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需要減少による影響は大きいものの、日系企業は投資意欲維持(インドネシア)
ジェトロ調査からみる新型コロナウイルスの在インドネシア日系企業への影響

2020年8月3日

インドネシアでは4月上旬から、大規模社会制限(PSBB)が多くの州で実施された。その後、6月からは徐々に経済活動が制限付きで再開されはじめた。しかし、国内需要の急激な減少などにより、企業は大きな影響を受けている。

ジェトロは2020年6月8~16日、ジャカルタ・ジャパン・クラブ(JJC)などの協力を得て、インドネシアに拠点を置く日系企業を対象にアンケート調査を実施した。国内の景気低迷が長引けば、より多くの日系企業の資金繰り悪化が予想される。一方で、日系企業の約7割が、今後のインドネシアへの投資は維持するとしている。

生産量は8割強の企業で減少

5月の生産状況が通常時に比べてどう変化したか(生産量ベース)の設問に対し「減少」の回答をした企業は、製造業全体で8割以上に上った(表1参照)。「通常比3割未満」と回答した企業は、3割を超えた。製造業をさらに規模別にみると、大企業の9割、中小企業の8割弱が、生産量が減少したと回答した。

輸送用機械器具製造業(49社)に限定すると、1社だけを例外として、残り全ての企業で生産量が減少した。通常比3割未満の生産となった企業は全体の7割を占めた。インドネシア自動車製造業者協会(GAIKINDO)によると、5月の自動車の販売台数は前年同月比で95.8%減少したとされる。アンケート結果からも、日系企業に直接影響していることが分かる。

表1:製造業における5月の生産状況(生産量ベース)
項目 通常比3割未満 通常比3割以上5割未満 通常比5割以上8割未満 通常比8割程度 通常通りの生産 通常以上に生産
大企業(n=125) 42% 18% 18% 12% 8% 2%
中小企業(n=68) 29% 13% 22% 13% 19% 3%
合計(n=193) 37% 17% 19% 12% 12% 3%

注1:調査は6月8~16日に、ジェトロのアジア・オセアニア進出日系企業実態調査対象企業約1700社などを対象に実施。有効回答社362。
注2:本設問未回答の大企業6社、中小企業3社は除く。また、日本に親会社を持たない企業(n=3)も除く。
出所:ジェトロ・JJC他「在インドネシア日系企業の新型コロナウイルスに関わる緊急アンケート結果」


インドネシアでは4月上旬から、州・市・県ごとの感染拡大状況に応じ、大規模な社会制限を実施された。この結果、経済活動などが制限された。その後、6月初旬から同制限措置の緩和を段階的に始めた。しかし、インドネシアでGDPの6割を占める民間消費に対する影響は大きい。アジア開発銀行が6月に発表したレポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1018.39KB)によると、2020年のインドネシアのGDP成長率は、前年比マイナス1.0%と予測されている。また、現地紙は180万人から480万人が貧困層となり、300万人から520万人が職を失う、と予測している(「ジャカルタポスト」6月22日外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます )。

国内需要の減少は、現地日系企業の生産活動にも大きな影響を及ぼす。ジェトロのアンケート調査でも、減産となった理由を尋ねたところ、97%が「需要減少」を理由に挙げた。逆に、自宅待機などによる労働者不足やサプライチェーンの断絶を理由に挙げた企業は、ほとんど見られない。減産の主要な理由は需要の減少にあることが、明らかになった。

8割の輸送用機械器具製造業で売り上げが50%以上減少

4~6月の売上高について尋ねたところ、製造業全体で5割弱の企業が前年同期比で50%以上減少という結果だった(表2参照)。規模別では、大企業である製造業のうち、8割強で売り上げが減少した。大企業の方が影響を受ける結果となったのは、需要が落ち込んだエンドユーザーに近いためとみられる。業種別には、輸送用機械器具への影響が大きい。当該製造業(49社)の約8割の企業で、売り上げが50%以上減少した。

また、非製造業においても、約8割の企業で売り上げが減少したとの回答だった。特に、商社・貿易業(35社)では、9割強の企業で売り上げが減少している。

表2:4月から6月における前年同月比での売上変化
項目 50%以上減少 20%以上50%未満減少 1%以上20%未満減少 変化なし 増加 分からない
製造業(n=202) 45% 26% 13% 11% 3% 2%
階層レベル2の項目大企業(n=131) 46% 28% 12% 8% 3% 2%
階層レベル2の項目中小企業(n=71) 42% 21% 14% 17% 4% 1%
非製造業(n=151) 26% 29% 21% 14% 2% 7%
階層レベル2の項目大企業(n=113) 21% 30% 25% 14% 1% 9%
階層レベル2の項目中小企業(n=38) 42% 26% 11% 13% 5% 3%
総計(N=353) 37% 27% 16% 12% 3% 4%

