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急速に進展するビジネス環境の改善(ウズベキスタン)
2018年度所長セミナー要旨

2018年12月27日

2016年12月のミルジヨエフ大統領就任以来、政治・経済改革が進展している。前政権を支えてきた主要閣僚、各州の首長もほとんどが交代した。長年の懸案事項であった二重為替の一本化、外貨購入の自由化を実施した。経済活性化に外資を積極的に取り入れていこうとする取り組みの中で、税制改革なども速いテンポで進んでいる。公的案件の受注を事業の中心としてきた日本企業の中にも、これまでと違った動きもみられるようになった。

人を変え、為替を変え、税制を変える

中央アジア5カ国(図参照)の中で、経済規模ではカザフスタンが圧倒的に大きい。これは原油と天然ガスの収入があるからだ。同国の1人当たりGDP約1万ドルに対して、ウズベキスタンは約1,300ドル(表参照)。2017年9月の通貨切り下げの前でも約2,000ドルだった。しかし、タシケントにいると、その2、3倍は優にある印象だ。

図:中央アジア5カ国
中央にロシアと中国に挟まれたカザフスタンがあり、その南西にウズベキスタン、トルクメニスタンがある。また、南東にはキルギスタジキスタンがある。
出所:
ジェトロ作成

ウズベキスタンの対外債務は、GDP比38.9%と比較的小さい。現実的な経済運営をしてきたということだ。投資環境は良い方向に向かいつつある。世界銀行の「ドゥーイングビジネス2018年版」では、ランキングが前年より7位上昇して74位になり、コファースのビジネス環境アセスメントでも、2017年第2四半期に最低のD評価からCに格上げとなった。

表:中央アジア諸国の主要経済指標
国名 ウズベキスタン カザフスタン キルギス タジキスタン トルクメニスタン
国土面積
(キロ平方メートル)
44万8,900 272万4,900 19万9,900 14万3,100 49万1,200
人口
(2018年推計)
3,266万 1,846万 639万 911万 577万
名目GDP
(2018年推計)
433億ドル 1,842億ドル 80億ドル 74億ドル 428億ドル
実質GDP成長率
(2017年)
5.3% 4.0% 4.6% 7.1% 6.5%
実質GDP成長率
(2018年予測)
5.0% 3.7% 2.8% 5.0% 6.2%
1人当たりGDP
(2018年推計)
1,326ドル 9,977ドル 1,254ドル 807ドル 7,412ドル
外貨準備高
(2018年推計)
289億ドル 332億ドル 19億ドル 14億ドル n.a
対外債務残高
(GDP比、2018年推計)
38.9% 101.5% 77.5% 67.9% 27.0%
出所:
IMF World Economic Outlook Database 2018年10月, Regional Economic Outlook, May 2018

2016年12月に就任したミルジヨエフ大統領が、急ピッチで改革を進めている。大統領はまず人を替えた。主要閣僚のうち、カミロフ外相以外は全て交代した。14の行政区でも、治安上の特殊な問題のあるフェルガナ3州などを除く地域の首長を全て交代した。

2017年9月には通貨スムの交換レートを一本化し、外貨売買の自由化を実施した。それまでは公定レートと闇レートが併存しており、公定レートは1ドル=4,000スム、闇レートは8,000スムだった。これを1ドル=8,000スムに統一するとともに、このレートで自由に外貨を買えるようにした。企業は、ウズベキスタンで商品を販売し、スムで得た利益を銀行で外貨に交換し、外国送金できるようになった。

これまでは、例えば、医薬品や日用品を外国から買い付けるには、闇市場で1ドル=8,000スムで外貨を調達して、代金の3割はウズベキスタンから支払い、残りの7割はバルト3国から送金するなどの手段を用いていた。コンプライアンス上も、いろいろ問題があったようだ。

ただし、ドルが自由に購入できるのは法人だけで、個人ではまだ自由にドルの現金は買えない。個人の場合には、デビッドカードのようなものにドルがチャージされる。4半期当たり5,000ドル、年間2万ドルまで許可されている。外国のホテルなどでは、このチャージされたカードで支払いをすることができるようになっている。

ミルジヨエフ大統領は、このほかに外資導入に向けたビジネス環境整備のため、税制改革を断行している。2019年1月1日以降、年間売上高10億スム以上の企業の法人税(企業利潤税)は14→12%、個人所得税は累進課税→12%、雇用者負担の統一社会保険料は25→12%となる。関税率もいろいろな品目で引き下げられる。ただし、ウズベキスタンでは自動車を製造しているため、自動車の輸入関税は引き上げ傾向にある。

自動車産業に新たな動き

ウズベキスタンには、ウズアフトサノート と米国のゼネラルモーターズ (GM) の合弁による自動車製造企業「GMウズベキスタン」がある。当初、ウズアフトサノートの出資比率は75%、GMは25%だったが、最近の報道によると、GMの出資比率はほとんどゼロになったようだ。タシケント郊外にはウズアフトサノートとGMによる「GMパワートレイン」というエンジン工場があり、車種によってはそこで製造したエンジンを搭載している。GMウズベキスタンにとっては、ロシアが大きな販売先であったが、ロシアの経済悪化に伴って販売が減少、生産台数も縮小した。ただし、2016年に底打ちをして、2017、2018年には少しずつ回復傾向にある。

