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食品製造施設の査察への対応事例(韓国)

2018年11月30日

韓国に輸入される日本の食品などの海外製造業所に対して、韓国政府による査察が開始されたとの情報が、2017年秋以降ジェトロに寄せられている。査察はどのような流れで行われ、何を確認されるのか。ジェトロは、査察受検企業の協力を得て、査察に同行した。その内容をレポートする。

告示に基づいて査察結果を判定

韓国による査察は、2016年2月4日に韓国で施行した「輸入食品安全管理特別法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」(ジェトロ仮訳PDFファイル(406KB) )により定められたものだ。同法により、韓国に食品などを輸入する企業などは、海外製造業所の名称・所在地および生産品目などを食品医薬品安全処長(以下、食薬処長)に登録することが必要となり(第5条。半年の猶予期間を経て2016年8月4日から実施。日本は2018年10月31日現在5,063件が登録)、食薬処長が海外製造業所(注1)および海外作業場(注2)に対して、現地実態調査(以下、査察)を実施することができる旨が定められた(第6条)。食薬処長は査察などの業務を海外食品衛生評価機関に委託することができ(第9条)、現在はKAHAS(Korea Agency of HACCP Accreditation and Services)が受託して世界各国で査察を行っている。

また、2017年10月31日付で「海外製造業所および海外作業場の現地実態調査方法および基準(食薬処告示第2017-81号)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(ジェトロ仮訳PDFファイル(1.8MB) )が施行され、同告示の別表1で、食薬処長が輸入食品などの安全性確保などのために定める衛生基準が記されている。また、別表2に、海外製造業所を評価・点検するための項目が規定されている。査察は同表に従って実施され、項目ごとに「〇(適合)」または「×(不適合)」で評価される。この結果、「○」判定を受けた項目数の割合を百分率に換算し、85%以上の場合に「適合」、85%未満70%以上の場合に「改善が必要」、70%未満の場合に「不適合」と判定される。ただし、重要項目で「×」が1個以上ある場合は「不適合」と判定される。

日本酒メーカーで査察

日本酒メーカーA社が、KAHASから査察の通知メールを受け取ったのは、2018年8月中旬のことであった。A社は伝統的な酒蔵で、韓国を含め各国に日本酒を輸出している。当初は9月に査察を行うと通知されていたが、その後KAHASの都合により延期。11月上旬に受検することが決まった。日程が確定したのは10月中旬であり、査察当日まで3週間を切ったタイミングだ。

査察に先立ち、KAHASからは質問書(1.施設情報、2.ビジネス証明書、3.衛生管理、4.連絡窓口)と書類リストが送付されており、質問書への事前回答と書類の準備を求められていた。また、製造工程のフローチャートとフロアマップを英語で2部用意するよう要請があった。A社では、質問書への回答を査察前に送付、また書類リストのうち開示できるもの、フローチャート(英語)とフロアマップ(日本語)を準備していた。

1日をかけて製造現場と書類などを確認

査察当日は、査察官2人とKAHASが手配した通訳1人の合計3人がA社を訪れた。A社では、代表取締役社長、杜氏(とうじ)、営業課長、事務担当の4人が対応。1日をかけて製造現場と書類・データの確認が行われた。査察の主な流れは、参考のとおりである。なお、査察官や製造品目、製造工程などによって査察内容は変わるため、留意いただきたい。

参考:査察の流れ

9:15
査察官がA社に到着(最寄駅でピックアップ)
9:15~9:20
査察官によるパソコンなどのセッティング
9:20~9:25
名刺交換
9:30~10:00
営業許可証の確認。フローチャート、フロアマップについてA社から説明
10:00~11:35
醸造・瓶詰・検査・貯蔵用の施設・設備を確認
11:40~13:10
昼食
13:10~15:40
書類やデータの確認
15:40~16:10
査察官のみによる討議
16:10~16:45
Wrap-up Meeting(指摘事項や改善要望内容の口頭説明、査察結果の通達方法説明、質疑応答、受検企業へのアンケートと受検確認書へのサイン)

出所:筆者作成

A社では、まず初めに製造工程のフローチャートとフロアマップについて説明が求められた。フローチャートでは、工程ごとの温度管理、ろ過工程の有無とろ過方法、殺菌工程の有無と殺菌温度・時間、貯蔵期間について査察官から質問された。また、フロアマップでは、どこが清潔区域に該当するかの確認があった。

その後、午前中に行われた製造現場の確認では、杜氏から製造工程・設備・機器の説明を行いつつ、各工程の温度管理や衛生管理などについて査察官から確認があった(仕込み前の時期であったため、実際の作業を確認できたのは原材料の受け入れとラベル貼りのみ)。査察官からの確認事項は、表1を参照。

なお、査察官は、各工程について具体的な温度や加熱時間から、清掃・洗浄に用いる道具や洗浄剤の種類・頻度にいたるまで詳細に質問したが、A社では杜氏がすべてよどみなく回答していた。製品特性、製造工程や実務について熟知した現場責任者が対応することが、スムーズな査察につながると考えられる。

