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アワミ連盟の圧勝、与野党にはしこりも(バングラデシュ)
2018年末のバングラデシュ総選挙

2019年1月18日

2018年12月30日に実施されたバングラデシュ総選挙は、与党のアワミ連盟(AL)がバングラデシュ民族主義党(BNP)に圧勝した。与党連合で95%を超える議席を獲得し、AL単体でも85%を占める。民主主義の復活を主張するBNPに対し、10年間の経済成長の実績を訴えたALが民意を得た結果だ。一方、野党は公平な選挙に向けて政党に属さない選挙管理内閣の設置を働き掛けたものの、与党はこれを受け入れず、与野党間に大きなしこりが残った。

ALとBNPの2大政党制

バングラデシュの国政与党は、国会の議席の3分の2を持つALだ。独立戦争時に西パキスタンで政治家として活躍した「建国の父」ムジブル・ラーマン氏を父に持つ、シェイク・ハシナ首相が率いる。自由と解放を求めた独立戦争の系譜から、より世俗主義的に変化し、政府の上層部にはヒンズー教徒や仏教徒の登用も見られる。ALは、独立を決定付けたインド援軍に恩義を感じる親インド派でもあり、特に中国の一帯一路政策をめぐる国際情勢を鑑み、インド側からもより一層の関係強化を求められている。

他方、実質的な最大野党はBNPだ。2014年の選挙をボイコットしたためBNPに国会の議席はないが、2014年にALが連勝するまでは、ALとBNPが選挙のたびに入れ替わり、政権を担ってきた。BNPは、独立戦争時にパキスタン兵でありながら、バングラデシュ側に翻って戦った英雄の故ジアウル・ラーマン氏と結婚した、カレダ・ジア氏が総裁を務める。ALと対立する過程で、同じくALと対立するジャマティ・イスラミなどのイスラム原理主義政党と手を組んでおり、イスラム色が強い。また、戦地でのインド軍とのあつれきも遠因となり、与党に比べてインドに傾倒しておらず、パキスタン寄りともいえる政党である。

高成長を達成した実績か、民主主義の復活か

今回の総選挙での両党のマニフェストには、大きな差はなかった。どちらも、経済成長戦略や貧困削減などの似たような政策が並んだ。しかし、両党の力点は大きく異なる。ALは過去10年の政権下でインフラ開発を中心とした成長戦略を実行し、目標を達成した手腕と実績を訴えた。バングラデシュは長年にわたってGDP成長率6%以上を持続しており、直近3年間は7%を超える経済成長を記録した。

他方、BNPは民主主義の復活を主張した。1971年の独立戦争で、パキスタン側に加担した戦犯への死刑判決が2015年、2016年に乱発されたことや、2018年2月のジアBNP総裁逮捕(現在も収監中)を中心とした野党への度重なる弾圧、現政権の日常的な汚職などを非難した。

AL圧勝も、しこりは残る

今回の総選挙で最も重要な争点となったのは、公正な選挙を実施できるか否かであった。2014年の総選挙では、ALは憲法に規定されていた選挙前の内閣解散および政党に属さない選挙管理内閣の組成をせずに、選挙を実施した。これに反発したBNPは選挙をボイコットし、国内外からその正当性を疑問視する声が上がった。今回の総選挙を控え、ハシナ首相は、度重なる野党および海外からの呼び掛けに、公正な選挙を約束してきた。しかし、最終的に今回も選挙管理内閣制度は採用せず、海外の選挙監視団の受け入れを承諾するにとどまった。

総選挙の投票は12月30日の午前8時から行われ、午後4時の投票時間終了後まもなく集計が始まった。集計中にAL優勢の報道が相続き、結果としてALを中心とする与党連合が300議席中288議席を確保した。AL単体でも257議席と8割超だ。残り12議席のうち、BNPは5議席で、BNPと連合を組んだ憲法起草者カマル・ホセイン氏率いるゴノ・ホラムが2議席、その他3議席だった。残り2議席は、候補者死亡などのトラブルにより、1月末までに再選挙が予定されている。投票率は全有権者の66%だった。

表:政党別の選挙結果
政党名など 議席数
与党連合 288
階層レベル2の項目 AL(アワミ連盟) 257
階層レベル2の項目 ジャティヤ党(国民党) 22
階層レベル2の項目 労働党 3
階層レベル2の項目 自由民主党 2
階層レベル2の項目 JASAD(国家社会主義党) 2
階層レベル2の項目 その他 2
野党20党連合 7
階層レベル2の項目 BNP(バングラデシュ民族主義党) 5
階層レベル2の項目 ゴノ・ホラム 2
その他政党 3
その他(候補者死亡など) 2
合計 300
出所:
ニュース報道など

総選挙の公正性について、監視団は「巡回した5拠点においては、公正で自発的な選挙が行われていた」との講評を発表した。しかし、野党は恣意(しい)的な選挙管理体制を指摘し、再選挙を要求している。47の選挙区では野党候補者を中心にボイコットされ、選挙当日は各所の暴動により少なくとも18人が死亡、200人が負傷した。独自に投票所を取材した現地メディアも、与党ALの意向が働いた選挙管理体制を批判している。

今回の総選挙は現与党の圧勝で終わった。野党は、ジアBNP総裁をはじめとした有力者が弾圧によって不在であることと、長期間にわたり政権を担えていないことなどから、求心力を失っている。逆に与党は、この総選挙を足がかりに一層、政治力を強めていくことが見込まれる。与党は再選挙を認めそうにないが、野党には「ハルタル(ゼネラルストライキ)」が民意の反発を招く、という過去の反省もある。総選挙後も全国規模の暴動は発生しないとの予想が多数だが、与野党間に大きなしこりを残す結果となった。

執筆者紹介
ジェトロ・ダッカ事務所
古賀 大幹(こが たいき)
2010年、ジェトロ入構。サービス産業支援課、アジア経済研究所研究管理課を経て、2015年8月より現職。

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