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アフリカ諸国のスタートアップに見る日本のビジネスチャンス
2019年アフリカ・スタートアップセミナー報告

2019年7月1日

ジェトロは6月12日、「アフリカ・スタートアップセミナー」を英国ロンドンで開催した。アフリカ全体および南アフリカ共和国(以下、南ア)、ケニア、ナイジェリアにおける現在のスタートアップの概要について、ジェトロの各国駐在員が紹介した。

ICTスタートアップの成長著しく

アフリカ諸国では、南ア、ケニア、ナイジェリアなどアフリカ主要国の携帯電話普及率は80%を超え、スマートフォンの普及率も着実に伸びている。また、スマートフォンを通じたモバイルインターネットの利用も東アフリカを中心に増加しており、インターネット活用サービス使用時の料金を決済するモバイルマネー口座が増えている。

こうした背景の下、近年、アフリカ諸国のスタートアップ企業への注目が高まっている。投資会社のパーテック・ベンチャーズによると、2017年 のアフリカ諸国のスタートアップへの投資総額は5億6,000万ドルに上り、3年間で総額・件数ともに2倍以上に増加している。いずれも上位3カ国は、1位 から順に南ア、ケニア、ナイジェリアであった(注1)。南アでは、携帯電話やスマートフォン、インターネットの高い普及率を背景に、インターネット活用サービスを提供するスタートアップが成長している。ケニアでは、欧米出身の高学歴の起業家がスタートアップを多数設立している。情報通信技術(ICT)分野以外にも、ケニアの農業分野においては、農家向け灌漑キット販売や、農家と小売店の仲介、農家同士の知識・情報共有を図るスタートアップ企業などが活動している。物流業でも、小口輸送のほか、最近は貨物輸送に特化したスタートアップ企業が活動していると紹介された。また、ナイジェリアでは、アフリカ最大級の都市であるラゴスに、スタートアップを支援するインキュベーションハブが次々と立ち上がっているほか、ハーバード大学やスタンフォード大学など米国のトップ校で学んだナイジェリア人などが多数起業しているのが特徴だ。

アフリカ諸国では、会社・事業に対する政府による規制が少ないことに加え、新しい技術やサービスを容易に受け入れ活用していくという土壌、潜在的な消費層が存在する。こうしたアフリカ諸国の特徴もスタートアップの躍進を容易にする。ジェトロ・ヨハネスブルク事務所の川崎大佑所員は、日系企業がアフリカでICTサービスや関連製品を展開するためには、力を増している現地のスタートアップと連携し、活用することも必要であると説明した。シリーズB段階(注2)にまで成長した、携帯電話を活用した送金や支払い、貯蓄、保険などの金融サービス提供を行うナイジェリアのスタートアップ、パガ(Paga)はICTを活用したスタートアップの一例である。アフリカでは今後も、ICT活用サービスとそれを支援するフィンテック関係が並行して発展していくことが期待される。

各国の課題に日本の商機も

スタートアップが急速に拡大する中、課題も存在する。ケニアでは、国内のエンジニアが不足し、エンジニアが担う業務を国外のエンジニアに外注するスタートアップも見られる。

南アにおいては、スタートアップで働く人材の質、スタートアップスキル、技術吸収能力が非常に低く、長期的なスタートアップ企業の持続・成長を考えると、これらの改善が不可欠である。一方で、南アおよび日本が比較的得意とするプロセスイノベーション分野などは、日本企業が南アのスタートアップと提携し、補完することで、市場参入につなげることも可能だ。

また、ナイジェリアのスタートアップは、ナイジェリア人が創業した企業が多数を占め、ケニアなどとは対照的に、外国人起業家の活躍は目立たない。他方、欧米諸国からナイジェリアのスタートアップへの投資は活発化しており、特にシリーズA以上の企業に集中している。海外からシードラウンドのスタートアップへの投資が極めて少ない現状は、見極めが難しいものの青田買いがまだ可能であり、日本にとってチャンスでもあると、ジェトロ・ラゴス事務所の山村千晴所員は指摘する。

エコシステムの理解やスピード感がカギ

日本において、アフリカ諸国のスタートアップとの連携や投資に最も関心を示しているのは商社や保険業界で、太陽光発電によって家電などを稼働させる事業を展開するM‐KOPAソーラーへの、2018年の三井物産 (5月)や住友商事 (12月)による出資がその一例である。しかし、欧米諸国と比べると、アフリカ諸国のスタートアップに対する日本の存在感や実績は圧倒的に弱い。

ジェトロ・ナイロビ事務所の山田研司所員は、アフリカ諸国のスタートアップ企業との連携のコツは、現地のスタートアップを取り巻くエコシステムの存在を理解して参入することや、急成長が求められるため時間が大事であるというスタートアップの特性を理解し、契約締結も含めてスタートアップのスピード感にどう対処できるかが重要だと説明した。スタートアップの有する経営資源をどう活用し、連携によって何を得るかを明確にすることもカギであるとも指摘した。アフリカ諸国のスタートアップは今後も大きな成長が期待できるが、世界中に注目され、既に多くの外国が影響力を増している。この数年で日本がどう存在感を強められるかが勝負と言えそうだ。


現地事情を紹介するジェトロの駐在員(ジェトロ撮影)

注1:
同社の直近の資料によると、2018年の実績額は11億6,300万ドルで、1位から順にケニア、ナイジェリア、南アであった。
注2:
スタートアップ企業の資金調達段階を示す概念で、一般的に成長段階の順にシードラウンド、シリーズA、シリーズB、シリーズCなどがある。調達額の目安は市場や業種などで異なるが、順を追うごとに規模が大きくなる。
執筆者紹介
ジェトロ・ロンドン事務所(執筆時)
新谷 那々(にいや なな)
2019年5月~8月、ジェトロ・ロンドン事務所にインターン研修生として在籍。
慶應義塾大学文学部在籍。
執筆者紹介
ジェトロ・ロンドン事務所
岩井 晴美(いわい はるみ)
1984年、ジェトロ入構。海外調査部欧州課(1990年~1994年)、海外調査部 中東アフリカ課アドバイザー(2001年~2003年)、海外調査部 欧州ロシアCIS課アドバイザー(2003年~2015年)を経て、2015年よりジェトロ・ロンドン事務所勤務。著書は「スイスのイノベーション力の秘密」(共著)など。

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