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「日本製」を全面にPRすることで顧客を獲得(英国)

2019年12月25日

日本の刃物や園芸道具は近年、世界中の園芸家の垂ぜんの的になっている。しかし、その多くは中小企業によって製造され、海外展開に成功している企業は多くない。Niwakiは、厳選した日本の園芸製品や雑貨を「日本製」を売り言葉に、英国内はもとより欧米向けに販売、急成長中の英国企業だ。日本製であること自体に付加価値を見いだす同社の取り組みについて、創立者で最高経営責任者(CEO)のジェイク・ホブソン氏、最高執行責任者(COO)のウィル・トム氏に聞いた(取材日:2019年11月26日)。

三脚の園芸脚立を皮切りに日本の園芸道具を英国のガーデナーに紹介

Niwakiは、英国南西部ドーセット州シャフツベリーにある従業員10人の企業で、2007年にホブソン氏が設立した。同氏と日本の園芸用品との出会いは、彫刻を学ぶために訪日したのがきっかけだ。そこで、日本の園芸に出合い、剪定(せんてい)などの園芸技術を学んだ。日本で出会った夫人と英国に戻った後、日本の園芸や剪定方法を紹介しつつ、2007年には「Niwaki」という、日本の剪定技術を英語で解説した書籍を出版した。Niwakiの社名もこの本から採用している。現在、同社は卸売りと小売り(オンライン)両方の事業を行っている。


ホブソン氏著 「Niwaki」(Niwaki提供)

同社が最初に扱った品は、日本で使いやすさを実感した三脚の園芸脚立。英国で使われている4本足の脚立と違って安定性がよく、狭い場所でも使える。このほか、当時の英国ではほとんど市販されていなかった、先が三角形にとがった日本の大型シャベル。これを抱えて帰国するほど気に入り、同じものを今でも英国で販売している。

現在、同社が扱っているのは、主力となっている日本製の園芸道具(脚立、鋏(はさみ)、ナイフ、剣山、のこぎり、シャベル、すき・くわ、庭仕事用衣類、用具入れ)と、デザインや品質から選び抜いたキッチン用品や文房具、作業衣などの雑貨を含め約90点。いずれも独自の視点で吟味したものであり、既成品のほか、同社が企画した委託生産品もある。同社のロゴ入りの帽子、革の刃物収納ケースなどがわずかに中国製で、それ以外は全て日本製だ。


Niwakiのショールーム(Niwaki提供)

最近は、日本製の包丁にも力を入れている。欧米では、刃物を砥石(といし)で研ぐことはあまり一般的ではなかったが、砥石も販売している。同社が販売する包丁は1本100ポンド(約1万4,600円、1ポンド=約146円)以上もする高級なものだが、手入れをして研ぎ続ければ何世代も使える点が売り。購入した砥石を研ぎなおすサービスや、日本流の砥石を使った刃物の研ぎ方教室も行っている。

同社が取引しているのは日本企業約20社で、そのうち10社が直接契約、残りの10社は代理店を通じて仕入れている。取引先は従業員数1人の事業所から、園芸鋏で有名な広島県尾道市の岡恒鋏工場、脚立では業界最大手の長谷川工業(大阪市)まで、大小さまざまである。年に2回、日本に出張して、これらの取引先と商談を行っている。

「日本製」であることが大きな「売り」に

仕入れの基準について、「英国人にとって使いやすいこと」を最優先条件に挙げる。「盆栽用や生け花用(といった日本独自の用途だけ)ではなく、英国人が(日常の)庭仕事をするときに実際に使いやすいことが大事だ」とホブソン氏。また、Niwakiの製品は「日本製」であることが最大の売りで、同氏は、「日本製であれば、欧州では皆が最高品質だとわかっている。だから、ことさらに質を訴えてはこなかった」と話す。また、英国の顧客は何かしら「mythology(神秘)」なものを日本製品から見いだそうとする傾向もあり、それがさらに製品の魅力を増している。英国の園芸用品も定評があるが、コスト削減などのために第二次世界大戦後、大半が外国製品となり、質も低下してしまったことを誰でも知っているという。

日本の木材生産者はFSC認証の認識が必要との指摘も

ホブソン氏が、1つ懸念しているのは、先進国ではすでに常識となりつつある木材のFSC認証(注)について日本の業界の認識が低いことだという。Niwakiが仕入れる園芸用刃物の柄の多くは木製だ。しかし昨今、欧州の消費者は、倫理面、環境面で基準を満たした材料を要求する傾向が高まっている。木製品の場合、それはFSC認証 を獲得した木材を意味する。例えば、英国王立園芸協会(RHS)のフラワーショーに出展する場合、木材はFSC認証を受けたものでなければならない。しかし、日本の生産者は認証自体を知らないため、FSC木材の調達が難しい。現在、仕入れている刈り込み鋏は、ニュージーランドでFSC認証を受けた木材を九州の業者が輸入して加工し、それを新潟の刃物と合わせている。このために、コストが数割増しとなっている。製品によっては、刃物より木材部分の方が高いこともある。

日本との貿易では、日EU・EPAを活用

日EU経済連携協定(EPA)については、同社の製品の大半を占める園芸用品のEU域外関税率は1.6%とそもそもあまり高くない(例えば衣類の関税率は12.0%)。それでも、取引先の4分の3がEPAを利用した輸出に協力してくれている。ブレグジット(英国のEU離脱)後は、日英EPAといった形で継続することを期待している。また、EUでの販売を考慮すると、EUとの間も自由貿易協定(FTA)などの形で関税を回避できることが望ましい。ただ、それら以上に、EU離脱後の英国の景気悪化による消費の冷え込みや、2016年6月のEU離脱を巡る国民投票以来続いている通貨ポンド安が懸念材料である。

