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暗号資産を活用した輸入決済に注目(ナイジェリア)
外貨供給不足が障害にならない貿易を可能に

2020年6月3日

ナイジェリアの外貨準備高は、新型コロナウイルスのパンデミックを発端にした原油安により減少が続いていた。しかし、ナイジェリア中央銀行(CBN)の外貨供給制限が奏功。5月19日時点で355億7,000万ドルと、4月29日に記録した334億3,000万ドルを底に上昇に転じている。ただし、外貨供給が絞られたあおりを受けて輸入決済資金を自国通貨ナイラから外貨に両替できず、多くの原材料や部材を輸入に頼らなくてはならない製造業が、輸入できないケースが多くなっている。

この状況下、貿易総合プラットフォームサービスを提供するスタンデージ(本社:東京、2020年5月7日付ビジネス短信参照)の貿易決済サービス「SHC」に、外貨不足に影響を受けない輸入代金送金方法として注目が高まっている。SHCはブロックチェーンと暗号資産(仮想通貨)を用いた貿易決済サービスで、日本とナイジェリアの間の取引にも提供されている。銀行や両替商で外貨に交換する必要がなく、信用状(L/C)や銀行送金を介さずに輸入代金を送金できるからだ。

ジェトロ・ラゴス事務所は5月20日、ナイジェリア日本人会法人部会を対象に、同社の大森健太最高執行責任者(COO)と井上駿執行役員を講師に迎えてウェビナーを開催した。

スタンデージが決済に用いる暗号資産は、2013年設立のCIRCLE(サークル、米国)が発行する米ドルコイン(USDC)だ。CIRCLEにはゴールドマン・サックス(米国)や百度(中国)が出資している。USDCは信託銀行への預託金を上限に発行されている、ドルと等価交換されるドルペッグ通貨で、国際会計監査法人大手のグラントソントン(米国)が月次レポートでドル預託額とUSDC発行状況を証明している。現在の預託額は5億2,000万ドルで、ドルという法定通貨がUSDCの価値を裏付けている点が法定通貨の裏付けのないビットコインと大きく異なる。資金移動は瞬時に行われ、代金の支払い、受領状況も瞬時に把握できる。暗号資産の流れをブロックチェーンが記録し、データの改ざんや履歴の後戻りが技術的に不可能なことから、契約者間のトラブルも防げる。輸入者と輸出者の間に置かれるエスクロー(サイバー金庫)に格納された資金は、Tranzax(東京)が電子債権を発行し、それを輸出者の取引銀行がファクタリング(電子的な手形割引)で買い取ることにより、輸出者は販売代金を早期に回収することができる。これら一連の手続きが従来の銀行を介した貿易手続きより格段に短時間かつ低コストで実現するため、小口取引にも向いている。

暗号資産を用いた送金は、銀行口座を持たない出稼ぎ労働者が母国の家族に送金する目的ですでに普及しているが、貿易決済と組み合わせたサービスはまだ世界でも類を見ない。

ただし、暗号資産はハッキングによる窃盗や資産の海外逃避といったマネーロンダリングに悪用される可能性がある。中国やエジプトなど14カ国では取引が禁止されている一方、日本や米国は一定の規制を設けながらも、おおむね自由に取引できる。人口比で最も保有率が高いのは日本(2018年5月9日、Dalia Research)、ナイジェリアは1日当たり最大取引量が約20億ナイラ(約6億円、1ナイラ=約0.3円)で、南アフリカ共和国やケニアをしのいでアフリカ最大だ(2019年8月1日、Impress Watch)。日本とナイジェリア間で貿易に暗号資産を用いる心理的障壁は既に低いといえる。

スタンデージはこれまで、中古衣料や中古パソコンの輸入に決済サービスを試験的に提供してきた。今後、山九やLOZIなど物流サービス・スマートロジスティックスと提携したことによって、より広範囲に取引量を増やしたい考えだ。ナイジェリアに陸揚げされた後の物流サービスを現在構築中で、これが完成すれば、ドア・ツー・ドアのサービスが実現する。

法定通貨の外為市場より取引規模の小さい暗号資産市場の為替レートは貿易バランスの影響を受けやすい。USDCを介した日本とナイジェリア間の貿易決済は現状、ナイジェリアの輸入超過のため、日本の輸入を増やせばナイラのレートが有利になり、日本からの輸出も増えるという。

ナイジェリアの輸入承認手続きに必要な書類の1つのフォームMは、取引銀行を通じて申請し、CBNと税関の承認を得なければならないが、USDC決済の場合もスタンビックIBTC銀行がフォームM申請を受け付けるようになった。

大森COOはウェビナーで、ハッキング被害をカバーするための保険付保を複数の損害保険会社と交渉していることも明らかにした。

スタンデージは経済産業省の新興国成長マーケットへの展開支援補助金「第5回飛びだせJapan!」に採択され、2019年からルワンダにも同様のサービスの展開に取り組んでいる。

執筆者紹介
ジェトロ・ラゴス事務所
西澤 成世(にしざわ しげよ)
2003年、ジェトロ入構。海外投資課、輸出促進課、ジェトロ・広州事務所、麗水博覧会チーム、環境・エネルギー課、イノベーション促進課、ジェトロ福井などを経て、2018年4月から現職。

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