乗用車はGMウズベキスタン、小型・中型のバスとトラックは日系のいすゞ、大型トラックはドイツのMANがあり、この3社がウズベキスタンの自動車産業の中心だった。しかし、最近新たな動きが出てきた。プジョー・シトロエンはサマルカンドに工場を建設中で、2019年から生産開始の予定。この工場では、「エキスパート」とか「ボクサー」といった10人乗り程度の乗り合いタクシーを生産する。そのほか、ロシアのカマズがトラック生産、ドイツのMANが大型観光バスの組み立てを、ウズベキスタンで行うと表明している。

ウズベキスタンのビジネスパーソンは、経済状況をどう見ているのか。中央銀行が初めて実施した景況感調査(2018年8月)によれば、ウズベキスタン企業の8割が「景気が好転した」と答えている。実際に、ジェトロがイベントなどの際に、ウズベキスタンのビジネスパーソンから直接話を聞くと、多くの人が異口同音に「いろいろな規制が緩和され、ミルジヨエフ大統領になってからビジネス環境が非常に良くなった」と評価している。

日系企業はビジネスの広がりに期待

これまで為替規制の厳しさを背景に、日本企業が手掛けるのは、円借款や国際協力銀行(JBIC)のローンなどを使った公的資金案件が主流であった。例えば、ナボイの火力発電所近代化(有償資金協力)、トゥラクルガン火力発電所建設(有償資金協力)、ナボイ肥料工場建設(JBICのバンクローン)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のフェルガナ・コジェネ実証事業(注1)、ナボイ州の病院への機材納入(無償資金協力)などがある。

民間の直接投資案件としては、いすゞのビジネス(小型バス現地生産、2007年~)、清水建設のクリーン開発メカニズム(CDM)アハンガラン埋め立て処分場のメタンガス回収プロジェクト(2011年~)実施、日立造船のカシュカダリア州でのGTL(注2)の LTFT(低温フィッシャー・トロプシュ)リアクター建設の請け負い(2015年、建設請負会社は韓国の現代建設)、などがある。

最近の商取引では、(1)大阪の繊維機械メーカーのミシンをウズベキスタンのニットメーカーが購入、(2)GMに部品を納入している部品メーカーが神奈川の工作機械メーカーの機械を購入、(3)大阪の繊維商社がウズベキスタンから綿紡糸を買い付け、今治でウズベキスタンのコットンをブランド化し、高級贈答用のバスタオルとして販売、(4)ロート製薬が3年ほどの準備を終えて、全国的に点眼薬の販売を開始、(5)日本のクレジットカード会社がウズベキスタンの地場の銀行と業務提携、などの事例も出てきたところである。一連の経済改革によるビジネス環境の好転を受けて、2018年には住友商事が駐在員を復活させると同時に、トヨタの高級4WD(四輪駆動車)販売の駐在員を置くなどの動きも出てきた。

ウズベキスタンは、2018年2月には日本を含む7カ国の国民に、ビザなしの30日間の渡航を認めた。渡航目的は限定されないので、短期間の出張の利便性が大きく向上する。ビザなし渡航の効果はすでに表れており、報道によれば、2017年の日本人の延べ宿泊者数は6,800人だが、2018年1~8月の日本人の延べ宿泊者数が1万人を突破したとのことだ。ウズベキスタンの投資環境は、着実に良い方向に向かいつつある。人口3,266万人の市場に着目してほしい。


注1:
フェルガナ地区の熱電併給所と熱供給所に中・小型の高効率ガスタービンコージェネレーションシステムを導入する実証事業。この実証事業では、同システムの導入により熱電併給所の発電効率向上を図り、熱供給所の熱電併給化も行うことで、従来比38%の省エネ化と電力・熱の安定供給の実現を目指す。
注2:
GTL(Gas To Liquids)は、天然ガスを一酸化炭素と水素に分解し、分子構造を組み替えて液体燃料を作る技術。

ジェトロは2018年10月31日、東京で「ロシア・CIS最新経済動向セミナー」を開催した。セミナーでは、ジェトロのロシアおよびウズベキスタンの事務所長が、経済の現状と日本企業にとってのビジネスの可能性について講演した。本稿は、そのうちCIS部分を本部海外調査部で取りまとめたものである。

取りまとめ

ジェトロ海外調査部欧州ロシアCIS課ロシアCIS班
今津 恵保(いまづ よしやす)

講演者紹介

ジェトロ・タシケント事務所長
下社 学(しもやしろ まなぶ)

1994年、ジェトロ入構。海外調査部ロシアNIS課長、和歌山県農林水産部食品流通課長などを経て2014年7月より現職。タシケント駐在は2000~2006年に続き2度目。主たる著作・執筆協力として「中央アジア経済図説(東洋書店)」、「中央ユーラシアを知る事典(平凡社)」、「ロシア経済の基礎知識(ジェトロ)」、「カザフスタンを知るための60章(明石書店)」、「現代中央アジア(日本評論社)」など。

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