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日本の地方自治体とベトナム、交流が多様化

2020年3月30日

豊富で安価な労働を求め、多くの日本企業がベトナムへ進出している。また、拡大を続けるベトナム国内市場を狙った進出も近年、増加している。他方、日本に在留するベトナム人の数も急増をみせる。その多くは、技能実習生や留学生として来日しているが、都市圏だけでなく、地方でもベトナム人を目にする機会が増えた。こうした中、自治体では、首長自らがベトナムへ赴き、政府機関などと覚書を締結し、その関係をより強固にしようとする動きもある。また、そうした自治体の動きは、重要性を増すベトナムとの関係の中で、変化し多様化がみられるようになった。

存在感を増す日本の地方における「ベトナム」

2018年末時点における日本の在留ベトナム人の数は、前年比26.1%増の33万835人にのぼり、国籍別で3位となった。在留ベトナム人が最も多い都道府県は東京都で、2位は愛知県、3位は大阪府と続く(表1参照)。上位10位をみると、すべてが、日本の都道府県別の人口の上位12位までにランクインしており、人口が多い都府県に、多くのベトナム人が在留していることが分かる。しかし、この傾向というのは、ベトナム人に限った話ではない。そこで、各都道府県の人口に対する在留ベトナム人の割合でみたものが表2である。最も割合が高いのは群馬県の0.42%で、約200人に1人がベトナム人となる。2位は愛知県、3位は広島県が続く。

表1:日本に在留するベトナム人が多い都道府県トップ10
順位 都道府県
1 東京都 36,914
2 愛知県 31,614
3 大阪府 25,641
4 埼玉県 22,912
5 神奈川県 20,225
6 兵庫県 18,314
7 千葉県 18,267
8 福岡県 14,712
9 広島県 11,127
10 静岡県 9,305

出所:法務省「在留外国人統計(2018年12月末)」よりジェトロ作成

表2:各県人口に対する在留ベトナム人の割合が高い都道府県トップ10
順位 都道府県 割合(%)
1 群馬県 0.424
2 愛知県 0.419
3 広島県 0.395
4 岡山県 0.392
5 富山県 0.389
6 岐阜県 0.370
7 三重県 0.338
8 兵庫県 0.334
9 埼玉県 0.313
10 福井県 0.299

出所:法務省「在留外国人統計(2018年12月末)」、総務省「人口推計(2018年10月1日現在)」よりジェトロ作成

地方自治体の覚書締結先および締結内容に変化

2000年代半ばごろから、日本企業のベトナム進出を受けて、日本の地方自治体が、ベトナムの中央政府機関や地方政府などと覚書を結ぶケースがみられるが、近年、その締結相手や内容に変化がみられるようになった。2000年代半ばから2010年代半ばにかけては、増加する日本企業のベトナム進出を支援するために、ベトナム計画投資省などと、経済交流に関する覚書を締結するケースが目立った(表3参照)。例えば、愛知県が2008年に、計画投資省と経済交流に関する覚書を締結したほか、神奈川県も2014年に、同省と覚書を締結している。これらの覚書締結に基づき、愛知県は、進出企業支援窓口として、同省外国投資庁内にサポートデスクを設置した。また、神奈川県は、ベトナムの日系工業団地と連携し、当工業団地に進出する県内企業に対し、賃料や管理費などを減免するなどの支援を行う。

しかし、2017年ごろから、その締結内容に変化がみられるようになった。人口に対する在留ベトナム人の割合が1位の群馬県は2017年2月、労働・傷病兵・社会問題省と技能・技術者の人材育成および活用に関する覚書を締結した。また、2012年に計画投資省と覚書を既に締結している埼玉県も、2018年10月、新たに労働・傷病兵・社会問題省と人材の活用に関する覚書を締結するなど、近年では、現地政府機関と人材分野に関する覚書を結ぶケースが増えている。こうした変化の背景には、自治体の(1)日本国内で急増する在留ベトナム人の受け入れ体制を構築する必要があること、(2)少子高齢化による人口減少に伴う人手不足を補うため、そのベトナム人を有効に活用したい、という狙いがあると推察される。さらに、横浜市は2019年4月、人材の受け入れに関しての覚書を、その供給元である現地大学と締結を交わしており、現地機関との連携体制も様々な形がみられるようになった。

