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各種減税措置で消費や企業活動を促進(中国)
広州で最近の税務政策に関するセミナー

2018年12月26日

ジェトロ広州事務所は10月26日、中国における税務の政策動向に関するセミナーを開催した。広東真広企業管理顧問(TJCC広東)の劉敏氏が、最近の税務部門における組織改編の動きや各種減税措置について講演した。消費や企業活動を促進するため、さまざまな減税措置が打ち出される一方、非居住者に対する徴税や企業への監督は強化される方向だ。講演の要旨は次のとおり。

組織統合で手続きや企業の管理が容易に

中国の地方の税務部門には、中央政府に属する国家税務局と、省や市区などに属する地方税務局が存在する。1993年までは地方政府の税務局が一元的に税を徴収し、一部を中央政府へ上納していたが、中央政府の税収減少に伴い、翌年から中央と地方で徴収対象の税目を分担する分税制が施行された。

税金のうち、企業所得税は中央60%・地方40%、増値税は中央50%・地方50%(いずれも2016年5月からの新基準による)と、中央と地方で財源を分け合う税目がある(表1参照)。しかし、2017年に、国家と地方の両税務局で徴収されてきた企業所得税や増値税を自動的に国税と地方税に振り分ける「金税三期」というシステムが全国で導入された。これを機に、2019年3月末をめどに両税務局が統合される運びとなった。

表1:各部門の徴税項目(―は値なし)
部門 国税 地方税 共有税
国家税務局
  • 消費税
  • 車両購入税
  • 企業所得税
  • 増値税
地方税務局
  • 個人所得税
  • 印紙税
  • 都市維持建設税 など
  • 企業所得税
  • 増値税
税関による代理徴収
  • 関税
  • 輸入消費税
  • 輸入増値税
注:
企業所得税については、歴史的経緯から地方税務局が全額を徴収してきた企業もある。
出所:
セミナー配布資料

税務機構の統合により、企業には次の影響が考えられる。

  1. 納税手続きの利便性向上
  2. 違法行為への監督強化
  3. 社会保険料の納付状況に対する管理の厳格化

1については、税務登記と納税申告の窓口が一本化されることで、関連業務の削減につながると期待される。2に関しては、税務局側で企業情報の照合が容易となり、徴税の効率化につながると予測される。3については、統合後は個人所得税を徴収する税務局が社会保険料を徴収することになるため、企業による納付漏れを容易に摘発できるようになる。

減税で企業活動を促進

2018年4月以降、中国国務院では、起業やイノベーションの促進、小規模・零細企業の発展を支援する目的で、次の7項目の減税策を公表している。

  1. 企業所得税の課税対象額に設備などの購入に係る費用を一括で損金算入できる。
  2. 企業所得税の優遇税率を享受できる小規模薄利企業(表2参照)の適用対象を拡大する。
  3. 企業所得税の課税対象額に海外企業への研究開発委託費を加算損金算入できる。
  4. ハイテク企業などの赤字繰越可能期間を5年から10年へ延長する。
  5. 従業員教育費用の損金算入限度比率を賃金総額の2.5%から8%へ引き上げる。
  6. 資金帳簿の印紙税を半減し、会計帳簿に対する印紙税を免除する。
  7. ベンチャーキャピタル向け所得税控除優遇を全国へ拡大する。

1については、全ての業種と企業が対象で、建築物など不動産や中古設備以外の全ての固定資産が対象。一括損金算入の上限は500万元(約8,000万円、1元=約16円)で、2018年1月から2020年12月まで有効である。

2に関しては、小規模薄利企業に認定されると、企業所得税の課税対象額を年度所得額から50%低減できるほか、企業所得税の税率として20%(通常は25%)が適用される。小規模薄利企業の認定条件は、2017年以前は年間課税対象額が50万元以下だったが、2018年1月から2020年12月まで100万元以下へ引き上げられている。

表2:小規模薄利企業の認定条件
項目 工業企業 その他企業
従業員数(労務派遣含む) 100人以下 80人以下
資産総額 3,000万元以下 1,000万元以下
年度課税対象額 100万元以下 100万元以下
注:
外商投資産業指導目録にある制限類、禁止類の企業は適用対象外。
出所:
セミナー配布資料

3では、2017年以前は海外で発生した委託費が加算損金算入できなかったが、2018年1月から算入可能となった。現在は、これの80%と中国国内で発生した研究開発費の3分の2を超えない額のいずれか低い方を加算損金として算入可能である。かつ、2018年1月から2020年12月までは、全ての研究開発委託費の加算損金比率が50%から75%へ引き上げられている。

例えば、海外企業への研究開発委託費が10万元、中国国内での研究開発費が11万元の場合、損金算入可能な額は以下のとおり。

  • 海外企業への研究開発委託費:10万元×80%=8万元
  • 中国国内での研究開発費の2/3:11万元×2/3≒7万3,000元 (2018年1月~2020年12月)
  • 損金算入可能額:10万元(通常の損金)+7万3,000元×75%(加算損金)=15万4,750元

