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自動車産業、上半期は苦戦 部品メーカにも影響(ドイツ)
自動運転やEV導入へ積極投資進む

2019年8月15日

ドイツの大手自動車メーカーは2019年上半期の新車出荷台数を発表、各社とも前年同期と比較して減少または微増にとどまるなど苦戦した。一方、各社は自動運転や電気駆動モデルに関連する投資を積極的に行っており、開発に伴うコストの低減や市場の拡大などを目的に、他の自動車メーカーなどと連携する動きも目立つ。本稿では、ドイツ自動車産業の上半期の動向を振り返るとともに、自動運転や電気駆動モデル普及に向けた動きを紹介する。

新車出荷台数は各社とも苦戦

ダイムラーグループの2019年の上半期の新車出荷台数は113万4,729台(スマートを含まず)と前年同期比で4.6%減少した(表1参照)。同社はこの背景として、今期は人気車種であるスポーツ用多目的車(SUV)のモデルチェンジの過渡期となった点を挙げている。国・地域別の新車出荷台数をみると、欧州は45万7,595台と前年同期比で4.0%減少し、うち、ドイツは2.7%減少した。アジア大洋州では、主要市場である中国が34万4,657台と1.3%伸びたが、地域全体では47万8,254台と3.1%の減少に転じた。北米自由貿易協定(NAFTA)地域は、米国市場での販売不調が響き(14万7,396台、7.2%減)、地域全体では174,409台、8.8%減と落ち込んだ。

表1:ダイムラーの自動車販売台数(2019年上半期)(単位:台、%)(△はマイナス値)
国・地域 出荷台数 前年同期比
欧州 457,595 △4.0
階層レベル2の項目ドイツ 147,351 △2.7
アジア大洋州 478,254 △3.1
階層レベル2の項目中国 344,657 1.3
NAFTA 174,409 △8.8
階層レベル2の項目米国 147,396 △7.2
全世界(その他含む) 1,134,729 △4.6

注:スマートを含まず。
出所:ダイムラー・ウェブサイト

BMWグループの2019年上半期の自動車出荷台数は、125万2,837台と0.8%の微増となり(表2参照)、初めて上半期の販売台数が125万台を上回った。国・地域別にみると、ドイツでは16万3,862台と4.1%の伸びを記録した一方、英国では12万349台と3.0%の減少となり、欧州全体での販売は54万9,894台と2.1%の減少となった。アジアでの販売は引き続き好調で、全体で45万2,245台と6.9%増加した。中国市場では35万70台を出荷し、16.8%の増加を記録、日本でも3万6,768台と1.6%増加した。米州では22万1,438台と1.8%減少、そのうち、米国は17万4,023台で1.1%減だった。

表2:BMWグループの自動車販売台数(2019年上半期)

国・地域別(BMW・ミニ)(単位:台、%)(△はマイナス値)
国・地域 出荷台数 前年同期比
欧州 549,894 △2.1
階層レベル2の項目ドイツ 163,862 4.1
階層レベル2の項目英国 120,349 △3.0
アジア 452,245 6.9
階層レベル2の項目中国 350,070 16.8
階層レベル2の項目日本 36,768 1.6
米州 221,438 △1.8
階層レベル2の項目米国 174,023 △1.1
階層レベル2の項目ラテンアメリカ 25,581 △1.4
全世界(その他含む)(注1) 1,252,837 0.8
ブランド別(単位:台、%)(△はマイナス値)
ブランド名 出荷台数 前年同期比
BMW 1,075,959 1.6
MINI 174,344 △3.9
BMW電気自動車部門
(BMW elektrifiziert)(注2)
59,593 △1.8
ロールスロイス 2,534 42.3
BMW二輪車門(BMW Motorrad) 93,188 7.1

注1:BMW、ミニ、ロールスロイスの合計。
注2:BMWi/BMWiperfomance/ミニ Electric。
出所:BMWウェブサイト

フォルクスワーゲン(VW)の2019年上半期の出荷台数は前年同期比で2.8%減少し、536万5,300台だった(表3参照)。国・地域別にみると、欧州での出荷台数は0.9%減少し、239万7,500台だった。ドイツでは0.7%と微増、ロシアは4.1%の伸びを記録した。アジア大洋州での出荷台数は、その大半を占める中国での減少(出荷台数191万6600台、3.9%減)を受け、前年同期比で4.9%減の205万7,300台となった。北米をみると、地域内最大の販売先である米国は31万8,400台と2.1%増加したものの、地域全体は46万600台と1.0%落ち込んだ。南米では、ブラジルが22.8%と著しい伸びを見せたが、0.9%の増加にとどまった。

