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第2期モディ政権、水専門の省庁を設立(インド)
深刻化するインドの水不足とモディ政権の取り組み(2)

2019年7月10日

2018年6月に政府の諮問機関であるインド行政委員会(NITI Aayog)が発表したレポートによると、インドでは深刻化する水不足により、約6億人が深刻な水ストレス(人口1人当たりの最大利用可能水資源量が1,700立方メートルを下回るなどの状態)に直面しているとされる。連載の後編では、水不足の軽減・解消に向けた課題と2期目を迎えたモディ政権の取り組みについて報告する。

深刻化する水不足、農業セクターでの非効率的な水利用が課題

インドにおける水不足は、近年の降水量の減少、急激な都市化と人口増加に伴う水使用量の増加、地下水の過剰採取による地下水位の低下、水関連インフラの未整備など複数の要因が重なることで、深刻化していると考えられる。これらの中には抜本的な対策が困難なものも含まれるが、取り組みによって各地で発生する水不足を軽減・改善しうるものもある。

まず、水消費量の約8割を占めるとされる農業セクターにおける水の使用を効率化することが求められる。インドの耕作地に対する灌漑普及率は34.5%にとどまっており、農家の多くが地下水を使用しているが、耕作量の増加に伴って水の使用量が増え、地下水の過剰採取につながっているとされる。加えて、農作物に対する水の利用効率が悪いことが、農家の過度な水利用の原因となっているとの指摘もある。

供給面では、水道インフラの更新と整備が求められる。インドでは、敷設された配水管の老朽化による破損などで、給水源から各家庭や工場などユーザーに届くまでの漏水率が約40%に上るとも言われる。また、水道普及率が高くなく、農村部での普及率は18%にとどまるため、水道のない家庭の多くが井戸水を利用している。都市部でも水道インフラや水の供給が十分でないところなどでは井戸水が利用されているほか、水が不足する際には水道当局や民間企業が郊外の水源などから水をくみ上げ、タンクローリーで運搬して各ユーザーに届けるなど、非効率な供給が行われている。


チェンナイ市内で上水を輸送するタンクローリー(ジェトロ撮影)

さらに、多くの地域で年間を通じて雨が降る時期が限られているため、雨季の間に貴重な雨水を無駄なく貯留することや、汚水を処理して再利用することが重要になる。インドでは雨水の利用率が低い上に、汚水の約7割が未処理とされるため、雨水貯留設備や排水処理施設などのインフラを整備することにより、供給可能な水の量を増やす余地がある。

水不足軽減・解消に向けた2期目のモディ政権の取り組み

深刻化する水不足を解消していくためには、中央・州政府が協力し、包括的な対策を行うことが不可欠であり、2期目を迎えたナレンドラ・モディ政権もその重要性を認識している。モディ政権は5月31日、従来の水資源・河川開発・ガンジス川再生省と飲料水・公衆衛生省を統合し、選挙マニフェストに掲げていたジャル・シャクティ(Jal Shakti)省を新設した。ジャル・シャクティとは、ヒンディー語で「水の力」を意味し、同省は水資源の開発や規制に向けた政策やプログラムの策定などを所管する。

また、モディ首相は6月15日、NITI Aayogの第5回会合で、中央政府と州政府の代表を前に、雨水の貯留、干ばつの状況と軽減策などを議題として取り上げた。同会合では、水の過剰な使用を削減すること、積極的な政策と投資支援で雨水貯留を各家庭・コミュニティーレベルにおいて実施し、全土で効率的な水保全を推進することについて幅広い合意を得るとともに、干ばつのない国にするための短期的・長期的な解決策を議論した。インド憲法では水に関する立法権は州政府の所管事項とされているが、モディ政権は州政府と協力し、水不足解消に向けて取り組む姿勢を全面に出している。

加えて、同会合の冒頭では、モディ首相が「中央政府の水に関する諸問題に対する統合的アプローチの主な目的の1つは、2024年までに全農村へ水道を普及させることだ」と述べたという(タイムズ・オブ・インディア紙、6月16日)。1期目のモディ政権は、38%しか普及していなかったトイレ施設を99%(Swachh Bharat Mission公表値)まで普及させた。現在、水道普及率が20%以下にとどまる農村に水道を普及させつつ、喫緊の課題である水不足解消に向けた取り組みをどのように推進していくか、2期目のモディ政権の政策が注目される。

深刻化するインドの水不足とモディ政権の取り組み

  1. インド全土の4割以上が干ばつ状態に
  2. 第2期モディ政権、水専門の省庁を設立(インド)
執筆者紹介
ジェトロ・チェンナイ事務所
坂根 良平(さかね りょうへい)
2010年、財務省入省。近畿財務局、財務省、証券取引等監視委員会事務局、金融庁を経て、2017年6月からジェトロ・チェンナイ事務所勤務。

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