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偽物摘発にDNA鑑定結果の法廷提出が有効(香港)
香港商品説明条例や日本産果実に関するセミナーを開催

2019年5月13日

ジェトロ香港事務所は3月7日、香港税関の協力を得て、「商品説明条例、日本産果実の特徴および表示等に関するセミナー」を開催した。在香港日本総領事館と香港日本人商工会議所が後援し、日本産農水産物・食品を扱う輸入商社、卸売企業、小売店、飲食店の関係者など約90人が参加した。

品種登録とともに商標登録も

セミナーは3部構成で実施された。第1部では、香港税関から商品説明条例(注1)について、説明と質疑応答が行われた。第2部では、熊本県を例にして熊本県香港事務所から日本産イチゴの特徴を、続いて青森県産業技術センターりんご研究所から、リンゴ黄色品種「王林」と「トキ」の特徴が説明された。第3部では、ジェトロ香港事務所から、香港の日本産果実市場の問題点と今後について、(1)商品説明条例違反となったこれまでの例、(2)日本で栽培されているイチゴ、リンゴの品種、生産量および輸出量、主な品種や特徴、(3)日本から香港への果実類の輸出量、シャインマスカットの事例、香港への日本産青果物の輸出ルート、包装の特徴などについて、写真や果物の実物の展示なども用いた説明の後、質疑応答が行われた。

セミナーの様子(ジェトロ撮影)

第1部の香港税関による商品説明条例の説明では、以下のような質疑応答が行われた。

質問:
日本産と表示できる配合比率は。
答え:
日本の原産地規則に従う。
質問:
商品表示とポスター表示のルールは異なるか。
答え:
日本の原産地規則に従う。
質問:
ケーキ、パン、飲食店での表示、配合率のルールはあるか。
答え:
ない。表示には裏付けが必要。証拠がなければ表示すべきでない。
質問:
表示は日本の都道府県別までルールが及ぶか。
答え:
強制ではないが、日本の規則に従う。こちらも証拠が必要であり、具体的な証拠がなければ、表示すべきではない。
質問:
税関は抜き打ち検査や覆面検査を行うのか。
答え:
抜き打ち検査や覆面検査も行われる。
質問:
仮に、あるリンゴジュースの成分の5~10%が日本産、残りが中国産の原料の場合、日本産と表示できるのか。
答え:
日本の原産地規則に従うが、その程度しか日本産果汁が含まれていなければ、日本産とは言えないと判断される。
質問:
飲料の場合で、(1)日本産茶葉を香港でボトリングした場合、(2)米国産原料のものを日本で味付けした場合は、それぞれどのような表示になるか。
答え:
最終加工地がどこか、また形態、性質、機能が大幅に変更になったかどうかで判断する。香港の原産地規則では(1)は香港製、(2)は日本製と表示して問題ない。例えば、中国産リンゴを日本に運び、日本で絞ってボトリングしたジュースは、香港のルールでは、日本産と表示することが可能だ。

