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【コラム】日本のノンアルコールビールに商機あり(サウジアラビア)

2020年10月19日

サウジアラビアでは、アルコール飲料の輸入・流通が厳格に禁じられている。このため、非ムスリムの外国人だけでなく、サウジアラビア人もアルコール分0.0%のノンアルコールビールを清涼飲料として消費する。その主流は、古参の欧米ブランドだ。しかし最近では、日本ブランドもわずかながら市中で見かけるようになってきた。

欧米ブランドの商品は、往々にしてカロリーが高い。一方で日本の商品は、おいしさを保ちながらカロリーを低く抑えている。健康志向が高まりつつある当地で、商機があるのではないか。


ノンアルコールビール売り場1(ジェトロ撮影)

ノンアルコールビール売り場2(ジェトロ撮影)

数年前から、日本ブランド品が流通

サウジアラビアの夏は長い。首都リヤドでは、4月に入ると日中の最高気温が約40度前後まで上がり始め、暑さが10月いっぱいまで続く。当地では、宗教上、アルコール飲料が厳格に禁じられていることから、市中はもとより高級ホテルなどでもアルコール飲料の提供や流通がない。輸入も固く禁じられている。夏の1日の終わりには、「青空を背景に、冷えたグラスに黄金色の液体が滑らかに注がれていく」様子を頭に思い浮かべながら、アルコール分が0.0%に抑えられたノンアルコールビールを飲むことになる。

当地のノンアルコールビール(あるいは麦芽飲料)と言えば、古参の米国バドワイザーはじめ、ドイツ・ホルステンやオランダ・ババリアビールなど、欧米ブランドだ。これらは、海外からの輸入品として流通している例になる。これらのほか、当地で人気の高いバービカンとマウシー(Moussy)の2ブランドは、地場飲料メーカーがそれぞれ委託を受けてサウジ国内で製造したものが販売されている(注1)。

2年前からは、少数ながらも、日本のノンアルコールビールが並行輸入で入り始めた(表参照)。アジア食材店での小売り販売や、国内の和食レストランで楽しむことが可能だ。そのほか、欧米以外のブランドでは、フィリピンのサンミゲルやトルコのエフェスも一部の店舗で見かける。

このように、市中には多様な種類のノンアルコールビールが並ぶ。欧米ブランドは、税込みで店頭小売価格1缶当たり6リヤル前後(約180円、1リヤル=約30円)だ。これに対し、日本ブランドは同17リヤルと価格帯が高い。しかし、当地でのすし人気と相まってか、引き合いの話がジェトロに寄せられることもある。

表:主要国のサウジアラビア向けノンアルコールビール輸出
国名 2017年 2018年 2019年
ポルトガル 7,621,660 4,389,444 9,717,866
ドイツ 371 832 1,703,362
フランス 6,029,369 1,727,839 1,668,759
トルコ 265,810 145,411 534,852
オランダ 0 74,118 44,474
日本 0 13,293 16,845

出所:各国の輸出統計からジェトロ作成

サウジ人も清涼飲料として消費

欧米ブランドのノンアルコールビールは、大手食料品店ならどこでも購入可能だ。しかしその消費について筆者は、「アルコールを欲する外国人が、やむなく代用品としてノンアルコールビールを購入している」印象を周囲に与えるような気がしていた。またノンアルコールビールを購入するのは、もっぱら非ムスリムの外国人かと思っていた(注2)。

しかし前述のとおり、日本ブランドのノンアルコールビールについて、引き合いを受けることもある。そこで、周囲のサウジアラビア人家庭にノンアルコールビール消費の有無を聞いてみた。すると、若年層はもちろんのこと、中高年も清涼飲料水感覚でノンアルコールビールを消費しているという実態がわかってきた。ビールテイストのオリジナルフレーバーは、甘みを強く感じるものからすっきりとした味わいのものまで、ブランドによって後味は様々だ。また、オリジナルフレーバーに加え、リンゴ、イチゴ、ラズベリーなどフルーツ風味つきのものにも一定の人気がある。

今後需要が見込まれる低カロリー商品

2016年4月に発表されたサウジアラビアの国家改革計画「ビジョン2030」の中では、「国民の充実した生活と健康の推進」が打ち出された。政府はスポーツの振興を含め、国民の健康的なライフスタイルの構築を積極的に進めようとしている。2019年からは、食品ラベルや外食産業のメニューへのカロリー表示が義務付けられた。また、この1~2年でリヤド市内には会員制フィットネスクラブが相次いで登場した。国内での健康志向は、確実に高まりつつあるのだ。

先に述べた欧米各ブランドのノンアルコールビールは、1缶当たりで70キロカロリー程度のものもある。同種の日本ブランドと比べて高カロリーだ。加えて当地では、大都市圏で引き続きすしが人気を集めている。料理の邪魔をしないすっきりとした味わいで、かつ、おいしさを保ちながらカロリーを低く抑えているのが、日本のノンアルコールビールの特徴だ。こうしてみると、商機が十分見込まれるのではないだろうか(注3)。


注1:
欧米ブランドは、ブランド発祥地と製品生産拠点が異なることが多い。
注2:
ノンアルコール飲料の国内消費などに関する統計は、入手できない。
注3:
サウジアラビアへの食品の輸入には、有効なライセンスを有する輸入者が食品規制当局のSFDAに商品詳細を示した上で、輸入登録を申請する必要がある。そこで許可された商品だけが輸入可となる。
執筆者紹介
ジェトロ・リヤド事務所
柴田 美穂(しばた みほ)
2004年、ジェトロ入構。海外調査部(中東アフリカ課)、企画部(中東・アフリカ担当)、農林水産・食品部を経て2018年8月より現職。

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