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ヘルステックやアグリテックのスタートアップに期待(ミャンマー)
VC事業を手掛けるTrust Venture Partnersの後藤CEOに聞く

2019年10月16日

2014年に通信事業が外資に開放されて以降、ミャンマーにおける携帯電話の普及率は爆発的に増え、100%を超えた。スマートフォンのプラットフォームを活用したスタートアップビジネスも数多く生まれている。ミャンマーのスタートアップビジネスを取り巻く課題やチャンス、今後の展望などについて、ベンチャーキャピタル事業を立ち上げたTrust Venture Partnersの最高経営責任者(CEO)の後藤信介氏に聞いた。


Trust Venture Partnersの後藤信介CEO(ジェトロ撮影)
質問:
Trust Venture Partnersを創業した理由は。
答え:
ミャンマーでは、証券市場を通じた資金調達ができる会社は一部に限られている。現地企業にとって、事業拡大のための資金調達が課題の1つになっている。一方、ミャンマーに参入してくる外資系企業の視点でみると、協業先としてファイナンスを理解する人材がいる大手財閥系企業に偏重している現状がある。このギャップの橋渡しをするため、2016年に現地企業に対してファイナンシャル・アドバイザリー・サービスを提供するTrust Venture Partners(以下、TVP社)を起業した。現地企業の意見をくみ取りながら、ファイナンス知識にたけた職員が外資系企業とのM&A交渉、資本・技術提携交渉などを仲介している。現在、TVP社は持ち株会社となっており、ファイナンシャル・アドバイザリーのほか、ミャンマーへの進出コンサルティング、事業投資、デューデリジェンスサービス、アウトソーシングサービス、ビジネススクールなどを行う事業会社を傘下に抱えている。
質問:
ベンチャーキャピタルを始めた経緯は。
答え:
外資系企業と提携できるレベルの企業を育成するという観点から、2019年にベンチャーキャピタル(以下、VC)事業を行う子会社を立ち上げ、スタートアップへの投資を開始した。投資先に対して、当社の強みであるファイナンシャル・アドバイザリー・サービスを提供した上で、外国の投資家へつなぐことを目指しており、資金提供だけではなく、当社ならではの付加価値を提供している。ミャンマーでの投資を縮小するVCもあるが、当社はミャンマーで最もアグレッシブなVCの1つだという自負がある。
質問:
ミャンマーにおけるスタートアップビジネスの課題とチャンスは。
答え:
当地には、GrabなどASEANで展開する企業が一部進出しているものの、海外の著名なスタートアップはほとんど来ていない。理由の1つに、マーケットがまだ小さく、収入が見込めないことが挙げられる。
もう1つは、ユーザーのデジタルリテラシーがまだ低い点だ。ミャンマーの携帯電話の普及率は100%を超えているものの、大半はfacebookを利用するだけのライトユーザーだ。例えば、Grabを利用する場合も、ドライバーとの電話でのやりとりが発生し、決済も現金で行っている。アナログに頼る部分がまだまだ大きく、外国で普及しているデジタルサービスをローカライズするために、時間や費用といったコストが発生してしまうことが障壁となっている。
一方、タイやインドネシアなどのように、新規参入に一刻を争うような状況ではないため、主要国でデジタルサービスが流行した2~3年後に当該サービスをまねしたビジネスをスタートしても手遅れにならない点で、いわゆる「タイムマシン経営」はしやすい。例えば、フィットネスジムの共通ポイントがためられるサービスを提供するFlexible Pass外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますというスタートアップがあるが、他国での既存モデルをミャンマーに導入して成功した企業事例の1つと言えよう。このように、既存のビジネスモデルをミャンマーの状況に合わせてローカライズするスタイルにもチャンスがある。
質問:
ASEAN主要国では、アリババが出資するLAZADAなどの電子商取引(EC)スタートアップの存在感が強い。ミャンマーでのEC市場の動向はどうか。
答え:
アリババは2018年にパキスタンの同業Darazの買収を通じてミャンマーにも参入している。しかし、他国ほど市場自体が広がってはいない。決済と物流の整備が遅れてきたことが背景だ。ただし決済についてはスマートフォンを活用したモバイルバンキングサービスなどのフィンテック分野が急成長しており、大手通信会社をはじめ10社ほどが参入している。主にモバイル送金サービスが利用されており、携帯電話番号にひもづいて地方へ送金できる。銀行口座保有率の低いミャンマーで、出稼ぎ先からの仕送り、知人間の貸し借りなどに活用されている。ただし、元となる資金は提携の店舗で現金を介して充当されており、全てデジタルで完結するようなモバイル決済サービスはまだ一部で利用される程度にとどまっている。
質問:
有望な分野、今後のスタートアップ市場の展望は。
答え:
ヘルスケアは有望分野の1つだ。国土が広いミャンマーで、Skypeを通じて初期診療を行うスタートアップや、公立の病院・診療所の待ち時間を解消するための予約システム、個別ユーザーの電子カルテを共有するプラットフォームなどを提供するスタートアップが出てきている。ミャンマーは農業国なので、アグリテック系にも注目している。
ミャンマーのスタートアップを取り巻く環境は恵まれているとは言えないものの、直近の1年間でも、大きく状況が変わってきている。中長期的には、いずれユニコーン(企業価値10億ドルを超す未上場企業)となるスタートアップも誕生するだろう。日本企業がミャンマーのスタートアップへの投資を検討する場合、スタートアップが求めるのは資金面だけではないため、投資家として資金+αの価値を提供できるようにする必要がある。
執筆者紹介
ジェトロ企画部企画課 海外地域戦略班(東南アジア)プロジェクト・マネージャー
菊池 芙美子(きくち ふみこ)
2009年、ジェトロ入構。展示事業部海外見本市課/生活文化・サービス産業部デザイン産業課(当時)(2009~2014年)、ジェトロ茨城(2014~2017年)、ジェトロ・ヤンゴン事務所(実務研修生)(2017~2018年)、ビジネス展開支援部途上国ビジネス開発課(当時)(2018~2019年)を経て、2019年4月から現職。

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