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【中国・潮流】中国で日本車が売れている3つの理由

2019年8月15日

2018年の中国の新車販売台数は28年ぶりのマイナスとなり、2019年に入ってからも厳しい状況が続いている。2018年7月から直近の2019年6月まで、単月で12カ月連続の前年割れとなっており、中でも民族系、米国系、韓国系の減少幅は2割を超えている。

しかし、全体市場が大きく落ち込んでいるにもかかわらず、ホンダとトヨタは2桁の伸びを続けており、6月には日産や三菱自動車が前年同月を上回るなど、日系各社は総じてプラスを維持している。この好調な背景には、何があるのだろうか。

日系メーカー好調の3つの理由

広州市周辺に進出する日系自動車関連企業や関係識者らにヒアリングをしたところ、日系メーカーの販売が好調を維持している理由として、(1)小型車減税措置の終了などにより「買える人だけが買う市場」に戻ったこと、(2)複数の日系メーカーが生産規模と販売(ディーラー)ネットワークを拡大したこと、(3)中古車市場の拡大により日本車のリセールバリューを評価する消費者が増えていること、の3点がしばしば挙げられた。

まず(1)だが、2017年末で終了した排気量1,600cc以下の小型車減税措置の駆け込み需要の反動により、2018年の市場が大きく冷え込んだ、との指摘はよく聞かれる。通常10%かかる車両購入税が2016年末までは5%、2017年は7.5%に設定して、自動車の購買需要を底上げした結果、需要の先食いによる反動減が2018年に起きたという指摘である。

特に、地場メーカーは減税措置による恩恵が大きかった分、反動減も大きかったことが販売実績からも明らかだ。減税措置がなければ買えない(買わない)消費者が買っていた小型車を多く生産していたことから、大きな痛手を受けている。これが、全体市場が減少している大きな理由の1つとなっている。ある日系メーカーは「ここ数年を振り返れば、販売は着実な伸びを示しており、そもそも、われわれには減税措置の恩恵はあまりなかった。現在好調なのは、日系ブランド車の商品力が強く、お客さまに品質を信頼いただいているということ。買える消費者が市場に戻った」と述べ、消費者が商品力や品質を求める実需に基づいた市場に戻ったことが好調の背景にある、とした。

(2)については、例えばトヨタ、ホンダなどは2018年に新たに生産ラインを拡張して本格的な増産体制を敷いており、市場に供給できる台数、キャパシティが大きく拡大している。また、自主ブランド車を共通のプラットフォームで製造し、1つのプラットフォームから3車種を生産できるような体制が確立し、生産効率を大きく向上させたメーカーもある。

併せて、ここ数年で販売網を約20~30%拡大している日系メーカーが多く、販売体制とアフターサービス体制がより整備されたことも、現在の好調に大きく寄与している。

現在の日系メーカーの生産・販売体制が強化されたのは、少なくとも5~6年前から日系メーカーが努力してきたためだ。日系ブランド車の販売状況が厳しかった当時、将来を見据えた判断を行えたことが、現在の結果につながっているといえるだろう。

中古車市場の拡大とリセールバリュー

日本の中古車買い取り価格は、一般的に新車購入額の4割程度であれば「上々」という相場観と聞くが、今の中国(少なくとも筆者がヒアリングした広州)では、日本車の場合、6割程度で買い取られることが多い。このリセールバリューを期待して日本車を新車で購入する消費者が増えているとの声が多く聞かれる。

中国の中古車市場は、2018年には日本のおよそ2倍となる1,382万台に達しており、2016年に中古車取引に関する関連法令が相次いで施行されて以降、2桁で伸びている。

ちなみに、広東省は203万台(2018年)と、省市別では最大の市場となっている。

図:中国の新車販売と中古車取引台数推移(2011~2018年)
中国の中古車市場は、2018年には日本のほぼ倍となる1,382万台に達しており、2016年に中古車取引に関する関連法令が相次いで施行されて以降は2桁で伸びてきている。

出所:中国自動車協会、中国自動車流通協会などよりジェトロ作成

とはいえ、新車販売台数と中古車取引台数の比率は、2018年で49.2%と、新車2台に対し中古車1台の2:1の比率でしかない。米国の中古車市場が新車販売台数の3~4倍、ドイツが2倍あまり、日本が1.5倍程度であることからすると、中国の中古車市場はいまだ新車市場の半分にとどまっており、今後も拡大する可能性は高い。

中国地場メーカーの車もここ数年で品質レベルが大きく向上してきているが、その車が10年後も中古車として価値があるのかは未知数だ。一方で、日本車は日本や米国での実績が中国でも評価されており、中古車市場で先行者メリットを得ているとの指摘もある。中国では、中古車の評価が取引業者の主観で行われる傾向が強いことや、販売やアフターサービスが新車に比べ整っておらず、市場が黎明(れいめい)期にあることも、品質への信頼が高い日本車のリセールバリューにつながっているのかもしれない。

より健全な競争市場の形成

中国の新たな排ガス規制(通称「国6」)は、窒素酸化物(NOx)などの排出量を2023年までに段階的に4~5割削減するというもので、特に中国地場の中小メーカーにとっては克服するのが技術的に難しいといわれている。

また2019年から、年間3万台以上を生産・輸入する自動車メーカーを対象に、電気自動車(以下、EV)など新エネルギー車を一定割合生産することを求めるNEV規制も始まった。2019年は10%、2020年は12%の生産が求められており、達成できない場合は、達成した企業から余剰分を「クレジット」として買い取る必要があり、仮に達成できなければ、車の販売台数が制限される。

2020年をめどに終了する方針が示されているエコカー補助金も既に段階的に引き下げられており、EVメーカーによっては販売価格に転嫁するなど、補助金引き下げの影響が出始めている。これらの制度的な環境変化などから、中国政府は地場企業を助けるというこれまでの路線を転換し、競争による企業の淘汰(とうた)を始めたとの見方もある。中国自動車市場の「市場化」が健全に進めば、高い品質を誇り、生産・販売体制を整えてきた日系メーカーの本領を発揮できるだろう。

世界最大のEV市場となった中国では、同市場を育成・発展させることを目的に、排ガス規制、NEV規制などの規制強化に加え、NEVにおける外資出資制限の撤廃などの規制緩和が進められている。電池や素材なども含めた、地場の自動車関連メーカーの競争力が格段に高まる中、こうした流れは内外資や産業の川上・川中・川下が入り交じった企業提携の動きを活発化させており、市場の構図を大きく変えてきている。

執筆者紹介
ジェトロ・広州事務所長
清水 顕司(しみず けんじ)
1996年、ジェトロ入構。日本台湾交流協会台北事務所(2002~2005年)、ジェトロ・北京事務所(2008~2012年)、本部企画部海外地域戦略主幹(北東アジア)などを経て、2018年11月より現職

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