日本からの製品の多くは船便で輸入しているが、コンテナのサイズを満たすための量にはならないこともある。複数企業の輸出品をまとめて混載して発送してくれる、大阪の業者を利用している。サウザンプトン港に到着した貨物は、英国の通関業者に手続きをしてもらって受け取っている。

SNSやインフルエンサーを通じて顧客を開拓

Niwakiはここ数年、卸売りの拡大にも力を入れており、RHS本部のウィズリーガーデンセンターに同社の販売コーナーが設けられるなど、英国有数の大規模ガーデンセンターや著名なバラ園などで販売されるようになってきた。

しかし、これまで同社は、積極的な売り込みはあまりせず、広告宣伝費もあまり使ってこなかったという。むしろ、日頃の活動や展示会でのブースデザインなどに気を付けながら、自社ブランドの価値を高めることで、小売店側から声が掛かるのを待つ戦略を通してきた。

また、同社の販売の主力はオンライン販売であり、同社のオンラインサイトへの誘導は、Niwakiとホブソン氏自身のSNSや口コミの力が大きいとしている。ホブソン氏はYouTubeやインスタグラムなどで剪定方法の教示を行い、フォロワーを増やしてきた。そうしたフォロワーは英国内にとどまらず、米国や大陸欧州などにも広がっている。

このほかにも、テレビの人気園芸番組のキャスターや有名庭園のヘッドガーデナーに実際に商品を使ってもらい、コメントしてもらったりしている。そのうちの何人かのインフルエンサーをアンバサダー(大使)と呼んで、商品を提供している。

同社製品は高価格帯なため、主要顧客は高所得の中高年齢層であるが、「将来を見据えて若い世代にもアピールしていきたいと思っている」とトム氏。英国では、若者もガーデニングに関心があるので、市場ニーズはあるという。B to Cの展示会などで若者とも接触する機会を設けることで、同社製品の良さを知ってもらい、金銭的余裕ができてから買ってもらえるような流れを作りたいと考えている。

なお、Niwakiの本社は、地元の農家が納屋を改造して作ったコンプレックスの中にあり、本社機能のある事務所(兼ミーティングルーム)、ショールーム、倉庫などがある。ショールームには、同社の品が並べられており、平日に予約なしで訪問が可能だ。

年10回以上、展示会に出展

英国は園芸産業が盛んで、世界最高峰といわれるRHS主催のチェルシーフラワーショー(2019年5月29日付ビジネス短信参照)をはじめ、春から秋まで年間数十の園芸フェアが開催されている。Niwakiは同ショーをはじめ、英国内だけで年間10以上の展示会に出展、国外も含めると20以上の展示会やイベントに出展している。しかし、出展してもなかなか成果が出ないものだ、とホブソン氏は言う。そして、初出展から3年目を過ぎたあたりからようやく成果が出始めるので、根気強く出展し続けることが大切だ、とも語っている。

Niwakiの最近の躍進についてホブソン氏は、英国でのガーデニング人気を挙げる。園芸産業は、高齢化、環境意識の高まり、自然への回帰などを理由に年々、拡大している。「園芸ブームに乗ったこと、日本の園芸技術に着目したこと、こうした要素のうち1つでも欠ければ今のようにうまくはいかなかったと思う」と語った。


チェルシーフラワーショーでの展示(2019年5月)(Niwaki提供)

Niwakiがもう1つ、力を入れているのは、毎年改定しているパンフレットだ。設立当初は簡易なものだったが、2019年版はカラー刷りの64ページ。ロンドン在住の日本人デザイナーが挿絵を担当しており、日本文化を紹介する読み物として、日本人が読んでも楽しい内容だ。「物語があることが必要」と、ホブソンはコメントしている。インターネットの普及により、競合他社が数多く参入する中では、ブランド力で差別化することは重要だ。

同社から見た日本製品の魅力について、ホブソン氏は「良くできている、良い材質とデザイン、ナイスな見た目、居心地の良さを感じる」と述べ、さらに「欧州製品よりも良い、そして何より他国の製品とは違う(different)」と語った。


ウィル・トム氏(左)とジェイク・ホブソン氏(ジェトロ撮影)

今後はNiwakiブランドとして世界に展開

Niwakiの知名度が高まるにつれ、同社がセレクトした商品に関心をもつ消費者が増えており、Niwaki自身がブランドとして展開できる可能性が高まっている。帽子(製品は中国製)やバッグ、小物などにNiwakiのロゴをプリントして販売し、好評だ。

近い将来、米国市場に積極的に展開し、高級インテリア用品などを販売するザ・コンランショップのように、園芸用品を中心としたセレクトショップを展開したいと考えている。これは日本市場に対しても同様で、日本に拠点を設立し、人を常駐させることで取引先との関係を強化するほか、日本でセレクトショップを運営することも目標に掲げている。


注:
FSC認証とは、木材を生産する世界の森林と、その森林から切り出された木材の流通や加工のプロセスを認証する国際機関である森林管理協議会に認証されたということ。その認証は、森林の環境保全に配慮し、地域社会の利益にかない、経済的にも継続可能な形で生産された木材に対して与えられる。FSCウェブサイトを参照。
執筆者紹介
ジェトロ・ロンドン事務所
岩井 晴美(いわい はるみ)
1984年、ジェトロ入構。海外調査部欧州課(1990年~1994年)、海外調査部 中東アフリカ課アドバイザー(2001年~2003年)、海外調査部 欧州ロシアCIS課アドバイザー(2003年~2015年)を経て、2015年よりジェトロ・ロンドン事務所勤務。著書は「スイスのイノベーション力の秘密」(共著)など。

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