そのほかでは、観光分野での連携もみられている。日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2019年のベトナムからの訪日客数は、前年比27.3%増の49万5,051人となった。ベトナム人にとって、観光地としての日本の魅力が増す中、各自治体は、現地機関とも連携協力しながら、ベトナム人を自治体に呼び込みたいと考えている。最近では、2020年1月にベトナム中部のダナンで開催された「日越協力覚書署名・交換式」では、北海道がベトナム観光総局と観光分野の覚書を締結している。

表3:地方自治体と現地機関との覚書締結事例
締結時期 日本側 締結先 内容
2006年8月 岡山県 計画投資省外国投資庁 経済交流
2008年3月 愛知県 計画投資省 経済交流
2012年8月 埼玉県 計画投資省 経済交流
2014年3月 茨城県 農業農村開発省 農業協力の促進
2014年7月 神奈川県 計画投資省 経済交流
2016年2月 群馬県 計画投資省 経済交流
2016年12月 富山県 計画投資省 経済交流
2017年2月 群馬県 労働・傷病兵・社会問題省 技能・技術者の人材育成および活用における連携
2018年7月 横浜市 ドンア大学ほか4校 介護人材の受け入れ促進
2018年10月 埼玉県 労働・傷病兵・社会問題省 技能・技術者の活用における連携
2019年3月 千葉県 労働・傷病兵・社会問題省 人材の育成および受け入れ
2019年4月 横浜市 ハイフォン医科薬科大学 介護人材の受け入れ促進
2019年5月 北九州市 ディープシー工業団地 企業進出支援
2019年7月 茨城県 バンブーエアウェイズ 交流促進および観光発展のための相互支援
2019年8月 長野県 労働・傷病兵・社会問題省 観光・介護の分野での人材協力
2019年11月 神奈川県 労働・傷病兵・社会問題省 人材育成
2019年11月 茨城県 労働・傷病兵・社会問題省 人材の送り出しおよび受け入れ
2020年1月 北海道 観光総局 観光分野の協力
2020年1月 紀の川市(和歌山県) クアンナム省 友好協力関係の構築

出所:各自治体ウェブサイト等を基にジェトロ作成


2020年1月にベトナム・ダナンで行われた覚書署名・交換式の様子
(ジェトロ撮影)

多様化する地方自治体の支援

ベトナム人材の活用に関しては、現地機関との覚書締結にとどまらず、在留ベトナム人および受け入れ企業、双方への具体的な支援も進んでいる。人口に対する在留ベトナム人の割合が5位の富山県は2019年6月、「富山県外国人ワンストップサービス相談センター」を開設し、ベトナム語の相談員を配置した。在留資格や子供の教育などに関する相談などに一元的に対応することで、ベースとなる生活環境の整備を進めるという。また、2019年度から、ベトナムのトップ理系大学で学ぶ学生たちを県内企業での就職につなげるため、現地での選考から県内での就業までを支援するなど、高度外国人材を活用しようという動きもみられる。英国の「タイムズ」紙が発行する高等教育情報誌「ザ・タイムズ・ハイアー・エデュケーション」が発表した「世界大学ランキング」2020年版に、ベトナムの大学が初めて選出されるなど、ベトナムの教育レベルは徐々に上がっており、そういった現地の優秀な人材を活用しようというものだ。

企業のベトナム進出支援など、経済面を中心にはじめられてきた日本の自治体とベトナムとの関係性は今、観光や人材の交流・活用にまで多様化してきた。今後は、富山県の事例にみられるように、両者の関係性の緊密化が促される施策に期待がかかる。

執筆者紹介
ジェトロ海外調査部アジア大洋州課
上田 弘大(うえだ こうだい)
2016年、富山県庁入庁。2019年からジェトロ海外調査部アジア大洋州課勤務(出向)。

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