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香港ではどのような牛肉が好まれるのか
牛肉輸入・卸売企業、レストラン関係者インタビュー

2019年5月13日

ジェトロ香港事務所は、1月から2月にかけて、香港での牛肉の消費動向、今後の輸入や消費拡大のための方法、効果的なプロモーション手法を考察するため、当地の日系牛肉輸入販売企業(A社)と焼き肉レストラン(B社)の2社にインタビューを行った。

香港では、和牛は最高品質のものとされている一方、日本ほどさまざまな肉の食べ方が周知されていない。レシピの開発・発信やPR方法の工夫次第で、ビジネスをより大きくできるなどの指摘があった。インタビューの概要を紹介する。

PR方法などに工夫の余地あり

質問:香港では、どういったタイプの料理が好まれるか。

A社:
焼き肉、和牛を使ったチャーハンが好まれている。最近、肩ロースの売り上げが伸びている。大手チェーンなどの注文量は桁が違う。食べ放題の火鍋にも使われているようだ。
B社:
ステーキ、焼き肉、火鍋が好まれる。香港の人たちは、火鍋は暑い夏でもエアコンをがんがん効かせた部屋で食べる。スライスすれば、腕やブリスケなど、いろんな部位の肉を食べてもらえる。

質問:日本産和牛はどのように受け止められているか。

A社:
牛肉の中でも最高品質のものと考えられている。オーストラリア産、米国産と比較して、サシも柔らかさが違う。他国の牛肉とは全くの別物だ。
B社:
和牛の品質の高さは皆知っているところだ。品質の高さを知っている人が当店に食べにくる。当店は和牛の品質の高さを売りにしている。客も当店は良質な肉を出してくれると思ってきている。鹿児島、宮崎など、生産量も多く、距離的に近い九州の和牛を使うことが多い。

質問:どういった人が日本産和牛を食べているか。

A社:
大金持ちは日本に行って食べる。そのため、ミシュランの星が付くような店は別にして、普通の人たちが香港で和牛を食べる。
B社:
30代の女性やカップルなど、中所得者層の人たちが多い。土日はファミリー層が増える。お客の8割が香港人、1割が日本人、残り1割がそれ以外の国・地域の人だ。ありがたいことに毎日満席で、リピーターもいる。

質問:和牛を食べるのはどういったときか。

A社:
結婚、クリスマス、バレンタインなど、何かの記念日が多い。少し背伸びしておいしいものを食べる。
B社:
イベント、誕生日など。当店は焼き肉店のため、和食と違って毎日食べたくなるというものでない。月2回くらいで来店するというのがほとんどだ。

質問:日本産和牛の香港での課題は何か。

A社:
価格の高さは問題ではない。オーストラリア産和牛の「M9」(注1)が580~600香港ドル(8,120~8,400円、1香港ドル=約14円)、日本産和牛の「A3」(注2)が700~1,000香港ドルと、オーストラリア産と日本産の和牛の価格はそれほど差がなくなってきている。F1交雑種はオーストラリア産和牛より安い(注3)。ローストビーフを作って販売するライセンスを得るのが難しい(注4)。
B社:
来客される方は、高い価格の和牛をごちそうとして食べに来るのではないか。価格が安くなったとしても、売り上げは伸びることはないだろう。