表3:VWグループの自動車販売台数(2019年上半期)

国・地域別(単位:台、%)(△はマイナス値)
国・地域 出荷台数 前年同期比
欧州 2,397,500 △0.9
階層レベル2の項目西欧 1,999,400 △0.8
階層レベル3の項目ドイツ 714,800 0.7
階層レベル2の項目中東欧 398,100 △1.3
階層レベル3の項目ロシア 107,100 4.1
アジア大洋州 2,057,300 △4.9
階層レベル2の項目中国 1,916,600 △3.9
北米 460,600 △1.0
階層レベル2の項目米国 318,400 2.1
南米 283,400 0.9
階層レベル2の項目ブラジル 214,100 22.8
全世界(その他含む) 5,365,300 △2.8
ブランド別(単位:台、%)(△はマイナス値)
ブランド名 出荷台数 前年同期比
フォルクスワーゲン 2,998,200 △3.9
アウディ 906,200 △4.5
シュコダ 620,900 △4.9
セアト 314,300 8.4
ポルシェ 133,500 2.2

出所:VWウェブサイト

自動車市場動向の先行きを不安視するサプライヤー

米中の貿易摩擦の激化や、英国のEU離脱問題の不透明化、中国での景気減退などを背景に、世界的な経済成長の先行きが不安視される中、ドイツの自動車部品メーカーでは、完成車メーカーの生産減速による影響を警戒する動きが強くなっている。

ベアリングなど自動車用精密部品を手掛けるシェフラーグループは7月29日、2019年の世界の自動車製造台数が前年比で4%減少するとし、2019年度の売り上げと利益予測を下方修正すると発表した。同社は2月の段階では、自動車製造台数について1%の減少を見込んでいたが、市場の想定以上の減速のため、計画変更を余儀なくされた。7月22日には自動車部品大手のコンチネンタルが、欧州や北米、中国での自動車製造台数の減少、長期化する貿易摩擦による先行きの不透明感などの理由から、売り上げと利益予測を同じく下方修正している。また、自動車用プレス機製造大手のシューラ―は7月29日、ドイツでの生産の縮小と約500名の人員削減を発表した。その一方で、大手自動車メーカーの生産の国際化へ対応すべく、今後は中国やブラジルでの生産を強化するとともに、コスト削減による競争力の維持を図るとしている。パワートレインやろ過、サーマルマネジメントなどに強みを持つマーレも5月に、主に間接部門の人員削減を行うことを発表、本社の従業員4,300人のうち、380人の雇用を削減するとしている。

急速な市場変化により窮地に立たされる企業も出てきた。7月29日、自動車用塗装装置を製造するアイゼンマンが破産の申し立てを行うと発表した。2018年にさまざまな事業を獲得・遂行する中で多くの損失を計上したという。同社は3月からグループの再編を行っているが、今後は他企業との提携によって再建を目指すとしている。

自動運転技術の導入を積極的に推進

ドイツ自動車産業連合会(VDA)のベルンハルト・マッテス会長は7月2日の定例記者会見で、「デジタル化やネットワーク化、自動運転などのイノベーションの推進」をドイツの自動車産業にとっての最重要課題の1つに挙げている(2019年7月16日付ビジネス短信参照)。ドイツの自動車大手3社は企業間提携などを通じ、自動運転分野での積極的な研究開発・導入に向けた取り組みを進めている。

VWは7月12日、開発に伴うコストの低減と市場の拡大などを目的に、自動運転および電気自動車(EV)分野における米自動車大手フォードとの提携を拡充すると発表した(2019年7月18日付ビジネス短信参照)。自動運転分野では、技術開発を行うフォード傘下の「アルゴAI」に対し、VWグループが26億ドル相当を投資し、フォードと対等な立場で開発に携わる。アルゴAIの自動運転システムは、欧州や米国で商業ベースでの採用が計画される初めてのシステムで、今後、両社はそれぞれの自社モデルへの導入を進める予定。EV分野では、VWが開発するEV用の車体プラットフォーム(MEBプラットフォーム)をフォードに供給し、EVモデルの設計・製造を行うことを発表した。VWのヘルベルト・ディース最高経営責任者(CEO)は「今後さらなる提携に向け、協議を続けていく」としている。

