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開発が進む「バンスー中央駅周辺総合開発計画」(タイ)

2019年6月13日

バンコク北部・バンスーでは、タイ運輸省と日本の国土交通省からの支援を受け、国際協力機構(JICA)が策定したマスタープランに基づき「バンスー中央駅周辺総合開発計画」が進められている。この計画は、完成すれば、ASEANで最大の鉄道拠点となるバンスー中央駅とその周辺土地開発を含めた大規模プロジェクトであり、国内外の企業から注目を集めている。本稿はバンスー中央駅周辺総合開発計画の概要を説明した上で、既に入札手続きが進められている「ゾーンA」の進捗について報告する。

バンスーエリアをバンコクの副都心に

バンスー中央駅周辺総合開発計画が行われているバンスーエリアは、バンコク北部に位置し、周辺には有名な観光地であるチャトゥチャック・ウィークエンドマーケット、タイ投資委員会(BOI)やエネルギー省などの政府機関、サイアムセメントグループ(SCG)やタイ石油公社(PTT)などのタイを代表する企業のほか、ショッピングセンターや教育機関が集積している地域だ。また、国鉄バンスー駅と、主要なバンコクの都市交通であるMRTブルーライン(地下鉄)が乗り入れるMRTバンスー駅がほど近く、周辺には、パープルライン(高架鉄道)やBTSグリーンライン(高架鉄道)も通っている。そのほか、多くの路線バスも両駅周辺を経由することもあって、同地区は公共交通機関でアクセスしやすく、通勤通学などで乗降客の多い場所である。既にシーロムやスクンビットといったバンコク都心部には、タイ資本・外資系企業が多く集積している中、同計画は、公共交通指向型開発(TOD)(注1)として、バンスーエリアを、建設中のバンスー中央駅を中心とした「バンコクの副都心」とすべく、MRTバンスー駅とBTSモーチット駅間にタイ国鉄(SRT)が所有する一等地で開発が進められている(図1参照)。

図1:バンコク市街地図
「バンスー中央駅周辺総合開発計画」が行われているバンスーエリアは、バンコク北部に位置し、周辺には有名な観光地であるチャトゥチャック・ウィークエンドマーケット、タイ投資委員会(BOI)やエネルギー省等の政府機関、サイアムセメントグループ(SCG)やタイ石油公社(PTT)等のタイを代表する企業のほか、ショッピングセンターや教育機関が集積している地域だ。

出所:ジェトロ作成

進展するバンスー中央駅の開発

中心となるプロジェクトは、バンスー中央駅の開発だ。同駅は、あらゆる鉄道網のハブ拠点となるよう設計されており、過去1世紀もの間、タイ国鉄の拠点となっていたフアランポーン駅の機能を代替するものとして、位置付けられている。完成すれば、ASEAN最大の鉄道輸送拠点となる。また、同駅はバンコクと地方都市間の鉄道輸送拠点となることに加え、バンコク市内の公共交通機関と接続するターミナル機能も担う。接続予定の鉄道としては、(1)SRTダークレッドライン(バンコク郊外ランシット行き)(2)SRTライトレッドライン(タリンチャン行き)、(3)エアポートレールリンク(スワナプーム空港行き)、(4)都市間鉄道(チェンマイ、ノンカイ、ハジャイ行きなど)、(5)3空港連結高速鉄道(ドンムアン空港-スワナプーム空港-ウタパオ空港行き)、(6)都市間高速鉄道(チェンマイ、ノンカイ、フアヒン行きの3路線)の6つだ。このほか、MRTブルーラインやパープルライン、BTSグリーンラインが隣接している。2020年に工事が予定どおり完了すれば、地下1階、地上3階で構成されるタイ最長(全長660メートル)の建物になる。地下1階は1,700台の駐車スペースを有し、1階には切符売り場、待合スペース、商業施設、高速バスターミナルなどが設置される。2階には在来線プラットホーム4本(レッドライン用)および都市間鉄道用プラットホーム8本、最上階の3階には高速鉄道用プラットホーム10本およびエアポートレールリンク用プラットホーム2本といった構成になる。

タイ政府によれば、同駅の建設(建物およびメンテナンス基地を含む)は、2019年2月末時点で77.37%が終了しており、機械・電気システムや内装が完了するのは、2020年中になる予定である。


国鉄バンスー駅から見た建設中の
「バンスー中央駅」(ジェトロ撮影)

国鉄バンスー駅から見た建設中の
高架橋(ジェトロ撮影)

複数のゾーンに分けて開発するバンスーエリア

また、同総合開発計画は、タイ国鉄が所有する2,325ライ(1ライ=0.16ヘクタール)の土地に、オフィス街やショッピング街、MICE(注2)など、バンスーエリアを利用するあらゆる国籍の人々が共生できる空間を作り出すことを目指している。同計画のビジョンは、「天使の街へのゲートウェー」だ。「バンコク」はタイ語で「クルンテープ」といい、「天使の街」を意味する。つまり、同計画は、バンスーを「バンコクへのゲートウェー」として開発することを意味する。現地報道(4月22日、「ネーション」紙)によれば、バンスーエリアを複数のゾーンに分け、ゾーンごとに趣旨の異なる施設を作り出すことになっている(図2参照)。

