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アフリカ経済はおおむね回復基調に
世界主要国・地域の最新経済動向セミナー報告 アフリカ

2018年1月16日

2017年のアフリカに関する主なトピックスとしては、ケニアの大統領選挙、南アフリカ共和国(以下、南ア)の与党総裁選や、産油国では原油価格の回復による経済成長などが挙げられる。アフリカ主要国の経済成長とともに活発化する現地のビジネスについて、日本企業からも現地最新情報に対するニーズは高い。そこでジェトロは、2017年12月1日にアフリカ各事務所の所長が現地の最新事情を報告する「アフリカ最新経済動向セミナー」を開催した。

南アは次期大統領の構造改革に期待、モザンビークは隠し債務問題への対処が課題

ヨハネスブルク事務所の根本裕之所長は、アフリカ経済の概況について解説した。アフリカ開発銀行(AfDB)によるとアフリカの経済成長率は2015年の3.4%成長から2016年は2.2%に下がった(図1)。原油価格下落が影響しているとみられる。しかし、2017年は回復傾向で3.4%の水準に戻る見通し。さらに順調にいけば2018年には4.2%に達すると見られている。地域別の長期予測では、東アフリカがアフリカ全体の成長率よりも高い水準で成長するとみられ、2020年の経済成長率は8%台に上るとの予測が出ている(図2)。

図1:アフリカ実質成長率推移
2008年は5.3%、2009年は3.4%、2010年は5.7%、2011年は2.9、2012年は6.2%、2013年は3.9%、2014年は3.7%、2015年は3.4、2016年は2.2%見込み、2017年は3.4%予測、2018年は4.2%予測。
注:
(e)は見込み、(p)は予測値
出所:
アフリカ開発銀行『African Economic Outlook 2017』から作成
図2:地域別アフリカ実質成長率推移
アフリカの実質経済成長率を長期予測で地域別にみると、アフリカ全土では2000年から2060年にかけて、4から6%の間を推移。中央アフリカは2000年にマイナス成長から2020年は7%前後、2060年には4%程度の成長を予測。東アフリカは2000年に7%台後半、2030年に9%前後、2060には7%前後を推移。北アフリカは2000年から2060年にかけて3%台後半から5%台後半を推移。南部アフリカは2000年に5%台後半から2010年には3%台に下落し2020年に4%台に回復その後も2060年にかけて5%台後半から4%程度に収縮。西アフリカは2000年に約4%から2020年まで約7%まで成長し、2060年にかけては5%台の成長を予測。
出所:
アフリカ開発銀行『Africa in 50 Years’ Time』から作成

南ア経済については、国際通貨基金(IMF)の経済見通しによると、2017年は0.8%、2018年は1.1%、2019年は1.6%の予測となっている。同国の経済は、2017年第2四半期の実質国内総生産(GDP)成長率が0.5%と2期ぶりにプラス成長となり、景気後退局面から脱却したと見られている。インフレ率は3~6%で安定しており、政策金利は6.75%を継続、貿易収支は470億ドルの黒字だ。一方、2017年10月の南ア政府の発表では、経済成長を下方修正している。2017/2018年度(2017年4月~2018年3月)の経済成長率は0.7%、財政赤字は対GDP比4.3%の見込みだ。歳入減を補う支出削減と増税の必要性が高まるなか、歳出削減については国営企業への構造改革の取り組み不足が露呈した。また、11月24日には格付け機関による南アの政府債務の格付けが発表され、自国建て通貨はジャンク債扱いになっている。これにより、資本流出、ランド安、金利上昇の懸念および、それらによる投資意欲減退の不安もよぎる。また、南アでは2017年12月に与党アフリカ民族会議(ANC)の党大会が開催され、5年に1度の総裁選挙が実施された。ズマ大統領元夫人のドラミニ・ズマ前アフリカ連合(AU)委員長と、「反ズマ」を掲げるラマポーザ副大統領による事実上の一騎打ちで、ラマポーザ氏が当選した。南アのビジネス環境は鉱業や製造業のみならず、資本市場・金融サービスが発達している。ヨハネスブルク証券取引所は362社が上場し、時価総額はおよそ125兆円。証券取引所・時価総額ランキングでは、世界15位に位置する。また、南アで活躍する日系企業の例として、LIXILがアフリカ主要国で水栓金具・衛生陶磁器などの水回り製品の製造・販売を手掛けている。また、いすゞがピックアップトラックおよび商用車の製造販売事業を行っており、近年同社の事業は拡大傾向にある。

