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グーグルがケニアのスマホ業界に参入、デジタル金融市場に変化
サファリコムと連携して新サービスを開始

2020年9月16日

ケニアの大手通信会社サファリコムは7月28日、米国グーグル(Google)と連携した新サービス「リパ・ムドゴ・ムドゴ(Lipa Mdogo Mdogo)」(スワヒリ語で「少額を支払う」という意味)を発表した。 現在、2G、3Gの携帯電話を使っているサファリコムのユーザーに対して、第4世代移動通信システム(4G)対応のスマートフォンへの乗り換えを促すのが狙いだ。本体価格(データ通信料は別)が3,499~5,999Kshと手頃に設定されている。初期費用1,000Ksh(約1,000円、1Ksh=約1円)を支払い、利用者は9カ月間をかけて残額を支払う。1日当たりの負担額は20Ksh程度という計算で、データ通信料についても様々な特典がある。

2019年末には、ケニアの総人口に対するSIMの発行数が115%に達した。新たなスマートフォン市場としての期待も寄せられている。サファリコムの新サービス導入で、ケニアでのさらなるスマートフォンの普及に期待が高まる。一方、米国巨大企業の参入で、ケニアのファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)を牽引したデジタル金融業界は、少なからず影響を受けそうだ。

ケニアでは、銀行などの金融機関へアクセスのない非正規雇用者(インフォーマルセクター)が就労人口の約83%を占める(2019年ケニア統計局)。すなわち、ボリューム層を形成していることになる。このため、2010年以降、ボリューム層をターゲットとしたデジタル金融が相次いで参入。ケニア国民の金融サービスへのアクセスは、2006年の26.7%から2019年には82.9%に大きく改善した(2019年ケニア統計局)。ケニアのデジタル金融の多くは、携帯電話の個人情報などから入手困難な信用情報(クレジット)を取り寄せ、リスクは高い金利などで担保。成長を続けてきた。しかし、Googleは2019年8月、60日以内の短期間で少額を融資するアプリケーションの利用を認めない、と発表した(policy center参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。消費者保護の観点から、いわゆる「高利貸し」を認めないというわけだ。ケニアで販売を始めた手頃な価格のアンドロイド・スマートフォンにも当然、対象となるデジタル金融サービスのアプリケーションをダウンロードできなくなった。なお、この措置の対象は、ケニアのデジタル金融を牽引してきたBranch InternationalやTalaなどの米国系スタートアップなどが念頭にあると言われている。ただし、両社ともに、Googleのポリシーには違反していないと否定している(2020年1月24日付「Bloomberg」参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

デジタル化を一層推し進め、外資系企業を積極的に誘致するのが、ケニア政府の意向だ。Googleのような欧米企業が要求する消費者保護には積極的で、2019年11月25日にはEU一般データ保護規則(GDPR)に準拠したデータ保護法を施行した(2019年12月20日付ビジネス短信参照)(注)。ケニアと米国が進めている自由貿易協定(FTA)の交渉でも、ケニアでのデジタル市場の法的整備や消費者保護が課題として挙げられている。

新型コロナウイルス拡大による不況も、規制強化の動きの一因となる。ケニア中央銀行(CBK)によると、2020年4月、ケニア国内のノン・パフォーミングローン(NPLs)は前年同月比12.0%増の3,760億Kshを記録した。ケニアの金融機関が加盟する銀行連盟は3月19日、不良債権の増加を回避するための施策を承認した。貸し付けの返済が困難な個人に救済策を提供し、中小企業には銀行債務を再構築する。これにより、返済のない貸し付けを不良債権化できなくなった。結果、返済期限が過ぎても支払いが行われない貸し付け、いわゆるノン・パフォーミングローン(NPLs)の多発を招いた。CBKは、NPLsを増加させる要因の1つに、デジタル金融サービスに特有の返済期間の短さや金利の高さを指摘する。その対策として、2020年ケニア中央銀行法(改正)案が国会に提出された。法案には、そうしたサービスの規制が含まれたものとなっている(7月20日付「ビジネスデイリー紙電子版」参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同法が施行された場合、デジタル金融サービスの支払い期限や金利に上限が課せられる可能性がある。

6月30日に施行された2020年財政法に基づいて、2021年1月1日からケニアにデジタル・サービス税(DST)が導入される。オンライン市場での収入について、総取引価額の1.5%を賦課するものだ。ジュミアやスカイゲートといったeコマース、ウーバーやボルトといったライドシェア事業などに影響が及ぶ。デジタル金融サービスも、例外ではない。

ケニアのデジタル金融業界は、新たな局面を迎えようとしている。近年の市場拡大や外資系企業の参入に加え、個人情報の取り扱いなど、セキュリティー面の世界標準化の動きや規制・課税の強化なども受けているのだ。


注:
現在、データ・コミッショナーを選定中(2020年7月27日付「Bowmans」参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。
執筆者紹介
ジェトロ・ナイロビ事務所 調査・事業担当ディレクター
久保 唯香(くぼ ゆいか)
2014年4月、ジェトロ入構。進出企業支援課、ビジネス展開支援課、ジェトロ福井を経て現職。2017年通関士資格取得。

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