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官民挙げて農薬使用削減を目指す(フランス)

2019年5月21日

フランスはEUの中で最も農薬(植物病虫害防除剤)を使用している国の1つと言われているが、政府が化学農薬使用の削減計画を推進し、大手流通小売りも農薬削減へのさまざまな取り組みを行っており、官民を挙げて農薬使用の削減に動いている。消費者の農薬使用、残留農薬に対する目も厳しくなっており、フランスへ食品を輸出するに当たっては留意が必要だ。

政府は農薬使用削減の「エコフィト計画」見直し

フランス政府は2008年に、経済的に効率的な農業を維持しながら2018年までに化学農薬(植物病虫害防除剤)の使用を50%削減することを目標とした「エコフィト(Ecophyto)計画」を開始した。農薬使用量を評価するための指標の設定、研究機関と協力した農薬削減を実現させる農業システムや農法の調査や普及、植物病虫害防除剤使用者を対象とした研修教育や資格の義務化(注1)、非農業地区の農薬の削減など9つの軸を立てて取り組んだが、農薬の消費量は2009~2011年、2011~2013年にそれぞれ5 % 増加し、2014~2016年には12%増加した。

このような状況を受けて政府は計画を見直し、2015年からは2020年までに25%、2025年までに50%の削減を目標とした「エコフィト計画Ⅱ」として、生物的防除の促進、代替農法の研究やイノベーションをさらに強化するなど、農薬削減の取り組みを継続させている。

EUでは2018年4月末から、ミツバチなどの送粉昆虫に害があるとされているネオニコチノイド系農薬3種類のクロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムの屋外での使用を禁止したが、フランスではいち早く2018年9月1日から、これら3種類に加え、チアクロプリドとアセタミプリドの2種類も屋内外で使用禁止とした。これらは生物的防除剤で代替使用可能だとしている。

さらに、現時点では使用禁止にはなっていないが、マクロン大統領は除草剤のグリホサートに関して、「持続可能な選択肢を見つけ、フランスはグリホサートの使用から脱却する最初の国になる」と廃止の意向を語るなど、政府はますます農薬に対して厳しい姿勢を見せている。

競争・消費・詐欺防止総局(DGCCRF)は毎年、国産・輸入品の果物、野菜、穀物、加工食品をサンプリングし、公共のラボにより残留農薬の分析を行っており、特に輸入品に対する検査を強化している。

最新の残留農薬検査(2016年実施)では、国産品2,152点、EU域外国からの輸入品1,815点を含む計5,724点のサンプルの残留農薬(474種の活性物質)を分析した結果、野菜の3.1 %、果物の1.3 %からEU規則で許可されていない農薬が検出され、全体の約7 %は残留農薬基準値(LMR)を超えていた。さらに、輸入品の86点は通関を拒否された。

大手流通小売りも農薬使用削減に取り組む

一方、NGO団体グリーンピースはフランスの大手小売業界の代表的な7社に対し、2015年から毎年、「農薬ゼロレース」と称して農薬使用削減に向けた企業の努力を順位付けしている。2018年の結果は上位から、カルフールグループ、モノプリ、システムUグループ、ムスカテールグループ(アンテルマルシェ)、ル・クレールグループ、オーシャングループ、カジノグループとなっている。

このような背景もあり、各企業は化学農薬使用削減のため、独自の仕様書をサプライヤーに課すなどさまざまな取り組みを行っている。

例えば、カルフールグループは、同グループが掲げるAct For Food 第3条で化学農薬の使用を削減することをうたっており、「カルフール品質パートナー(Filières Qualité Carrefour)」ラベルを付す全ての野菜やフルーツに関しては、収穫後に化学農薬を使用しないことを取引の条件としている。

2位のモノプリは「ビーフレンドリー(Bee friendly)」という仕様書を33社の契約事業者と取り交わし、ハチなどの送粉昆虫やその生態系を守ることを第1の目標とし、さらにトレーサビリティー、遺伝子組み換え、農薬(植物病虫害防除剤)、生物多様性の保存に関しても厳しい基準を課している。

7位にランク付けされたカジノグループも、2018年からフランスの野菜フルーツの会社の組合が作る残留農薬ゼロラベル「新しい畑(Nouveau champs)」(注2)にさらに付加価値をつけるため、契約農家と種子の選定や土づくりに関する仕様書を取り交わした「カジノアグリプラス」というラベルをつけることで、限りなく農薬を排除した栽培であることをPRし、イメージの向上を図っている。

有機輸入食品の残留農薬に厳しい目

他方、フランスにおける有機食品の3割が輸入品であること、日本を含むEU域外国の有機食品の制度の「同等性」に対する懸念から、雑誌「6,000万人の消費者」〔フランスの国立消費研究所(INC)発行〕2018年4月号は、コメ、シリアル、砂糖、コーヒーなど8点の有機マークがついた輸入加工食品の残留農薬とその他の含有物質の含有率の調査を発表した。

この調査では74点を検査し、600種の農薬の混入率を、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、質量分析法の3つの手法で分析したところ、上記の大手流通小売りのPB商品や輸入品に対して低い評価をしている。大手流通小売りが今後、消費者の目を踏まえ、有機食品に対してもさらに厳しい基準を設けることも考えられる。

