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新型コロナウイルスの経済的影響、政府による経済支援への期待高まる(ドイツ、中国、イタリア)

2020年3月10日

世界規模で新型コロナウイルスの感染が拡大する中、ドイツでも感染者が急増している。連邦保健省関連で疾病監視・予防を専門とするロベルト・コッホ研究所(RKI)の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、3月6日午前7時現在の感染者は534人(注1)で、感染地域も多くの州に広がっており、警戒感が高まっている。経済への影響も予測される中、連邦政府による経済支援への期待が高まっている。

懸念される経済への影響

2016年からドイツの最大の貿易相手となっている中国での感染拡大と経済動向は、ドイツ経済への影響が最も心配される要素の1つだ(表1参照)。ドイツ経済研究所(IWケルン)が2月25日に発表したレポート「新型コロナウイルスとドイツ経済外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」によると、新型コロナウイルスにより、中国経済の少なくとも2020年第1四半期(1~3月)の成長は著しく阻害されるだろうとした。需要面では、中国は2018年のドイツの輸出の約7%を占め、米国とフランスに次いで重要な輸出先であることを示した上で、中国における需要の落ち込みがドイツ経済に大きな影響を与える可能性を指摘した。また、ドイツ商工会議所連合会(DIHK)も輸出先としての中国の重要性と影響に言及(2月27日)、新型コロナウイルスの影響で中国の経済成長が約1ポイント減少することにより、ユーロ圏の成長率も約0.1ポイント減少する可能性があると指摘し、特に輸出分野に強いドイツ企業への影響が大きいとの見方を示した。

表1:2019年のドイツの貿易相手国と貿易額(単位:百万ユーロ)
国名 貿易総額 輸出 輸入
中国 205,678 96,013 109,664
オランダ 190,403 91,708 98,695
米国 190,089 118,669 71,420
フランス 172,888 106,810 66,078
イタリア 125,224 68,119 57,105
ポーランド 123,446 65,830 57,617
英国 117,039 78,703 38,336
オーストリア 109,955 65,934 44,021
スイス 102,657 56,354 46,303
チェコ 92,721 44,863 47,858

注:百万ユーロ以下の単位を四捨五入。貿易総額は、輸出と輸入の合計だが、端数処理のため表上では必ずしも一致しない。
出所:連邦統計局

サプライチェーンの観点では、工業中間財の輸入の10%弱を中国が占めていることから、中国での生産や出荷の停滞により、ドイツ国内の生産にも影響が生じるとドイツ経済研究所は予想する。しかし、付加価値ベースで計測すると、そのシェアはやや低下して依存率は米国と同程度とし、EU域内での調達のシェアに比べてはるかに小さいとした。しかし、データ上の分析によると、製薬産業や電子機器産業で大きな中国依存傾向がみられているとしている。

中国子会社からの配当額の減少などによる利益の減少、機会損失などの影響も懸念されている。在中国ドイツ商工会議所と中国EU商会が共同で実施した在中国欧州企業へのアンケート調査PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(723KB)によると(2月27日発表。調査期間:2月18~21日、577社回答)。在中国欧州企業の89%が新型コロナウイルスにより「大きな影響」または「中程度の影響」があると回答した(表2参照)。

表2:新型コロナウイルス拡大による影響(回答数576社)
影響度合い 回答割合
大きな影響があった 59%
中程度の影響があった 30%
多少の影響がった 7%
影響を判断するのは時期尚早 4%
影響なし 0%

出所:在中国ドイツ商工会議所、中国EU商会

具体的な影響としては、「製品やサービスの需要の減少」(56%)や「物流の混乱による納期の遅れ」(47%)、「人材不足」(47%)、「部材不足による生産の遅れ」(45%)などが挙がった(表3参照)。また、新型コロナウイルス対策により上半期の売り上げが「10%以上減少する」と回答した企業は48%、2020年の自社のビジネス上の目標については、46%の企業が「下方修正をする」と回答した。

表3:新型コロナウイルス感染拡大に伴う中国における事業への影響(回答数574社、複数回答可)
具体的な影響 回答割合
製品やサービスの需要の減少 56%
物流の混乱による納期の遅れ 47%
人材不足 47%
部材不足による生産の遅れ 45%
先行き不透明感とそれかかる事業や投資の決定先送り 44%
資金繰り上の課題 36%
人材管理のためのコストの増大 30%
製品やサービスの需要増大への対応 7%
従業員の解雇・一時的就業停止 4%

