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「日本流柔らか食感パン」がフィリピン市場に参入

2019年7月11日

白米を好むとされたフィリピン人の間に、少しずつパン食が普及し始めている。フィリピンのパンの市場の拡大を見据え、双日とリョーユーパン(福岡県大野城市)が日系企業初の「日本流柔らか食感パン」の製造・販売事業を開始した。本稿では、フィリピンにおけるパン食が普及する可能性と合わせて、リョーユーパンに実施したインタビュー内容を報告する。

フィリピンにおけるパン食の普及

フィリピン人は白米を主食とし、フィリピン料理は白米に合う鶏肉や豚肉を使った煮物や炒め物が食卓の中心で、糖分や塩分が濃い味付けを好むとされてきた。一方で、フィリピン人が愛好するチキンやスパゲティを提供するファストフードのジョリビー・フーズやその他のファストフードチェーンにおいて、ハンバーガーは主要なメニューの1つであり、パン食文化はフィリピンに実は深く根付いているのではないだろうか。

表1は、フィリピン全土から抽出された世帯に対し、2012年と、2015年から2016年にかけて、主食別の世帯消費数の割合を一覧にしたものである。両期間において、白米とインスタント麺を消費した世帯数の割合が他を圧倒している。白米は、2012年に比べて2015年から2016年にかけて消費した世帯数の割合がわずかながら減少している。これに対し、パスタ、パンデサル(フィリピン伝統食の甘いパン)、食パンなどのパン類、バン(ハムやチーズを挟むこともできる小型の丸いパン)は、2012年に比べて2015年から2016年にかけて消費した世帯割合は増加している。フィリピン人の主食は、白米が不動の地位を保ちつつも、少しずつフィリピン人の食生活の中に、パン類やパスタなども浸透し始めていると考えられる。

表1:各主食を年間のうち消費したと回答した世帯の割合 (単位:%)
主食 2012年 2015年-2016年
白米 96.37 93.39
ライスヌードル 19.75 26.37
卵麺 17.28 15.13
インスタント麺 63.82 70.12
パスタ 2.92 4.38
パンデサル 52.35 54.32
食パンなどパン類 17.45 23.94
バン 23.83 30.39

※フィリピン全土から抽出されたサンプル調査。2012年の調査は13,218世帯、2015年8月から2016年5月にかけて実施された調査は12,851世帯が対象。
出所:フィリピン統計庁データからジェトロ作成

表2は、フィリピンにおける製造業者の2010年、2013年、2015年における開業数を分野別に一覧にしたものである。全製造業の開業数に占めるパン・パン菓子、ケーキ、パイなどを製造する製パン所の開業数が、2010年から、2013年、2015年までトップを維持し続け、全製造業の開業数に占める割合も増加傾向にあることがわかる。

表2:フィリピンの製造業分野別の開業数 (単位:件、%)
分野 2010年 2013年 2015年
件数 構成比 件数 構成比 件数 構成比
パン・ケーキなどの製パン所 3,308 20.3 6,618 26.3 6,704 27.4
水のボトリング 1,090 6.7 2,411 9.6 2,350 9.6
印刷業 1,090 6.7 1,458 5.8 1,439 5.9
コメ・トウモロコシの製粉 841 5.1 1,181 4.7 1,154 4.7
木工家具の製造 424 2.6 739 2.9 710 2.9
建築用コンクリート製品の製造 267 1.6 477 1.9 457 1.9
女性・女児・幼児向け衣料の製造 526 3.2 424 1.7 395 1.6
オーダーメイド服の仕立て 260 1.5 416 1.7 393 1.6
梱包用のプラスチック製品の製造 290 1.7 324 1.3 383 1.5
男性・男児向け衣料の製造 0 0 342 1.4 330 1.3
機械修理 409 2.5 0 0 0 0
その他 7,764 48.1 10,759 42.7 10,181 41.6
合計 16,269 100 25,149 100 24,496 100

出所:フィリピン統計庁データからジェトロ作成

さらに、フィリピンにおけるパン食の普及に関し、1日の朝昼晩の3食以外に「ミリエンダ」と呼ばれる、1日2回おやつを食べる食習慣があることも見過ごすことはできない。ミリエンダの時間は明確に決まっているわけではないが、朝食と昼食の間の時間と、日本と同様に午後3時ごろに食べることが多い。ミリエンダでは甘いもの以外に、インスタント麺、パンデサル、好きなものを挟んだバンなどを食べることが多いという。白米におかずを用意するよりも、簡単・気軽に食べることができるからだろう。都市部の高級所得者向けのベーカリーショップやカフェでは、毎日多くの人がパン類を購入する姿が見られ、日本のバンのような柔らかい食感のパンも販売され始めている。主食として白米を食べる食習慣は簡単には変わらないとしても、通勤・通学前の限られた時間での朝食や、ミリエンダの時間にパン類が食される機会が増えていく可能性はあるとみられる。


ベーカリーショップでパンを買う人々(ジェトロ撮影)

