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環境センサーで世界を変えるリベリウム(スペイン)
スペインのものづくり中小企業に聞く

2019年6月14日

世界120カ国に自社製環境センサーを広めるリベリウム(Libelium)は、スペイン・サラゴサに本社を置く中小企業だ。従業員は約60人と小規模だが、年商約6億円(2017年)、年間売上高伸び率30%の環境センサーを開発・販売する。

農業・水・環境・教育・研究部門のセールスマネージャーであるハビエル・ガバス氏に、同社のビジネスモデルについて話を聞いた(3月26日)。

大学のスピンオフが世界規模の企業に

リベリウムは、付近の壁に設置することで周囲の環境についてのデータを収集、管理することができる環境センサーを開発、販売する。同社製品は、温度や湿度、二酸化炭素(CO2)濃度、超音波、気圧をはじめ、100種類以上の環境データを取得できる機能に加え、太陽光発電を利用した自立運転機能を備え、屋外利用に適している。同社センサーが導入された環境は、ニカラグアのマサヤ火山から宇宙軌道まで多岐にわたる。さらに、他社製も含めたほとんどのハードウェアに適応できることも強みとなり、工場や農地、都市のスマート化プロジェクトに多数利用されてきた。

同社は、最高経営責任者(CEO)のアリシア・アシン氏と最高技術責任者(CTO)のダビッド・ガスコン氏が2006年、サラゴサ大学在学中に設立。以来、シーメンス、フィリップス、3Mなどの欧州企業に限らず、アメリカ航空宇宙局(NASA)、IBM、インテル、東芝などの大手企業・大学を中心に、1万以上の顧客を抱え、120を超える国への輸出実績がある。

ビジネスモデルの最終目的はエコシステムの構築

同社のセンサーは、今日さまざまな場面で利用されている。環境や教育分野においては、例えば、学校の校庭にセンサーを設置し、空気の状態が子供に適しているかを常時測る。また、農業分野においては、畑にセンサーを設置して温度や湿度、紫外線量、土壌温度などを測ることによって、より質の高い農作物の生産に貢献している。水・環境分野においては、化学工場の排水管にセンサーを設置し水質を測ることによって、改善指示を工場向けに、注意喚起を近隣住民向けに行う。

同社が直接提供するのはセンサーのみで、データを収集するソフトウェアなどは他社から調達する仕組みだ。ガバス氏によれば、同社の展開モデルは、特定のディストリビューターと独占販売契約を結ぶのではなく、世界各国のさまざまな企業を巻き込み、パートナーとしてプロジェクトに参画するスタイル。同氏は、これを「エコシステムの構築」と表現する。少数精鋭で120カ国以上のプロジェクトを管理するため、パートナー企業の社員の能力向上のためのトレーニングも実施している。また、迅速に、かつ全パートナー企業に着実に情報を発信できるよう、新しいプロジェクトに関する情報公開やプレスリリースから、社内公用語に至るまで、英語の使用を徹底している。

日本でも農業分野や福島第一原子力発電所の放射線量の測定に貢献

リベリウムは、日本でも多くのプロジェクトを手掛けている。半導体事業を軸にIoT(モノのインターネット)ビジネスを展開する菱洋エレクトロ(本社:東京)と、2018年2月から農業・食品分野での提携を開始した。提携プロジェクトの具体的な実績として、スペイン・ポンテベッラでブドウ畑の状況をリアルタイムでモニタリングすることによって、日単位で 3 種類の疫病発生予測を立て、疫病による被害を最小限に食い止めた。また、スペイン・サラゴサでは、食品や日用品関係のパッケージメーカー工場での各種データ管理、環境監視を行っている。

また、東日本大震災で2011年3月に発生した福島第一原子力発電所の事故を受け、同社は放射線を測定するための新しいセンサーボードの開発を開始。多くのメーカーとの協力の下、1カ月で自社センサーとチューブで接続すれば液晶画面に放射線の種類や量を表示できるようなボードを設計。無償で、日本のさまざまな関連チームに提供された。

同商品の開発目的は、市民レベルでの放射線測定支援であった。そこで、一般市民や民間団体からもアクセスしやすくするため、設計内容は一般公衆利用ライセンス(GPL)の下で公開された。

放射線測定分野では、クラウドデータ共有にも注力している。特定区域周辺の放射線レベルに関する情報源は、従来、政府のみだったが、安価な放射線センサーをクラウドデータの共有と組み合わせることにより、同社は情報源の多様化にも貢献している。

このようなイニシアチブの創出は、同社の一貫した目標だ。アシンCEOは「1970年代に情報通信の時代に入って以来、プロセスの変革と、新たなビジネス創出の源泉としてIoTに比類するものはない。IoTは次世代のグローバルな技術革新をもたらし、最終的にデジタルと物理の世界の融和を目の当たりにするだろう」「スペインは、数年前からスマートシティのシリコンバレーであり続けている」と、地元メディアで語った。同社はIoTや環境関連の展示会で賞を多数獲得し、同氏も女性起業家としてEU女性イノベーター賞(2018年)やスペイン女性リーダートップ100(2018年)など数々の賞を受賞している。

リベリウムは今日も、企業ロゴにも採用している「トンボ」(スペイン語で「Libélula」)のように、世界中でさまざまな関係者を巻き込みセンサーを必要な場所に届けている。


トンボが目立つリベリウムのロゴ(ジェトロ撮影)
執筆者紹介
ジェトロ・マドリード事務所
高 文寧(がお うぇにん)
2016年、ジェトロ入構。ものづくり産業部・ものづくり産業課(2016年4月~2018年8月)を経て現職

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