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東大発の医療スタートアップがヘルスケアサービスを展開(バングラデシュ)

2019年8月2日

バングラデシュは、1億6,000万人の人口を擁し、消費市場としての可能性を大きく有している。現状では、医療市場への外資参入は少なく、世界保健機関(WHO)の「世界医療支出データベース(Global Health Expenditure Database)」によると、2016年のバングラデシュの医療費のGDPに占める割合は2.4%と、インド(3.6%)やベトナム(5.7%)に比べると小さく、成長の余地は大きい。こうした状況下、バングラデシュでヘルスケアサービスを展開する、東大発医療AIスタートアップである「miup(ミュープ)」は、日本企業としてバングラデシュの医療分野で成功モデルを作り、他国展開することでこれまで医療にアクセスできなかった人々に医療アクセスを届けることを目指す。miupの横川祐太郎COO(最高執行責任者)兼バングラデシュ法人社長から話を聞いた(5月17日)。

質問:
現在のバングラデシュの医療市場は。
答え:
現状、医療市場は7,000億タカ程度(約9,100億円、1タカ=約1.3円)と推計され、年間約10%の急成長をしている。バングラデシュでは、これまで問題になってきた感染症のほか、「非感染性疾患(Non-Communicable Diseases:NCD)」といわれる糖尿病や高血圧といった慢性疾患が混在している状況で、後者に関しては、対策がいまだに後手に回っている状況だ。日本では毎年の健康診断の受診が労働安全衛生法で定められているのに対し、バングラデシュでは予防のための健康診断を受診することは一般的でない。そのため、羅患(りかん)後に受診し重篤なケースが多い。また当社の調査では、インド国境に近いバングラデシュ西部地域では、インドまで医療を受診する場合もあることが分かった。今後、予防医療の普及と医療事情の改善を行うことで、非感染性疾患における国内需要の大幅な拡大が見込まれると考えている。
質問:
バングラデシュにおける医療市場の課題は。
答え:
諸外国に比べ、医師数が少ないことが大きな課題だ。医療が身近ではないため、重篤化してから医師にかかることが多い。最近われわれが強化している非感染性疾患の分野では、特に早期発見・早期対策が重要な分野であるため、医療をいかに身近な存在にしていくかが重要だと考える。感染症に対しても、現在は、多くの方が処方箋なしで薬を薬店で買っているような状況で、正しい治療が行き届いているとは言いがたい。遠隔医療と組み合わせることで、非感染性疾患、感染症ともに医療アクセスの改善を行い、バングラデシュ医療の一端を担いたいと考えている。
質問:
バングラデシュでの事業内容は。
答え:
バングラデシュでは、主に3つの事業に取り組んでいる。1つ目の検診・遠隔医療サービスでは、都市部でのデリバリー型の検診サービスを行っている。予約すると、メディカルスタッフが自宅まで派遣され、血液検査などを行う。自社のラボで解析の後、診断結果を受けて、医師からリモートで詳しい健康アドバイスを行い、重度の場合は、病院を紹介する。
2つ目は、臨床検査センターの受託と運営事業である。周辺クリニックからの検査受託のほか、病院が新設される際に、検査センター自体を丸ごとソフト・ハード面で一から作りあげ、運営も行う事業や、医療機関向けの顧客管理システムなどのソフトウエア開発も行う。
3つ目がAI(人工知能)を活用した検診・遠隔医療システムの開発だ。これまで医療にアクセスが難しかった農村部の人々を対象に、機械学習を用いて簡易検診するスクリーニングシステムや、問診結果から疾患を特定するシステムを開発している。

健康診断後に、オンラインのコンサルティングをする現地医師(miup提供)
質問:
事業展開における課題は。
答え:
事業スピードと政府との関係性だ。事業をスピーディーに進めることで、より早く多くの人々にサービス提供ができればと考えている。政府との関係性については、バングラデシュで医療サービスにおける規制が明確でない部分が多く、新規サービスを展開する事業者は、バングラデシュ厚生省に確認を取りつつ進める必要がある。規制が不明瞭な部分については、医療系スタートアップやサービスが普及することで、それが標準化されることを期待している。
質問:
今後の事業方針は。
答え:
遠隔医療の強化を行いたい。そのため、都市部や郊外の栄養士や医師などと連携し、遠隔医療を進めていくためのプラットフォームを構築している。また、医療保険を付帯したメンバーシップカードの提供を始めるなど、健康診断や遠隔医療だけではなく、「ヘルスケア」という大きい枠組みでメリットを受けられ、これを持っているだけで安心感が生まれるようなサービスに育てていきたいと考えている。
執筆者紹介
ジェトロ・ダッカ事務所
安藤 裕二(あんどう ゆうじ)
2008年、ジェトロ入構。アジア経済研究所研究企画部(2008~11年)を経て、2011年から実務研修生としてジェトロ・ダッカ事務所に赴任(2011~12年)。帰国後、生活文化・サービス産業部(2012~14年)で「ダッカスタイル」の編集等を担当する傍ら、「知られざる工業国バングラデシュ」(アジア経済研究所、2014年)の執筆担当。2014年からジェトロ浜松に勤務し、静岡県西部地域における海外展開支援を担当。2016年から内閣府規制改革推進室に出向し、規制改革、行政手続の簡素化に従事(2016~19年)。2019年3月からジェトロ・ダッカ事務所に赴任し、日系企業支援に取り組む。

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