2019年の米国の新車販売台数は1.3%減少するも、1,700万台を維持

2020年2月28日

米国の2019年の新車販売台数は前年比1.3%減の1,705万台となった。車種別シェアは、モーターインテリジェンスのデータによると、乗用車が1980年以来最低の3割弱となる一方で、スポーツ用多目的車(SUV)関連では、クロスオーバーSUV(CUV)・スポーツワゴンが4割近くまで拡大しており、乗用車からのCUVへのシフトがさらに顕著となった。

また、2019年の自動車生産台数は3.6%減となった。販売減による生産調整や、GMのストライキなどが影響した。

好景気により高位安定

モーターインテリジェンスの発表(1月3日)によると、米国の2019年の新車販売台数は、前年比1.3%減の1,704万7,725台となった(図1参照)。今回の結果に関し、販売台数が年初の予測の1,600万台後半を上回り、5年連続で1,700万台を維持したことから、新車市場は好景気に支えられて高位安定で推移しているとの見方が多い。

図1: 新車販売台数と前年比の推移(2000年~2019年)
新車販売台数は、リーマンショックの影響により2009年に1,043万台となりましたが、その後、2016年に1,755万台まで増加しました。2019年の新車販売台数は1,705万台で、2015年以降5年連続で1,700万台代を維持しました。

出所:モーターインテリジェンス発表データを基にジェトロ作成

さらに進む乗用車からCUVへのシフト

車種別にみると、小型トラックが2.6%増加する一方、乗用車が前年比10.1%減少して全体を押し下げた(表1参照)。構成比をみると、1980年以来、乗用車が過去最低の28.2%となった。一方で、小型トラックに分類されるCUV・スポーツワゴンが37.5%まで増加しており、乗用車からのCUVへのシフトがさらに顕著となった(表1、図2参照)。

表1:2019年の新車販売台数の内訳(単位:台、%)(△はマイナス値)
項目 2018年 2019年
販売台数 販売台数 構成比 前年比
乗用車 5,354,505 4,813,363 28.2 △ 10.1
ミニバン・フルサイズバン 938,388 901,093 5.3 △ 4.0
ピックアップトラック 2,944,393 3,115,610 18.3 5.8
スポーツ用多目的車(SUV)
〔クロスオーバーSUV(CUV)、スポーツワゴンを含む〕
8,036,984 8,217,659 48.2 2.2
階層レベル2の項目 クロスオーバーSUV(CUV)、スポーツワゴン 6,218,523 6,391,544 37.5 2.8
小型トラック小計 11,919,765 12,234,362 71.8 2.6
合計(全体) 17,274,270 17,047,725 100.0 △ 1.3

出所:モーターインテリジェンス発表データを基にジェトロ作成

図2:車種別販売台数推移(2007年~2019年)
 乗用車は、リーマンショックの影響により2009年に549万台にまで減少し、その後、2014年には792万台にまで増加しましたが、その後減少が続き、2019年には481万台となりました。他方で、クロスオーバーSUV(CUV)は2009年以降増加を続け、2018年には乗用車を上回りました。2019年にはさらに639万台にまで増加し、乗用車との差はさらに広がりました。

出所:モーターインテリジェンス 発表データを基にジェトロ作成

メーカーでまちまちな結果に

主要メーカー別でみると、販売台数の減少幅が最も大きかったのは日産(前年比9.9%減)、次いで、フォード(3.2%減)、ゼネラルモーターズ(GM)(2.5%減)、トヨタ(1.8%減)、フィアットクライスラー・オートモービルズ(FCA)(1.4%減)となった(表2、図3参照)。日産は乗用車に加えて、CUVの「ローグ」や「ムラーノ」、ピックアップトラック「タイタン」といった米国人気の車種でも前年比2桁減と落ち込んだ上に、その他ほぼ全ての車種が減少した。また、フォード、GM、トヨタはそれぞれ「フォーカス」や「クルーズ」「プリウス」〔プラグインハイブリッド(PHV)車とハイブリッド(HV)車を含む〕といった乗用車の減少が影響した。

一方で、増加幅で全社首位となったのは電気自動車メーカーのテスラ(41.9%増)、次いで、現代(4.7%増)、起亜(4.4%増)、スバル(2.9%増)、フォルクスワーゲン(VW)(1.8%増)、ホンダ(0.2%増)となった。テスラは乗用車「モデル3」が伸びを牽引した。連邦政府による同社に対するEV税額控除は2019年1月から半年ごとに半減され、2020年にはなくなったが、同社では2019年初から1台当たり2,000ドルを割引して販売促進を行っている。その他のメーカーはいずれもCUVが好調で各社の伸びを押し上げた。

図3:2019年全新車販売台数の減少に対するメーカー別寄与度
全販売台数は前年比で1.31%減少しました。押し下げに最も影響したのは日産で、寄与度はマイナス0.86%となりました。