4は、2018年1月以降、ハイテク企業と科学技術型中小企業(参考参照)が対象となっている。

参考:ハイテク企業および科学技術型中小企業の認定条件

ハイテク企業
製品またはサービスが国が重点的に支援するハイテク分野に該当
ハイテクの製品およびサービスによる収入≧売上の60%
科学技術者数≧全従業員の10%
売上に占める研究開発費の割合
  • 売上額5,000万元未満:5%以上
  • 売上額5,000万~2億元未満:4%以上
  • 売上額2億元以上:3%以上
科学技術型中小企業
業種が外商投資産業指導目録の制限類、禁止類、淘汰類(注)に属さない。
全従業員数≦500人、年間売上額≦2億元、資産総額≦2億元
技術者数、研究開発費等に関する点数≧60点、技術者の点数≧0点
前述の点数が不合格でも、ハイテク資格書、省レベル以上の研究開発機構を有する等

注:
制限類、禁止類と同様に、中国の産業構造調整指導目録にある分類の1つで、法律法規に合致せず、資源を浪費し、環境および安全条件を満たさない技術、設備などのこと。
出所:
セミナー配布資料

5も2018年1月から施行されており、8%を超える部分は次期以降への繰り越しが可能だ。

6では、2018年5月以降、資金帳簿に掛かる印紙税率が0.05%から0.025%へ半減された。また、以前は会計帳簿1冊につき印紙税5元の納付が必要だったが、同月以降は免除されている。

7では、ベンチャーキャピタルは、設立の準備または初期段階にある科学技術型企業に投資した場合、課税所得額から投資額の70%を控除可能というもの。これまでは、同措置は上海市、広東省など8カ所の全面創新改革試験区と蘇州工業園の企業だけが対象だったが、2018年5月以降に全国へ拡大された。

税率と還付率の調整で税負担を緩和

増値税については、(1)税率引き下げ、(2)小規模納税者基準の統一、(3)輸出増値税還付率の引き上げなどが進められている。
(1)に関しては、2018年5月1以降に表3のとおり減税が行われた。現在は、業種により3区分に分けられているが、将来は2区分へ調整される見通しだ。

表3:増値税の引き下げ
時期 製造業、役務提供等 交通運輸、建築、電信
サービス、農産物等
サービス業
2018年4月30日以前 17% 11% 6%
2018年5月1日以降 16% 10% 6%
出所:
セミナー配布資料

(2)については、表4のとおり増値税一般納税者の適用条件が2018年5月1日以降、年間課税売上高において全業種で一律500万元超に統一された(注1)。この条件を満たさない場合は、小規模納税者に分類される。

小規模納税者となると、課税対象額から仕入れ増値税額を控除できないほか、輸出増値税の還付を受けられないものの、課税率は3%へ低減される。

表4:増値税一般納税者の適用条件
業種 製造業 販売業 サービス業
年間課税売上高
(2018年4月30日以前)
50万元超 80万元超 500万元超
年間課税売上高
(2018年5月1日以降)
一律で500万元超 一律で500万元超 一律で500万元超
出所:
セミナー配布資料
表5:一般納税者と小規模納税者の税負担の違い
2018年の部材調達費が150万元、売上300万元の場合
納税者区分 税負担
一般納税者 仕入増値税=150万元×16%=24万元
売上増値税=300万元×16%=48万元
納税額=48万元-24万元=24万元
小規模納税者 納税額=300万元×3%=9万元
出所:
セミナー配布資料

(3)に関しては、表6のとおり2018年11月1日から以前の7段階から4段階(%で数えた場合)へ変更された。エネルギー浪費型、環境汚染型、資源類の品目を除き、全体的に還付率が引き上げられた。また、還付手続きが簡素化され、還付までの期間が短縮されたことで、企業側で資金繰り面での改善が期待される。

表6:輸出増値税還付率の調整
還付率(18年10月31日以前) 調整後還付率(18年11月1日以降)
16% 16%
15% 16%
13% 13%(一部16%へ)
10% 10%
9% 10%(一部13%へ)
6% 6%
5% 6%または10%へ
出所:
セミナー配布資料

滞在183日以上で居住者に

2018年8月31日には、新しい個人所得税法の修正案(改正法)が全国人民代表大会(国会に相当)で可決され、2019年1月1日には同法が施行される。

施行後、居住者と非居住者の定義は(表7参照)のとおり変更となる。

表7:改正法施行前後における居住者と非居住者の定義の違い
区分 改正前 改正後
居住者 中国国内に住所がある。または、住所を有さないものの、中国国内に1年以上居住している者。 中国国内に住所がある。または、住所を有さないものの、中国国内に183日以上居住している者。
非居住者 中国国内に住所を有さず、且つ居住期間が1年未満の者。 中国国内に住所を有さず、且つ居住期間が183日未満の者。
出所:
セミナー配布資料