双日がフィリピンで小麦関連の3事業を展開

フィリピンのパン食の普及を見据え、双日とリョーユーパンはニッポン・プレミアム・ベーカリーを2017年7月に設立し、2019年5月中旬から日系企業初のパンの製造・販売事業を開始した。工場設置の総投資額は12億ペソ(約25億円、1ペソ=約2.1円)となる。8月までにはマニラ首都圏の主要なスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどのチェーン店で販売し、2019年内に1,000カ所以上に販売ルートを拡大していく計画だ。


ニッポン・プレミアム・ベーカリー工場(ジェトロ撮影)

同時に双日は、東南アジア屈指の製粉会社インターフラワー・グループ(本社:シンガポール)が2014年3月にフィリピンで新設した製粉会社マブハイ・インターフラワー・ミル(本社:フィリピン・スービック経済特別区)の発行済み株式の25%を取得し、小麦粉の製造・販売事業にも着手している。また双日は、フィリピンの大手卸売企業と共同で、双日アジアパシフィック・トレーディング(本社:フィリピン・マカティ市)を2017年6月に設立し、小麦粉・砂糖・油脂などの食料原料卸売事業も開始している。マブハイ・インターフラワー・ミルと双日アジアパシフィック・トレーディングはニッポン・プレミアム・ベーカリーにとっての原料調達先でもあり、双日はフィリピンにおいて小麦関連の3事業を展開していくこととなる。

朝食に食パンを、ミリエンダに菓子パンを

ニッポン・プレミアム・ベーカリー社長の岡部卓夫氏に、事業開始までの経緯、今後の展望・課題、フィリピン市場のポテンシャルなどについて聞いた(インタビューは2019年6月28日)。


社長の岡部卓夫氏(ジェトロ撮影)
質問:
事業開始までの経緯や苦労したことは。
答え:
パンの賞味期限は製造後5~7日程度で、製造した商品をその日のうちに販売先に納品する必要があり、販売先のマニラ首都圏からそれほど輸送時間のかからない南方50キロ圏内のバタンガス州に工場を設立した。工場設立までは順調だったが、苦労したのは、保健省(DOH:Department of Health)の食品薬事管理局(FDA:Food and Drug Administration)に対する営業許可(LTO:License to Operate )と商品登録証明(CPR:Certificate of Product Registration)の手続きに時間がかかったこと。特にCPRは、2019年1月に10商品の申請をし、3カ月以上かけて9商品のCPRを取得することができたが、いまだ1商品のCPRが取得できていない。例えば同じ食パンでも、6枚切りの商品と8枚切りの商品それぞれにCPRを取得する必要がある。今後の新商品販売の際にもネックとなるだろうが、市場に定番商品を根付かせつつ、年間で10種類程度の新商品の開発とCPR取得を目指していく。
質問:
「日本流柔らか食感パン」の品質維持のために留意していることは。
答え:
マブハイ・インターフラワー・ミルの品質の高いえりすぐりの小麦粉、双日アジアパシフィック・トレーディングが取り扱う質の高い製パン材料を使用し、ほぼ全て日本製の機械を使って製造している。日本のリョーユーパンの製法をフィリピンでも再現すべく、リョーユーパンから派遣された工場長が常駐し、マネージャークラスの工員には品質管理・生産・設備・商品開発などを、日本のリョーユーパンで徹底的に研修させた。
質問:
今後の展望やフィリピン市場のポテンシャルは。
答え:
いまだにフィリピン人にとっての主食は米だが、パンデサルなどパン食もフィリピンの伝統食として根付いている。今後の人口の増加、特に都市部の富裕層・共働き世帯の増加がフィリピンでは見込まれ、それらをターゲットに、忙しい朝に簡単に準備できる食パンを、ミリエンダに菓子パンを食べるという食文化を根付かせたい。クリームの入った菓子パンは30~38ペソ、6枚切りの食パンは58ペソで販売している。現地の競合商品より2割程度高額だが、一度おいしさを味えば、競合商品には戻れないはず。時間がかかるかもしれないが、フィリピンの食文化に「日本流柔らか食感パン」を浸透させることができると確信している。近いうちに首都圏北部にも工場を設立し、同地域にも販売先を増やしていきたい。数年後に年間約30億円の売り上げを目標にしている。

同社商品「Fuwa Fuwa」シリーズ(ジェトロ撮影)
インタビュー先の企業情報
企業名 ニッポン・プレミアム・ベーカリー
所在地 バタンガス州
株主 双日70%、JR&R Distributors 20%、リョーユーパン 10%
事業内容 パン製造・販売
執筆者紹介
ジェトロ・マニラ事務所
石見 彩(いしみ あや)
1999年、経済産業省関東経済産業局に入局。経済産業省貿易振興課に出向(2001年~2003年)、関東経済産業局国際課(2003年~2004年)、イリノイ大学シカゴ校に留学(2004年)、経済産業省経済連携課に出向(2005年~2007年)、ジェトロ東京本部サービス産業部サービス産業課出向(2016年~2018年)などを経て2018年6月より現職。

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