出所:モーターインテリジェンス発表データを基にジェトロ作成

表2:メーカー別生産、販売台数 (2019年販売台数の多い順)(台、%)(△はマイナス値、―は値なし)
メーカー 車種 生産 販売
2018年 2019年 2018年 2019年
生産台数 生産台数 前年比 構成比 販売台数 販売台数 前年比 構成比
GM 合計 2,016,338 1,657,572 △ 17.8 15.5 2,951,227 2,877,590 △ 2.5 16.9
乗用車 477,315 261,190 △ 45.3 2.4 559,585 388,833 △ 30.5 2.3
小型トラック 1,539,023 1,396,382 △ 9.3 13.0 2,391,642 2,488,757 4.1 14.6
フォード 合計 2,378,440 2,247,645 △ 5.5 21.0 2,485,222 2,406,188 △ 3.2 14.1
乗用車 264,199 118,297 △ 55.2 1.1 486,024 349,091 △ 28.2 2.0
小型トラック 2,114,241 2,129,348 0.7 19.9 1,999,198 2,057,097 2.9 12.1
トヨタ 合計 1,241,615 1,194,961 △ 3.8 11.2 2,426,674 2,383,349 △ 1.8 14.0
乗用車 566,332 601,823 6.3 5.6 894,063 849,989 △ 4.9 5.0
小型トラック 675,283 593,138 △ 12.2 5.5 1,532,611 1,533,360 0.0 9.0
FCA 合計 1,442,511 1,408,821 △ 2.3 13.2 2,235,204 2,203,663 △ 1.4 12.9
乗用車 0 0 0.0 0.0 217,045 202,744 △ 6.6 1.2
小型トラック 1,442,511 1,408,821 △ 2.3 13.2 2,018,159 2,000,919 △ 0.9 11.7
ホンダ 合計 1,240,487 1,205,044 △ 2.9 11.3 1,604,828 1,608,170 0.2 9.4
乗用車 476,569 448,385 △ 5.9 4.2 728,695 706,463 △ 3.1 4.1
小型トラック 763,918 756,659 △ 1.0 7.1 876,133 901,707 2.9 5.3
日産 合計 835,321 763,036 △ 8.7 7.1 1,493,877 1,345,681 △ 9.9 7.9
乗用車 286,064 272,383 △ 4.8 2.5 607,318 544,135 △ 10.4 3.2
小型トラック 549,257 490,653 △ 10.7 4.6 886,559 801,546 △ 9.6 4.7
現代 合計 559,500 613,274 9.6 5.7 677,946 710,007 4.7 4.2
乗用車 324,786 297,844 △ 8.3 2.8 371,511 341,847 △ 8.0 2.0
小型トラック 234,714 315,430 34.4 2.9 306,435 368,160 20.1 2.2
スバル 合計 359,399 368,516 2.5 3.4 680,135 700,117 2.9 4.1
乗用車 116,612 106,410 △ 8.7 1.0 327,927 306,828 △ 6.4 1.8
小型トラック 242,787 262,106 8.0 2.4 352,208 393,289 11.7 2.3
起亜 合計 - - - - 589,673 615,338 4.4 3.6
乗用車 - - - - 248,135 233,074 △ 6.1 1.4
小型トラック - - - - 341,538 382,264 11.9 2.2
VW 合計 127,020 124,366 △ 2.1 1.2 581,377 592,031 1.8 3.5
乗用車 46,939 45,947 △ 2.1 0.4 289,068 260,980 △ 9.7 1.5
小型トラック 80,081 78,419 △ 2.1 0.7 292,309 331,051 13.3 1.9
BMW 合計 356,749 411,620 15.4 3.8 356,164 362,307 1.7 2.1
乗用車 0 0 0.0 0.0 175,836 159,626 △ 9.2 0.9
小型トラック 356,749 411,620 15.4 3.8 180,328 202,681 12.4 1.2
メルセデスベンツ 合計 290,852 306,921 5.5 2.9 355,413 358,410 0.8 2.1
乗用車 67,549 46,960 △ 30.5 0.4 151,420 140,261 △ 7.4 0.8
小型トラック 223,303 259,961 16.4 2.4 203,993 218,149 6.9 1.3
マツダ 合計 0 0 - - 300,325 278,552 △ 7.2 1.6
乗用車 0 0 - - 104,547 80,018 △ 23.5 0.5
小型トラック 0 0 - - 195,778 198,534 1.4 1.2
テスラ 合計 254,530 364,236 43.1 3.4 126,150 178,950 41.9 1.0
乗用車 218,604 339,549 55.3 3.2 106,300 165,700 55.9 1.0
小型トラック 35,926 24,687 △ 31.3 0.2 19,850 13,250 △ 33.2 0.1
その他 (注) 合計 0 39,499 - 0 410,055 427,372 4.2 2.5
乗用車 0 39499 - 0 87,031 83,774 △ 3.7 0.5
小型トラック 0 0 - - 323,024 343,598 6.4 2.0
合計 11,102,762 10,705,511 △ 3.6 100.0 17,274,270 17,047,725 △ 1.3 100.0
乗用車 2,844,969 2,578,287 △ 9.4 24.1 5,354,505 4,813,363 △ 10.1 28.2
小型トラック 8,257,793 8,127,224 △ 1.6 75.9 11,919,765 12,234,362 2.6 71.8

