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バングラデシュ、悲願の交通渋滞解消へ
進むダッカの都市高速鉄道計画

2019年8月22日

バングラデシュは人口1億6,000万人を超え、特に首都ダッカの人口は2,000万人程度とされる。近年、ダッカへの人口流入が著しく、都市部への人口過密は慢性的な交通渋滞を発生させている。ある調査では、ダッカの主要道路においてバスのピーク時の平均速度は時速14.4キロで、区間によっては時速2キロになり、年間2,600億円の経済損失に上るとされる。自動車や二輪車の普及も交通渋滞の深刻さに拍車を掛けており、これが引き起こす経済損失は拡大する。バングラデシュ政府は往年の課題である交通渋滞の緩和を目指すため、日本に協力を仰いだ。

都市高速鉄道計画に日本が支援

2000年代からダッカでは都市高速鉄道の構想があり、2013年の円借款の調印を皮切りに、国際協力機構(JICA)による支援が開始された。最も早期に開発される予定のMRT6号線には、総額約2,400億円の円借款が供与されることになっており、設計や工事などで日本企業が参画している。MRT6号線は、ダッカ北部で大規模住居開発が進むウットラ(Uttara)地域から西部のベッドタウンであるミルプール(Mirpur)、地場富裕層が多く住む南西部の高級住宅街ダンモンディ(Dhanmondi)を経由し、南部にあるバングラデシュの官庁街モティジール(Motijheel)までを南北に結び、バングラデシュ初の都市鉄道として、2021年の部分開通を目指している(図参照)。MRT6号線には、運営面では日本のフェリカの技術を利用した電子パスも導入される予定だ。JICAの試算では、これまでウットラからモティジールまで110分の移動時間を要していたが、46分に短縮されることが見込まれる(注1)。

図:建設が予定されるMRTの路線図
MRT6号線は、ダッカ北部で大規模住居開発が進むウットラ(Uttara)地域から同西部のベッドタウンであるミルプール(Mirpur)、地場富裕層が多く住むダッカ南西部高級住宅街ダンモンディ(Dhanmondi)を経由し、ダッカ南部にあるバングラデシュの官庁街モティジール(Motijheel)までを南北に結ぶ予定。 MRT1号線は、ダッカ空港から住宅街であるダッカ北東部のボシュンドラ(Bashundhara)や東部バッダ(Baddaa)を経由し、国鉄のダッカ中央駅のある南部カムラプール(Kamalapur)まで南北に延びる空港線。 MRT5号線は、ダッカ商業中心地区のボナニ、グルシャンを通り、MRT1号線及び6号線とも接続し東西を結ぶ地下鉄道となる。

出所:JICAバングラデシュ事務所

他方、MRT1号線は、ダッカ国際空港から住宅街であるダッカ北東部のボシュンドラ(Bashundhara)や東部バッダ(Badda)を経由し、国鉄のダッカ中央駅のある南部カムラプール(Kamalapur)まで南北に延びる空港線で、ニュータウン開発計画があるプルバチョール(Purbachal)まで延びる支線の整備も予定されている。MRT1号線はバングラデシュ初の地下鉄となり、2026年に開通の予定だ。2019年5月にハシナ首相が訪日した際、約1,300億円の円借款に署名されたもののうち、525億円がMRT1号線に割り当てられる。JICAの試算では、MRT1号線の整備により、現在、空港からカムラプールまでをバスで約140分要しているのが、約24分に短縮されることが見込まれる(注2)。

さらに、MRT5号線は、ダッカ商業中心地区のボナニ、グルシャンを通り、MRT1号線および6号線とも接続し東西を結ぶ地下鉄で、2028年に部分開業する予定だ。

現在、ダッカではバスやタクシー、三輪タクシーなどが公共交通機関であることから、都市鉄道が開通すれば、ダッカの街並みが様変わりすることは間違いない。


ダッカ都市部の渋滞の様子(ジェトロ撮影)

渋滞緩和のみならず、大気汚染の緩和や都市開発にも期待

バングラデシュの経済発展は著しく、政府は2018/2019年度(2018年7月~2019年6月)の経済成長率を8.1%と予測する。同国の経済成長率が8%を超えるのは初めてのことだ。バングラデシュは2018年時点で、後発開発途上国(LDC)の卒業要件を満たし、独立50周年の2021年に中進国入り、さらに2041年には先進国入りする目標を掲げている。こうした経済成長の恩恵を受け、二輪車の年間登録数は40万台に上り、業界関係者の間では、数年のうちに70万台に達するとも言われている。自動車の年間登録数は現状4万台程度ながら、自動車市場の拡大も間違いなく進むことから、交通渋滞の深刻化が予想される。モータリゼーションが進めば、深刻化するのは交通渋滞だけでなく、大気汚染にも悩まされることになる。世界保健機関(WHO)によると、バングラデシュは、南アジアではネパール、インドに次いで、都市部での微小粒子状物質(PM2.5)の濃度が高く、健康への被害をもたらす深刻な問題となっている。都市鉄道の整備が進めば、ダッカ市内の渋滞緩和に加え、排ガスの排出量の減少などにより、大気汚染の緩和や温室効果ガスの削減にも貢献する。さらに、鉄道が普及することで、駅を中心とした都市開発が進めば、利便性が高まり、市民の暮らしにも大きな変化をもたらすだろう。長らく駅前都市開発を進めてきた日本にとっては、都市開発がビジネスチャンスとなるかもしれない。


注1:
ダッカ都市交通整備事業(Ⅲ)事業事前評価表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(314KB)
注2:
ダッカ都市交通整備事業(1号線)(第1期) 事業事前評価表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(557KB)
執筆者紹介
ジェトロ・ダッカ事務所
安藤 裕二(あんどう ゆうじ)
2008年、ジェトロ入構。アジア経済研究所研究企画部(2008~11年)を経て、2011年から実務研修生としてジェトロ・ダッカ事務所に赴任(2011~12年)。帰国後、生活文化・サービス産業部(2012~14年)で「ダッカスタイル」の編集等を担当する傍ら、「知られざる工業国バングラデシュ」(アジア経済研究所、2014年)の執筆担当。2014年からジェトロ浜松に勤務し、静岡県西部地域における海外展開支援を担当。2016年から内閣府規制改革推進室に出向し、規制改革、行政手続の簡素化に従事(2016~19年)。2019年3月からジェトロ・ダッカ事務所に赴任し、日系企業支援に取り組む。

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