また、BMWグループとダイムラーグループは7月4日、自動運転技術の迅速な市場投入を目的に、自動運転の長期的な戦略的提携に関する契約に署名した(2019年7月24日付ビジネス短信参照)。提携では、先進運転者支援システムや高速道路における自動運転、自動駐車システムなど、それぞれ自動運転レベル4(注)までの次世代技術の共同開発に焦点を合わせる。今後、高速道路だけではなく、都市圏での自動運転の導入に向けた提携の拡大についても視野に入れるという。両社はこの自動車運転技術の自社の自動車への導入を進め、2024年に投入予定の新モデル乗用車に搭載する予定だ。

自動運転技術は近い将来、われわれのより身近で見られるようになるかもしれない。ボッシュとダイムラーは7月23日、ドイツ南部のバーデン・ビュルテンベルク州にあるメルセデスベンツ博物館で、自動駐車システム運用の許可を受けたと発表した。レベル4の完全な自動運転の駐車システムで、日常の使用条件下で許可を得たのは世界で初めてだという。運転手は不要で、利用者はスマートフォンのアプリを通じて自動車を駐車させることができる。駐車場内に設置されたセンサーにより、駐車場内の走行ルートを監視し、自動運転に必要な情報を提供、これらの情報を自動車内部のシステムが受信し、自動車を操作する。両社は2015年からシステムの開発をスタートし、2017年夏に初めてコンセプトを一般公開、2018年からは、指導員の付き添い、監督の下で一般来場者が体験できるようになっていた。その後さらなる試験や研究開発の結果、システムの安全性が認められ、当局から自動運転に関する正式な許可を得るに至ったという。

電気駆動モデルのさらなる投入へ邁進

ドイツの自動車産業は気候変動対策への貢献を強く求められており、EVをはじめとする代替駆動への投資を積極的に進めている(表4参照)。各社は既に電気駆動モデルの投入目標や電池の調達に関する長期的な計画を発表しており、今後関連する投資や研究開発が積極的に行われる見通しだ。(2019年1月15日付ビジネス短信参照)。

BMWグループは6月25日、「2025年までに少なくとも25の電気駆動モデルを市場へ投入する」というこれまでの計画を2年前倒しにし、2023年までに実現すると発表した。このうち半分以上は純粋なEVとなる予定としており、EVを精力的に市場へ投入していく姿勢を鮮明にしている。

VWも6月、スウェーデンのリチウムイオン電池メーカーのノースボルトと、ドイツ北部の都市ザルツギッターに年間16ギガワット時(GWh)相当の生産能力を持つリチウムイオン電池セルの生産工場を建設すると発表した(2019年6月24日付ビジネス短信参照)。生産能力を増強し、最終的に年間24GWh相当の生産を目指すという。工場の建設開始は早ければ2020年、生産開始は2023年末か2024年を計画している。工場建設に向けて、両社は出資比率50%ずつの合弁会社を立ち上げる。VWは約9億ユーロを拠出し、ノースボルトとの合弁会社設立に充てるほか、ノースボルトの株式20%を取得する。

