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健康長寿関連市場としての魅力高まる(シンガポール・インドネシア)
ジャカルタで健康長寿広報展を開催

2018年5月16日

ジェトロは3月3~4日、日本の強みとも言える「健康・長寿」に関わる商品・サービスを紹介し、インドネシアでのビジネスチャンス創出を目的に「健康長寿広報展inジャカルタ」を開催した。インドネシアでは所得水準の向上によりライフスタイルが変化し、生活習慣病のリスクが高まる中、健康増進への関心が高まっている。

健康長寿関連の日系企業53社・団体が出展

ジェトロは3月3~4日、2日間にわたりインドネシアの首都ジャカルタで日本企業および既進出日系企業の健康関連製品やサービスを一般消費者に紹介する「健康長寿広報展inジャカルタ」を開催した。ジェトロは2014年度以降、ヤンゴン、ホーチミン、バンコク、ハノイで「健康長寿広報展」を開催しており、今回が5回目。日インドネシア国交樹立60周年記念事業の一環として実施されたイベントには、インドネシア市場に関心のある健康長寿関連製品・サービスを提供する日系企業53社・団体が出展した。

参加企業の業種はスポーツ、フィットネス、ヘルスケア機器、健康管理システム、健康食品、美容、介護サービスなど幅広く、3つの分野別ゾーン(1. 予防・健康管理、2. スポーツ&レクリエーション、3. ヘルシーフード&ビューティー)に分かれ出展した。各ブースでは、血圧計や体組成計、歯ブラシなどの健康管理製品、無糖飲料やサプリメントなどの健康食品・飲料の紹介が行われたほか、特設ステージではスポーツをハイライトし、フリースタイルフットボールやバイシクルモトクロス(BMX)の世界トップクラスの選手によるパフォーマンスや、ラグビー、バレーボール、キックターゲット体験などを実施し、来場者の注目を集めた。

オープニングセレモニーでジェトロ・ジャカルタ事務所の春日原大樹所長は「インドネシアは将来、本格的に高齢化の波が押し寄せると予測される。また、糖尿病などの生活習慣病も拡大傾向にある。インドネシアでは健康的なライフスタイルを志向する市民の方々が増えていると認識しており、これら健康課題に対し、世界トップクラスの長寿国である日本の経験を生かせる」と述べた。


健康長寿広報展の様子(ジェトロ撮影)

中間層や富裕層の拡大により消費市場としての魅力高まる

インドネシアの人口は約2億6,000万人と世界4位だ。国連統計によると、同国の65歳以上の割合は5.1%、かつ30歳以下の人口が53.3%、年齢の中央値は28.0歳と、日本や他の先進国、その他一部新興国と比べて、若年層に厚みがある(図1)。しばらくは若年層の割合が高い状態が続くと予想される。

また、インドネシアの年間可処分所得(注1)をみると、2015年時点で5,000ドル以上の中間層と富裕層の世帯割合は60.5%に達した(図2)。さらに、年間可処分所得が「1万ドル以上~2万5,000ドル未満」「2万5,000ドル以上」の上位中間層以上の世帯だけでも24.5%を占める。また、今回広報展を開催したジャカルタ特別州の1人当たり国内総生産(GDP)は1万4,127ドル(2015年)であり、これは国内平均の4倍以上に上る。

