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輸出額は過去10年間で倍増、雇用は約2.5倍に
メキシコの医療機器製造業の現状(1)

2020年10月28日

メキシコの医療機器製造業は、対米向け輸出製造拠点として発展を遂げてきた。過去10年間で輸出額は倍増し、事業所数や雇用も伸びている。医療機器製造拠点としてのメキシコの魅力は、低コスト労働力の存在と、世界最大の医療機器市場である米国に隣接する地理的優位性だ。同分野の製造業は、特に米国カリフォルニア州の南に隣接するバハカリフォルニア州への集積が進んできた。米国企業をはじめとする外資系企業が多く進出し、米国を中心に世界に向けて輸出している。

メキシコを代表する輸出製造業の1つ

メキシコは総需要の28.1%、GDPの39.2%(2019年)を輸出が占める輸出立国だ。輸出の89.1%が工業製品で占められる。自動車やPC、テレビなどとともに、輸出額が大きいのが医療機器だ。医療機器の代表的な関税分類(HS)コード90.18項(医療用・獣医用の機器)の輸出額は、2019年に83億900万ドルに及んだ。コード上4桁ベースで、第9位の輸出品目ということになる(図1参照)。第1位の乗用車(HS87.03項)と比べると5分の1以下の金額だが、PC・同ユニット(84.71項)の4分の1強、原油(27.09項)の3分の1強、通信機器(85.17項)やテレビ・モニター(85.28項)の6割強を占める。HS90.18項に加え、90.21項の整形外科用機器・義肢など・骨折治療具、90.22項の放射線機器を合わせた輸出額をみると、2019年は99億7,200万ドルに達し、過去10年間で約2.2倍に拡大した(図2参照)。

図1:2019年のメキシコの10大輸出品目(HS4桁ベース)
乗用車(HS87.03)が508億9,700万ドル、PC・同ユニット(HS84.71)が323億1,200万ドル、自動車部品(HS87.08)が308億4,800万ドル、トラック(HS87.04)が266億2,300万ドル、原油(HS27.09)が224億900万ドル、通信機器(HS85.17)が130億4,000万ドル、テレビ・モニタ(HS85.28)が130億3,000万ドル、電導ケーブル(HS85.44)が124億9,700万ドル、獣医・医療用機器(HS90.18)が83億900万ドル、座席・同部品(HS94.01)が62億3,400万ドルと続く。

出所:国立統計地理情報院(INEGI)データから作成

図2:メキシコの主要医療機器(注)輸出額の推移
2009年は45億5,800万ドル、2010年は51億6,900万ドル、2011年は54億2,100万ドル、2012年は55億7,400万ドル、2013年は59億9,800万ドル、2014年は68億ドル、2015年は74億2,100万ドル、2016年は80億5,800万ドル、2017年は84億2,000万ドル、2018年は93億5,400万ドル、2019年は99億7,200万ドル。

注:統計の制約上、HS90.18,90.21,90.22項の合計で算出。
出所:国立統計地理情報院(INEGI)

メキシコの医療機器輸出の9割以上が米国向けだ。米国側の輸入統計をみると、2019年のメキシコ製医療機器輸入額は94億200万ドルに達し、過去5年間で47.1%増えた。米国の医療機器輸入額に占めるメキシコ製の比率は、18.1%に達する。アイルランドやドイツ、中国、スイス、日本などを上回って、最大の輸入相手国ということになる。2019年の伸び率は、上位5カ国の中でメキシコが最大。低コスト製造国として競合する中国が0.7%減少する中で、11.1%の伸びを見せている(表1参照)。米国がメキシコから輸入する医療機器の具体的な輸入品目をみると、HS9018.90号に分類される「その他の医療用・獣医用機器」が最も多い。カテーテル・カニューレなど、その他の診断用電気機器、整形外科用機器および骨折治療具、吸入器・呼吸治療用機器、補聴器、機械療法・心理学的検査機器など、歯用の取り付け用品、注射器と続く。過去5年で伸び率の高い機器をみると、その他のX線機器(歯科用を除く)、走査型超音波診断装置、眼科用機器などの輸入が大きく伸びている(表2参照)。