モザンビーク経済については、マプト事務所の髙橋史代表が解説した。同国の実質GDP成長率(IMF発表)は、2015年は6.6%だったが、非開示債務問題の発覚により2016年は3.8%にとどまった。しかし、資源開発の進展により、2017年は4.8%に回復する見込みだ。懸念事項となっている隠し債務問題は、国営企業の隠し債務が独立監査で発覚した問題だ。非開示対外債務は総計20億ドルで、そのうち5億ドルが使途不明であることが判明した。IMFは政府に説明を求め続けるもいまだに進展がなく、主要ドナー国は財政支援を停止している。国内政治では、2017年10月に与党プレリモ党の党大会の結果、党代表のニュシ氏(現大統領)の再選が決定、2019年の大統領選挙で再選を目指す。同国の天然ガス開発の進展も注目されており、北部沖合の世界最大規模の天然ガス田の鉱区エリア4の投資が決定した。その額は60億ドル規模ともいわれている。その他にも石炭や港湾の開発、同国主要港と周辺国をインフラ整備してつなぐナカラ回廊開発などの主要プロジェクトが進展中だ。

アフリカの成長をけん引する東アフリカ

ナイロビ事務所の直江敦彦所長はケニアのビジネスチャンスについて、以下を挙げた。ケニアのビジネス環境は、中間層の拡大、若年層の多さから膨大なニーズと購買意欲が生まれ、今後の経済拡大が期待されている。とりわけ、モバイルマネーなどの通信・金融の急速な発展、インフラ・資源ビジネスの可能性等にビジネスチャンスがある。一方で課題としては、脆弱(ぜいじゃく)なインフラ、法令・規制の運用、人材確保、原材料調達、模倣品対策、知的財産権保護、通関・税務、中国・韓国・インド企業などとの競争、治安、汚職が挙げられる。2017年8月には大統領選挙を実施。その後落選した候補者による異議申し立てにより選挙結果が司法判断で覆され、再選挙を実施するなど政情は混乱を来した。選挙結果を静観することからか、同国への投資は大統領選がある年に減少し経済成長率も低下する傾向にあり、2017年も同様の動きがみられた。それでも最近の日本企業の活動は堅実に拡大しており、商船三井、日本通運が支店を開設、阪急阪神エクスプレスが出向者を現地パートナー会社に派遣。豊田通商は、日本郵船などと共同でケニアにおける完成車物流会社を設立した。

エチオピアの最新経済動向に関しては、アディスアベバ事務所の関隆夫所長が解説。同国の発展見込みは大きく、人口増や低廉な賃金を求めた欧米市場向け縫製業など軽工業の拠点になりつつあると紹介した。エチオピアの内需拡大を期待しての投資は、民営化や企業の合併・買収(M&A)の活用も検討する価値があるという。日本企業の投資は少ないが、日系工業団地の構想もあり、今後の増加に期待がかかる。また同国の外貨不足問題は深刻で、当面の改善は見込まれず短期的には外国からの輸出は一層難しくなる可能性がある。IMFによると、サブサハラアフリカの実質GDP成長率は2.6%(2017年)から3.4%(2018年)へと緩やかな回復予測が出されている。東アフリカ主要国は1年前の予想からやや減速も高成長を維持。エチオピアは前年予測を上回り、8.5%と成長が加速する見込みだ。好調を維持する東アフリカ経済の中でも同国の活躍が際立つ。

第二次・第三次産業が高成長をけん引するコートジボワール、ナイジェリアは経済停滞から脱出の兆し

コートジボワールについては、アビジャン事務所の山田尚徳所長が解説した。経済財政省の発表によると、同国の実質GDP成長率は2014年8.5%、2015年9.2%、2016年8.8%とそれぞれ高成長を維持し、2017年は8.5%の成長が見込まれている。産業別見通しでは、第一次産業は輸出換金作物が天候不良により一部の品目で減産したものの、おおむね順調な生産量を維持している。他方で、カカオの国際市況が低迷し、生産者価格が引き下げられ、財政収入にも影響を来し、予算削減につながった。第二次産業は、建設分野において、高速道路、水道、住宅、水力発電ダム建設などの各種インフラ整備計画により22%拡大。電力エネルギー分野も需要拡大により、前年比37.9%拡大した。第三次産業は運輸がシェア9.3%で道路改修による陸送改善、港湾貨物取扱量の増加、航空路線の拡大などで成長しているほか、通信がシェア9.1%でモバイルバンキングなどのサービスの普及が貢献している。同国の高成長は第二次産業と第三次産業がけん引している。