図1:インドネシア男女別、年齢別推計人口(2015年)
2015年のインドネシアの年齢別推計人口について、男性は、0-4歳が12,558千人、5-9歳が12,068千人、10-14歳が12,190千人、15-19歳が11,580千人、20-24歳が11,136千人、25-29歳が10,753千人、30-34歳が10,490千人、35-39歳が9,796千人、40-44歳が9,177千人、45-49歳が8,130千人、50-54歳が6,775千人、55-59歳が5,542千人、60-64歳が3,998千人、65-69歳が2,469千人、70-74歳が1,707千人、75-79歳1,015千人、80-84歳439千人、85-89歳が180千人、90-94歳が33千人、95-99歳が3千人と続く。 2015年のインドネシアの年齢別推計人口について、女性は、0-4歳が12,035千人、5-9歳が11,584千人、10-14歳が11,487千人、15-19歳が10,932千人、20-24歳が10,723千人、25-29歳が10,490千人、30-34歳が10,564千人、35-39歳が9,757千人、40-44歳が9,037千人、45-49歳が8,058千人、50-54歳が6,836千人、55-59歳が5,508千人、60-64歳が3,804千人、65-69歳が2,804千人、70-74歳が2,053千人、75-79歳1,417千人、80-84歳674千人、85-89歳が285千人、90-94歳が65千人、95-99歳が8千人と続く。
出所:
国際連合「World Population Prospect 2017 revision」よりジェトロ作成
図2: インドネシアの世帯年間可処分所得(2015年)
2015年インドネシアの世帯年間可処分所得は、2万5,000ドル以上が3.6%、2万5,000ドル未満が20.9%、1万ドル未満が36.0%、5,000ドル未満が39.5%と続く。
出所:
ユーロモニター、デロイト分析よりジェトロ作成。

生活習慣病の予防による健康志向の高まり

近年、インドネシアでは脳卒中や高血圧症、糖尿病といった生活習慣病による死亡者数が増加している。世界保健機関(WHO)によると、同国における生活習慣病による死亡率は2004年の50.7%から2014年には71.0%まで増加した。特に糖尿病は、2030年までに糖尿病患者数が2013年の760万人から1,180万人にまで増加すると予測され、大きな懸念材料となっている(注2)。

原因の一つには肥満人口の急増がある。とりわけ肥満児童の割合が増加し、インドネシア保健省の統計(2014年)によると、首都ジャカルタにおける肥満児童(5~12歳)の割合は、2010年の12.8%から2013年の30.1%へと急増した。インドネシアを含む東南アジアでは、所得向上により砂糖や油を多く含む製品を摂取する傾向にあり、中でもインドネシアの高コレステロール人口の割合はアジア・オセアニア地域で最高の57.1%だ。

こうした中、中間層や富裕層は生活習慣病や肥満といった健康課題の解決を目的に、健康や予防、スポーツ等への意識が高まっている。ジャカルタ特別州では毎週日曜日に「カーフリーデー」として一部区域を歩行者天国にするなど、国民がランニングやウオーキング、体操、サイクリングなどの運動不足を解消できるよう取り組んでいる。サークル活動も盛んであり、ランニングサークル「ライオット」のジャカルタ支部では、20代を中心に約60人のメンバーが参加している。毎週木曜、日曜はサークルメンバーで集まり一日8~10キロを走っているという。

また、国内薬局では、ダイエットサプリからビタミン剤までさまざまな製品が販売されている。とりわけビタミンCやオメガ3を含有するサプリメントが女性に人気だという。

女性消費者から好反応

多くの出展企業に聞くと「女性消費者による製品への関心が高い」という。例えば、医師向けにテキストで医療相談可能なサービスを提供するアプリを開発した企業は、ブースに立ち寄った来場者の7割は幅広い年齢層の女性だったという。枕など睡眠用品を製造するメーカーでは30~40代の女性をターゲットにしているが、この年代の女性は特に睡眠の質にこだわる傾向にあると語った。同社製品は日本の小売価格の1.5~2.0倍程度で展示したが、同ブースを訪れたインドネシア人の富裕層は高価格について抵抗感は薄かったという。

市場調査の一環としてシンガポール支店から出展した総合毛髪関連企業A社は、ウィッグや育毛促進剤、美顔器、ヘアドライヤーなど幅広い商品を販売している。これまでインドネシアでは店舗展開をしていなかったが、今回の広報展を通じて同市場のポテンシャルの高さを感じたという。同社幹部は「東南アジアの女性はシニア層よりも若年層の方が美意識は高く、美容関連商品の消費意欲も旺盛だ」と述べた。特に、約7~8分で顔の引き締め効果を実感できる美顔器が好評で、美顔器を体験する来場者には使用する前と使用した後の顔写真を撮影し、効果を可視化できるように工夫した。