出所:在中国ドイツ商工会議所、中国EU商会

DIHKがドイツ企業の本社側に対して実施したアンケート調査(3月6日発表)では、約半数の企業が2020年の売り上げは新型コロナウイルスの影響により減少すると回答、4分の1以上が10%以上の減少を予測している。

国内の事業への影響が既に出始めている。内務省と保健省主導の危機管理チームは大規模イベント・見本市の開催に関し、RKIによるリスク評価を考慮した上で、中止を検討するよう勧告した。これを受け、3月4~8日にベルリンで開催予定だった観光産業としては世界最大規模の見本市「ITB」や、3月12日~15日にライプチヒで予定していた「ライプチヒ・ブック・フェア」が中止になったほか、デュッセルドルフで3月15~17日に開催予定だった国際ワイン・アルコール飲料展「プロワイン(ProWein)」の延期(注2)が決定するなど、大型見本市の中止・延期が相次いでいる(2020年03月05日付ビジネス短信参照)。さらに、ドイツを代表する総合産業見本市「ハノーバーメッセ」は4月20~25日だった会期を7月13~17日に延期することが3月4日に発表された。

また、DIHKは中国政府による大規模な旅行制限によってドイツの観光産業にも大きな影響が出ると指摘。ドイツ観光協会によると、中国の旅券保有者による2018年のドイツ国内のホテルや観光関連施設への宿泊数は延べ約300万泊で、中国人観光客によるドイツの観光関連売上は年間60億ユーロにのぼったという。前述のDIHKの調査では、見本市関連の事業者、観光業や宿泊外食産業では約70%が10%以上の売り上げ低下を予測している。

イタリアでの急速な感染拡大にも警戒感

DIHKで海外経済部門を統括するフォルカー・トライヤー氏は、新型コロナウイルスが急速に広まっているイタリアについても、ドイツの輸出経済の不安要素になっていると指摘している。ドイツ・イタリア間の貿易額は1,250億ユーロ以上であり、ドイツにとって5番目に重要な貿易相手だ。特に北部ロンバルディア州との貿易額(443億ユーロ)は日本との貿易額(442億ユーロ)に匹敵する規模。従業員の安全対策のため企業活動が制限される中、トライヤー氏は「サプライチェーンが断絶される場合、生産停止に追い込まれかねない」として警戒感を強めている。在イタリア・ドイツ商工会議所が在イタリア・ドイツ企業に実施したアンケート(3月5日発表。調査日:3月2~4日)によると、回答企業の34.1%が物流に障害が出ているとしたほか、33.0%が需要縮小、26.4%が人材不足を課題として挙げている。

強まる政府支援への期待

ペーター・アルトマイヤー経済エネルギー相は2月27日、新型コロナウイルスの影響を受ける企業に対し、輸出信用保証の提供をはじめとした既存の企業支援政策の活用のほか、減税策などを含めた景気刺激策の導入を検討していると発表した。翌28日から事業者向けの相談電話(ホットライン)を設置している。

ドイツ機械工業連盟(VDMA)のティーロ・ブロートマン事務局長は2月28日に声明を発表(3月3日に更新)し、「既に減速している世界景気などの影響により、ドイツの産業が大きい負担を強いられる中、新型コロナウイルスが企業にとってさらなる負担になっており、この負担がどのくらいの大きさとなるのか見通せない状況だ」と述べ、政府による支援の検討を歓迎するとともに、ドイツ産業の国際競争力を「コロナ危機」後にも確保するため、融資などを通じた企業負担の大幅な軽減を求めた。

ドイツ産業連盟(BDI)のヨアヒム・ラング事務局長もまた、2月27日に「新型コロナウイルスの影響が世界経済と輸出依存度が高いドイツ経済に明瞭に見て取れる」との声明を発表した。特に最大の貿易相手である中国での感染拡大により、生産活動や調達活動に大きく影響を及ぼし、景気への顕著なマイナス影響が差し迫っているとし、「政府は経済エネルギー省が発表した景気回復のための経済政策支援を推進するべき」と強調している。


注1:
掲載時(3月10日)時点で、感染者は1,139人まで増加している。
注2:
新会期は2021年3月21~23日で今回は事実上の中止となる。
執筆者紹介
ジェトロ・デュッセルドルフ事務所
ベアナデット・マイヤー
2017年よりジェトロ・デュッセルドルフ事務所で調査および農水事業を担当。
執筆者紹介
ジェトロ・デュッセルドルフ事務所 ディレクター
森 悠介(もり ゆうすけ)
2011年、ジェトロ入構。対日投資部対日投資課(2011年4月~2012年8月)、対日投資部誘致プロモーション課(2012年9月~2015年11月)を経て現職。

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