表1:製造現場確認での確認事項
項目 確認事項
(1) 原材料入荷エリア
  • コメの産地(日本産か、どこの県産か)
  • 屋外のパレットの使用用途
  • 照明の点灯有無
  • 入荷日の記録方法
(2) 精米工程
  • 国内向けと韓国向けそれぞれの精米歩合
(3) 蒸米工程
  • 蒸す温度の確認方法
  • 機械の外側からどのように中身を確認するか
  • 使用する道具の洗浄方法
(4) 製麹工程
  • 製麹に用いる木枠の洗浄方法
  • 麹室の室温と温度の上げ方
(5) 発酵工程
  • タンクの材質、清掃方法、虫の混入可能性
(6) 圧搾工程
  • (圧搾機を乾燥させていたため)いつまで乾燥させるか
(7) 火入れ工程
  • 火入れの温度、時間
(8) 瓶詰工程
  • 瓶詰前に使用するろ過フィルターのカートリッジの規格、成績書
  • 瓶の洗浄方法
  • 瓶詰後の目視検査項目、頻度
  • リサイクル瓶の有無、割合、韓国向け商品への使用有無
(9) 商品検査
  • 検査項目、検査頻度、検査記録の有無
  • 検査員の数
  • どの工程で検査を行うか
  • 使用した検体(サンプル)は保存しているか
  • ロットの管理方法
(10) 水
  • 水を貯蔵するタンクの施錠状態
  • ろ過方法、殺菌方法
  • 水の汲み上げ方法
(11) 廃水・廃棄物
  • 廃水、廃棄物の処理方法
(12) 更衣室
  • 衛生服の有無
  • 私服と衛生服の区分方法(管理方法)
出所:
筆者作成

製造現場の確認(ジェトロ撮影)

書類・データの確認(ジェトロ撮影)

また、午後に行われた書類・データの確認では、査察官が求める書類などについて代表取締役社長、杜氏、事務担当から提供・口頭回答を行った。日本語で作成された書類・データを示しながら詳細を説明し、通訳が書類などの記載内容や項目を韓国語で伝えた。査察官からの確認事項は、表2を参照。製造現場、書類・データのいずれも、査察官は写真を撮り記録していた。企業秘密や個人情報などに該当するものがあれば、その旨を説明して配慮を求めることが必要となる。

表2:書類・データ確認での確認事項
項目 確認事項
(1) 会社概要
  • 営業許可証、酒類製造免許
  • 第三者認証の取得有無(ISOなど)
(2) 作業場の衛生基準
  • 防虫・防鼠の実施記録(外部業者、社内)
  • 照明の照度に関する社内基準
  • 作業場の気温基準、記録
  • 作業場の清掃マニュアル、頻度
(3) 原材料・副資材の衛生基準
  • 原材料の受け払い記録
  • 原材料受領時の検品有無、検品方法、過去の不良品の納品有無
  • 原材料(玄米)の残留農薬検査書
  • 副資材の検査成績書(食品に適した資材であることの確認)
(4)製造・加工
  • 製造マニュアル
  • 原材料受け入れから最終製品までの製造過程記録
  • 異物混入の際の管理方法
  • ろ過用のカートリッジ規格、交換頻度
  • 火入れ温度の記録
  • 衛生服の管理方法、予備枚数、洗濯頻度
  • 清潔区域への入室前の従業員の衛生基準
  • 韓国向け製品のラベルの確認、度数表示の確認
(5) 検査
  • 製品検査基準と社内での検査結果、外部での検査結果
  • 検査員の教育計画、教育記録
  • 機器(温度計、計量器)の校正方法、検査書、校正頻度
  • 流通期限の設定根拠
(6) 従業員の衛生基準
  • 従業員の衛生教育計画、教育記録
  • 従業員の健康診断結果、診断項目
  • 従業員の衛生管理基準(日常的な業務従事前)
(7) 給水施設の衛生基準
  • 水質検査書の有無、検査頻度、殺菌方法
  • 貯水タンクの洗浄記録、飲用適でない水の配管有無
(8)その他
  • 過去に不適な製品を製造したことの有無
  • 消費者からのクレーム有無、記録、対応マニュアル
  • リコール発生時の対応マニュアル
  • 韓国向け製品のトラブル・クレーム有無
  • 米国FDAの査察経験有無
出所:
筆者作成

正式な査察結果は後日連絡

製造現場、書類・データの確認後は査察官のみで内容を討議し、その後Wrap-up Meetingが開かれた。査察官からは、「伝統を守りながら酒造りを行っている様子が印象的。日本酒は全世界で有名であり、韓国でもよく飲まれている」と評価。「一方、外国(韓国)の基準を知り、それに合わせて製造していただくことを望む観点」として、衛生服の管理方法や作業場の密閉、照明の照度やガラス飛散防止用カバーの設置といった衛生管理、原材料受け入れの際の検査成績書やろ過フィルターのカートリッジ交換記録といった記録・書類の保存、水の貯蔵タンクの施錠といった食品防御、についてそれぞれ口頭でコメントがあった。

正式な結果については、韓国に持ち帰って検討され、「適合」の場合は特に連絡がなく、「改善を求める」「不適合」のいずれかの場合は、2~3週間以内に連絡があるとのことだった。後者の場合は、是正措置の結果を写真付きで送付することが求められる。なお、回答期限内に是正措置を講じることが困難な場合は、そのスケジュールを連絡することで対応可能とのことだ。

前述のとおり、海外製造業所の登録をしている場合は、査察が行われる可能性がある。KAHASは査察計画や対象企業を公開していないため、突然の連絡に慌てないよう、韓国向けに輸出する食品などを取り扱っている施設は、韓国の法規則に従っているかを確認されたい。


注1:
海外から韓国に輸入される食品など(畜産物は除く)の生産・製造・加工・処理・包装・保管などを行う海外に所在する施設(水産物を生産・加工する船舶を含む)。
注2:
海外から韓国に輸入される畜産物のと畜・集乳・製造・加工・保管などを行う海外に所在する作業場。
執筆者紹介
ジェトロ農林水産・食品部農林水産・食品課
川原 文香(かわはら あやか)
2010年、ジェトロ入構。貿易投資相談センター会員サービス室(当時)(2010~2013年)、農林水産・食品部農林水産・食品調査課(2013~2015年)を経て現職。

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