日系警備保障大手の新型コロナ感染対策サービスが好評(インド)
消毒サービスなどで日系企業の「安全・安心」を支える

2020年8月13日

綜合警備保障(ALSOK)は、2013年にインドに進出し、日系製造業を中心に警備をはじめとしたセキュリティ事業や施設管理サービス全般を提供してきた。

同社は、新型コロナウイルス感染拡大が止まらないインドで、感染対策商品・サービスを開始した。その経緯や今後の方針について、ALSOKインディアの位寄創(いき・はじめ)ダイレクターに話を聞いた(7月17日)。

駐在員・関連会社のネットワーク生かし、4月から新型コロナ関連サービス開始

質問:
事業概要について。
答え:
当社外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます は、2013年にインド法人を立ち上げた。現在、北部ハリヤナ州グルガオンと南部タミル・ナドゥ州チェンナイに拠点を持っている。インドでは、工場や事務所などに対する警備をはじめとしたセキュリティ事業や施設管理サービス全般と、防犯・防災関連機器の設計・施工・保守サービスなどを行っている。
質問:
現在の日本人駐在員の残留状況や事務所ごとの勤務状況は。
答え:
現在、グルガオンに2人、チェンナイに1人の日本人駐在員を配置している。新型コロナウイルス感染拡大に伴う全土封鎖(ロックダウン)後も、3人全員が残留した。両事務所とも週2日のみを出勤日とし、残りの日はテレワークでの対応だ。一方、ローカルの運用管理者や工事担当者は、日々現場へ出て勤務を継続している。
質問:
新型コロナウイルス感染対策商品・サービスが生まれるまでの経緯は。
答え:
インドにとどまる当社駐在員は、日系企業などの困りごとに触れる機会が多い。そこで、「安全・安心」を掲げる当社ができることはないかと考え、新型コロナ対策に関する事業を企画した。従来の施設管理サービスで培ってきた信頼のおける協力業者との連携で、スムーズに開始することができた。インド事業では、ビジネス習慣の違いなどに起因する業務上の困難も多い。しかし、当社では、駐在員同士が毎日のように電話会議を実施し、知恵を出し合って新しいビジネスモデルを構築してきた。そういった社内風土が、今回の新規事業をスピーディーに開始できた一因と考える。
質問:
具体的な商品・サービスは。
答え:
強みは、新型コロナ対策サービスを単一で提供するのではなく、日常の施設管理業務の中に取り入れたところと考えている。例えば、清掃作業の一環として定期的に通勤バスや社員食堂を消毒し、検温カメラや消毒トンネルを使って警備員が適切に入場者の検温・消毒を実施できる。このように、日常のオペレーションと併せて提供できる。こうした利点を踏まえ、コロナ禍で以下のサービスが商品化された(表参照)。
表:新型コロナ対策商品・サービス一覧
No 商品・サービス名 特徴
1 非接触顔認証システム 顔認証で従業員の出勤記録や扉解錠が可能
2 カメラ遠隔監視システム 日本からインドの工場や事務所のカメラ映像を確認
3 検温カメラシステム 施設への入館者の体表温度を自動測定
4 従業員一斉連絡システム 社員への注意喚起、健康状態の確認に活用
5 従業員バス運行管理サービス 事務所や工場の操業再開をサポート
6 食堂管理サービス 事務所や工場の操業再開をサポート
7 消毒サービス 事務所や工場の操業再開をサポート
8 消毒トンネル 事務所や工場の操業再開をサポート
9 特別清掃 事務所や工場の操業再開をサポート
10 非接触体温計 事務所や工場の操業再開をサポート
11 フェースシールド 事務所や工場の操業再開をサポート
12 フェースマスク 事務所や工場の操業再開をサポート
13 個人防護具キット 事務所や工場の操業再開をサポート

出所:同社提供資料を基にジェトロ作成

消毒サービスであれば、問い合わせ、見積もり、契約をあわせて1週間以内にはサービスを開始することが可能だ。検温カメラや消毒トンネルなどの機器は、通常約2週間で設置できるよう態勢を構築している。消毒などは、まず顧客に一度サービスを試してもらい、満足してもらえれば長期の定期契約をする場合もある。
一方で、サービス提供業者としての気遣いもある。当社関係者が新型コロナウイルスに感染しない、またお客様へ感染させないよう努めなければならない。毎日始業前に健康状態を検査するなど、私生活も含めて注意を徹底している。

工場入り口に設置された消毒トンネル
(同社提供)

企業を訪問し消毒作業を行うスタッフ
(同社提供)
質問:
ロックダウンのフェーズに応じて企業ニーズに変化はあったのか。
答え:
新型コロナ関連のサービスを開始したのは、4月中旬だった。まだロックダウンが続いていた時期だ。このころは、事務所や工場を再開しようとする企業が目立ち、消毒サービスの注文が多かった。しかし5月ごろからは、日常業務に必要なマスクやフェースシールド、PPEキット(防護服)の依頼が増えた。6月ごろから徐々に、追加対策を実施する余裕のある企業が増えてきた。このため、非接触顔認証システムやカメラ遠隔監視システムなどへの問い合わせが増えた。当社のサービスラインナップも、フェーズごとの企業ニーズの変化に合わせながら、その都度拡充してきた。
質問:
どういった業種の日系企業からの引き合いが多いか。企業の反応は。
答え:
4月中旬の新事業を開始以来、消毒サービスやウイルス感染対策商品について、毎月20件前後の注文を受けてきた。あらゆる業種の日系企業から問い合わせがある。ただ、特に多いのが、新型コロナウイルスの感染が稼働率に直結する製造業だ。当社が拠点を置く北部や南部以外にも、西部をはじめインド各地から注文を受ける。
日系企業は、他企業がどの程度の対策をしているかということに関心が高い。当社は、そうした状況をよく理解している。その上、前述の通り、一式のサービスを一気通貫で提供できる。好評をいただいているのは、これらのためだろう。

「非接触化・省人化・遠隔監視化」への現地日系企業ニーズが高まる見込み

質問:
今後検討している事業について。
答え:
当社の新型コロナ関連サービスは、これまで提供してきた施設管理サービスの一部として定着すると考えている。また、感染拡大防止を目的とした「非接触化・省人化・遠隔監視化」が今後1~2年の間に一層求められるだろう。在インド日系企業では、ウィズ・コロナでの事業運営が求められることが明らかだ。これまで当社が培ってきたノウハウを生かすことで、進出企業各社の役に立てるよう尽力していきたい。
執筆者紹介
ジェトロ・アーメダバード事務所
丸崎 健仁(まるさき けんじ)
2010年、ジェトロ入構。ジェトロ・チェンナイ事務所で実務研修(2014年~2015年)、ビジネス展開支援部、企画部海外地域戦略班(南西アジア)を経て、2018年3月よりジェトロ・アーメダバード事務所勤務。