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日本企業の大学入試対策Edtechアプリが人気(モンゴル)
新型コロナ禍で、高校生のニーズつかむ

2020年7月20日

キャスタリア(東京都)(以下、キャスタリア)は、教育に特化したテクノロジー企業だ。モンゴルのインターネットサービスプロバイダーYOKOZUNA.net関連会社のBagshiin Tuslah LLCと提携し、「Bagshiin Tuslah」を2月に開始した。Bagshiin Tuslahは、モンゴルの高校生向け大学入学試験対策学習アプリだ。モンゴル語で「Teacher's assistant」を意味する。

事業立ち上げに至った経緯や現状、今後の計画について、担当者の鈴木南美氏に聞いた(6月22日)。

新型コロナ禍の中、短期間でシェア拡大

モンゴルでは、新型コロナウイルスへの対策として、1月後半から全ての教育機関で休校措置が取られている。そうした中、「Bagshiin Tuslah」のサービス開始から5カ月ほどで、モンゴルの大学受験者約3万人のうち既に1万人以上が利用する人気アプリとなった。休校期間中でも自宅で受験勉強できる点が好評を博した。提供するアプリケーションは、モンゴルの教育内容とシステム(注1)に合わせて開発している。当社は、モンゴル初のEdtech(注2)事業者になった。

モンゴルでは、日本の国公立大学のように1次試験、2次試験という仕組みがない。国立、私立を問わず、共通試験の上位者から順に志望校に入学できる。そのため、私立の進学校では、高校3年生向けに大学入試準備のため、補習を手厚く実施する。経済的に余裕のある家庭では、子女を予備校に通わせて大学入試に備える場合が多い。結果として、公立学校に通う学生との間に、学習機会の格差が生じている。

テクノロジー活用し、教育の機会均等を目指す

キャスタリアは、公立高校に通う学生、特に都市部以外に住む学生に着目した。スマートフォンのアプリを活用することで、安価な学習環境の提供を目指している。あわせて、より質の高い教育を受けたい学生をテクノロジーで後押し、国内における教育の機会均等を目指す。使用料は、一般家庭でも負担できる金額に設定した。プランに応じて、日本円で月額約750~1,000円ほどだ。

このモンゴル市場に特化した学習アプリは、自社開発したモバイル・ラーニング・プラットフォームGoocus(グーカス)をベースにする。各受験科目で専門的な指導スキルを持つ講師によるオンライン講義や、講義資料閲覧、理解度確認のミニテストなどの機能がある。また、ユーザーの勉強時間をランキング形式で閲覧できるようにもなっている。ちなみにモンゴルのユーザーは、この勉強時間の閲覧頻度が日本のユーザーより高い。受験生全体の中で自身の位置づけを確認する目的でも、このアプリが使用されているのだろうと推測している。

初めてのモンゴル事業、約4カ月でサービス開始

モンゴルには、オンラインで学ぶ仕組みそのものがなかった。そのため、YOKOZUNA.net担当者がスマートフォンアプリの学習サービスを探していた。その際に、既にアジアやアフリカを中心に海外展開実績のある当社に声がかかった。2019年10月に初めて先方と接触した後、11月から本格的に調整を進めた。2020年2月からサービスを開始。顔合わせから約4カ月という短期間のうちに実現できたことになる。

役割分担としてはBagshiin Tuslah側が、講義動画などの掲載コンテンツの作成、モンゴルでのマーケティングを行った。一方、キャスタリアはアプリの技術提供を行い、レベニューシェア(収益分配)の提携形態を取った。

初めてのモンゴル事業だったため、提携先とのコミュニケーションで商習慣の違いを理解するのに少し時間を要した。また、日本とモンゴルを直接つなぐ回線がないことから、技術的な問題が生じた。東京から米国西海岸とロシア・ウラジオストクを経由して首都ウランバートルへつなぐルートとなるため、特に動画の再生が遅くなってしまう。この問題は、モンゴル国内のキャッシュサーバーを使うことで解決できた。

多言語対応が強み、With/Afterコロナの課題解決に挑む

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、セキュリティーを確保しつつ入学試験やテストをオンラインで実施できる仕組みが、いま世界中で求められている。キャスタリアの開発したプログラミング教材は、ベトナム・ハノイの現地学校で利用されている。このほか、ケニア教育省が認可する公式教材に選定されるなど、既にアジア、アフリカでサービス実績を有する。日本語や英語のほか、ベトナム語、ミャンマー語、アラビア語などの特殊言語を含む9言語に対応できるのが強みでもある。今後、さらにサービスを展開していきたい。


注1:
モンゴル国家統計局によると、2019年末現在、モンゴルに存在する大学は95校だ。教育省の付属団体「全国教育センター」が毎年7月、全国共通大学入学試験を実施する。文系志望者はモンゴル語、英語、数学、社会の4科目、理系志望者はモンゴル語、英語、数学、物理、化学の5科目を受験する。
注2:
Edtech(エドテック)とは、教育と情報通信技術(ICT)を融合させて生み出す新しい教育サービスとそのビジネス領域を指す。
執筆者紹介
ジェトロ・北京事務所 対外業務部 副部長
唐澤 和之(からさわ かずゆき)
2012年、ジェトロ入構。知的財産・イノベーション部知的財産課(2012~2015年)、ジェトロ北海道(2015~2018年)を経て、2018年9月より現職。

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