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デジタルを駆使した新型コロナウイルス課題解決への取り組み(チェコ)

2020年4月21日

新型コロナウイルスの感染拡大によるさまざまな問題が発生する中で、チェコではIT関連の民間企業が率先して支援プロジェクトを次々と実施している。支援プロジェクトの中心的存在となっているのは「COVID19CZ」というIT専門企業の協力団体だ。設立後も日々、新たな企業が加わり、民間企業主導のボトムアップの提案による問題解決にIT分野のリーダーが協力して取り組んでいる。その活動の特徴は、フェイスブックのディスカッション・グループとして立ち上がったのを皮切りに、官邸まで巻き込んだ政府レベルで導入検討が行われている点だ。新型コロナウイルスがもたらした影響の1つとして、平常時には考えられなかったスピードで多くのデジタル化プロジェクトが展開されている。

はじまりは、チェコ大手IT企業を中心としたボランティア活動

COVID19CZ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます の始まりのきっかけとなったのは、3Dプリンターを世界中で販売しているプルシャ・リサーチ(Prusa Research)、チェコで最も利用されている検索エンジンのセズナム(Seznam.cz)、データの人工知能(AI)分析ツール開発を手掛けるケブーラ(Keboola)で活躍しているIT専門家によるボランティア活動だ。共同の目的を持って、インターネットを通じたディスカッションや知り合いの紹介などで活動の規模が拡大され、チェコ最大の通信オペレーターO2、データ分析企業Cogvio Medical、DataSentics、マーケティングエージェンシーWMC/Grey、ベンチャーキャピタルPale Fire Capital、Rockawayといったチェコのデジタル分野を代表する企業が次々にコミュニティに加わり、チェコの検疫の今後の在り方など、国の政策にまで影響を及ぼすようになっている。

COVID19CZがまず取り組んだのは、新型コロナウイルス専用の相談番号「1212」の開設と運用だった(通常の公的な緊急回線への電話の集中を防ぐために、3月15日に新設)。IT企業の専門家と政府関係者との協力により、産業貿易省の担当者30人をはじめ、ボランティアから刑務所の囚人まで、総勢約150人がホームオフィスで一般市民からの相談窓口対応を担い、日々変化する状況に応じて新しい情報提供を行っている。

次に行われたのは、新型コロナウイルス感染拡大およびその対応下で支援を必要とする人・企業と、支援を提供できる人・企業とをマッチングすることを目的としたコビポイント(CoVpoint)のウェブサイトの立ち上げ。この活動は、マスクや人工呼吸器など不足している感染防止用品を提供する企業、運送サービスを提供する企業など、さまざまなプロジェクトを生み出して活動範囲を広げており、これらの成功プロジェクトは「チェコをつなぐ(Spojujeme Cesko)」という産業貿易省の公式プラットフォームでも紹介されている。

COVID19CZのコミュニティ・プロジェクトから独立事業に発展

また、COVID19CZのプロジェクトとして、輸入が困難となっている人工呼吸器をチェコ国内で3週間で500台製造するコロベント(CoroVent)というクラウドファンディングの取り組みも立ち上がり、20時間以内で目標の1,000万コルナ(約4,400万円、1コルナ=約4.4円)を超える資金を確保している。この人工呼吸器の仕様基準の特許はオープンソースとして公開し、海外でも需要があれば輸出も考えているという。同プロジェクトにおいてCOVID19CZは投資資金の収集、ビジネスプランの作成、製造、物流、マーケティングなどの面で30人以上の専門家による連携支援を提供してきたが、4月7日からは国の補助事業としてコミュニティ・プロジェクトから独立し、チェコ工科大学(CVUT)とその製造を担う企業ミコ(MICO)へと事業が発展的に継承されている。


コロベントの人工呼吸器の試作品(コロベント提供)

チェコにおけるスマート検疫の導入に貢献

COVID19CZは、ITネットワークを活用した「スマート検疫」戦略の導入をチェコ政府に提案している。スマート検疫は、感染拡大を抑制しながら行動制限によって停止状態となっているチェコ経済を回復させていくための1つの解決手段として運用を開始した。携帯電話の移動情報やクレジットカードの決済履歴のデータを活用して、隔離が必要な感染者の移動と接触歴を早期に把握・分析し、感染リスク対象者を早期に割り出して自己隔離をしてもらうことで、すべての人々の行動を制限することなく、無症状の感染者による感染拡大防止に貢献することが期待されている。

スマート検疫の要となるのは、(1)感染者の移動履歴と決済データを即時データとして再現化するデータセンター、(2)携帯電話のブルートゥース機能によって感染者との遭遇を通知するエロウシュカ(eRouska)アプリだ。このアプリで、感染者が発覚した際、衛生局担当者はデータセンターに蓄積された情報を基に感染者の記録と照らし合わせて濃厚接触者を洗い出し、アプリを通じて接触情報を通知することが可能になる。このシステムは、すでに南ボヘミア地方で試験運用中であり、EU諸国で導入されるシステムのさきがけとして期待されている。アジア諸国で実施された強力な管理システムとは異なり、感染者の同意を前提とする任意性をベースとした制度であり、EU一般データ保護規則(GDPR、個人情報の保護強化を目的としたEUの仕組み)を順守していることも強調している。

営業停止となった食品業界を支援

COVID19CZ以外の取り組みとして、政府の行動制限によってビジネスに大きな影響を受けている食品業界の課題を解決するためのプラットフォームもある。営業休止中の店舗のため、またスーパーなどでの人混みによる感染拡大防止のため、オンライン食品販売店ロフリーク(Rohlik.cz)のトマーシュ・チュブル取締役が、ホテルのマネジメントシステム(予約、売り上げ管理、AIを活用した価格設定など)開発を行うシエスタ・ソリューションズ(Siesta Solutions)のプログラマー、マーケティングエージェンシーであるシンビオ(Symbio)のデザイナー、B2C系スタートアップに投資をしているファンドのミトン(Miton)のアドバイザーやボランティアなどと連携し、新たな食品販売・配達サービスの提供を開始した。「安全に購入(Nakup bezpecne)」と名付けられたプラットフォームでは、店舗の登録を無料で受けつけており、事前に登録すれば簡単に商品をネットで販売できる。これまで電子商取引(EC)を行ったことがなかった老舗レストランも突然の情勢変化に対応するため急きょオンライン販売を開始する必要性にせまられており、そうしたレストランにとっての重要な支援インフラを担う。なお、ロフリークは、チェコ全土を対象として、保存食品やレストランの食事を瞬間冷凍した弁当の宅配サービスにも取り組んでいる。


非常事態宣言下のプラハ市内で休業中のレストラン(ジェトロ撮影)
執筆者紹介
ジェトロ・プラハ事務所 プロジェクト・コーディネーター
マルティン・シュトゥルマ
2015年からジェトロ・プラハ事務所に勤務。農林水産食品輸出事業、サービスとインフラ進出支援事業、招聘プログラム、調査業務、システム管理などを担当。
執筆者紹介
ジェトロ・プラハ事務所 所長
木村 玲子(きむら れいこ)
1994年、ジェトロ入構。日欧産業協力センター欧州事務所(ブラッセル)への出向、ジェトロ岡山、総務部広報課などを経て、2018年10月から現職。

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