"注1:調査は6月8~16日に、ジェトロのアジア・オセアニア進出日系企業実態調査対象企業約1700社などを対象に実施。有効回答社362。
注2:日本に親会社を持たない企業(n=9)を除く。
出所:ジェトロ・JJC他「在インドネシア日系企業の新型コロナウイルスに関わる緊急アンケート結果」"

今回のアンケートでは、売り上げに加え、今後のキャッシュフローの見通しについての設問も設けられた。この設問には、全体の約6割が「回答日時点から向こう3カ月は現状の売り上げのままでもカバーできる」と回答し、約15%が「コストカットによって、回答日時点から向こう3カ月はカバーできる」とした(表3参照)。ただし、業種別に見ると、非製造業では上記2項目の回答が全体の80%であるのに対し、製造業では66%にとどまる。製造業でキャッシュフローが厳しくなっている様子が見て取れる。

PSBBが本格的に導入された4月上旬から、既に3カ月が経過した。経済活動は徐々に再開している。しかし、感染拡大が止まらず、需要低迷が続く。この現状を考慮すると、今後、多くの企業で資金繰りが苦しくなることが予想される。

表3:今後のキャッシュフロー見通し
項目 回答日時点から向こう3カ月は現状の売上のままでもカバーできる コストカットによって、回答日時点から向こう3カ月まではカバーできる 追加的な資金手当てが必要だが、融資を得ることが困難 追加的な資金手当てが必要であり、現地金融機関から借入予定(借入済) 追加的な資金手当てが必要であり、親子ローンを実施予定(実施済み)
製造業(n=202) 51% 15% 3% 13% 18%
階層レベル2の項目大企業(n=131) 52% 15% 1% 17% 16%
階層レベル2の項目中小企業(n=71) 51% 15% 7% 6% 21%
非製造業(n=151) 70% 10% 1% 4% 16%
階層レベル2の項目大企業(n=113) 70% 9% 0% 4% 17%
階層レベル2の項目中小企業(n=38) 68% 13% 3% 3% 13%
総計(n=353) 59% 13% 2% 9% 17%

注1:調査は6月8~16日に、ジェトロのアジア・オセアニア進出日系企業実態調査対象企業約1700社などを対象に実施。有効回答社362。
注2:日本に親会社を持たない企業(n=9)を除く。
出所:ジェトロ・JJC他「在インドネシア日系企業の新型コロナウイルスに関わる緊急アンケート結果」

現状は苦しいものの、投資戦略には変更なし

最後に、今後の投資戦略を確認する。全体では約7割が現状維持と回答している(表4参照)。さらに、「拡張:新規ビジネス開発など」や「拡張:第三国からインドネシアへの移転」と回答した企業も全体の15%にのぼる。現状維持または拡張と回答した企業(301社)に理由を聞いたところ、188社(62%)が「現地の需要・成長性が期待できる」、145社(48%)が「収益拠点として重要な位置づけにある」と回答した。

一方、製造業の中小企業では約2割が縮小・撤退と回答していることに留意を要する。

表4:今後の投資戦略
項目 現状維持 拡張:新規ビジネス開発など 拡張:第三国からインドネシアへの移転 縮小:インドネシアから日本以外への部分的な移管 縮小:インドネシアから日本拠点への部分的移管 縮小:純粋縮小 撤退:完全撤退
製造業(n=202) 65% 11% 2% 1% 0% 19% 0%
階層レベル2の項目大企業(n=131) 65% 13% 2% 2% 0% 18% 0%
階層レベル2の項目中小企業(n=71) 65% 7% 4% 0% 1% 21% 1%
非製造業(151) 73% 15% 1% 1% 0% 9% 0%
階層レベル2の項目大企業(n=113) 73% 14% 1% 2% 0% 10% 0%
階層レベル2の項目中小企業(n=38) 71% 18% 3% 0% 0% 8% 0%
総計(n=353) 68% 13% 2% 1% 0% 15% 0%

注1:調査は6月8~16日に、ジェトロのアジア・オセアニア進出日系企業実態調査対象企業約1700社などを対象に実施。有効回答社362。
注2:日本に親会社を持たない企業(n=9)を除く。
出所:ジェトロ・JJC他「在インドネシア日系企業の新型コロナウイルスに関わる緊急アンケート結果」


進出日系企業は、引き続き、インドネシアを有望な投資先と見ているようだ。とはいえ、目下の状況をいかに乗り越えるかが喫緊の課題となっている様子もうかがえる。現状の需要低下に伴う売り上げ減少の状況が続けば、より多くの日系企業に深刻な影響が出る。インドネシア政府によるさらなる税制優遇策の実行、需要喚起政策、そして何よりも新型コロナウイルスの早期封じ込めが期待される。

執筆者紹介
ジェトロ・ジャカルタ事務所
上野 渉(うえの わたる)
2012年、ジェトロ入構。総務課(2012年~2014年)、ジェトロ・ムンバイ事務所(2014年~2015年)、企画部企画課海外地域戦略班(ASEAN)(2015年~2019年)を経て現職。ASEANへの各種政策提言活動、インドネシアにおける日系中小企業支援を行う。

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