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新型コロナ禍のラゴス、生活や経済の現状と今後の展望(ナイジェリア)

2020年6月8日

ナイジェリア最大の経済都市ラゴスでは、夜間外出禁止令や空港閉鎖で新型コロナウイルスの感染拡大防止を図っている。しかし、感染増加は依然として止まらない。ナイジェリア疾病管理センター(NCDC)によると、6月2日時点での感染者数は5,135人と、全国の48.5%を占めている。この状況下でラゴスの生活環境や経済活動にどのような影響が出ているのか。ナイジェリアに17年間在住し、約10年にわたる日系商社勤務の後、2019年に独立した、Hidemi Consultingのオビオラ秀美最高経営責任者(CEO)に聞いた(6月2日)。

質問:
現在のラゴスの物価動向は。
答え:
総じて、食料品が値上がりしている。例えば、主食のガリ(キャッサバの粗びき粉)は2キロ当たりで新型コロナ禍前の500ナイラ(約150円、1ナイラ=約0.3円)だったのが、800ナイラになった。インドミー(国民食とも言えるインスタントラーメン)も、青空市場価格で40袋当たり2,000ナイラだったが、今では2,800ナイラだ。物流停滞の影響もある。食料品に限らずほぼ全ての品目について、ラゴスより地方都市で値上がり幅が大きい。
質問:
街の様子や治安は。
答え:
これまでは、午後8時から翌日午前6時までの夜間外出禁止令が取られてきた。このため、限られた時間帯に人の移動が集中し、渋滞が激しかった。大手企業は人員の密度を低くするため、テレワークで出勤日数を減らしている。市民は外出時のマスク着用が義務付けられているが、高温多湿なので罰金を取られるような場面を除いては着用しない人も多い。6月2日から外出禁止時間帯が午後10時~翌日午前4時までに緩和されたことで、交通量は分散するかもしれない。もっとも、感染がますます広がってしまう可能性もある。
外国企業が集中するビクトリア・アイランド、イコイ地区の治安は、比較的落ち着いている。ロックダウン中にギャング団による強盗犯罪が多発していたメインランドは、現在は幾分落ち着いているものの、引き続き警戒が必要だ。
質問:
銀行の様子は。
答え:
現在、銀行の稼働率は通常の約半分。全ての支店が営業しているわけではなく、地域ごとに営業日をローテーションしている。午後4時に窓口が閉まるのが通常だが、現在は午後3時に閉店する。事前にメールで支店の営業日を顧客へ通知する銀行もある。利用者数に比べて必要な営業店舗数が不足している。加えて、ソーシャルディスタンスを確保するため番号札による入場制限を課すため、銀行には長蛇の列ができている。銀行は、テントなどを設置して炎天下で待機する利用者のいら立ちを抑えるのに必死だ。検温やマスク着用確認、手の消毒という手順を経て入店が許可される。銀行のデフォルトを懸念した取り付け騒ぎは、現時点では発生していない。
質問:
通関手続は。
答え:
コンテナ港湾の施設では、感染拡大防止のため、関係者以外の出入りを大幅に制限している。とはいえ、辛うじて通関は処理されている。現時点では午後3時までの短縮営業だ。
質問:
空港の出入国管理手続は。
答え:
ラゴス国際空港の旅客便は6月21日から国内線を再開すると、政府が6月1日に発表した。国際線の再開には触れていない。空港施設では、ソーシャルディスタンスを確保した運営体制のシミュレーションが始まっているようだ。ナイジェリア出入国管理局による査証の発行業務は、まだ再開していない。
質問:
自由貿易区工業団地の開発に影響は出るか。
答え:
ラゴス自由貿易区にあるLFZ工業団地(2020年2月27日付ビジネス短信参照)や、隣接するAlaro City工業団地では、開発企業のキャッシュフローは十分で、継続して建設工事を進めている。もっとも、新型コロナ禍が心理的なネガティブ要因となって入居企業の誘致に影響が出るかもしれない。これが開発企業最大の危惧だ。
質問:
企業活動への影響は。
答え:
地場大手メーカーや商社は、新型コロナ禍克服のCSR活動に積極的に取り組んでいる。地場農業開発大手のOlam Nigeriaは地方の提携農家に対し、英語ではなく地方言語で感染防止に関する正しい情報を提供している。自動車販売大手のCoscharis Group(コスチャリス)はコメ3,000袋をラゴスの貧困層に寄付。地場大手銀行のGuaranty Trust bank Nigeriaも、患者を収容する100床のケアセンターを提供した。3月に日本政府がNCDCに20億円を寄付したことは、ナイジェリアの多くの人々が知っており感謝している。地場系大手に雇用されている外国人駐在員は、ラゴスにとどまってオペレーションを続けている。
高級ホテルやレストランは、デリバリーやテークアウトに注力している。スーパーマーケットチェーンのSPARは夜間外出禁止令の影響で通常より早く閉店しているが、デリバリー事業に新規参入し、新しいチャネルの開拓に成功している。
質問:
新型コロナウイルスをめぐる展望は。
答え:
ナイジェリアでのまん延はこれからが本番だろう。ラゴス州では57カ所ある一時医療センターで検査できることになっているが、検査キットが行き渡っていない。富裕者や特定の人脈がある人以外は、キットを申請しても入手困難だ。実際の感染者数は、公表数より相当多いだろう。ラゴス州保健長官は、州内感染者数が7月ごろに約9万〜12万人に達すると予測している。感染拡大は数年間続くだろうし、日本からナイジェリアに再び安全に渡航できるのは早くても2021年ではないか。外国人が多く住む地域の私立病院では、First Cardiology Consultantsが率先して検査サービスを提供している(要予約)。新型コロナウイルス検査キットを医療施設が導入したい場合は、シーメンス(ドイツ)製で世界保健機構(WHO)承認済みの検査キットがナイジェリアの大手医療機器ディストリビューターBiostadsを通じて輸入できる。自分は英国製乳がん簡易検査キットのナイジェリア展開を手掛けた経験もあり、検査キット導入に関心あれば問い合わせてほしい。
感染以外にも、安全面での懸念がある。中国に滞在するアフリカ人が感染の疑いを理由に中国の公安から戸外に締め出された様子はSNSでかなり拡散している。これが、アジアに対するヘイト感情をもたらしている。外見上アジア人の国籍は見分けられないため、日本人でもハラスメントを受ける可能性がある。
質問:
ナイジェリア経済の展望とマーケット攻略のヒントは。
答え:
2億人という人口を抱えながらも、ナイジェリア経済は主に少数の超富裕層が動かしていると言われる。これら富裕層の経済基盤が崩れることでもない限り、国として財政破綻を起こす可能性は低いのではないか。
ナイジェリアには人口が多いことに加え、小売市場の95%が青空市場だという特徴がある(Euromonitor International 2019)。大規模小売店のシェアはほんの5%程度に過ぎない。付加価値税(VAT)も所得税も徴収不可能な小規模な個人商店が、無数にひしめいている。多くの国民は周囲100人単位のコミュニティーの中だけで信頼関係を築き、生活が完結する。自社製品を国全体でトップシェアに育て上げようと思ったら、この無数のコミュニティーの懐に入らなければならない。足で稼いでもいいし、バーチャルコミュニケーションで入り込んでもいいが、いずれにしても膨大な人的リソースが必要で、大企業でも困難だ。しかし、この環境を逆手にとって考えれば、中小企業の製品ロットやリソースでも、身の丈にあったビジネスが十分できるということにもなる。知り合いをたどって得た人脈で、ライバル企業が見つけるまでに時間がかかりそうなコミュニティーを見つけて食い込めば、市場を荒らされずに済むメリットを受けることができる。TV会議システムの発達によって一層、コミュニティーに食い込む人間力がビジネスの成否を分けるポイントになってきた。
執筆者紹介
ジェトロ・ラゴス事務所
谷波 拓真(たになみ たくま)
2013年、ジェトロ入構。知的財産課、ジェトロ金沢、ジェトロ・アジア経済研究所を経て、2019年12月から現職。

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