注:生産台数はボルボ・カーズ、販売台数にはジャガーランドローバー、三菱自動車、ボルボ・カーズ、ポルシェ、マセラティ、フェラーリを含む。
出所:モーターインテリジェンス、オートモーティブニュースデータセンター発表データを基にジェトロ作成

パフォーマンスへの不安とガソリン安でEVは不調

EV専門情報サイトのインサイドEVが1月17日に発表したデータ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、EVとPHV、HVの合計販売台数(2019年)は、前年比8.8%減の32万9,528台となった(図4参照)。今回の結果に関し、米国自動車評価会社ケリー・ブルー・ブックの市場アナリストのエリック・イバラ氏は、目的地に到着する前にバッテリーが尽きることへの不安や充電施設の不十分さ、ガソリン車に比べて高い販売価格、メーカーが消費者の好みを把握しきれていない点に加えて、低水準で推移するガソリン価格が影響していると指摘した(「ロサンゼルス・タイムズ」紙1月17日)。なお、2019年の米国の1ガロン当たりの平均レギュラーガソリン価格は前年を13セント下回る2.50ドルとなっている(エネルギー情報局調べ)。

このように需要の見通しが定まらない中でも、企業は燃費規制への対応などから、EVの生産・開発に向けた取り組みを行っている。韓国メーカーの現代、起亜がそれぞれ「コナ」「ニロ」といったCUVでEVモデルを市場投入したほか、欧州メーカーではアウディが「イー・トロン」、ポルシェが「タイカン」といった高級EVを発売した。また、VWとフォードのEV開発に向けた業務提携や(2019年7月18日付ビジネス短信参照)、GMによるEV新興メーカーへの融資、同社によるEVトラックの生産に向けた自社工場への大型投資などが報じられている。

図4:EV・PHV・HV販売台数首位10モデルの2019年販売台数と前年比
最も大きく伸びたのは販売台数16万台で前年より約2万台増加したテスラの「モデル3」でした。トヨタの「プリウスプライム」、テスラの「モデルX」、GMの「ボルト」などその他9モデルは前年に比べて減少しました。

出所:インサイドEV発表データを基にジェトロ作成

表3:EV・PHV・HV販売台数首位10モデルの2019年販売台数と前年比(△はマイナス値)
モデル名 2019年販売台数 前年比
モデル3(テスラ) 158,925 13.7
プリウスプライム(トヨタ) 23,630 △ 14.4
モデルX(テスラ) 19,225 △ 26.3
ボルト(GM) 16,418 △ 8.9
モデルS(テスラ) 14,100 △ 45.2
リーフ(日産) 12,365 △ 16.0
クラリティPHV(ホンダ) 10,728 △ 42.3
フュージョンEnergi(フォード) 7,524 △ 6.8
530e(BMW) 5,862 △ 32.3
パシフィカハイブリッド(GM) 5,723 △ 19.0
合計 329,528 △ 8.8

出所:インサイドEV発表データを基にジェトロ作成

生産減の背景には販売減による生産調整とGMのストライキ

2019年は自動車の生産台数も減少した。オートモーティブニュースの1月18日発表によると、2019年の生産台数は前年比3.6%減の1,070万5,511万台となった(表2参照)。販売減による足元での生産調整や、EVなどへの生産体制の見直しのほか、GMでのストライキが押し下げ要因となった。主要メーカー別でみると、減少幅が最大となったのはGM(17.8%減)で、次いで、フォード(5.5%減)、日産(8.7%減)となった。GMは、オハイオ州ローズタウン工場とミシガン州ハムトラミック工場で、それぞれ小型乗用車「クルーズ」とPHV「VOLT」の生産を終了したことに加え、ストライキが行われた9月15日から40日間で約3万台(CNBC、10月29日)の生産が停止したことなどが影響した(2019年10月31日付ビジネス短信参照)。フォードは、3Dプリンターや産業用ロボットの導入など、設備を一新するためにシカゴ工場を一時閉鎖したことなどで減少した。一方で、2018年からサウスカロライナ州で稼働を開始したボルボ・カーズ(表2のうち「その他」)は2019年に3万9,499台生産した。


変更履歴
表2に誤りがありましたので、訂正いたしました。(2020年9月9日)
2019年の生産台数の構成比が、GM分を除いて2018年の数値になっていたため訂正しました。

変更履歴
文章中に誤りがありましたので、次のように訂正いたしました。(2020年3月24日)
第7段落
(誤)EVなどの販売が減少した今回の結果について、米国自動車評価会社…
(正)今回の結果に関し、米国自動車評価会社…
図4
(誤)図4:EV販売台数首位10モデルの2019年販売台数と前年比
(正)図4:EV・PHV・HV販売台数首位10モデルの2019年販売台数と前年比
表3
(誤)表3:EV販売台数首位10モデルの2019年販売台数と前年比
(正)表3:EV・PHV・HV販売台数首位10モデルの2019年販売台数と前年比
執筆者紹介
ジェトロ・ニューヨーク事務所 リサーチャー
大原 典子(おおはら のりこ)
民間企業勤務を経て2013年よりジェトロ・ニューヨーク勤務。自動車産業を柱に米国の産業調査を担当。