ナイジェリア経済について、ラゴス事務所の宮﨑拓所長によると、IMF発表の2017年の実質GDP成長率は0.8%と、マイナス成長からプラス成長に転じた。同国は2000年代に資源価格高騰の恩恵を受けて高成長を記録するも、2014年後半からの原油価格下落がナイジェリア経済を直撃。2016年の実質GDP成長率はマイナス1.6%と、25年ぶりにマイナス成長を記録した。同国の産業構造は多角化しているが、輸出の9割以上は原油・天然ガスで占められている。また、外貨準備の急減も引き起こし、それを受けて政府は為替管理・外貨規制を強化、2017年2月には外貨流動性が急回復した。2016年3月に政府が発表した「経済復興成長計画」によると、景気回復に向けたマクロ経済の安定・産業多角化、外貨流動性拡大に向けた外為市場の改善やインフレの抑制に取り組む方針だという。

構造改革進むエジプト、モロッコは製造業発展も農業近代化が課題

エジプトの最新経済動向については、カイロ事務所の池田篤志所長が解説した。エジプトは治安の悪化が懸念されるが、都市部はテロ件数が減少し比較的安定しているという。2017年にあった大きなテロは、4月にアレキサンドリアで発生した教会爆破事件、11月にシナイ半島北部で発生したモスク爆破事件と、いずれもカイロではなく、郊外や地方で発生しているものだ。また、2011年以降同国の経済は低迷が続いていたが、2016年にIMFが求める構造改革を実施する条件の下3年間で120億ドルの融資を受けることが決定し、経済回復の兆候が見えてきた。構造改革の主な中身は、変動相場制への移行、補助金削減、付加価値税(VAT)の導入だ。2016年11月に為替自由化を実施以来、外貨事情は改善。また、同国中央銀行によると2017年10月末の外貨準備高は367億ドルで商品輸入7.7カ月分となっており、2011年の政変以前の水準に回復している。国際収支も改善しており、2016/17年度は黒字転換した。また、同国の重要な外貨収入源である観光業も回復傾向にある。郊外の高所得者向け不動産開発も進んでいる。しかし、インフレ率は2017年に入って30%前後を推移している。高インフレへの対策は同国政府の最大の課題だ。

続いて、モロッコの最新経済動向についてラバト事務所の水野大輔所長が解説し、同国経済を理解するキーワードを四つ挙げた。一つ目は、「立憲君主制」で、モハメッド6世国王が1999年に即位して以来、国王の主導で経済開発推進。国内で強力な治安体制を築き、社会の安定を図っている。二つ目は、「農業部門の近代化」だ。同国の実質GDP成長率は2014年2.7%、2015年4.5%、2016年1.2%と、干ばつ年に低下し翌年に回復するという乱高下を繰り返しており、農業部門の近代化は経済成長の安定化に不可欠だ。三つ目は「バランス外交とアフリカ志向」だ。特定国や地域に偏らないバランスの取れた外交を展開。近年ではアフリカ志向を強めており、2017年1月にはアフリカ連合(AU)に加盟。2018年には西アフリカ経済共同体(ECOWAS)への加盟も決定する見通しだ。四つ目のポイントは「産業政策の成功とインフラ整備」だ。モロッコでは、北部タンジェに同国最大のフリーゾーンと港湾を整備し、自動車関連企業など約750社が進出している。カサブランカ近郊の航空産業フリーゾーンにはボンバルディアが工場を構えるほか、航空機部品メーカーや電子部品メーカーが進出。また、官民パートナーシップ(PPP)を活用したエネルギー開発や港湾、鉄道等の開発が着実に進んでいる。同国に拠点を構える日系企業は増加傾向にあり、2017年現在約50社の日系企業が進出。今後もモロッコを欧州への輸出拠点やアフリカ展開の足掛かりとして位置づけ、進出する日系企業は増えていくとみられる。


セミナー会場の様子(ジェトロ撮影)
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中東アフリカ課
清水 美香(しみず みか)
2010年、ジェトロ入構。産業技術部産業技術課/機械・環境産業部機械・環境産業企画課(当時)(2010~2013年)を経て現職。

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