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エジプトからスーダンへ売電開始、太陽光・風力発電が増加

2020年2月14日

エジプト政府は発電源の構成比で再生可能エネルギーの割合引き上げを目指しており、それを受けて太陽光発電などが急増している。政府は国内の大手建設企業や電力関連企業と一体となり、アフリカでの発電・送電関連プロジェクトの推進を狙っており、スーダンなど周辺国への電力輸出も開始される。

エジプトでは、1月にスーダンへの売電用に300メガワットの送電設備が完成し、政府は第1フェーズとして50メガワットの送電を順次開始すると公表した。現地報道によると、ムハンマド・シャーキル電力・再生可能エネルギー相は、サウジアラビアやキプロス、ギリシャなどにも2020年に売電を始めたいとし、民間発電と民間投資にも期待すると述べた。現時点のエジプトからの売電取引はヨルダンとリビア向けに限られる。

エジプトでは、2011年に「アラブの春」、2013年には政変があり、政治と経済が混乱し、加えて火力発電に必要な天然ガスの不足により、深刻な電力不足に陥り、当時は電力を輸出することは考えられなかった。2014年以降は政情も落ち着き、国際機関の支援もあって多くの発電所の建設が進んだため、他国に売電するまでの発電能力が生まれている。エジプト電力公社(Egyptian Electricity Holding Company、EEHC)によると、2014/2015年度の総発電量は17万4,875ギガワット時(GWh)、2017/2018年度には19万5,982 GWhまで増加した。また、スーダンやリビアなどアフリカ諸国では電力が不足しており、エジプト政府はエジプトの大手建設企業や電力関連企業と一体となり、アフリカでの発電・送電関連プロジェクトの推進を狙っている。

再生可能エネルギーの拡大を目指す

エジプトでは石油・ガスによる火力発電の割合が高い。火力発電のための国内燃料資源は枯渇の懸念もあり、海外からの資源の購入は財政を圧迫する。世界有数の貯水量を誇るアスワンハイダムによる水力発電は行われているものの、現状から発電量を増やすことは難しい。そのため、「Egypt’s Vision 2030」(注)で、再生可能エネルギーの比率を2014年時点の約9%(うち水力8%)から、2030年までに35%(うち太陽光16%、風力14%)に引き上げる目標を設定した。新再生可能エネルギー法など制度も整備し、民間による電力供給も推進している。

表1:エジプトの発電構成比と目標
2014年時点 2030年目標
火力発電(石油・ガス)91%
水力8%
太陽光・風力1%
火力発電(石炭)29%
火力発電(石油・ガス)27%
太陽光16%
風力14%
原子力9%
水力5%

注:「Egypt's Vision 2030:持続的開発戦略」(Sustainable Development Strategy: Egypt's Vision 2030)。2014年にアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領が就任して作成し、2015年に公表された2030年までのエジプト政府の基本目標。
出所「Egypt’s Vision 2030」

太陽光発電が急増、世界最大発電量の太陽光発電所も

太陽光発電については、世界銀行グループやフランス企業のボルタリアなどにより、南部アスワン県に世界最大となるベンバン・ソーラーパーク(ベンバン太陽光発電所群、地域合計で約1.8GW)が建設されている。既に一部完工部分から操業を始めており、エジプトの再生可能エネルギー供給を大きく進展させた。そのほか、アフリカ開発銀行などの支援もあり、多数の太陽光発電所の建設が進められている。(参考:IFCレポート「A New Solar Park Shines a Light on Egypt’s Energy Potential外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」)

太陽光発電の比率は2014/2015年度まではほぼ0%だったが、2016/2017年度には580GWhとなり、前年度比で約3.5倍と急増した。ベンバン・ソーラーパークやその他の太陽光発電所の稼働が増えることにより、発電量はさらに増加する見込みだ。

表2:発電の割合 (発電量単位:GWh、比率単位:%)(△はマイナス値、—は値なし)
発電方法 2014/2015 2015/2016 2016/2017
発電量 発電量 発電量 構成比 伸び率
火力 144,955 157,059 161,618 85.3 2.9
水力 13,822 13,545 12,849 6.8 △ 5.1
風力 1,444 2,058 2,200 1.2 6.9
太陽光 0 168 580 0.3 246.3
企業自家発電 35 42 35 0 △ 17.5
Boot方式(IPP) 14,338 13,307 12,145 6.4 △ 8.7
合計 174,875 186,320 189,550 1.7

出所:エジプト中央動員統計局(CAPMAS)

風力発電としてエジプト初のIPP事業が稼働

風力発電量は2016/17年度時点で2,200GWhとなり、対前年度比6.9%増となっている。2019年には、豊田通商とフランス、エジプト企業が共同出資するラス・ガレブウウインドーエナジーが、国際協力銀行(JBIC)や邦銀も含む協調融資を受け、紅海のスエズ湾沿いに262.5メガワット(MW)の風力発電所建設を完成させた。風力発電としてはエジプト初の独立系発電事業者(IPP)で、2019年に運転を開始し、今後20年にわたりエジプトに電力を供給する予定だ。


豊田通商が出資・運営に参画する風力発電所(豊田通商提供)