質問:どのようなPRが効果的と感じるか。

A社:
香港人は料理をあまりしないこともあり、ヒレ、サーロインなどのステーキ、カルビの焼き肉以外の肉の食べ方をまだまだ知らない。家庭食の消費を増やすための肉じゃが(バラ肉)、ハンバーグ(くず肉、端肉)のような、簡単なおかずの作り方、レシピが必要ではないか。柿安のようなおいしい日本の惣菜屋がデパートやスーパーの売り場にあれば、もっと肉料理も売れると思う。杉内馨さん(Kei-sAn)のような香港で有名な料理研究家・タレントのような方を使い、さまざまな部位を食べてもらうような料理レシピを発信すべきだ。
ちなみに、灣仔にオープンした堀江貴文さんと浜田寿人さんが手がける「WAGYUMAFIA(和牛マフィア)」は会員制のレストランで、牛かつ800香港ドル、コースが1800香港ドルと決して安価でないが、盛況のようだ。IT関係出身なだけあって、インターネットとインスタグラムを効果的に使い、宣伝を行っている。
B社:
独自にやるフェアと、自治体と組んでやるフェアの2種類を展開している。フェアで扱う肉は買い取りだが、メニュー、ポスターなどは自治体の負担で作ってもらっている。当店では雑誌への広告掲載はしていない。インスタグラムとフェイスブック(FB)はプロに運営を任せている。雑誌は捨てられると終わりだが、ネット上のものはデータが全て残る。有名ブロガー(KOL、Key Opinion Leader)はインスタグラムとFBの運営を任せている企業が時々派遣してくれるので、商品を無料で試食してもらい、その感想などをFBにアップしてもらっている。このような口コミが効果的だ。
また、食肉学校から肉のカットのプロを呼んできて、カット教室などをしばしば開催していた。多様な部位の肉を食べてもらうのには効果的だったが、2017年3月に銅鑼灣そごうで短期就労ビザを持たない日本人が入管に逮捕されてから、ビザの必要性を意識するようになった。取得に手間もかかることから、日本から講師を呼んで行う講習会の開催は以前より格段に少なくなった。

質問:「日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)」が香港で日本産和牛のプロモーションをする場合に、求めることはあるか。

A社:
日本産和牛は個体識別番号が1頭1頭に付いており、トレーサビリティーがしっかりしている。オーストラリア産はそこまでトレーサビリティーが徹底していない。和牛のメリットはそこにあるのではないか。「日本の牛肉はトレーサビリティーがしっかりしていて、安全・安心」などをJFOODOが打ち出せばよいのではないだろうか。これは一企業には簡単にできないことだ。
B社:
個体識別番号は、日本では前面に出す場合もあるが、香港ではオペレーションの問題もあり、万が一違う肉が出ていた場合のリスクが高い。そのため、トレーサビリティーと一緒に前面に出してPRすることはしていない。むしろ、肉の品質の良さで商売しているので、そちらで勝負した方がよい。

注1:
オーストラリア産和牛は、マーブリングスコアという霜降り具合の数値によってランク分けされる。この数値(1~ 9)が高いほど、霜降りの状態が良いとされる。
注2:
日本の牛肉の格付けで、アルファベットと数字の組み合わせで表示される。アルファベットは「歩留等級」を表す。歩留まりは、牛1頭からどれだけ肉が取れるかを、決められた計算方法で算出する。数値が高いほど、多くの牛肉が取れることになり、A、B、Cの3段階で評価する。数字は「肉質等級」を表す。肉質は「脂肪交雑」「肉の色沢」「肉の締まりおよびきめ」「脂肪の色沢と質」の4項目をそれぞれ1~5の等級で評価し、その最も低い等級で決定される。最高級がA5となる。
注3:
交雑種は生産コストの引き下げ、 肉質の向上を目的に交配させた品種。代表的な交雑種は、黒毛和種の雄牛×ホルスタイン種の雌牛がある。交雑種は肉専用種より早く大きくなるなどの特徴がある。
注4:
香港では、肉汁がしたたる肉製品は生肉と判定されてしまう。
執筆者紹介
ジェトロ・香港事務所市場開拓部長(農林水産・食品担当)
前田 久紀(まえだ ひさのり)
在米国ナッシュビル日本国総領事館領事(経済及び日系企業支援担当)、農林水産省政策統括官付農産企画課米穀貿易企画室企画官(日本産米の輸出プロモーション担当)などを経て、農林水産省より2018年6月にジェトロに出向、同月より現職。

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