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米国中間選挙結果 -躍進する民主党女性候補

2018年11月30日

11月6日の米国連邦議会中間選挙では、女性や、ヒスパニック系などマイノリティーの候補者が目立ち、多様性が見られた。特に女性の躍進が目立ち、女性議員数は120人を超える見通し。候補者に占める白人男性の割合も、58%と過去4回の選挙で最も低かった(ニューヨーク・タイムズ紙調べ)。民主党が233議席を占めて過半数を獲得した下院選では、特に女性候補者の健闘が目立った(注1)。

民主党支持者は保健・医療を重視

下院選挙で共和党から民主党に交代した議席は41議席で、そのうち女性が24議席と約6割を占めた(表1参照)。下院選で接戦と予想された30選挙区(注2)では、民主党が奪った20区のうち11区で女性候補者が健闘し、民主党の下院議席獲得に貢献した。

アリゾナ州2区のアン・カークパトリック氏、アイオワ州1区のアビー・フィンケナウアー氏、フロリダ州27区のドナ・シャララ氏、バージニア州10区のジェニファー・ウェクストン氏は政治経験があるが、その他の当選者は政治経験がない。ミシガン州8区のエリサ・スロトキン氏、バージニア州7区のアビゲイル・スパンバーガー氏は元CIA職員である。ニュージャージー州11区のミキ・シェリル氏、ペンシルベニア州6区のクリッシー・フーラハン氏、バージニア州2区のエレーン・ルリア氏は退役軍人である。

当選者の多くは、主張する重点事項に保健・医療を挙げている(表1参照)。中間選挙前にピュー・リサーチ・センターが実施した世論調査では、民主党支持者がより重視する項目では「環境」と「マイノリティーの処遇」に次いで「メディケア(医療保険制度)」が挙がっており(表2参照)、この点で中間選挙での支持を集めたと思われる。トランプ政権が進めるメディケイド(低所得者層向けの公的医療保険)改革、オバマケア(医療保険制度)の見直しなどに影響を与えることが予想される。フーラハン氏は、トランプ大統領が国民のための政策を行ってないとして、大統領への批判的立場を明確にしている。

表1:下院選で共和党から交代した民主党女性候補
番号 選挙区(区) 当選者 職歴、主張する重点事項など
1 アリゾナ 2 アン・カークパトリック 元1区議員。インフラ整備、保健・医療。
2 カリフォルニア 25* ケーティー・ヒル 元ホームレス支援団体役員。保安維持、保健・医療。
3 カリフォルニア 45* ケーティー・ポーター 法学者。税金、保健・医療、環境。
4 フロリダ 26* デビー・ムカーセル・パウエル 元フロリダ国際大学勤務。保健・医療、経済、教育。
※エクアドル移民
5 フロリダ 27 ドナ・シャララ 元保健・医療福祉長官(クリントン政権)。環境、経済。
6 ジョージア 6* ルーシー・マクベス 元デルタ航空勤務。保健・医療、銃規制、経済。
7 イリノイ 14* ローレン・アンダーウッド 看護士。銃規制、教育、環境、保健・医療。
8 アイオワ 1 アビー・フィンケナウアー 州下院議員。雇用、保健・医療、教育。
9 アイオワ 3* シンディ・エイクスン 実業家。中小企業振興、保健・医療。
10 カンザス 3 シャリス・デビッズ 弁護士。中間層の減税、環境、保健・医療。
※下院初の女性ネイティブ・アメリカン議員
11 ミシガン 8* エリサ・スロトキン 元国防省(CIA)職員。保健・医療、教育、経済。
12 ミシガン 11 ハリー・スティーブンス オバマ政権で自動車関連タスク・フォース従事。保健・医療、経済、教育。
13 ミネソタ 2 アンジー・クレイグ 実業家。経済、保健・医療、教育。
14 ニュージャージー 11 ミキ・シェリル 元空軍パイロット。経済、保健・医療、教育。
15 ニューメキシコ 2* ソーチル・トレス・スモール 弁護士。経済、教育、保健・医療。
16 オクラホマ 5 ケンドラ・ホーン 元航空機会社勤務。教育、保健・医療、銃規制。
17 ペンシルベニア 5 メアリー・スキャンロン 元Education Law Center勤務。教育、保健・医療、銃規制。
18 ペンシルベニア 6 クリッシー・フーラハン 元空軍勤務。保健・医療、教育、経済。
19 ペンシルベニア** 7 スーザン・ワイルド 弁護士。経済、保健・医療、環境。
20 テキサス 7* リジー・フレッチャー 弁護士。教育、銃規制、保健・医療。
21 バージニア 2* エレーン・ルリア 元海軍勤務。保健・医療、環境、住宅。
22 バージニア 7* アビゲイル・スパンバーガー 元国防省(CIA)勤務。保健・医療、銃規制、経済。
23 バージニア 10 ジェニファー・ウェクストン 州上院議員。司法制度、教育、環境、保健・医療。
24 ワシントン 8 キム・シュリア 小児科医。経済、教育、環境、保健・医療。