表1:米国の原産国別医療機器輸入額(単位:100万ドル,%)(△はマイナス値)
国名 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 伸び率
金額 金額 金額 金額 金額 金額 構成比 19/18年 19/14年
メキシコ 6,392 6,747 7,415 7,704 8,461 9,402 18.1 11.1 47.1
アイルランド 5,451 5,405 5,570 6,134 7,239 7,795 15.0 7.7 43.0
ドイツ 4,730 4,728 4,916 5,182 5,709 6,146 11.8 7.7 29.9
中国 3,641 4,019 4,358 4,554 4,902 4,869 9.4 △ 0.7 33.7
スイス 2,303 2,331 2,278 2,645 2,932 2,949 5.7 0.6 28.1
日本 2,245 2,330 2,285 2,421 2,524 2,465 4.7 △ 2.3 9.8
シンガポール 1,156 1,370 1,314 1,477 1,547 2,224 4.3 43.8 92.4
コスタリカ 1,258 1,476 1,626 1,744 1,965 2,185 4.2 11.2 73.7
イスラエル 647 660 815 900 1,087 1,156 2.2 6.4 78.6
フランス 949 902 985 1,078 1,165 1,088 2.1 △ 6.6 14.7
その他 8,232 8,696 9,437 10,014 10,806 11,672 22.5 8.0 41.8
全世界 37,003 38,663 41,001 43,854 48,337 51,953 100.0 7.5 40.4

出所:米国商務省統計局

表2:米国のメキシコ製主要品目別医療機器輸入額(単位:100万ドル,%)(△はマイナス値)
品名 2009年 2014年 2016年 2018年 2019年 伸び率
金額 金額 金額 金額 金額 構成比 19/14年 19/09年
医療用・獣医用機器 3,481.7 4,961.3 5,764.6 6,300.6 7,109.6 75.6 43.3 104.2
階層レベル2の項目その他の医療用・獣医用機器 2,098.6 3,038.8 3,402.1 3,658.6 3,769.9 40.1 24.1 79.6
階層レベル2の項目カテーテル・カニューレなど 1,053.2 1,290.5 1,702.8 1,881.7 2,451.9 26.1 90.0 132.8
階層レベル2の項目その他の診断用電気機器 227.2 439.8 460.1 475.7 550.2 5.9 25.1 142.1
階層レベル2の項目注射器 41.0 106.1 91.5 103.6 125.3 1.3 18.1 205.7
階層レベル2の項目金属製の管針および縫合用の針 36.1 51.4 64.9 51.8 97.4 1.0 89.7 169.9
階層レベル2の項目眼科用機器 0.0 1.5 5.5 51.6 60.2 0.6 4,036.6 188,215.5
階層レベル2の項目走査型超音波診断装置 4.4 0.4 0.8 41.1 21.3 0.2 5,444.0 381.7
階層レベル2の項目その他の歯科用機器 15.3 20.1 17.4 19.4 18.0 0.2 △ 10.5 17.3
階層レベル2の項目心電計 0.9 12.2 19.4 16.3 14.5 0.2 19.1 1,450.3
整形外科用機器・義肢など・骨折治療具 529.9 650.2 821.1 1,169.8 1,104.6 11.7 69.9 108.4
階層レベル2の項目整形外科用機器および骨折治療具 208.1 239.5 311.9 306.7 420.8 4.5 75.7 102.2
階層レベル2の項目補聴器 46.5 103.6 163.3 348.5 268.7 2.9 159.3 478.2
階層レベル2の項目歯用の取り付け用品 7.3 85.3 116.6 231.9 173.6 1.8 103.6 2,264.6
階層レベル2の項目その他器官の欠損などを補う機器 198.1 147.3 126.9 136.3 118.5 1.3 △ 19.5 △ 40.2
階層レベル2の項目その他の人造の人体の部分 67.2 65.8 97.2 140.5 118.1 1.3 △ 5.9 111.4
機械療法・心理学的検査・呼吸治療機器 355.6 430.5 452.4 534.0 656.8 7.0 52.6 84.7
階層レベル2の項目吸入器・呼吸治療用機器 305.7 239.0 267.4 287.0 361.7 3.8 51.3 18.3
階層レベル2の項目機械療法・心理学的検査機器など 49.9 191.5 184.9 246.9 295.1 3.1 54.1 491.3
放射線機器 99.6 146.6 171.5 225.7 267.3 2.8 82.3 168.4
階層レベル2の項目その他のX線機器(歯科用を除く) 0.1 0.2 9.7 75.9 122.6 1.3 57,544.4 101,339.5
階層レベル2の項目アルファ・ベータ・ガンマ線機器 36.0 63.5 65.7 80.3 85.9 0.9 35.4 138.8
階層レベル2の項目その他の放射線機器・部品 17.7 44.7 40.3 37.4 34.6 0.4 △ 22.7 95.4
階層レベル2の項目エックス線管 45.7 37.8 50.3 24.9 14.0 0.1 △ 62.9 △ 69.2
温度計・湿度計・気圧計など 60.5 124.1 126.5 145.8 167.0 1.8 34.6 175.9
階層レベル2の項目温度計およびパイロメーター 41.5 78.8 86.8 120.9 132.7 1.4 68.5 219.8
階層レベル2の項目温度計・湿度計・気圧計などの部品 12.7 33.8 25.8 13.8 18.3 0.2 △ 45.9 44.2
階層レベル2の項目その他のもの 6.3 11.5 13.8 11.1 15.9 0.2 38.3 151.0
その他の呼吸用機器・ガスマスク 10.5 17.7 20.7 21.8 20.6 0.2 16.3 96.5
医療用または理化学用の滅菌器 48.6 61.4 58.7 63.4 76.4 0.8 24.6 57.1
その他 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 △ 100.0
合 計 4,586.3 6,391.8 7,415.5 8,461.1 9,402.2 100.0 47.1 105.0

