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インド全土の4割以上が干ばつ状態に
深刻化するインドの水不足とモディ政権の取り組み(1)

2019年7月10日

インドで水不足が深刻化している。IIT(インド工科大学)ガンディナガール校が運営する、干ばつ早期警戒システム(DEWS)によると、6月19日時点でインド全土の約44%が干ばつに、約6%が極度の干ばつに直面しているという。インド気象局(IMD)は6月8日、2019年の南西モンスーンが例年よりも1週間遅れて南部ケララ州に到達したことを発表した。IMDは2019年のモンスーン期の降雨量が例年並みの96%と予測しており、今後の降雨により状況の改善が見込まれるものの、国内の主要な91の貯水池における貯水率は6月20日時点で17%にとどまる。連載の前編では、インドにおける水不足の現状などについて報告する。

水をめぐりデモや州間の対立が発生

南部タミル・ナドゥ州の最大野党ドラビダ進歩連盟(DMK)は6月22日、州政府与党の全インド・アンナ・ドラビダ進歩連盟(AIADMK)政権の水不足解消に向けた取り組みが不十分であるとし、チェンナイ市内でデモを実施した。チェンナイでは、1日当たり8億3,000万リットルの水需要があるのに対し、チェンナイ上下水管理局(CMWSSB)は現在、5億2,500万リットルしか供給できていないとされる(ビジネス・ライン紙、6月18日)。

水不足が深刻化しているのは、タミル・ナドゥ州に限った話ではない。地元誌によれば、西部マハーラーシュトラ州では全36県のうち31県が、東部ビハール州では全38県のうち24県が、南部テランガナ州では全33県のうち30県が、同カルナータカ州では全30県のうち23県が干ばつ被害の宣言を出したという(インディア・トゥデイ、6月24日号)。

また、水をめぐる対立という観点では、インド南部を流れるカーベリー川やクリシュナ川など複数の州をまたぐ河川について、割り当て水量をめぐって流域の各州政府が長期にわたり対立しており、中央政府が河川の水利権などに対応する河川管理機関をそれぞれ設置し、管理を行っている。


干ばつにより、水位が大幅に低下しているチェンナイ市内の湖(ジェトロ撮影)

近年では降水量が減少傾向に

インドにおけるモンスーンには、6月から9月にかけて国全体に降雨をもたらす南西モンスーン(6月初めごろに南部から雨季が始まり、7月初めごろに国全体が雨季に入る)と、11~12月を中心に南部のベンガル湾沿いの地域へ降雨をもたらす北東モンスーンがある。IMDが公表した「インドの降水量統計2017PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(8.1MB) 」によれば、インドでは年間降水量の75%以上が6~9月の4カ月間にもたらされる。他方、それらの時期を除けば降水量が少なく、多くの地域で雨の降らない日が続く。また、降水量は地域によって大きく異なり、例年、南部のケララ州などのある西ガーツ地域、北東部のヒマラヤ近郊地域やメガラヤ丘陵地域は年間2,500mm以上の降雨があるが、インド最北端のカシミールや西部ラジャスタンの年間降水量は400mmに満たない。インドでは、農業セクターが水消費量の約8割を占めるとされるが、灌漑インフラが十分に整備されていない地域も多く、降水量の多寡はダムや河川などを介しての水の供給に大きな影響を与える。

しかし、このようにインドにとって重要な降水量が、近年では減少傾向にある。1951~2000年における降水量の記録から算出される標準降水量と、2000~2017年の降水量を比較すると、2000年以降の18年間の年間降水量は平均1,108.7mmしかなく、これは標準降水量の93%に過ぎない(表参照)。その間、2001年には10億2,874万人(国勢調査)だった人口は、2011年に12億1,019万人(国勢調査)となり、2019年時点では13億5,177万人(IMF)に上ると推計されている。これは2000年以降の18年間で、降水量がそれ以前より平均7%少ない状態が続く一方で、人口が約30%増加したことを示している。

表:2000~2017年における年間降水量の推移(―は値なし)
南西モンスーン
降水量(mm)
年間降水量
(mm)
降水量 標準値との比較 降水量 標準値との比較
標準(1951-2000) 890 1,190
2000 798.1 -10% 1,035.4 -13%
2001 818.8 -8% 1,100.7 -7%
2002 700.5 -21% 935.9 -21%
2003 902.9 2% 1,187.3 0%
2004 807.1 -9% 1,106.5 -7%
2005 874.3 -1% 1,208.3 2%
2006 889.3 0% 1,161.6 -2%
2007 943.0 6% 1,179.3 -1%
2008 877.8 -1% 1,118.0 -6%
2009 698.3 -21% 953.7 -20%
2010 911.1 3% 1,215.5 2%
2011 901.3 2% 1,116.3 -6%
2012 823.9 -7% 1,054.7 -11%
2013 937.4 6% 1,242.6 5%
2014 781.7 -12% 1,044.7 -12%
2015 765.8 -14% 1,085.0 -9%
2016 864.4 -3% 1,083.2 -9%
2017 845.9 -5% 1,127.1 -5%
2000-2017平均 841.20 -5% 1,108.7 -7%

注: IMDはインドの年間標準降水量(1951-2000年における降水量の記録から算出)を119cm、南西モンスーンによる標準降水量を89cmとしている。
出所:IMD「インドの降水量統計2017」を基にジェトロ作成

地下水の水位が減少、深い井戸も多く存在

インドでは、地下水も重要な水資源の1つとなっており、水供給の40%を占めるとされる。ところが、近年、この地下水の水位が大きく減少している。政府諮問機関のインド行政委員会(NITI Aayog)は、2018年6月に発表した「複合的な水管理指標(CWMI)」に関するレポートの中で、世界銀行など外部機関のレポートを引用し、「過剰取水により全国で54%の井戸の地下水位が低下、2020年にインドの主要21都市で地下水が枯渇し、1億人に影響が出ると予想される」とした。

実際に、井戸の地下水位がすでに深くなっている地域も多い。中央地下水委員会の「地下水年鑑2017年度PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(14.2MB) 」によると、2018年1月時点で調査された井戸のうち、地下水位が20mより深い井戸が、北西部のラジャスタン州では37%、同パンジャブ州では28%となっている。

降水量の減少や人口増加、地下水位の低下など水が不足する中で、今後、インド政府としてどのような対策をとるのかが問われるだろう。

深刻化するインドの水不足とモディ政権の取り組み

  1. インド全土の4割以上が干ばつ状態に
  2. 第2期モディ政権、水専門の省庁を設立(インド)
執筆者紹介
ジェトロ・チェンナイ事務所
坂根 良平(さかね りょうへい)
2010年、財務省入省。近畿財務局、財務省、証券取引等監視委員会事務局、金融庁を経て、2017年6月からジェトロ・チェンナイ事務所勤務。

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