表4:各社のEV導入・電池調達に向けた取り組み
社名 EVの導入 電池調達・製造の取り組み
VW
  • 2019年3月、2028年までに70近くのEVモデルを投入すると発表。EVの割合は、2030年までに全体の40%以上を占める予定。
  • EV化を促進するため、2023年までにEV化に300億ユーロ以上を投資。
  • 同社が推し進めるEVプラットフォームMEB(Modular Electric Toolkit)は、今後10年間で2,200万台に搭載される方針。
  • 2050年までにグループ全体で脱炭素化を実現。すべての工場の二酸化炭素排出量を2025年までに2010年比で50%削減。
  • 2018年11月、2019年からの欧州における生産には蓄電池を韓国のLG化学、サムスンSDI、SKイノベーション、中国については電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)から調達すると発表、契約規模は200億ユーロに達する見通し。2022年からは米国生産分についてもSKイノベーションから蓄電池を調達する予定。
  • 2019年4月、中国のガンフォンリチウムとリチウムの長期供給に関する覚書を締結。
  • 2019年6月、スウェーデンのリチウムイオン電池メーカーであるノースボルトと、年間16ギガワット時(GWh)相当の生産能力を持つリチウムイオン電池セルの生産工場をドイツ北部の都市ザルツギッターに建設すると発表。その後、生産能力を増強し、最終的に年間24GWh相当の生産を目指す。
ダイムラー
  • 2022年までに全てのモデルで電動化を実施。純EV車を10モデル以上投入するほか、プラグインハイブリッドや48ボルトの電動化システムなど、バリエーションは130を超える。バンやバス、トラックといった商用車部門での電動化も積極的に進める方針。
  • 2025年までに、EVおよびプラグインハイブリッド車(PHV)を含む電気駆動車種の売上を全体の15~25%とする。
  • 電気駆動モデルの拡充に向け、100億ユーロの投資を実施。
  • 2018年12月、電池セルの購買に200億ユーロを投じると発表。電池セルは世界市場で購入し、電池工場で組み立てられる。
  • 3大陸7都市、9工場で電池の生産体制を構築すべく、10億ユーロ以上を投資。各地での供給体制を確立し、各市場のニーズに柔軟に対応。
  • 子会社アキュモーティブ(ACCUMOTIVE)のカメンツ工場(ドイツ)で、2012年からリチウムイオン電池を生産。5億ユーロを投資し、2017年5月に第2工場の建設を開始、電池生産にかかる敷地は80,000平方メートルと4倍に拡大する。2019年春にベンツのEV「EQC」用に大量生産を開始。
  • カメンツほか、シュツットガルト近郊のウンタートゥルクハイム(ドイツ)で2工場、ジンデルフィンゲン(ドイツ)、北京(中国)、ヤボール(ポーランド)で工場を建設予定。 トゥスカローサ(米国)、バンコク(タイ)で工場の建設を開始。
  • 2019年4月、次世代リチウムイオン電池の開発のため、米国の化学素材メーカーSila Nanotechnologies へ出資し、提携進めると発表。
BMW
  • 2019年6月、「2025年までに少なくとも25の電気駆動モデルを発売する」というこれまでの計画を2年前倒し、2023年までに実現すると発表。そのうち約半分は純粋なEVとなる予定。
  • 2021年の電気駆動モデルの売り上げは2019年比で倍増、電気駆動モデルの売り上げは2025年まで毎年平均で30%以上増加すると予想。
  • 世界10カ所でEVを既に製造。2019年にはグループ傘下のミニのオックスフォード工場(英国)で純粋なEVのミニの製造を開始するほか、2020年には瀋陽(中国)、2021年にはティングルフィン(ドイツ)、ミュンヘン(ドイツ)の各工場でBMWのEVモデルの製造を開始。
  • 2017年11月、電池セルの技術の推進するためのコンピテンスセンターをミュンヘンに設立、2019年に開所予定。2021年まで2億ユーロを投資、200名の従業員が従事する予定。
  • 2018年第3四半期に、中国の電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)と電池セルの購買契約を締結、数年間にわたって40億ユーロ相当の電池セルを調達。また、CATLは2021年からドイツ・エアフルトに新しく建設される工場で電池セルを生産する予定。
  • 電池の製造に必要となるコバルト等の原材料についても将来的に自身で調達することを検討。
  • 2018年10月、スウェーデンの新興リチウムイオン電池メーカーのノースボルト、ベルギーの非鉄金属大手ユミコアと協働し、EV向けバッテリーのリサイクル技術の確立を目指すコンソーシアムを発足。
  • EV用の電池はディンゴルフィング(ドイツ)、スパータンバーグ(米国)、瀋陽(中国)で生産。ディンゴルフィング工場は電気駆動システムのコンピテンスセンターとして主要な役割を果たす。

出所:各社発表を基にジェトロ作成

VDAのマッテス会長は7月2日の定例記者会見で、ドイツの自動車産業は今後3年間で400億ユーロを代替駆動技術に投資、さらに2023年までに150以上の電動駆動モデルを市場に投入すると説明している。一方、電動駆動自動車普及のカギとして、公共や民間の充電インフラストラクチャーを急速かつ持続的、包括的に拡大する必要を指摘したうえで、「2030年までに100万の公共の充電スタンドと10万の高速充電スタンド、さらに数百万の民間充電スタンドが必要」とし、連邦や州政府、関係団体などへの協力を求めている。


注:
自動運転レベル0は運転自動化なし、レベル1は運転支援、レベル2は部分的運転自動化、レベル3はある条件下での運転自動化、レベル4は分離領域における高度運転自動化、レベル5では完全運転自動化。
執筆者紹介
ジェトロ・デュッセルドルフ事務所
ベアナデット・マイヤー
2017年よりジェトロ・デュッセルドルフ事務所で調査および農水事業を担当。
執筆者紹介
ジェトロ・デュッセルドルフ事務所 ディレクター
森 悠介(もり ゆうすけ)
2011年、ジェトロ入構。対日投資部対日投資課(2011年4月~2012年8月)、対日投資部誘致プロモーション課(2012年9月~2015年11月)を経て現職。

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