出所:米国商務省統計局

なお、メキシコ製の医療機器は日本にも輸出されている。日本の輸入統計によると、2019年の輸入額は前年比22.21%増の7億1,100万ドルだった。最も輸入額が大きいのはその他の電気医療機器(日本のHSコードで9018.90.021)で、前年比22.7%増の2億1,900万ドルに及んだ。その他の診断用電気機器(79.6%増)、走査型超音波診断装置(4.8倍)、整形外科用機器および骨折治療具(2.1倍)などの輸入が大きく伸びた。

カリフォルニア州と国境を接するバハカリフォルニア州に集積

国立統計地理情報院(INEGI)の5年に1度の経済センサスによると、2019年の医療機器および医療用素材を製造する事業所(注)の数は2,446カ所となった。5年前と比較すると9.6%増加したことになる(図3参照)。雇用総数は19万5,052人で5年前の47.0%増だ(図4参照)。事業所数よりも雇用総数の方が伸びているため、事業所当たりの雇用数は2014年時点の59.5人から79.7人まで増加している。製品分野別の特徴をみると、眼科製品は中小規模の事業所が多い。対して、消耗品や測定・管理・航行・電子医療機器は雇用規模が大きな企業が中心になる(表3参照)。医療・研究用非電子機器の1事業所当たりの雇用数は47.8人と中規模だが、10年前の26.4人、5年前の33.8人と比べると雇用規模が拡大している。

図3:医療機器・素材製造関連事業所数の推移
医療・研究用非電子機器の事業所数は2004年に1,332カ所、2009年に1,755か所、2014年に1,665カ所、2019年に1,703カ所。眼科製品の事業所数は2004年に149カ所、2009年に236カ所、2014年に283カ所、2019年に419カ所。医療用消耗品の事業所数は2004年102カ所、2009年に188カ所、2014年に181カ所、2019年に202カ所。測定・管理・航行・電子医療機器の事業所数は95カ所、2009年に137カ所、2014年に102カ所、2019年に122カ所。

