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好調なバングラデシュ経済の今後、民間シンクタンクに聞く
輸出拡大に向けた課題は輸入関税率の高さ

2020年3月30日

バングラデシュ経済は、2018/2019年度(2018年7月~2019年6月)のGDP成長率が8.15%で過去最高値が見込まれるなど、勢いづいている。この流れの中、政府は成長に向けた目標を打ち立てているが、持続的な発展のためには産業の多角化、貿易円滑化などの課題も多い。バングラデシュ経済や政策を専門とする民間シンクタンクのバングラデシュ政策研究所(PRI:Policy Research Institute of Bangladesh)のザイディ・サッタル所長とアーサン・モンスール・エグゼクティブ・ダイレクターに、経済の見通しや課題などを聞いた(3月9日)。

質問:
今後のバングラデシュ経済の見通しは。
答え:
バングラデシュ政府は、2019/2020年度(2019年7月~2020年6月)の名目GDPを3,000億ドル超、成長率は8.2%と2018/2019年度に続く高成長を見通している。これは世界の名目GDPで39位、購買力平価では29位に位置する。現在の1人当たりGDPは1,900ドルだが、2019/2020年度の終わりには2,000ドルを超える見込みだ。直近の財政運営は良好で、マクロ経済は順調なので、新型コロナウイルス感染拡大の影響による経済の減退など、多少のダメージを吸収するクッションがある。一方、インフラ事業や民間投資は不十分であり、国際収支や輸出も改善されるべきだ。
図:バングラデシュのGDP成長率推移

注:バングラデシュの年度は7月~翌6月。「(p)」は暫定値。
出所:バングラデシュ統計局

政府は、バングラデシュの成長に向けた2021~2041年の20年間の長期計画を打ち出している。これは、2031年までに上位中所得国となり、2041年には高所得国に移行することを目指すものだ。バングラデシュは、2024年に後発開発途上国(LDC)を卒業する見込みだが、LDCの特別特恵措置(LDC特恵)も停止するため、日本などに対し、無税での貿易アクセスを要望している。EUとは3年延長の見込みが立っており、そのほか、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、インドなどとも交渉の必要がある。
質問:
LDC特恵の交渉に並行し、両国自由貿易協定(FTA)締結を目指して、スタディ・グループを組織するなどが考えられるが、これをどう見るか。
答え:
バングラデシュは現在、ネパール、ブータンとのFTA締結に向けて動いており、中国との間でも検討中だ。日本との締結検討は、バングラデシュにとって歓迎すべきことだろう。最も重要なのは、現在バングラデシュが高く設定している輸入関税を引き下げられるかだ。また、貿易手続きの簡素化も重要だ。日本からは、自動車や電子製品などの輸出に魅力があるだろう。バングラデシュとしては、日本からの輸入品にかかる税収の減少に留意が必要だ。
質問:
歳入増も重要な観点かと思うが、歳入の7割は輸入関税、付加価値税(VAT)などの間接税による収入と聞く。個人所得税や法人所得税などの直接税での収入を増加させる必要があるのではないか。
答え:
間接税収、直接税収ともにバランスをとりながら増加させる必要がある。歳入庁(NBR)としては、 直接税収は増加傾向だが、より拡大させるべきとの見解だ。一方、NBRとしては、EUのように、今後もVATや関税などによる間接税の税収も増やす必要性があると考えている。バングラデシュはEUと同様に、間接税収が構造的に多い背景もある。
質問:
アジア開発銀行(ADB)から銀行分野の改革の必要性が訴えられているが、この進捗は。
答え:
政府は問題を認識しているものの、まだ財政赤字を拡大させる余地があり、具体的な動きに入るほど深刻化していないのが現状だ。