第2部の日本産果実セミナーでは、3人の講師のほか、ジェトロ本部も加わり、質疑応答が行われた。

質問:
当地の報道によると、「福岡県産あまおう」と偽ったイチゴを販売したと香港内の農場主が訴えられた件で、告発を受けた香港税関がDNAを鑑定したところ、偽物と判断され、農場主には罰金刑を含む有罪判決が出たが、DNA鑑定はいつでも可能なのか。
答え:
産地などの協力が得られた初めてのケースで、快挙といえる。品種登録され、かつDNA検査が可能ならば、有力な証拠としてDNA鑑定結果を法廷に提出できる。
質問:
青森県では袋掛けで栽培される「ふじ」はあるか。
答え:
袋掛けをしないフジは「サンふじ」と呼ばれ、全体の8割を占める。残り2割が袋掛けをされた「ふじ」と区別される。袋掛けの方が、色がきれいで見た目も良く、肌触りもつるつるしており、貯蔵性に優れる。一方、袋なしのほうは肌触りがざらざらとしており、見た目も貯蔵性も袋掛けより劣るが、甘味は強くおいしい。青森県もリンゴ農家の高齢化が進み、袋掛け栽培は減ってきている。
質問:
日本の農産物もグローバルブランド化が進んでいる中、産地や開発者が商標登録をしていない理由は何か。金銭的なものが大きいのか。
答え:
農産品の登録の関係では、種苗法に基づく品種登録と商標登録の2つがある。開発者などの育成者は新たな品種を開発したら、品種登録はするが、輸出を念頭に置いておらず、育成者権を持つ者や産地による商標登録を失念している場合がある。または、「誰かが商標登録しているだろう」と思っている例もある。
質問:
表示が疑わしい事例で、品種登録なしに商品説明条例違反として摘発することは可能か。
答え:
まずは日本の育成者権を持つ者が品種登録をしていなければ、その品種の権利所有者が不明となり、摘発が困難となる。商品説明条例違反で取り締まりを行い、起訴する場合も、本来は権利所有者が香港の裁判所に出廷して証言をもらうことが重要だ。今回の福岡のイチゴの例では、DNA鑑定の結果を証拠として法廷に提出し、有罪判決を得た。商品説明条例のみで有罪を勝ち取るのは困難だ。
質問:
消費者が日本産品と簡単に見分けられるような知識を深めることも必要と思うが、国としての対策は何か行っているか。
答え:
農林水産省では、海外での品種登録の支援を行うほか、輸出予定がない品種も積極的に国外での品種登録や商標登録を検討するよう産地などに促している。科学的には、作物体に含まれる土壌由来の成分から日本産かどうかを特定することが可能で、現在はコメ、豆などで分析が可能。果実はその分析ができるものが少ないが、必要に応じて対応していく。
質問:
レストランが偽物の果物を仕入れてしまい、気付かずにお客さまに提供した場合、どのような責任が発生するのか。
答え:
小売店もレストランも商品説明条例の対象に入る。条例違反で起訴された場合でも、仕入れ先から産地の情報が確認できる書類を入手しておき、法廷で証言できるようにしておくことが重要だ。そうしておけば、レストランとして瑕疵(かし)がないと認められ、無罪となる場合がある。

質疑応答の様子(ジェトロ撮影)

不自然な日本語で「日本産」と称して販売する事例も

香港の果物輸入量のうち、日本産のリンゴ、モモ、ナシ、イチゴ、メロンは輸入額で首位もしくは3位から4位の上位に位置している。一方、一部の小売店で近年、不自然な日本語を用いて、日本産以外と思われる果物を「日本産」と称して販売している例が見られる。

このような中、2018年10月中旬に、青森県産リンゴ「トキ」を「王林」と偽って販売したとして、香港市内の62歳の青果物商の男性が商品説明条例違反の疑いで逮捕される事件が発生した(注2)。その際、店頭で販売されていたリンゴは香港税関に証拠として押収された。

その後、10月末に香港税関がジェトロ香港事務所を訪問し、その際に意見交換が行われた。香港税関からは、「輸入業者などに輸入品への適切な表示を促し、消費者の利益にも資する目的で、商品説明条例に関する説明会・セミナーをジェトロ香港事務所と共催したい」との提案があった。香港税関とジェトロ香港が相談と調整を行い、知的財産侵害物品の取り締まりの根拠となっている商品説明条例と、日本産果実に関する今回のセミナー開催に至った。

セミナーでの参加者アンケートからは、おおむね「大変有益」「有益」との評価を得た。特に、香港税関の説明や質疑応答を通じて、商品説明条例への香港税関の考え方などについての理解が深まったとの声が多数寄せられた。

ジェトロは今後も引き続き香港税関と協力しつつ、日本産農産品・食品の輸出に資するセミナーなどの取り組みを適宜行っていく。


注1:
消費者の権益を保護するための法令。商品の販売、役務(サービス)の提供の際、虚偽の説明をしたり、誤解を招く意図的な説明漏れ、脅迫的な営業手法、おとり広告宣伝など不当な営業手法をとったりすることを禁止している。2013年9月に法改正されている。
注2:
香港税関は、商品説明条例を所管し、表示方法の指導、消費者教育・情報提供だけでなく、違法案件の捜査、逮捕、起訴の権限も持つ。
執筆者紹介
ジェトロ・香港事務所市場開拓部長(農林水産・食品担当)
前田 久紀(まえだ ひさのり)
在米国ナッシュビル日本国総領事館領事(経済及び日系企業支援担当)、農林水産省政策統括官付農産企画課米穀貿易企画室企画官(日本産米の輸出プロモーション担当)などを経て、農林水産省より2018年6月にジェトロに出向、同月より現職。

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