2019年ドイツの貿易、輸出入ともに微増、黒字幅は減少

2020年9月4日

ドイツの2019年の貿易額は輸出入ともに前年からほぼ横ばいで、貿易収支額は前年より減少したものの引き続き黒字であった。本稿では、ドイツ連邦統計局が発表する2019年の貿易統計の中から、主要品目や主要相手先国・地域に着目して前年と比較することで、ドイツの貿易にどのような変化があったのかを整理する。また、日本との間での貿易額や主要品目の変化をみることで、2国間の貿易についても分析する。

ドイツ連邦統計局によると、ドイツの2019年の貿易(通関ベース)は、輸出が前年比0.8%増の1兆3,277億7,200万ユーロ、輸入は1.5%増の1兆1,045億6,800万ユーロと、双方向で前年からほぼ横ばいであった。貿易収支は2,232億400万ユーロの黒字となったが、黒字額は前年から55億1,600万ユーロ減少した。主力の道路走行車両の輸出減に対して、輸入は大幅に増加するなど、主要品目である機械および輸送機器の輸出低迷と輸入増があったほか、特殊取扱製品の輸入増が輸入額全体を押し上げたことが主因。

自動車関連の輸出が減少、2020年も厳しい見通し

輸出を品目別にみると(表1参照)、最大の輸出品目である機械および輸送機器(構成比:48.6%)が前年比0.2%減となった。内訳をみると、電気機器およびその部分品(8.3%)が1.5%増、一般工業用機械類およびその部分品(7.5%)が2.1%増の伸びを示したが、道路走行車両(16.2%)の2.9%減が品目全体の減少につながったとみられる。中でも、乗用車(9.6%)は2.8%減、自動車部品(4.5%)は3.4%減と減少した。ドイツ自動車産業連合会(VDA)によると、2019年の乗用車の輸出台数は348 万7,321台と前年比で12.7%減少した。13.5%減のアジア大洋州、12.5%減の欧州、11.8%減の米州と、各主要市場で大幅な落ち込みがみられた。その他の品目では、機用品・再輸入品などの特殊取扱製品(2.9%)が28.1%増と大幅な伸びをみせたほか、雑製品(11.3%)が2.5%増となり、これらの品目が輸出の伸びに貢献した。雑製品は、計測機器・制御機器(3.9%)の3.8%増や衣類およびその付属品(1.6%)の6.2%増による。

主要国・地域別に輸出をみると(表2参照)、最大の輸出地域であるEU(構成比:58.5%)は前年比0.2%減となった。EUで最大の輸出先であるフランス(8.0%)は、1.3%増となった。フランス向けの航空機・関連機器(10.3%)が6.0%増と牽引した。ベルギー(3.5%)は4.0%増と好調だったが、イタリア(5.1%)は2.5%減と減速した。第5位の輸出先である英国(5.9%)は4.0%減だった。EU離脱を決定した2016年の英国の国民投票以降、減少傾向が続く。英国向け主要輸出品目である乗用車(20.5%)の減少傾向が続いており、3.9%減となったことが影響した。中・東欧各国への輸出はポーランド(5.0%)が4.0%増、チェコ(3.4%)が0.6%増と堅調だった。

EU域外では、アジア大洋州(構成比:14.9%)向けの輸出は前年比0.7%増で横ばいとなった。中国(7.2%)は、3.2%増と前年より伸びが縮小した。乗用車(15.8%)が好調だったものの、自動車部品(8.7%)が落ち込んだ。最大の輸出相手国である米国(8.9%)は、最大の輸出品目の乗用車(15.7%)が0.2%減少したが、医薬品(3.7%)が32.7%増となり、全体で4.7%増になった。

表1:ドイツの主要品目別輸出入(通関ベース)