ロシアの協力で、エジプト初の原子力発電も

ロシアの協力によりエジプトで初めての原子力発電所も計画されており、ダバア原子力発電所(Dabaa Nuclear Power Plant)の建設が、2015年にウラジーミル・プーチン大統領とエルシーシ大統領により合意された。地中海沿いのマトルーフ県で2020年にも工事を開始し、2026年に4.8GWの発電の運転開始を予定している。「Egypt’s Vision 2030」では、2030年までに原子力発電の割合9%という目標を掲げている。

日本の支援による発電やスマートメーター導入

電力関連で日本の支援も行われている。再生エネルギー関連としては、国際協力機構(JICA)による2003年のザファラーナ風力発電事業、2006年のコライマット太陽熱・ガス統合発電事業などが実施されてきた。また、近年は風力や太陽光発電に加え、スマートメーター導入や電力セクター復旧改善事業を実施している。

表3:日本の支援による近年の電力事業
案件名 実施スケジュール
(予定)
概要
上エジプト給電システム改善事業 2019年8月完工 給電指令所の新築(上エジプト)とリハビリ(中エジプト)
ガルフ・エル・ゼイト風力発電事業 2018年7月完工 220MWの風力発電事業
配電システム高度化事業 2016年~2023年
(予定)
スマートメーター導入案件
ハルガダ太陽光発電事業 2016年~2021年
(予定)
20MW太陽光発電、30mWh蓄電池
電力セクター復旧改善事業 2016年~2024年
(予定)
カイロ北発電所
シディクリル発電所、エルアトフ発電所

出所:JICA資料を基にジェトロ作成

スマートメーター試験導入、電子決済でも支払い可能

エジプト中央動員統計局によると、2010年に8,044万人だった人口が2020年2月時点1億人を突破し、急増している。今後も年2%程度で人口が増加し、2050年には1億5,000万人に達する見込みのため、国内の電力需要は拡大すると予測されている。配電ロスの削減や電力供給の効率化につなげるため、スマートメーターの導入が開始されている(第1フェーズは約25万個、以降順次導入予定)。スマートメーターによる漏電の発見や電力消費の「見える化」で、電力消費を抑えることが期待されている。現在、電気料金は1~3カ月おきに回収員が個別に訪問して徴収しているが、徴収効率化のためにスマートメーター設置後には専用プリペイドカードによる決済が可能になる。なお、現状でも、エジプト地場の電子決済プラットフォームFawryによるスマートフォンアプリや提携店舗での電子決済による電気料金支払いも認められている。


スマートメーター機材とサービス概要のパネル(ジェトロ撮影)

電気料金の補助金を削減、値上げ

エジプト政府は電気料金に多額の補助金を補填(ほてん)してきたが、財政健全化のために補助を削減しつつある。そのため、電気料金が年々上がり、2016年には業務用電力1kWh当たり0.27~0.59エジプト・ポンド(約1.89~4.13円、LE、1LE=約7円。総使用量1,001kWh 以上、電圧による変動価格あり)に対し、2019年6月の法改正時に業務用電力1kWh当たり1.6エジプト・ポンド(総使用量1,001kWh 以上、電圧による変動価格なし)と、2~3倍の価格となった。なお、料金体系は、使用する電気量(kWh)が多いほど単価が高くなる。また、業務用と家庭用で単価が分かれており、家庭用の方が安価に設定されている。

表4:エジプトの電気料金(2019年改正版)
使用目的 料金(単位:エジプト・ポンド)
業務用 1kWh当たり料金(使用量による単価設定)
(1)1~100kWh: 0.65
(2)101~250kWh: 1.15
(3)251~600kWh: 1.4
(4)601~1,000kWh: 1.55
(5)1,001kWh以上: 1.6
家庭用 (1)0~50kWh: 0.3
(2)51~100kWh: 0.4
(3)101~ 200kWh: 0.5
(4)201 ~ 350kWh: 0.82
(5)351 ~ 650kWh: 1
(6)651 ~ 1,00kWh: 1.4
(7)1,001kWh以上: 1.45

出所:エジプト電力・再生可能エネルギー省、電力公益事業・消費者保護規制公社、首相令

広大な砂漠を活用して発電、輸出へ

エジプトの面積は日本の約2.7倍で、国土の約95%が砂漠だ。砂漠に住民はほとんどおらず、太陽光や風力の発電に利用できる土地は十分にある。内陸部の降雨量は年間わずか30ミリ程度で、年間を通して晴れているため太陽光発電に適している。エジプトは経済改革で産業育成を掲げており、国内での再生可能エネルギーの生産、海外への電力輸出、エジプト企業の海外での発電関連事業は、新たに注目される産業の1つとなっている。2017/2018年度のGDPに占める電力分野の構成比は1.7%と高くはないが、対前年度比4.2%の成長を記録している。原子力など発電所の建設増加を受け、2020年代の国内の電力需要次第では、将来、海外への電力輸出の拡大が期待される。電力供給先開拓のためにも、新たな取り組みとしてスーダンなど海外への電力供給の行方が注目される。

執筆者紹介
ジェトロ・カイロ事務所
井澤 壌士(いざわ じょうじ)
2010年、ジェトロ入構。農林水産・食品部農林水産企画課(2010年~2013年)、ジェトロ北海道(2013~2017年)を経て現職。貿易投資促進事業、調査・情報提供を担当。

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