化粧品や健康食品を販売するB社は自社商品のまつ毛用育毛美容液を出展したところ、同ブースには商品を体験しようとインドネシアの若い女性が列をなしていたという。同社CS推進部長は「インドネシアではアイラッシュという商品自体があまり知られていないため、マスカラとの効果の違いについて消費者に丁寧に説明している」と述べ、実際に製品を体験してもらうことや効果に対する説明の重要性を強調した。

東南アジアの中でもインドネシアは美容関連市場の成長が著しい。ユーロモニター・インターナショナルによると、高級化粧品・スキンケア商品などのプレミアム美容・パーソナルケア商品市場は2017年に前年比13%増加した。

プロを目指す意識の醸成が必要

インドネシアでは、バトミントン、サッカーなどのスポーツのほか、公園での運動やランニングなど、より簡単でどこでもできる運動を中心に、運動に関心を持つ人が増加している。また、2018年8月にインドネシアでは「アジア競技大会(いわゆるアジア版オリンピック)」の開催が予定されており、スポーツの機運が高まりつつある。


屋外での運動風景(ジェトロ撮影)

屋外での運動風景(ジェトロ撮影)

一方、日本製品を売る市場としてはまだ尚早との見方もある(出展した日系スポーツ用品企業)。競泳用品メーカーC社によると、インドネシアは島しょ国であることから泳げる人は比較的多いものの、競泳はまだまだ普及しておらず、水泳はレジャーの一環としての位置づけだという。同商品の品質の高さは来場者から高い評価を得るも「同国で既に販売されている商品との価格差が大きい」と語った。卓球用品メーカーD社も同様に、地場メーカーとの価格差は約20倍と大きく開きがあり、価格競争は厳しいという。D社は、世界選手権などでも使用される高品質・高価格の製品を展示した。「日本の高品質・高価格帯製品が進出するためには、オリンピック等の国際競技大会を目指す人口が一定程度存在しないと難しい。インドネシアの競技者でそこまでの意識を持つ人はまだ多くない」と述べ、中長期には競技水準向上が高品質の日本製品に対する需要喚起になりうると話した。


注1:
ユーロモニターの定義によると、
  • 富裕層:世帯年間可処分所得 年間35,000ドル超
  • 上位中間層:世帯年間可処分所得 年間15,000ドル超 35,000ドル以下
  • 下位中間層:世帯年間可処分所得 年間5,000ドル超 15,000ドル以下
  • 低所得層:世帯年間可処分所得 年間5,000ドル以下
注2:
ジェトロ「主要国・地域の健康長寿関連市場の動向調査(2016年3月/2017年 3月 追補)」参照。
執筆者紹介
ジェトロ・シンガポール事務所
源 卓也(みなもと たくや)
2013年に富山県庁入庁後、商工企画課にて各課取りまとめ、管理業務に従事。2015年より公立大学法人富山県立大学へ出向。知的財産や環境教育、附属施設の運営を担当。2017年4月よりジェトロへ出向。海外調査部アジア大洋州課を経て2018年4月よりシンガポール事務所にて、シンガポールの調査・情報提供に従事。
執筆者紹介
ジェトロ・シンガポール事務所
安井 裕太郎(やすい ゆうたろう)
2010年、ジェトロ入構。機械・環境産業企画課にて国内外の地域間の産業連携支援、中小企業の海外展開支援の業務に携わる。2013年よりジェトロ熊本にて貿易・投資相談の対応 等、熊本県内企業の海外展開支援に従事。2016年からジェトロ・シンガポール事務所にて食品や機械、伝統産品、観光など多様な産業の輸出・進出支援を担当。
執筆者紹介
ジェトロ・ジャカルタ事務所
吉岡 克也(よしおか かつや)
1992年に財務省大阪税関に入関後、関西空港で取締、調査部で事後調査等に従事。その後財務省国際局、国際協力銀行マニラ事務所へ出向、円借款を担当。関税技術協力業務等に従事後、2015年4月よりジェトロへ出向、現職(通関・対日投資・知財・ヘルスケア・鉄鋼・電機電子等を担当)に至る。

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