輸出(FOB)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2018年 2019年
金額 金額 構成比 伸び率
機械および輸送用機器 645,739 644,646 48.6 △ 0.2
階層レベル2の項目道路走行車両 221,766 215,235 16.2 △ 2.9
階層レベル3の項目乗用車 130,932 127,277 9.6 △ 2.8
階層レベル3の項目自動車部品 62,380 60,245 4.5 △ 3.4
階層レベル2の項目電気機器およびその部分品 108,382 109,968 8.3 1.5
階層レベル2の項目一般工業用機械類およびその部分品 97,889 99,934 7.5 2.1
化学製品 214,655 214,079 16.1 △ 0.3
階層レベル2の項目医薬品 82,607 81,712 6.2 △ 1.1
原料別製品 160,275 156,655 11.8 △ 2.3
階層レベル2の項目その他の金属製品 42,195 41,553 3.1 △ 1.5
階層レベル2の項目鉄鋼 27,136 25,389 1.9 △ 6.4
雑製品 146,996 150,695 11.3 2.5
階層レベル2の項目計測・制御機器 50,516 52,433 3.9 3.8
階層レベル2の項目衣類およびその付属品 20,483 21,756 1.6 6.2
食料品および生きた動物 56,299 58,587 4.4 4.1
特殊取扱品 30,351 38,884 2.9 28.1
鉱物性燃料,潤滑剤 30,981 32,845 2.5 6.0
非食用原材料(鉱物性燃料除く) 20,968 20,487 1.5 △ 2.3
飲料およびたばこ 8,961 8,692 0.7 △ 3.0
動植物性油脂,脂肪,ろう 2,216 2,201 0.2 △ 0.7
合計(その他含む) 1,317,440 1,327,772 100.0 0.8
輸入(CIF)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2018年 2019年
金額 金額 構成比 伸び率
機械および輸送用機器 397,112 409,235 37.0 3.1
階層レベル2の項目道路走行車両 110,985 119,051 10.8 7.3
階層レベル3の項目乗用車 54,784 63,377 5.7 15.7
階層レベル3の項目自動車部品 39,913 38,151 3.5 △ 4.4
階層レベル2の項目電気機器およびその部分品 89,648 89,994 8.1 0.4
階層レベル2の項目一般工業用機械類およびその部分品 46,210 47,216 4.3 2.2
化学製品 150,573 149,301 13.5 △ 0.8
階層レベル2の項目医薬品 49,399 53,092 4.8 7.5
雑製品 135,622 139,502 12.6 2.9
階層レベル2の項目衣類およびその付属品 34,468 35,451 3.2 2.9
原料別製品 137,660 130,256 11.8 △ 5.4
階層レベル2の項目鉄鋼 29,147 25,466 2.3 △ 12.6
鉱物性燃料,潤滑剤 95,917 94,020 8.5 △ 2.0
階層レベル2の項目石油,石油製品 61,592 59,523 5.4 △ 3.4
階層レベル2の項目天然ガス 27,433 28,008 2.5 2.1
特殊取扱品 59,568 69,061 6.3 15.9
食料品および生きた動物 64,999 66,216 6.0 1.9
非食用原材料(鉱物性燃料除く) 35,939 35,585 3.2 △ 1.0
飲料およびたばこ 8,320 8,501 0.8 2.2
動植物性油脂,脂肪,ろう 3,011 2,892 0.3 △ 4.0
合計(その他含む) 1,088,720 1,104,568 100.0 1.5

注:EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
出所:ドイツ連邦統計局

2020年に入り、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、輸出は大きな打撃を受けている。統計局によると、中国向けが1月に前年同月比6.5%減、2月に8.9%減と大きな落ち込みをみせ、3月にはEU向けが11.0%減となり、4月には各国のロックダウンによる影響のため全体で31.1%減と減少幅が拡大、特に感染拡大が続くフランスが48.3%減、イタリアが40.1%減、米国向けが35.8%減と急激に落ち込んだ。ドイツ自動車産業連合会(VDA)は2020年上半期の乗用車の輸出は、前年同期比40%減とさらなる減少を記録したと発表し、通年では前年比40%減となる見通しを示した。

米国からの輸入が大幅に増加

2019年の輸入を主要品目別にみると(表1参照)、最大の輸入品目の機械および輸送用機器(構成比:37.0%)は前年比3.1%増と増加した。そのうち、道路走行車両(10.8%)は7.3%増で、中でも乗用車(5.7%)が15.7%増と牽引した。また、機用品・再輸入品などの特殊取扱製品(6.3%)が15.9%増と、輸入全体の増加に貢献した。このほか、雑製品(12.6%)が、衣類およびその付属品(3.2%)の増加により、2.9%増と好調だった。化学製品(13.5%)は、医薬品(4.8%)が7.5%増と好調だったが、有機化学品(3.1%)が9.1%減、プラスチック(1.5%)が8.7%減と減少しため、全体では0.8%減と微減だった。原料別製品(11.8%)は、鉄鋼(2.3%)が12.6%減と大幅に減少したため、5.4%減と落ち込み、輸入全体の抑制要因となった。