ここでは一例として、国内外の有機チョコレート、有機オリーブオイル、有機キノア、有機米の分析結果を紹介する。

表:輸入加工食品の残留農薬調査結果

ダークチョコレート
メーカー名 Alter Eco Terra Etica Carré Suisse Saveur et Nature Bonneterre Ethiquable *Casino Bio Etuiquable Kaoka *J.D.Gross (Lidi) Côte d'or
特機事項 フェアトレード フェアトレード フェアトレード フェアトレード 有機契約農家
原産国 トーゴ ニカラグア インド タンザニア コスタリカ マダガスカル ペルー コートジボワール エクアドル エクアドル ドミニカ共和国
価格 (€)/kg €27.00 €30.00 €42.00 €50.00 €39.00 €26.00 €19.00 €35.00 €20.00 €10.00 €25.00
残留農薬 5 5 5 5 5 5 5 4 4 3 3
オリーブオイル
メーカー名 Vigean Vairo BonneTerre A l'Olivier Cauvin Gabro Bio planète Vallon de l'allemande Bio planète L'olivier Heureux Crudolio *Bio Village
(E.leclerc)
原産国 スペイン イタリア スペイン フランス スペイン イタリア フランス フランス チュニジア チュニジア イタリア チュニジア
価格 (€)/ℓ €12.30 €21.00 €15.00 €29.00 €16.00 €13.00 €40.00 €33.00 €17.00 €26.00 €16.00 €7.00
残留農薬 5 5 5 5 5 4 4 3 5 5 4 4
キノア
メーカー名 Alter Eco Ethquable Biocoop Carrefour
Bio
Biothentic La Vie Claire Famille
Rochefort
原産国 ペルー エクアドル フランス ぺルー ボリビア ボリビア フランス
価格 (€)/kg €11.80 €9.40 €11.70 €8.70 €11.00 €11.00 €16.00
残留農薬 5 5 5 5 4 3 2
コメ
メーカー名 Markal *Casino BIO Priméal *Carrefour
Bio
Autour du Riz *BIO Village
(E.leclerc)
*U Bio La vie Claire Taureau Ailé *Monoprix
Bio
原産国 イタリア タイ 米国 フランス カンボジア フランス タイ イタリア インド/
パキスタン
パキスタン
価格 (€)/kg €4.10 €4.90 €3.32 €1.99 €8.95 €2.54 €2.73 €4.59 €2.99 €2.45
残留農薬 5 5 5 5 5 5 4 4 1 2

*は大手流通小売りのオーガニックPB商品。
評価基準 : 5 とても良い、4 良い、3 許容できる、2 十分ではない、1 不十分
出所:「6,000万人の消費者」〔フランスの国立消費研究所(INC)発行〕2018年4月号基にジェトロ作成

フランスに食品を輸出する場合、官民を挙げて農薬使用削減へ動いている中で、現地流通企業から農薬使用について厳しい条件を課されることが想定されるため、留意が必要だ。また、農薬に関する規制の動向を引き続き注視しておく必要があるだろう。

一方、「無農薬」「無化学肥料」などの表示について、EUやフランスでは日本と違って(注3)、「農薬不使用栽培」に関する直接的な規制やガイドラインはない。「農薬不使用」のラベル表示を消費者に正しく伝える観点から、事業者は「正確である」「 消費者に誤解を与えない」ことを尊重した上で、仕様書などを作成し、説明責任を果たす必要がある。「残留農薬ゼロ」表示に関しても、「不使用栽培」同様に公式な規則は規定されていないが、多くの場合、定量下限値0.01mg/kg未満であることが仕様書に規定されている。「農薬不使用栽培」といった記載やラベルの表示をするためには、EUで定義されている化学農薬(注4)を一切使わずに栽培されたと証明できる基準を設けた仕様書を事業者がサプライヤーに厳守させなくてはならない(注5)。


コンビニやスーパーで入手できる残留農薬ゼロラベル(ジェトロ撮影)

注1:
「フィト認定(Certifi`phyto)」2015年より植物病虫害防除剤使用者や販売者は取得が義務化、2010年から2017年までに約62万人が資格を取得している。
注2:
フランスの52社、生産者3,000人が加盟しており、認証団体によって検証された仕様書を使用し、残留農薬検査はフランス認証委員会(COFRAC)またはEU内の同等の機関によって認証された独立したラボで分析されている。
注3:
日本では、消費者に誤解を与えないようにするため、「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」で禁止されており、農薬を使用していない農産物には「農薬:栽培期間中不使用」と一括表示欄に表示するようになっている。
注4:
欧州委員会規則(EC) No 1107/2009 (「植物防疫剤の販売ならびに理事会指令79/117/EEC および 91/414/EEC の廃止に関する、2009 年10 月21 日付 欧州議会および理事会規則(EC)No 1107/2009」)
注5:
アジャンス・ビオへの質問の回答による。
執筆者紹介
ジェトロ・パリ事務所
浅見 武人(あさみ たけひと)
2010年、農林水産省入省。2018年7月より現職(出向)。農林水産・食品関係業務を担当。

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