エチオピア企業がゴマの市場開拓を目指す
「FOODEX JAPAN 2018」に出展

2018年5月16日

エチオピアにおいて、ゴマはコーヒー豆に次ぐ輸出作物で、外貨獲得に向けた重要な農産品の一つであり、政府も輸出促進に力を入れる分野だ。日本への輸出はアフリカ域内のブルキナファソやナイジェリアに比べると少ないが、生産量が多いため今後は輸出拡大が見込まれる。幕張で開催された国際食品・飲料展「FOODEX JAPAN 2018」にエチオピアから出展した2社は、確かな手応えを得て自信を深めている。

アフリカ第3位のゴマ生産国

2017年の世界のゴマ生産量は約480万トンであり、ミャンマー、インド、中国、タンザニアの4カ国が過半を占める(出所:Oil World 2017)。生産国の多くは開発途上国で、トップ10にはアフリカ7カ国が入り、エチオピアはタンザニア、スーダンに次ぐアフリカ第3位のゴマ生産国だ。エチオピアのゴマは生産量の約95%が輸出されている。中小から大規模まで約300万軒の農家が北部ティグライ州および北西部アムハラ州で栽培しており、エチオピア油糧種子スパイス加工輸出協会には約170の会員が加盟するなど、エチオピアの雇用を支える重要産業の一つだ。香り高い食用白ゴマのフメラ種、豊富な油分を含む搾油用のウォレガ種が主な品種だ。フメラ種は甘味も特徴で、油脂含有率は約50%、製パンや菓子に使われることも多い。毎年4月~5月に栽培を開始し、10月から11月にかけて収穫が始まる。

日本への輸出拡大に向けた取り組み

日本はゴマのほぼ全量を輸入に頼っており、かつてはアジアや中南米からの輸入が多くを占めた。しかし、天候などの影響で年により生産量が変動する事も多く、近年では他の輸入国との競合も激しくなってきた。特に中国は以前はゴマ輸出国だったが、国内需要の増加などに伴い、輸入国となっており、購買力は増大している。日本としては調達先の多様化が求められており、アフリカからの輸入も年々増加してきた。財務省貿易統計によると、2017年の日本のゴマ輸入量は14万9,000トン、輸入相手国1位はブルキナファソで4万580トン、2位はナイジェリアで3万847トンだった。この2カ国で輸入量の約半分(48%)を占める。(表)

表:日本のゴマ輸入相手国(2017年)
順位 国名 輸入量(トン) 輸入額(千円) 輸入量割合 輸入額割合
1 ブルキナファソ 40,580 4,477,336 27.3% 21.1%
2 ナイジェリア 30,847 3,517,467 20.7% 16.6%
3 タンザニア 18,267 2,277,038 12.3% 10.7%
4 ミャンマー 12,683 2,977,008 8.5% 14.0%
5 グアテマラ 7,739 1,361,125 5.2% 6.4%
6 モザンビーク 6,837 975,195 4.6% 4.6%
7 パラグアイ 6,575 1,232,400 4.4% 5.8%
8 エチオピア 5,007 717,872 3.4% 3.4%
9 中華人民共和国 3,551 731,632 2.4% 3.4%
10 ウガンダ 3,342 353,028 2.2% 1.7%
合計 148,696 21,253,575 100% 100%
出所:
財務省貿易統計

エチオピアからの主な輸出先は中国、インド、イスラエルなどだが、日本向けも2015年の約3,500トンから増加傾向にあり、2017年は5,007トン(3.4%)を記録した。上述の通りエチオピアも主要なゴマ生産国であり、食用の白ゴマを生産するなど、対日輸出拡大の余地はあると言えるだろう。日本にとっても調達先の多様化は食料の安定確保につながる。エチオピア政府は慢性的な外貨不足の是正に向けてゴマを有力な輸出産品と捉えている。一方で、エチオピアでは残留農薬の問題が指摘されたことがあり、コーヒー生豆は2008~2010年にかけて日本への輸出が激減した。ゴマも同様に2006年から激減したが、日本の支援などにより課題解決に当たり、2010年から輸入が再開された。2008年にはコーヒーやゴマの公正な取引を目指してエチオピア商品取引所(ECX)が開設された。しかし、流通網や品質の管理、トレーサビリティに課題があると指摘されてきた。エチオピア政府は問題解決に向けて取り組んでおり、ECXを通さずに輸出できるよう制度改正を検討しており、実現すればゴマ輸出企業に追い風となる。

FOODEX出展2社は確かな手応え

ジェトロは、幕張メッセで2018年3月6日~9日に開催された国際食品・飲料展「FOODEX JAPAN 2018」にジェトロ・ゾーンを設置し、アフリカを中心とする開発途上国企業を支援した。日本企業にとっては、新たな食材の発掘と調達先の多様化につながる機会だ。エチオピアからは、ゴマ、スパイス等を扱うアフリタトレーディング、ムニールアリトレーディングの2社がジェトロブースに出展した。


FOODEXに出展したアフリタトレーディング(ジェトロ撮影)

ムニールアリトレーディングがFOODEXに出展したゴマや香辛料(ジェトロ撮影)

アフリタトレーディングのムル最高経営責任者(CEO)によると、初参加のFOODEX JAPANに不安はあったが、期待以上の成果があったという。4日間で35件の商談を行い、見込みを含む成約金額は約7万5,000ドルに上った。帰国後も、商談や名刺交換した50~60社と成約に向けて交渉中だ。今後のビジネス拡大への確かな手応えをつかんだムル氏は今年中に日本へ出張し、日本市場を視察するという。次回はコーヒーも出展して今年以上の成果を残したいと述べ、来年のFOODEX2019へ大きな期待と参加意欲を示した。

ムニールアリトレーディング社のタデッセCEOによれば、具体的な成約には至らなかったものの、会期中に日本企業20社を含む76社と商談を行った。帰国後は認証制度や生産方式等に関する各社からの問い合わせに対応しており、日本企業20社の内12社は成約に前向きだと感じている。次回は出展物の種類を増やして成約獲得につなげたいと次回への意気込みを語った。

執筆者紹介
ジェトロ・アディスアベバ事務所
脇田 陽平(わきた ようへい)
2013年、ジェトロ入構、ビジネス展開支援部途上国ビジネス開発課でBOPビジネスなど担当。情報システム課で社内IT環境の整備など担当。2018年2月より現職。