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拡大・多様化するキャッシュレス決済(韓国)

2019年2月26日

クレジットカード、ICカード、携帯電話など、近年、現金を伴わない「キャッシュレス決済」が世界で急速に拡大・多様化している。特に隣国・韓国では、日常生活で現金を使用することはかなり少なくなっている。

韓国におけるキャッシュレス決済

2018年3月に日本の経済産業省が発表した「我が国におけるFinTech普及に向けた環境整備に関する調査検討」報告書によると、2016年のキャッシュレス比率は、日本が19.8%とかなり低い比率にとどまっている一方、韓国は96.4%と他国に比べ圧倒的に高い比率となっている。

図:諸外国におけるキャッシュレス比率(2016年、%)
韓国が最も比率が高く、96.4%となっている。次いでイギリスが68.7%、オーストラリアが59.1%、シンガポールが58.8%、などと続いている。日本は他国に比べかなり比率が低く、19.8%となっている。

出所:「我が国におけるFinTech普及に向けた環境整備に関する調査検討」報告書(経済産業省、2018年3月)

韓国のキャッシュレス決済の普及は、1990年代後半にさかのぼる。1997年の通貨危機の後、韓国政府は経済縮小への対策として、消費者向け与信を拡大することで消費を拡大する方針を採用し、さまざまなクレジットカード振興策を実施した。

消費者に対しては、300万ウォン(約30万円、1ウォン=約0.1円)を上限に、年間のクレジットカード利用額の20%を所得控除できるようにし、またクレジットカードの利用控に抽選番号を付与し、当選金があたるくじを実施した。一方、事業者に対しては、一定額以上の年間売上高のある事業者にクレジットカードの取り扱いを義務化し、カード支払いの拒否にはペナルティーを科すようにした。こうした振興策が功を奏し、消費の回復・拡大とともに、クレジットカードも急速に普及していった。

キャッシュレス決済の多様化

このように従来もクレジットカード使用率の高かった韓国だが、IT技術の進展とスマートフォンの普及に伴い、近年、新たに「簡便決済」と呼ばれるシステムが広がりを見せている。

簡便決済とは、スマートフォンの専用アプリケーションやバーコード、QRコードを利用する、いわゆるモバイル決済を指す。主なものとして、サムスンが自社のスマートフォンに標準装備している「Samsung Pay」、韓国最大手のポータルサイトNaverが運営する「Naver Pay」、韓国最大の利用者数を有するSNS、KakaoTalkと連携して開発された「KakaoPay」などが挙げられる。

韓国でも、インターネット上でのオンラインショッピングが一般的となって久しい。オンライン上の決済において、当初はクレジットカードが一般的であったものの、専用プログラムのインストールや複雑な認証手順などを要するため、非常に煩雑で手間のかかる作業であった。しかし、簡便決済の登場により、多くの場合、パスワード入力のみで決済が可能となった。

こうしたオンラインでの利便性とともに、クレジットカードを持ち歩く必要がないことから、オフラインでも簡便決済は急速に普及している。韓国銀行の発表によると、簡便決済の1日平均の利用金額は、2016年の260億430万ウォンから、2017年は671億8,260万ウォンと、前年比約2.5倍に急増している。

キャッシュレス決済の今後の課題

こうした中、拡大するキャッシュレス決済に衝撃を与える事故も起きている。2018年11月24日、韓国通信大手KTの支社で火災が発生。報道によると、火元が光ファイバーなど通信ケーブルの集中する場所だったため、十数万本の通信回線が寸断され、ソウル市西部の5つの区と隣接する京畿道高陽市の一部地域で、インターネットサービスと携帯電話が不通になった。

火災で通信が不通となった地域では、KTの通信回線や携帯電話を使用するクレジットカード決済、簡便決済が全て使用不可能になった。また、KTの通信回線を経由する銀行のATMも使用不可能となっていたため、現金を引き出すこともできなくなり、これらの地域では一時、大混乱となった。

キャッシュレス決済は、その利便性から、既に韓国の人々の生活に欠かせないものとなりつつある。今回の火災は、その事実を再認識させるとともに、そのもろさを露呈させることにもなった。

キャッシュレス決済を含め、あらゆるモノや情報がインターネットでつながっている現代社会。それを支える通信ネットワークを、いかに安全・安定的に運用するか。韓国のみならず、世界に共通する課題である。

執筆者紹介
ジェトロ海外調査部 中国北アジア課
友田 大介(ともだ だいすけ)
2001年4月ジェトロ入構。貿易開発部産業振興課、青森貿易情報センター、海外調査部調査企画課、ビジネス情報サービス部人材開発支援課、ジェトロ・ソウル事務所などを経て2018年9月より現職。

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