中国での滞在期間に応じた、個人所得税の課税対象(改正法施行前)は、日中租税条約により、日本国籍の場合は以下のとおり。

表8:中国滞在期間による個人所得税の課税対象(○が課税対象)
区分 中国滞在
日数
中国源泉所得 中国国外源泉所得
中国で支給または負担 中国国外で支給または負担 中国で支給または負担 中国国外で支給または負担
非居住者 183日未満 × × ×
183日~
1年
×(注) ×
居住者 1~5年 ×
5年以上
注:
今後課税対象となる可能性がある。
出所:
セミナー配布資料

2018年10月20日に出された個人所得税実施条例意見徴集案では、中国での居住期間が連続5年未満の外国人に対し、中国国外に源泉があり、かつ国外で支給または負担される所得について、改正法施行後も引き続き免税となる旨が明記された。

中国での居住期間が5年以上で前出の所得がある場合は、改正法施行後も引き続き課税される。ただ、5年以上経過した場合も、中国から連続30日間以上出国すると、居住期間は0日にリセットされる(注2)。

基礎控除と課税対象額を引き上げ

改正法施行後は、表9のとおり、賃金所得や役務報酬などは総合所得に統合される。また、納税方法についても一部変更となる。これまでは、所得項目ごとに分類して計算し、課税対象額を申告・納税していたが、総合所得に関しては、毎月前納し、年度末に確定申告を行う方法へ変更となる。なお、総合所得以外の項目、ならびに非居住者については、従来どおり毎月申告・納税を行うこととなる。

表9:課税対象所得の新しい分類方法
改正前 改正後
給与所得 総合所得
役務報酬 総合所得
原稿料報酬 総合所得
特許権使用料所得 総合所得
個人工商業者生産経営所得 経営所得
賃貸経営所得等 経営所得
利息・配当所得 利息・配当所得
財産譲渡所得 財産譲渡所得
財産賃貸所得 財産賃貸所得
一時所得 一時所得
出所:
セミナー配布資料

改正法のうち、基礎控除や累進課税率は、既に10月1日から先行して施行済みである。

これまで、毎月の給与所得に対する基礎控除額は、中国籍は3,500元、外国籍は4,800元だった。改正法では、国籍を問わず、総合所得に対する基礎控除が年間6万元(月額5,000元)となる。

付加控除項目については、社会保険料や住宅積立金に加え、外国籍の人には、住宅、食事、クリーニング、出張、帰省(年2回まで)、語学学習、子女教育、中国赴帰任時の引っ越しなどに掛かる各種手当、医療費などに特別控除待遇が与えられてきた(注3)。

改正法施行後には、(1)子女教育費(子女1人当たり年間1万2,000元)、(2)社会人教育費(年間で最高4,800元)、(3)重大疾病に掛かる治療費(個人負担分が年間1万5,000元を超えた部分、上限6万元)、(4)住宅ローン利息(年間1世帯当たり1万2,000元)、(5)住宅賃貸料(年間で最高1万4,400元)、(6)老人扶養費等(年間2万4,000元)が付加控除項目に追加される見込みだ。

累進課税率については、表10の太枠部分のとおり、3~25%の4段階の各税率で月次課税対象額が引き上げられた。

表10:月次課税対象額に対する累進課税率の変更
区分 改正前 改正後 税率(%)
1 1,500元以下 3,000元以下 3
2 1,500元超
4,500元
3,000元超
1万2,000元
10
3 4,500元超
9,000元
1万2,000元超
2万5,000元
20
4 9,000元超
3万5,000元
2万5,000元超
3万5,000元
25
5 3万5,000元超
5万5,000元
3万5,000元超
5万5,000元
30
6 5万5,000元超
8万元
5万5,000元超
8万元
35
7 8万元超 8万元超 45
出所:
セミナー配布資料

注1:
既に一般納税者として登録済みの企業は、2018年12月31日までに小規模納税者へ登録変更が可能。
注2:
改正法施行前は、年度内に累計90日間出国しても、居住期間をリセットできたが、施行後この措置は廃止される見込み。
注3:
改正法施行後、クリーニング手当、帰省費用、引っ越し代については、付加控除項目から除外される可能性がある。
執筆者紹介
ジェトロ・広州事務所 次長
粕谷 修司(かすや しゅうじ)
1998年、ジェトロ入構。中国・北アジアチーム(1998~2000年)、ジェトロ青森(2000~2002年)、ジェトロ・香港事務所(2002~2008年)、知的財産課(2008~2011年)、生活文化産業企画課(2011~2014年)を経て、現職。

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