国・地域別にみると(表2参照)、最大の輸入地域であるEU(構成比:57.2%)は前年比1.3%増加した。0.9%増となったユーロ圏(37.1%)では、同圏内で最大の輸入元であるオランダ(8.9%)が0.8%増、フランス(6.0%)が1.5%増、オーストリア(4.0%)が2.5%増と増加に貢献した。一方で、イタリア(5.2%)が5.0%減、ベルギー(3.9%)は6.0%減と大幅減になった。英国(3.5%)は、同国からの主要輸入品目である航空機・関連機器(8.4%)が15.1%減、乗用車(8.0%)も12.5%減と大きく減少したが、原油・粗油(7.1%)の62.2%増、薬剤(4.7%)の33.5%増などにより、全体として3.5%増となった。また、チェコ(4.3%)は0.6%増と前年から減速したものの、ポーランド(5.2%)は4.8%増、ハンガリー(2.6%)は5.1%増となり、中・東欧各国からの輸入は好調だった。

アジア大洋州(構成比:19.2%)からの輸入は前年比2.0%増と、前年の伸び率4.0%を下回った。最大の輸入元である中国(10.0%)は3.7%増で、前年の4.3%増と比べてやや減速した。米国(6.5%)は、航空機・関連機器(4.4%)が76.1%増、乗用車(7.7%)が29.7%増、医薬品(6.4%)が24.8%増とそれぞれ大幅に伸長し、全体で10.7%増と前年の4.2%増を上回る拡大をみせた。

表2:ドイツの主要国・地域別輸出入(通関ベース)

輸出(FOB) (単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域名 2018年 2019年
金額 金額 構成比 伸び率
EU 778,644 777,253 58.5 △ 0.2
階層レベル2の項目ユーロ圏 492,469 492,248 37.1 △ 0.0
階層レベル3の項目フランス 105,359 106,728 8.0 1.3
階層レベル3の項目オランダ 91,061 91,586 6.9 0.6
階層レベル3の項目イタリア 69,813 68,094 5.1 △ 2.5
階層レベル3の項目オーストリア 65,027 66,093 5.0 1.6
階層レベル3の項目ベルギー 44,353 46,141 3.5 4.0
階層レベル2の項目非ユーロ圏 286,175 285,005 21.5 △ 0.4
階層レベル3の項目英国 82,164 78,876 5.9 △ 4.0
階層レベル3の項目ポーランド 63,358 65,912 5.0 4.0
階層レベル3の項目チェコ 44,263 44,513 3.4 0.6
アジア大洋州 196,830 198,254 14.9 0.7
階層レベル2の項目中国 93,004 95,973 7.2 3.2
階層レベル2の項目ASEAN 28,173 27,834 2.1 △ 1.2
階層レベル3の項目シンガポール 7,974 7,305 0.6 △ 8.4
階層レベル3の項目マレーシア 5,186 5,567 0.4 7.4
階層レベル3の項目タイ 5,068 5,020 0.4 △ 0.9
階層レベル3の項目ベトナム 4,109 4,298 0.3 4.6
階層レベル2の項目日本 20,436 20,663 1.6 1.1
階層レベル2の項目韓国 17,260 17,232 1.3 △ 0.2
階層レベル2の項目インド 12,499 11,932 0.9 △ 4.5
米国 113,341 118,659 8.9 4.7
スイス 54,021 56,367 4.2 4.3
ロシア 25,876 26,540 2.0 2.6
トルコ 19,163 19,565 1.5 2.1
メキシコ 13,896 13,694 1.0 △ 1.5
カナダ 10,149 10,765 0.8 6.1
ブラジル 9,458 10,158 0.8 7.4
ノルウェー 9,087 9,139 0.7 0.6
南アフリカ共和国 8,856 9,346 0.7 5.5
イラン 2,697 1,513 0.1 △ 43.9
合計(その他含む) 1,317,440 1,327,772 100.0 0.8
輸入(CIF) (単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域名 2018年 2019年
金額 金額 構成比 伸び率
EU 623,458 631,447 57.2 1.3
階層レベル2の項目ユーロ圏 405,810 409,253 37.1 0.9
階層レベル3の項目オランダ 97,709 98,519 8.9 0.8
階層レベル3の項目フランス 65,024 66,021 6.0 1.5
階層レベル3の項目イタリア 60,223 57,204 5.2 △ 5.0
階層レベル3の項目オーストリア 42,994 44,062 4.0 2.5
階層レベル3の項目ベルギー 45,859 43,116 3.9 △ 6.0
階層レベル2の項目非ユーロ圏 217,647 222,194 20.1 2.1
階層レベル3の項目ポーランド 55,091 57,713 5.2 4.8
階層レベル3の項目チェコ 47,604 47,869 4.3 0.6
階層レベル3の項目英国 37,025 38,332 3.5 3.5
アジア大洋州 207,405 211,543 19.2 2.0
階層レベル2の項目中国 106,065 109,956 10.0 3.7
階層レベル2の項目ASEAN 41,543 40,598 3.7 △ 2.3
階層レベル3の項目ベトナム 9,768 9,733 0.9 △ 0.4
階層レベル3の項目マレーシア 8,940 8,691 0.8 △ 2.8
階層レベル3の項目タイ 6,123 6,007 0.5 △ 1.9
階層レベル3の項目シンガポール 6,592 5,754 0.5 △ 12.7
階層レベル2の項目日本 23,710 24,001 2.2 1.2
階層レベル2の項目韓国 12,156 12,389 1.1 1.9
階層レベル2の項目インド 8,926 9,389 0.9 5.2
米国 64,493 71,365 6.5 10.7
スイス 45,913 46,276 4.2 0.8
ロシア 35,985 31,297 2.8 △ 13.0
トルコ 16,386 15,853 1.4 △ 3.3
ノルウェー 12,423 11,911 1.1 △ 4.1
南アフリカ共和国 8,023 9,581 0.9 19.4
メキシコ 7,836 8,648 0.8 10.4
ブラジル 7,488 7,020 0.6 △ 6.3
カナダ 4,713 5,619 0.5 19.2
イラン 441 207 0.0 △ 53.0
合計(その他含む) 1,088,720 1,104,568 100.0 1.5

