ラグビーワールドカップを機に日本への関心高まる(南アフリカ共和国、ナミビア)

2019年12月17日

日本で9~11月に開催されたラグビーワールドカップでは、南アフリカ共和国が優勝した。南アは過去1995年、2007年にも優勝しており、ラグビー強豪国として知られる。南アでは1990年代前半まで続いたアパルトヘイト(人種隔離)政策の名残から、ラグビーは白人のスポーツと言われてきた。このため、アパルトヘイト撤廃後の1995年に南アがワールドカップ地元開催での優勝を飾った際、初の黒人大統領(当時)であるネルソン・マンデラ氏が、黒人と白人の国民の融和を訴えて当時の代表チームをたたえたことは歴史的な瞬間となった。

また、今回の代表チームのキャプテンは、史上初となる黒人選手が務めたこともあり、国民の8割を占める黒人層の間でもラグビーファンが増えつつある。優勝決定戦にはシリル・ラマポーザ大統領も来日し、スタジアムで優勝の瞬間を選手たちと喜びを分かち合った。


ヨハネスブルクの中心部に設置されたパブリックビューイング(ジェトロ撮影)

ワールドカップに合わせて来日者数が大幅増

今回、日本がラグビーワールドカップの開催地となったことを機に、南アから多くの観光客が日本を訪れ、南ア国内における日本への関心も大きく高まっている。南アから日本への移動には20時間以上かかることからも、これまで地元の人々にとって日本は憧れの旅行先ではあるが、心理的に遠い国という位置付けにとどまっていた。他方で、最近では若者を中心に、日本食やアニメコンテンツといった日本の文化が徐々に浸透している様子もみられる。こうした中、地元の人々にとって思い入れの強いラグビーワールドカップが日本で開催されたことで、日本への関心は一気に高まった。

この機運を捉えようと、在南ア日本大使館では、ラグビーワールドカップの準決勝(日本対南ア)が行われた10月20日、訪日PRイベントを開催した。試合会場となった東京や大阪のほか地方都市も含め、各地の特産物や観光地などのPRが行われ、日本酒や日本食の試飲・試食会が行われた。日本大使館によると、日本への渡航査証の申請件数は2019年8月に約2,100件(前年同月の約350件から6.0倍)、同年9月には約2,300件(前年同月の約500件から4.6倍)と大幅に増えた。また、南アと並んで、アフリカからの出場国2カ国のうちの1つであるナミビアでも、日本への渡航者が増加した。在ナミビア日本大使館によると、日本への渡航査証の申請件数は2019年8月に約120件(前年同月の約20件から6.0倍)、同年9月には約190件(前年同月の約25件から7.6倍)となった。


南アフリカ優勝の瞬間を喜ぶ観衆(ジェトロ撮影)

東京五輪開催に向けてさらなる来日者数の増加に期待

近年の南ア国内の観光客の渡航先の傾向をみると、ケープタウンやダーバンといった国内の観光地の人気が根強いものの、海外の渡航先では英国、米国、タイ、フランス、イタリアなどが上位を占める。2019年はTICAD7(第7回アフリカ開発会議)やラグビーワールドカップなどの国際的イベントのため、多くの人が南アから日本を訪れた。当地旅行代理店の担当者に11月15日にインタビューしたところ、「当店を訪れる旅行者からは、日本はいつか行ってみたい国だが、遠いし比較的物価も高いので機会がなかったと聞く。ラグビーワールドカップ開催を機に南アでの日本への関心が増え、2020年の東京オリンピック開催に向けてさらなる訪日旅行者が増加することを期待したい」とコメントが寄せられた。さらに、当地のラグビー番組を放映するテレビ局のスポーツ番組担当者(11月25日に電話でヒアリング)は日本での取材を振り返り、「日本滞在中に日本のおもてなしの素晴らしさを随所に感じた。今回のワールドカップを通じて日本の文化や伝統、地元の人々の暮らしに焦点を当てたシリーズ番組(注)を作成したので、多くの視聴者に日本の魅力を感じてもらえれば」と語った。

日本を訪れる観光客の増加、そして日本のファンが増えること、2020年に開催される東京オリンピックなどを見据え、日本での滞在で得た経験が南ア社会に広がり、日本の魅力が伝わることを期待したい。


南アフリカの優勝を祝う地元のファン(ジェトロ撮影)

注:
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執筆者紹介
ジェトロ・ヨハネスブルク事務所
築舘 弘和(つきだて ひろかず)
2008年、ジェトロ入構。農林水産食品部(2008年~2010年)、ジェトロ鹿児島(2011年~2014年)、企画部企画課(2014年~2016年)を経て2016年8月より現職(ジェトロ・ヨハネスブルク事務所)。