PRIのサッタル所長(左)とモンスール・エグゼクティブ・ダイレクター(右)
(ジェトロ撮影)
質問:
産業政策については。
答え:
バングラデシュの産業構造は、農業が3割、製造業、建設、電力、エネルギーなどの工業が3割、残りがサービス業だ。しかしサービス業については、銀行、教育、卸売りなどを除けば、インフォーマルセクターがその多くを占めている。2018/2019年度の製造業の成長率は約14%と高かったが、サービス業は6.5~7%程度で、改善の余地がある。
今後の経済成長のためには、輸出の拡大が欠かせない。現在は縫製業を中心に順調に推移しているが、直近6.5%程度の成長を10~12%に拡大していく必要がある。2001~2015年の輸出は11%程度の成長があったが、その後はそれほど大きな成長はしていない。
質問:
輸出拡大に向け、主力の既製服など縫製関連品以外に、競争力のある製品は。
答え:
プラスチック、陶器、靴、加工食品など様々な製品が挙げられる。輸出額が100万ドルを超える品目も多く、多様な業種で輸出業者はたくさん存在するが、多くは零細企業のため、原料などを海外から輸入してくると高関税がかかり、製品の価格競争力が無くなってしまう。 そのため、輸出を拡大させるための大きな課題は、輸入関税率の高さといえる。低所得国(LIC)での平均は7.2%程度だが、バングラデシュは30.5%であり、これを平均値くらいには下げる必要がある。物流インフラの改善や輸出志向型の政策なども求められる。
質問:
世界各地での新型コロナウイルス感染拡大により、バングラデシュでも中国からの調達品の入手遅れによる影響などが出ているが、経済・産業への影響は。
答え:
バングラデシュの経済・産業には、好影響がもたらされる部分もある。バングラデシュの主力産業・縫製業の原料となる糸・生地などの6割は国内調達であるため、こういった外的要因の影響を受けない。日本企業から、中国からの調達が難しいためバングラデシュに拠点を移管しようとする関心も聞かれる。バングラデシュ縫製品製造業・輸出業協会 (BGMEA)は、縫製業における外資参入を歓迎している。日本からの投資は信頼性が高く、輸出志向型だ。ベトナムは輸出産業の9割を外資が担っているが、バングラデシュはその割合がまだ低く、これを少なくとも25%程度に拡大していきたい。
輸出拡大に関しては、商業省は輸入関税率引き下げなどを通し、輸出拡大を促進する方向性だが、NBRは輸入関税による税収増に注力しているため、政府が一枚岩ではない。経済成長のためには、各省庁が連携する必要がある。
質問:
現在、バングラデシュには約300の日系企業が集積するが、今後の日本からの投資に求めるものは。
答え:
インフラ、電子、エンジニアリングなど、多くの分野で参入が見込める。縫製業の高付加価値化、自動車修理なども貢献度が高いだろう。2輪車向け市場は大きく、ホンダも製造拠点を設けている。
質問:
インドなど、周辺国とのコネクティビティ強化については、どう見ているか。
答え:
関連事業については、インドやADBから大きな支援を受けている。インドの北東部、東部やミャンマーなどとの間で複数のインフラ事業が進められており、可能性は大きい。現在、インドからの輸入の半分は道路経由でバングラデシュに入ってきており、効率が悪い状況だ。輸送モードとしての鉄道の活用にも期待が高い。同時に港の整備も進められるべきだ。電力分野も有望で、まだ広まってはいないが、ブータンやネパールと系統連系を活用した水力発電での関係強化にも可能性がある。一方、インフラ整備などのハード面だけでなく、貿易・通関制度などソフト面の調和を図り、運用を徹底させることやデジタル化の推進も重要だ。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部アジア大洋州課 リサーチ・マネージャー
古屋 礼子(ふるや れいこ)
2009年、ジェトロ入構。在外企業支援課、ジェトロ・ニューデリー事務所実務研修(2012~2013年)、海外調査部アジア大洋州課、 ジェトロ・ニューデリー事務所(2015~2019年)を経て、2019年11月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ・ダッカ事務所 所長
安藤 裕二(あんどう ゆうじ)
2008年、ジェトロ入構。アジア経済研究所研究企画部、ジェトロ・ダッカ事務所(実務研修生)、生活文化・サービス産業部、ジェトロ浜松などを経て、2019年3月から現職。著書に「知られざる工業国バングラデシュ」。
執筆者紹介
ジェトロ・ダッカ事務所
山田 和則(やまだ かずのり)
2011年、ジェトロ入構。総務部広報課(2011~14年)、ジェトロ岐阜(2014~16年)、サービス産業部サービス産業課(2016~19年)、お客様サポート部海外展開支援課を経て、2019年9月から現職。

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