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通関におけるリスク管理システムに改善の動き(ロシア)
通関問題に関する意見交換会を開催(3)

2018年5月11日

ロシアでは、税関での管理・検査は「リスク管理システム」に基づいて実施されている。税関職員が受領(じゅりょう)した税関申告書を当該システムにかけて、密輸や不正通関のリスクや書類の不備が発見された場合、追加文書の提出などの指示が下される。他方で、このリスク管理システムでは申告者である貿易事業者のリスク・カテゴリーによって、検査内容に濃淡が生じている。どのような貿易事業者がどのカテゴリーに分類されているのか。2018年1月18日に開催したモスクワ・ジャパンクラブ(JBC)通関委員会と在ロシア欧州ビジネス協会(AEB)通関・運輸委員会との意見交換会の報告第3回目は、ロシアの物流会社SV-TRANSEKSPOのマリナ・リャキシェワ社長顧問による「リスク管理システム」の動向に関する講演内容を報告する。

「低リスク」事業者が大多数の申告と納税を実施

連邦税関局は2017年5月、2020年までの行動計画として「ビジネスに向けた10のステップ」をまとめた。この中で、税関申告書の自動登録・自動リリースの割合のさらなる拡大、リスク最小化措置を適用する割合の拡大、リスク検出自動化の割合の増加などを目標に掲げている。

貿易事業者に関するカテゴリー分類(注)について、連邦税関局によると、2017年第4四半期の全体の事業者数は10万6,765社だが、このうち「低リスク」分類された企業は7,540社しかなかった。他方で、「低リスク」に分類された企業による税関申告件数が、全申告件数に占める割合は63%で、支払った関税は総支払額の82%に達しており、「低リスク」事業者が税関申告件数および関税支払額の大半を占めていることがわかる(表)。

表:貿易事業者のカテゴリー分類の概要(2017年第4四半期時点)
カテゴリー
分類
貿易事業者数 税関申告書数に占める割合 関税支払いに占める割合 適用措置
低リスク 7,540 63% 82% リリース前の書類・貨物検査頻度の最小化、リリース後検査への転換、貨物の自動リリースシステムへの参加、任意税関での税関申告の可能性
中リスク 87,068 29% 14% リリース前の書類・貨物検査頻度の低下、個別の管理フォームをリリース後に移行、部分的な税関検査
高リスク 12,157 8% 4% リリース前の書類・貨物検査、税関検査の量と範囲の増加、上位税関の担当者が検査に参加
出所:
SV-TRANSEKSPO社資料より作成

税関は貿易事業者カテゴリーを「低リスク」、「中リスク」、「高リスク」の3段階に分け、リスク度合いに応じた管理を行っている。「低リスク」企業に対しては、貨物リリース前の税関検査は最低限のレベルとなり、主たる検査はリリース後に行う。「中リスク」企業の場合は、通関処理時には書類中心の検査で、「高リスク」の場合は、リリース前に文書および貨物そのものが検査されるなど、税関検査が厳重になる。上位の税関機関が検査に立ち入ることもある。

「低リスク」カテゴリー事業者の条件を引き下げ

貿易事業者のカテゴリー分類のため、35種類の基準が用いられている。資本金や貿易活動従事期間、関税・金利・罰金の未納の有無など貿易事業者の活動に基づく基準もあれば、そうでない基準も存在する。迅速なリリースが止められる事例としては、書類に記載の住所に当該企業が無い場合や企業の清算・解散手続きが開始されていることが判明した場合などがある。これらの場合は、「高リスク」カテゴリーになる。また、関税の未納や滞納、税務当局による指摘があった場合も「高リスク」に分類されることがある。

他方で、連邦税関局は「低リスク」事業者の数を増加させようとしている。これまで連邦税関局は「低リスク」事業者の基準を、a.1年間で100件以上の通関申告を行っていること、b.1回目の税関申告後から1年以上経過していること、c.輸入事業を行っていること、としていた。これを2017年にa. 2年で100件以上、b.1回目の税関申告から2年以上が経過していること、もしくは、税務リスクが低い場合、6カ月以上経過していること、c.輸入もしくは輸出事業を行っていること、に変更した。これにより「低リスク」に分類された事業者数は、2017年第1四半期に2,199社だったものが、第4四半期には7,540社まで拡大した。

輸入貨物に対する通関検査の実施状況について、2017年は、「低リスク」:「中リスク」:「高リスク」に対して15:48:37の割合で実施していたものを、2020年には12:35:53、2025年には10:30:60とする方針であり、「低リスク」や「中リスク」に対しては、検査の割合を減らし、「高リスク」に対して重点的に検査を実施する。

今後は貿易事業者自身がカテゴリー分類を確認できるように

貿易事業者のリスク・カテゴリー分類については、分類基準を公開すべきなどのさまざまな要望が挙がっており、今後、財務省が詳細を決定し公示する方向で動いている。これにより、事業者自身がどういうカテゴリーに分類されているかについて把握することができるようになる。

連邦税関局もリスク・カテゴリー分類の公示をおおむね肯定的に捉えており、善意の事業者であることを署名させた上で、「パーソナルアカウント」ページで各自のカテゴリーを確認することができるように準備を進めている。


注:
詳細は調査レポート「ロシアにおける税関検査簡素化を目的とする貿易事業者カテゴリー別分類制度(2016年2月)」参照。
執筆者紹介
ジェトロ・モスクワ事務所 所員
齋藤 寛(さいとう ひろし)
2007年、ジェトロ入構。海外調査部欧州ロシアCIS課、ジェトロ神戸を経て、2014年6月より現職。ジェトロ・モスクワ事務所では調査業務、進出日系企業支援業務(知的財産保護、通関問題)などを担当。編著にて「ロシア経済の基礎知識」(ジェトロ、2012年7月発行)を上梓。

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