* 接戦予想区
** ペンシルベニア州下院7区は、2018年4月27日にパトリック・ミーハン議員の辞職により空席
出所:Ballotpedia、各候補者ウェブサイト他各種報道を基に作成

表2:中間選挙で重視する事項 (単位:%)
事項 全体
平均
共和党
支持者
民主党
支持者
共和党・民主党
支持者の差
最高裁判事指名 76 72 81 民+9
ヘルスケア 75 60 88 民+12
経済 74 85 66 共+19
銃規制 69 71 68 共+3
メディケア 67 55 77 民+22
社会保障 66 60 70 民+10
税制 66 71 62 共+9
移民 65 71 64 共+7
マイノリティーの処遇 65 43 85 民+42
環境 63 38 82 民+44
テロ 62 76 51 共+25
財政赤字 60 65 55 共+10
通商政策 55 55 57 民+2

実施時期:2018年9月18日~24日、対象者数:1,754人
出所:ピュー・リサーチ・センター

初のネーティブ・アメリカン、イスラム教徒下院議員誕生

カンザス州下院3区で当選したシャリス・デビッズ氏およびニューメキシコ州1区で当選したデブ・ハーランド氏は、女性として初のネーティブ・アメリカン下院議員となった。また、ミシガン州13区でラシダ・トレイブ氏、ミネソタ州5区でイルハン・オマー氏が当選し、初のイスラム教徒下院議員が誕生した。

予備選挙で予想外の勝利を収めたコネチカット州5区のジャハナ・ヘイズ氏、ニューヨーク州14区のアレクサンドリア・オケイジオコルテス氏は、予備選の勢いそのまま当選を果たした。ヘイズ氏は、2016年の全米最優秀教師賞を受賞した教師であり、オケイジオコルテス氏は、ベテランの現職議員を破ったことで注目を集めたが、両氏とも政治経験はない。マサチューセッツ州7区のアヤンナ・プレスリー氏はボストン市議会議員であり、ベテランの現職議員を破り予備選に勝利した。共和党の立候補者がいなかったため、下院議会入りが決定した。同氏は、予備選勝利のスピーチで選挙キャンペーンのスローガン「Change can’t wait.(変化は待ってくれない)」を繰り返し、社会的変革の時期であることを宣言した。

メーン州、サウスダコタ州では初の女性知事(民主党のジャネット・ミルズ氏、共和党のクリスティ・ノーム氏)、アリゾナ州、テネシー州では初の女性上院議員(民主党のカイルステン・シネマ氏、共和党のマーシャ・ブラックバーン氏)が誕生した。

また、ジョージア州では、全米初の黒人女性知事の可能性を期待されたステーシー・エイブラムス氏が、接戦の末に共和党候補のブライアン・ケンプ氏に敗れた。敗れはしたものの190万票を獲得し、ケンプ氏との得票差は6万票であった。同氏は、2020年の大統領選挙の年の上院選立候補への可能性を否定していない。

CNNの出口調査結果によると、下院選では、民主党の女性票得票率は共和党より19%ポイント高く、男性票得票率は共和党が4%ポイント高かった。このことから、民主党は女性の支持が高かったことが分かる。また、出口調査で情報が公開されている女性候補者の立候補した州知事選と上院選の結果を個別にみると、同様の傾向が見てとれる。民主党のホイットマー氏は男性票では相手候補より低く、女性の得票率が圧倒的に高かった(表3参照)。シネマ氏は、男性票は相手候補と拮抗(きっこう)していたが、女性票で上回った。エイブラムス氏は男性票が下回り、女性票は獲得したものの、相手候補との差がわずかであり、選挙結果を左右したと思われる。一方、共和党のブラックバーン氏は男性票、女性票とも得票率が高かった。このことから、女性からの支持が選挙結果に影響することが浮き彫りになり、2020年選挙での女性票獲得に向けて両党の戦略が注目される。

表3:中間選挙における投票傾向 (単位:%)(△はマイナス値)
選挙 女性候補者 所属政党 性別 投票率 得票率 相手候補の得票率 得票率の差(ポイント) 選挙
結果
ミシガン州
知事選
グレッチェン・ホイットマー 民主党 男性 48 47 49 △2 当選
女性 52 60 38 22
アリゾナ州
上院選
カイルステン・シネマ 民主党 男性 47 49 49 0 当選
女性 53 51 47 4
ジョージア州
知事選
ステーシー・エイブラムス 民主党 男性 46 46 52 △6 落選
女性 54 51 49 2
テネシー州
上院選
マーシャ・ブラックバーン 共和党 男性 48 59 40 19 当選
女性 52 51 47 4
出所:
CNN出口調査、選挙結果はCNN報道

注1:
選挙結果は、11月25日現在。下院の定数は435議席で、218議席以上で過半数となる。
注2:
下院選結果予想は、クックポリティカルレポートの11月5日予想に基づく。
執筆者紹介
海外調査部米州課 課長代理
松岡 智恵子(まつおか ちえこ)
展示事業部、海外調査部欧州課などを経て、生活文化関連産業部でファッション関連事業、ものづくり産業課で機械輸出支援事業を担当。2018年4月から現職。米国の移民政策に関する調査・情報提供を行っている。

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