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食品廃棄物削減に向けた政策とスタートアップの動向

2020年1月15日

2015年9月に採択された国連の持続可能な開発目標(SDGs、注1)のターゲット12.3では、2030年までに小売りと消費レベルでの1人当たり食品廃棄物を半減させ、食品の製造と供給における食品ロスを削減するという目標を掲げている。EUとEU加盟国ではこの達成に向けた先進的な政策を進めている。EUは専門プラットフォームを立ち上げ、フランスは罰金付きの規制を導入、イタリアでは法律で寄付を簡素化するとともにインセンティブを提供、英国では実証スキームの実施を開始中だ。本稿では、フランスで、規制の整備に伴ってスタートアップが示唆に富むサービスを発展させている状況も紹介する。

EUは、専門プラットフォームを立ち上げ成功事例を共有

EUの食品廃棄物削減プロジェクト「フュージョンズ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の2016年の推計PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2.4MB)によると、EUの食品廃棄物の7割が家庭や食品サービス、小売り部門で発生し、残る3割が生産と加工部門で生じている。EUはSDGsのターゲット12.3の達成のため、国際機関やEU機関、EU加盟国、公募で選ばれた民間組織から成る「食品ロスと食品廃棄物に関するEUのプラットフォーム(FLW)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を2016年に設立。2019年12月11日には、食品のサプライチェーンの各段階で官民のプレーヤーに求められる行動に言及する「食品ロスと食品廃棄物に関する行動についての勧告PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(3.5MB)」を公表した。

フランスは、罰金付き規制を導入済み

環境エネルギー管理庁(ADEME)の2016年の報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、フランスの年間の食品ロス・食品廃棄物は1,000万トン、1,600億ユーロ相当と推計される。フランス政府は2013年、製造者や流通事業者、自治体を含む関連セクターとともに、「食品廃棄物対策のための国家協約」を締結し、その中で、2013年から2025年までに食品廃棄物を半減(年間平均で5%削減)させる目標を設定している。

2016年2月13日施行の「食品廃棄物対策に関する法律(通称ガロ法)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」は、400平方メートル以上の食料品店に対し、消費可能な売れ残り食品を寄付するための無料配送方法を明示した契約を1つ以上の団体に2017年2月10日までに提案することを義務付けた。400平方メートル以上の食料品店を開業、あるいはそれ以上に拡張した場合はその時点から1年以内に上記契約を1つ以上の団体に提案しなければならない。また、流通業者は消費可能な売れ残り商品を消費に適さない状態にすることを禁止され、違反の場合は3,750ユーロの罰金が科せられることとなった。さらに、同法により、環境法の中に食品廃棄物削減のための行動の優先順位(無駄の防止、寄付または加工による売れ残り食品の使用、動物飼料への活用、農業用堆肥もしくは嫌気性消化によるエネルギー回収のための活用)が追加された。

2019年10月22日には、「食品廃棄物対策に関するオルドナンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(注2)が施行された。同法は、2016年ガロ法が公的部門の外食産業に課している食品廃棄物の対策をする義務を民間外食産業へも拡大する措置について、予備診断を経て公布日(2019年10月22日)から1年後に有効にするとした。さらに、ガロ法が流通業者に禁じている消費可能な売れ残り商品を消費に適さない状態にすることの規制と罰金の対象を外食産業と農業食品部門の全事業者へ拡大。また、学校や病院、企業などに1日3,000食以上を提供する事業者と、年5,000万ユーロ以上を売り上げる食品加工部門の事業者は、消費可能な売れ残り食品を寄付する契約を提案する義務を事業活動開始もしくは所定の条件(年5,000万ユーロ以上を売り上げなど)に達してから1年以内に負うとともに、廃棄物対策のための約束を2020年1月1日以降に公表する必要があると定めた。

イタリアは、法律で寄付を簡素化しインセンティブを提供

イタリアでは、2019年5月に「食品ロスと食品廃棄物に関するEUのプラットフォーム(FLW)」で採択された文書「余剰食品の再分配:加盟諸国の実施例PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.3MB)」などによると、「善きサマリア人法」(注3)と称される社会福祉を目的とした食品の流通に関する規則によって、余剰食品を寄付した農業食品事業者が製造者責任を負うのは最終消費者とみなされる寄付対象の非営利団体に限られ、団体から配布を受ける最終受益者に対する責任は重大な過失がある場合を除き免除されてきた。すなわち、EUのPL指令85/374/EECと国内の不法行為法により定められた製造者責任規則は、寄付された食品には適用されないという、寄付しやすい環境があった。

環境と社会的観点から余剰食品の寄付を一層促進しようとしたのが、2016年9月施行の「社会的連帯目的および廃棄物の制限のための食品および医薬品の寄付および配布に関する法律外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で、寄付に関する規則が簡素化された。同法はまた、食品事業者に会計年度ごとに課している廃棄物税の税率を、寄付した場合には削減するという財政的インセンティブを設けた。2018年度の廃棄物税の削減率は20%だった。また、賞味期限と消費期限の日付が異なることを明確にし、賞味期限を超える場合でも包装が完全に保たれていれば、寄付または販売できることを明記した。

