ビジネスセンター内に構えるマラ・フォン本店(ジェトロ撮影)

OSはアンドロイドで、SIMカードが2枚装着できる仕様。本体裏側にライオンをイメージしたロゴが印字され、上部に指紋認証センサーがある。高機能モデルの「MaraZ」は、32GB/3GB RAMの容量があり、高速データ通信(受信時:最大300Mbps、送信時:最大150Mbps)モデルだ。店頭価格は190ドル(約18万500ルワンダ・フラン。両通貨で決済を選択できる)、インターネットでの価格は229ドルだ。容量とデータ通信を最低限(16GB/1GB RAM、受信時:最大150Mbps、送信時:最大50Mbps)に抑えた「MaraX」は、店頭価格130ドル、インターネット価格は159ドルに設定されている。それぞれイヤホンと充電プラグがセットになっており、Google photoやGoogle mapなどに加え、ルワンダ国内で使えるサービス、例えば、Metro RwandaやNokada、RBA、Tap&Go、eStepなど、モバイルペイメントなどのアプリケーションが初期設定の段階でダウンロードされている。


「MaraX」は3色仕上げ、店頭にはゴールド1色しか
残っていなかった(ジェトロ撮影)

「MaraX」の画面は5.5インチのIPS
HDディスプレーだ(ジェトロ撮影)

ロゴはライオンをイメージしている(ジェトロ撮影)

仕様はアフリカの需要を捉えているといえる。バッテリーの容量が大きく便利だ。iPhone8の1,821mAhの2倍近い3,500mAhで、フル充電すると画面には「4日間利用可能」と表示される。音楽やカメラのスペックが高いのも、消費者ニーズをつかんでいる。サウンドには、高音質オーディオのドルビーデジタル5.1を採用した。頑丈なゴリラガラスの画面のタッチ、高画質13MPカメラも他社製品に劣らない。SDカードにより容量を拡大することもできる。製品保証は13カ月だ。

一方、デバイスそのものの高級感や、3Dタッチのような機能はなく、利便性は最低限に抑えられている。本体カバーや画面保護シートなどのアクセサリーも正規品に限られ、選択肢が少ない。現在、店舗は首都キガリに2店で、故障の際は本店に持ち込む必要がある。

店頭スタッフによると、2月時点では高価格の「MaraZ」が売れ筋という。「アフリカは輸入品であふれているが、廉価な輸入品はすぐに壊れるなど不満を持つ人も多い。スマートフォンも例外ではない。消費者はアフリカ製のブランドに引かれる傾向にある」と語った。これまでは中国や韓国など外国製の携帯電話やスマートフォンが目立つアフリカ市場で、地元ルワンダ製マラ・フォンの展開が注目される。


初期設定中。
「Made in Rwanda」のロゴからは、
ルワンダ人のアイデンティティーが感じられる(ジェトロ撮影)

店舗外観(ジェトロ撮影)
執筆者紹介
ジェトロ・ナイロビ事務所 調査・事業担当ディレクター
久保 唯香(くぼ ゆいか)
2014年4月、ジェトロ入構。進出企業支援課、ビジネス展開支援課、ジェトロ福井を経て現職。2017年通関士資格取得。