注1:EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
注2:アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
出所:ドイツ連邦統計局

日独貿易は輸出、輸入の双方向で小幅な増加

2019年の対日貿易は、輸出が前年比1.1%増の206億6,300万ユーロ、輸入が1.2%増の240億100万ユーロと、輸出入ともに伸び率は小幅だった。日本は、ドイツの輸出相手国として16位、輸入相手国として15位で、前年と変わらなかった。

表3:ドイツの対日主要品目別輸出入(通関ベース)

輸出(FOB)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2018年 2019年
金額 金額 構成比 伸び率
乗用車 4,956 4,602 22.3 △ 7.1
その他医薬品 1,420 1,858 9.0 30.8
医薬品 1,063 1,197 5.8 12.6
測定・分析・制御機器 959 943 4.6 △ 1.7
自動車部品 696 600 2.9 △ 13.7
有機置換無機化合物 511 555 2.7 8.5
電気回路開閉機器 437 451 2.2 3.3
その他の産業用機械 407 429 2.1 5.5
航空機・関連機器 785 369 1.8 △ 53.0
内燃機関 294 361 1.7 22.6
合計(その他含む) 20,436 20,663 100.0 1.1
輸入(CIF)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2018年 2019年
金額 金額 構成比 伸び率
乗用車 2,434 2,713 11.3 11.4
その他電気機器 1,755 1,789 7.5 1.9
測定・分析・制御機器 1,476 1,560 6.5 5.7
熱電子管・半導体 1,275 1,187 4.9 △ 7.0
事務用機器 1442 1034 4.3 △ 28.3
機用品,再輸入品 587 819 3.4 39.4
玩具・スポーツ用品 658 725 3.0 10.2
電気回路開閉機器 666 636 2.6 △ 4.6
通信機器 555 631 2.6 13.8
その他の産業用機械 630 605 2.5 △ 4.0
合計(その他含む) 23,710 24,001 100.0 1.2

出所:ドイツ連邦統計局

対日輸出を主要品目別にみると、主力の乗用車(構成比:22.3%)が前年比7.1%減となり、自動車部品(2.9%)も13.7%減、航空機・関連機器(1.8%)は53.0%減と大幅に落ち込んだ。他方で、その他医薬品(9.0%)と医薬品(5.8%)がそれぞれ30.8%増、12.6%増と大きく増加し、内燃機関(1.7%)も22.6%増と大幅な伸長をみせたことにより、対日輸出額は全体として微増した。

対日輸入では、前年比28.4%減と大幅減になった事務用機器(4.3%)のような品目もあったが、主要輸入品目の乗用車(11.3%)が11.4%増加したほか、測定・分析・制御機器(6.5%)の5.7%増、通信機器(2.6%)の13.8%増、玩具・スポーツ用品(3.0%)の10.2%増などが、輸入全体を引き上げた。当該品目の輸入において、日EU経済連携協定(EPA)が積極的に活用され、輸入増を後押ししたとみられる。

執筆者紹介
ジェトロ・ベルリン事務所
ヴェンケ・リンダート
2017年より、ジェトロ・ベルリン事務所に勤務。
執筆者紹介
ジェトロ・ベルリン事務所
中村 容子(なかむら ようこ)
2015年、ジェトロ入構。対日投資部外国企業支援課を経て現職。