図2:バンスー中央駅周辺開発の概略図
同総合開発計画は、タイ国鉄が所有する2,325ライ(1ライ=0.16ヘクタール)の土地に、オフィス街やショッピング街、MICEなど、バンスーエリアを利用するあらゆる国籍の人々が共生できる空間を作り出すことを目指している。また、バンスーエリアを複数のゾーンに分け、ゾーンごとに趣旨の異なる施設を作り出すことになっている。例えば、ゾーンA(32ライ)はスマートビジネス地区、ゾーンB(土地面積不明)はASEANのビジネスハブ地区、ゾーンC(105ライ)はMICEやスポーツ施設の地区、ゾーンD(83ライ)はチャトゥチャック公園およびウィークエンドマーケット地区、ゾーンE(土地面積不明)は政府機関が入居する高層ビル地区、ゾーンF(土地面積不明)はショッピングモール地区、ゾーンG(360ライ)は居住地区として開発される予定である。

出所:タイ国鉄(SRT)ウェブサイトよりジェトロ作成

例えば、ゾーンA(32ライ)はスマートビジネス地区、ゾーンB(土地面積不明)はASEANのビジネスハブ地区、ゾーンC(105ライ)はMICEやスポーツ施設の地区、ゾーンD(83ライ)はチャトゥチャック公園およびウィークエンドマーケット地区、ゾーンE(土地面積不明)は政府機関が入居する高層ビル地区、ゾーンF(土地面積不明)はショッピングモール地区、ゾーンG(360ライ)は居住地区として開発される予定である。これらのゾーンは互いに地上歩道や高架式歩道、BRT(Bus Rapid Transit)によって結ばれるほか、MRTやBTSなどの輸送手段とも接続される。

さらに、バンスーエリアの開発は「スマートシティー」および「グリーンコンプレックス」といったコンセプトの下、3つのフェーズに分けられている。第1フェーズ(2017~2024年)は、バンスー中央駅および一部の商業施設やオフィスビルの開発、第2フェーズ(2024~2029年)は、MICEやスポーツ施設に加え、残りの商業施設やオフィスビル、一部の居住プロジェクトの建設、第3フェーズ(2029~2031年)は、残りの居住エリアの建設を行う予定だ。

PPPにより開発される「ゾーンA」

「ゾーンA」 は、バンスー中央駅の南側に隣接した土地で、官民連携(Public Private Partnership:PPP )により、商業的に開発される最初のエリアである。「ゾーンA」全体は駅構内から徒歩で移動できる距離にあり、同駅利用者の利便性を大きく高めると期待され、国内外の観光客に加え、周辺で働くビジネスパーソン向けのサービス提供といった面でもビジネスチャンスが秘められている。

「ゾーンA」の開発コンセプトは、「スマートビジネスコンプレックス」だ。タイ国鉄が、スマートシティーとスマート技術が融合する「多目的商業プロジェクト」として推進する3つの施設(オフィス、ショップ、ホテル)で構成され、同駅とは歩道でつながる(図3参照)。

図3:ゾーンA開発計画((1)と(2)の部分に商業施設が建設される予定)
「ゾーンA」 は、バンスー中央駅の南側に隣接した約32ライの土地で、官民連携(Public Private Partnership:PPP )のもと、商業的に開発される最初のエリアである。「ゾーンA」全体は駅構内から徒歩で移動できる距離にあり、同駅利用者の利便性を大きく高めると期待され、国内外の観光客に加え、周辺で働くビジネスパーソン向けのサービス提供といった面でもビジネスチャンスが秘められている。

出所:タイ国鉄(SRT)入札招請書よりジェトロ作成

「ゾーンA」の開発主体は今後、入札により決定する。落札した民間企業(連合)は、計画から資金調達、建設、そしてプロジェクト全体の管理運営に関し、タイ国鉄との契約期間満了まで責任を持つことになる。現時点では、建設期間が4年、運営期間が30年の計34年となっており、契約期間満了後に残存する資産の所有権は、タイ国鉄に移転される。タイ国鉄が入札関連書類の販売を開始(5月7日で終了)し、2019年3月から応札することが可能となっている。本プロジェクトに関心のある企業は、入札提案書を7月30日までにタイ国鉄に提出する必要があるが、現地紙(5月8日、「クルンテープトゥラキット」紙)によれば、現在3つの企業(タイの百貨店大手セントラル、大手建設会社チョーガンチャン、MRTを運営するBEM)が入札書類を購入したといわれている。タイ国鉄は2019年末までに落札者と契約書に調印し、2020年初めに着工する予定である。第1フェーズのうち小売りスペースに関しては、2021年のレッドラインの開業に合わせ、2023年の「ゾーンA」のフルオープンに前倒しして、開業することを目指している。

新たなビジネスチャンスを作る「バンスーエリア」の開発

バンスー中央駅と周辺土地開発は、不動産、小売り、飲食、スマート技術など、さまざまなセクターにおいて、タイ人と外国人投資家の双方に大きなビジネスチャンスをもたらすと期待されている。交通・輸送システム開発局の予測によれば、2022年には、1日あたり13万6,000件の旅行需要がバンスーエリアで作り出され、それが2027年には35万9,600件に、さらに2032年には62万4,000件と増加すると推計されている。また、同エリアの不動産需要についても、右肩上がりで増加すると見込まれており、不動産が供給された分だけ借り手(買い手)がつく状況だ。2032年の見通しは、オフィス需要として5万5,704平方メートル, 小売スペースとして9万1,748平方メートル、コンドミニアムの需要として2万7,367室, そして ホテルとして656室と推計されている。


注1:
公共交通機関に基盤を置き、自動車に依存しない社会を目指した都市開発のこと。
注2:
企業などの会議(Meeting)、企業などの行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会などが行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字のことであり、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称。
執筆者紹介
ジェトロ・バンコク事務所
ナオルンロート ジラッパパー
2016年ジェトロ・バンコク事務所に入構。2016年から2018年7月まで農水事業を担当後、2018年8月からタイの政治・経済情勢に関する調査分析を担当している。

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