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【中国・潮流】香港なら高く売れるのか

2018年9月28日

香港の1人当たりGDPが日本を抜いたのは2014年だったが、現在その差はますます拡大しているように思う。それに伴い、物価の差も拡大している。例えば、主要商用地のオフィスビル賃貸料は、東京を100とすると、香港は182だ。日本のラーメン店で定番のラーメンが、香港では約1,300円、トッピングを加えると1,500円程度に跳ね上がる。

物価は経済状況を反映するとはいえ、この価格差には驚かされる。とりわけ、不動産価格の高騰は世界でも類を見ない。香港は東京都の半分程度の土地(1,106平方キロ)に約740万人の人口が密集している上、面積の約6割が山地である。「郊野公園」などの自然保護区も総面積の約4割を占めるから、不動産供給量がなかなか増えない。最近は1等地の中環(セントラル)地区に中国企業がこぞって進出しており、地価が下がる気配もない。

こうした価格差の恩恵を日本も享受している。インバウンド(訪日観光)である。2017年に日本を訪問した香港人(正確には香港パスポート所有者)は223万人だった。単純計算で3人に1人が日本に旅行していることになる。私の周りにいる香港人はほとんどが日本旅行を経験しているが、彼らの一番の楽しみは「日本でおいしい食事をすること」だという。

札幌の有名なラーメン店に入った際、香港の旅行会社や航空会社のポスターが所狭しと貼られていた。佐賀に出張に行った際、有名な佐賀牛の料理店に入ると香港人の広東語があちこちから聞こえてきた。片道数万円以下の格安航空会社(LCC)を使い移動費を節約し、日本では本場のおいしいものを食べる。その値段が香港の日本料理店の半額以下の場合もあるのだから、香港人の財布のひもは必然的に緩む。  

香港人は東京や大阪といった都市圏には既に訪れているので、個人で地方を旅行するのが主流となっている。香港人が日本人以上に商品や生産物を高く評価してくれるので、地方の人が香港で売ればさらに販路が広がると思っても不思議ではない。近年、地方の自治体や金融機関がミッションを仕立てて香港を訪れることが増えている理由に、地元での香港人の評価を口にする人がいる。

ところが、香港で地元の食品や農水産品、工業製品を売り込もうとすると、香港側の業者から買いたたかれるという話を聞く。所得水準が高く、物価も高い香港。しかも関税ゼロ、日本の消費税に当たる間接税もかからないのに、なぜ日本の価格で購入してくれないのか。

理由として、日本各地から香港に同じ手法で売りに来ているため買い手市場になっていることや、香港人は商品に価値を見いださない限りできるだけ安く買おうとする傾向にあることなどが挙げられる。

ではなぜ、日本では定価で購入してくれるのか。それは地元という非日常空間(環境)で食するという体験が彼らの評価を高めているのである。また、香港ではなかなか体験できない四季の変化を感じられれば、さらに付加価値が付く。

香港に輸出する生産者、輸出者の中には香港のバイヤーに買いたたかれず、言い値で取引してもらえるケースがある。彼らには、自分たちが売り込もうとしている商品がいかに安心・安全に配慮した製造をしているかや、価格は高くともそれに見合った素材を使用していること、特別な製法技術を駆使して生産していることなどを説明しているという共通点がある。

自社商品を他人任せで販売するのではなく、自分の言葉で香港側に説明しているのか否かが、買いたたかれるか言い値で買ってもらえるかの分かれ目のようである。

執筆者紹介
ジェトロ・香港事務所長
伊藤 亮一(いとう りょういち)
1986年、ジェトロ入構。海外調査部、2度のジェトロ・マニラ事務所勤務などを経て、2015年8月から現職。

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