英国は、1,500万ポンド規模の実証スキームの実施を開始

英国政府によると、英国の年間の食品ロス・食品廃棄物は1,020万トン、200億ポンド(約2兆8,600億円、1ポンド=約143円)相当に上る。政府は食品廃棄物の削減に当たり、規制の導入ではなく、環境・食糧・農村地域省やEUから財政支援を得て慈善活動を行う企業WRAP (the Waste and Resources Action Programme)が主導する産業界の自発的な取り組みを推進してきた。2005年には、飲料・食品の生産と消費をより持続可能にするための行動「コートルードの合意」を産業界が自主的に開始。その第4段階の「コートルード2025」に署名した食品関連産業事業者らは2017年1月、食品廃棄物を2025年までに20%削減するため、廃棄せず寄付などによって再分配する余剰食品の量を2020年までに2015年ベースの2倍とすることで合意した。

英国政府は2018年10月、食品廃棄物に取り組むため、2019~2020年に1,500万ポンドを投じて実証スキームを実施することを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。2019年5月には同スキームから初めて、4つの再配分事業者へ総額400万ポンドの出資を決定したことを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。また同月、SDGsに沿って、2030年までに食品廃棄物を半減させる目標を含む誓約に、マイケル・ゴーブ環境・食糧・農村地域相(当時)がネスレ、小売り大手テスコら食品業界の主要プレイヤーらとともに署名外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますするなど、産業界を巻き込んだ政府主導の取り組みの進展が著しい。

ソリューションを提供するフランスのスタートアップ

フランスでは規制の整備に並行して、ソリューションを提供するスタートアップが隆盛している。例えば、大量の食品廃棄物と隣り合わせの大手スーパーチェーンなどを顧客に抱えるスタートアップがある。エコスフェール外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは2012年以来、コンサルティング、従業員向けトレーニング、デジタルアプリケーションの提供を通じて、特に、団体への寄付による廃棄物(食品に限らない)の削減によって、顧客企業のCSR(社会的責任)の遂行を支えている。また、2013年設立のコメルソ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、品質保持期限が短い商品の販売を促進するためのモバイル機器を活用した店舗向けソリューションや、寄付を最適化しトレーサビリティ-とセキュリティーが担保された輸送サービスなどを提供している。

外食産業向けには、2014年設立のラブ・ユア・ウェイスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが飲食店で出る食品廃棄物をバイオガスへ転換する支援を従業員教育も含めて行っている。飲食店と消費者を橋渡しするモバイルアプリケーションも普及している。デンマーク発祥でフランスでも2016年から開始された「トゥー・グッド・トゥー・ゴー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」は、閉店後に廃棄される予定の料理を低価格で消費者に提供する仕組みだ。消費者はアプリ経由で飲食店を検索して決済し、飲食店を訪れ、事前には中身が分からない「サプライズ・バスケット」を受け取る。このアプリは欧州11ヵ国で展開されており、同社サイト(2020年1月7日に確認)によると、フランスでは2016年から累計1,089万8,306食を売上げた。2017年開始の「ミール・カンティーン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」は、そもそも廃棄物を生じさせないことが最良だとして、ユーザーが同アプリ経由で食事を事前予約することで、飲食店が消費される食材量を午前中に予測し調整できるようにした。飲食店は、予約がキャンセルされた場合も通知を受けられ、アプリ利用客から事後に料理への満足度やコメントといったフィードバックも得られる。

家庭から出る食品廃棄物の削減に役立つアプリも提供されている。「チェック・フード外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」は、購入した食品のバーコードをスキャンして消費期限を入力すれば、その数日前にアラート表示を受けられるもので、期限内に食べきることを支援する。「フリゴ・マジック外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」は、消費者が自宅の冷蔵庫や棚にある食材を選択すれば、それらを使って作れる料理のレシピを提案してくれるアプリだ。こうしたスタートアップへのニーズは、欧州各国での認識の高まりに応じて増加すると思われる。


注1:
国連の持続可能な開発目標(SDGs)では、17の目標とそれにひも付く169のターゲットを設定している。
注2:
オルドナンス: 憲法第38条に定められた政府の委任立法権限に基づく法規。政府はオルドナンスの概要を定めた授権法案を国会に提出し、可決された場合、オルドナンスの形式により法律を制定することができる。
注3:
善きサマリア人法: 善意による無償の行為に対しては、その結果について重大な過失がない限り責任を免除する趣旨の内容を定める法律。欧米諸国の一部で、緊急医療などの分野で免責を明文化している。名称の由来は、対立関係にあるユダヤ人を助けたサマリア人の聖書の挿話。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部欧州ロシアCIS課 課長代理
上田 暁子(うえだ あきこ)
2003年、ジェトロ入構。経済分析部知的財産課、企画部企画課、農林水産・食品部農林水産・食品事業課、ジェトロ・パリ事務所、企画部企画課、対日投資部対日投資課などを経て、2019年5月から現職。

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