出所:国立統計地理情報院(INEGI)「経済センサス」(2004/2009/2014/2019)から作成

図4:医療機器・素材製造関連雇用数の推移
医療・研究用非電子機器の雇用者数は2004年に34,536人、2009年に46,333人、2014年に56,358人、2019年に81,352人。眼科製品の雇用者数は2004年に4,556人、2009年に5,510人、2014年に6,917人、2019年に10,952人。医療用消耗品の雇用者数は2004年に25,681人、2009年に47,681、2014年に56,530人、2019年に79,994人。測定・管理・航行・電子医療機器の雇用者数は2004年に12,148人、2009年に12,723人、2014年に12,901人、2019年に22,754人。

出所:国立統計地理情報院(INEGI)「経済センサス」(2004/2009/2014/2019)から作成

表3:メキシコの医療機器関連事業所の製品・従業員数別内訳(単位:箇所)
項目 0~5人 6~10人 11~30人 31~50人 51~100人 101~250人 251人~ 合計
医療・研究用非電子機器 1,414 128 83 29 15 19 62 1,750
眼科製品 359 51 18 1 3 3 6 441
医療用消耗品 27 16 45 27 15 21 57 208
測定・管理・航行・電子医療機器 26 15 26 7 13 20 15 122
合計 1,826 210 172 64 46 63 140 2,521

出所:国立統計地理情報院(INEGI)「全国事業所ダイレクトリー(DENUE)2020」(2020年4月)

外資系企業を中心に、輸出向け製造を行う企業の多くが従業員数30人を超える規模だ。INEGIの全国事業所統計ダイレクトリー(DENUE)の最新データから雇用規模30人超の企業(313カ所)の州別の集積状況(図5参照)をみると、(1) バハカリフォルニア州(米国カリフォルニア州の南に接する)が最多で73カ所(23.3%)、(2) チワワ州(米国テキサス州エルパソ市の南に隣接し、国境工業都市フアレス市がある)が43カ所(13.7%)、(3) 首都メキシコシティーが26カ所(8.3%)、(4) ハリスコ州(メキシコ第2の都市グアダラハラがある)が25カ所(8.0%)、(5) メキシコ州(メキシコシティーの周辺)が24カ所(7.7%)、(6) ソノラ州(米国アリゾナ州の南に隣接)が24カ所(7.7%)、と続く。輸出向けに製造している企業はバハカリフォルニア州、チワワ州、ソノラ州などの国境州に多い。こうした企業のビジネスモデルは、輸出向け製造・マキラドーラ・サービス業振興プログラム(IMMEX)などを活用した保税加工が中心だ。

図5:従業員30人超の医療機器関連製造事業所の州別構成比
バハカリフォルニア州が73カ所で全体の23.3%、チワワ州が43カ所で同13.7%、メキシコシティーが26カ所で同8.3%、ハリスコ州が25カ所で同8.0%、メキシコ州が24カ所で同7.7%、ソノラ州が24カ所で同7.7%、ヌエボレオン州が17カ所で同5.4%、タマウリパス州が17カ所で同5.4%、コアウイラ州が13カ所で同4.2%、モレロス州が13カ所で同4.2%、その他が38ヵ所で同12.1%。

出所: INEGI, 2020年4月時点


注:
医療・研究用非電子機器、眼科製品、医療用消耗品、測定・管理・航行・電子医療機器の合計。厳密な分類が不可能なため、医療関係ではない製品を製造する事業所も一部含まれる。

メキシコの医療機器製造業の現状

  1. 輸出額は過去10年間で倍増、雇用は約2.5倍に
  2. 外資系大手の工場が集積するバハカリフォルニア州
執筆者紹介
ジェトロ・メキシコ事務所 次長
中畑 貴雄(なかはた たかお)
1998年、ジェトロ入構。貿易開発部(1998~2002年)、海外調査部中南米課(2002~2006年)、ジェトロ・メキシコ事務所(2006~2012年)、海外調査部米州課(2012~2018年)を経て2018年3月から現職。単著『メキシコ経済の基礎知識』、共著『FTAガイドブック2014』、共著『世界の医療機器市場』など。

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